超次元ゲイムネプテューヌ Origins Succession 作:シモツキ
第一話 神生オデッセフィアへの招待
私は思い出す。思い出す、という程昔の事でもないけど、とにかく私は回顧する。
あの時…負のシェアの城の暴走により、生み出された負常モンスターが押し寄せる中で、次元を守る為の最終決戦の中で、別次元への門が開いた。それも、一つや二つじゃない。負のシェアの城周辺に、巨大な門が幾つも開き…そこから負常モンスターが雪崩れ込んだ。本来別次元との接続なんて有り得ない…信次元の、別次元との隔絶が不安定になっていた事を考慮しても、十以上の門が同時に開くなんて、異常中の異常であり……それ程までに、シェアの力は強大且つ際限がないんだと、その後にあった事と合わせて私は感じた。
けれど、同時に…もう一つ、私の中で感じるものがあった。空に開いた幾つもの門…その先に、その向こうに、繋がりを。自分でも、はっきりした事は言えないけど…それでも私は感じていた。そして…全てが終わった後に、私は知った。私の感じた繋がりは、まやかしなんかじゃなかったんだと。時に繋がりは途切れるもので、時に繋がりは災いを運んでしまうもの。だとしても、私が紡いだ繋がりは、あの時も確かに続いていて…災い以外にも色んな事を生み出しながら、きっとこれからも続いていくんだと。
*
神生オデッセフィア教会。今の私、守護女神オリジンハートの拠点であるここで、ある事が進められていた。これから始まる…私にとって、期待と緊張の混ざったとある事柄が。
「イストワールさん、いけそうですか?」
「大丈夫です。流石にわたしも慣れてきましたからね( ̄▽ ̄)」
機材を設置した部屋の中で、私はイストワールさんに問う。肩を竦めながらの返しに、いつもお世話になります…と私は軽く手を合わせ……たら、ちょっぴり怒られてしまった。自分は姉なのだから、いつもありがとうで十分だ、と。…うん、だよね。最初は知らなかった訳だし、今も喋り方はお互い変えてないから、ついこういう言い方をしちゃったけど…イストワールさんは、お姉ちゃんだもんね。
「じゃあ、宜しくお願いします。…最初は、どこからにしますか?」
「まずは、比較的信次元と性質が似ていて、接続回数も多いあの次元からですね(´・∀・`)」
やはり、回数が多い次元の方が感覚も確かですから。そう言って、イストワールさんは実行にかかる。集中の邪魔をしないようにと、私は黙り…静かに見守る。
私がイストワールさんに頼んだ事。期待と緊張を抱いている事柄。それは、皆の招待。私がこれまで関わってきた、繋がりを紡いできた皆を…これから信次元に、神生オデッセフィアへ招待する。
(ちょっと前にも会ってるとはいえ、緊張するな…)
とはいえ、久し振りに会うかといえば、それは違う。先日(といっても同日ではないんだけど)も、私は守護女神の皆と共に、各次元や世界へ向かった。負常モンスターの侵攻という、信次元の問題が及んでしまった事への謝罪と対応への感謝…そしてそれに纏わる各種会談を行う為に。その時、会談の相手として…或いは仲介を頼む為に、それぞれの次元や世界の皆と再会した。
だから再会への感動…は正直薄いんだけど、その時は女神としての重要な責務を背負っている状態だったから、素直に再会を喜べた訳じゃなかったし…だからこそ、この招待がある。今度は素直に喜びたいって、これまでみたいな騒動と共にじゃなくて、純粋に皆と交流したいと思って…今がある。
「イリゼさん、開きます…!」
呼び掛けられ、私の意識は目の前へ戻る。私が思考している間に広がっていった別次元への扉は、既に人が通れる程まで大きくなっていて…そこから、二つの人影が現れた。飴色の髪と、小柄な体躯をした、よく似た二人の女の子が。
「よいしょ、っと。…こんにちは、イリゼさん」
「イリゼおねーさん、久し振りね!…って言った方がいいかしら?」
「こんにちは、ディールちゃん、エストちゃん。そういう気遣いは…要らないかなぁ」
落ち着いた声音の挨拶と、快活な声音での問い掛け。私は挨拶を返すと共に、苦笑いを浮かべる。ディールちゃんとエストちゃん、私の二人の友達に向けて。
ディールちゃんとエストちゃん。私が初めて出会った、別次元の女の子と、その次に出会った、ディールちゃんの妹。幻次元の、双子の女神。二人とは色々あったし、ディールちゃんは別次元…神次元の様に継続的な交流を持つようになった次元とは違う、基本個人間の関係に留まっていた相手の中では、多分一番多くの交流があって……なんというか、安心する。また会えた!嬉しい!…って感じよりも、ふふっ、また会えたね…って感じというか…って、駄目だ…我ながら、これじゃ分かり辛い……。
「わたし達以外誰もいない…って事は、わたし達が最初なんですね」
「みたいね。おねーさん、いきなり上の空になったけどどうしたの?何か見えちゃ不味いものでも見えたとか?」
「んー…今見えてるのは、頼れる姉と、仲良しの友達だけかな」
怪訝な顔で見てくるエストちゃんに対し、私はくすりと笑って返答。するも二人は、鏡合わせの様に顔を見合わせて……
「えっ…おねーさん、ほんと急にどうしたの…?」
「もしや、酔ってます…?」
「よ、酔ってない酔ってない…小粋な返しに対してそんな事言わないでよ……っていうか、自分で小粋なとか言わせないでよ!?私赤っ恥じゃん!」
『えぇー……』
酷い、辱められた!…と抗議の声を上げる私。困ったような顔で声を漏らす二人。くっ…エストちゃんは元々だけど、ディールはほんと私を弄る事に躊躇いがなくなったよね…!
「いやイリゼさん、今回に限ってはイリゼさんが変なだけですから…」
「でもおねーさんのそういうなんかズレてるところ、わたしは面白くて好きよ?」
「うぐっ…い、イストワールさん次いきましょ次!二人はそこに用意したお菓子と飲み物でも摘んで待ってればいいじゃない!」
「ほ、本格的に空回り始めてる…イリゼさん、貴女はしっかりしてるようでしっかりしてない、でも普通に頼りにはなる人なんですから、落ち着いて下さいね?」
「それは褒めてるの!?褒める風に弄ってるの!?」
きゅっ、と私の手を握り、ディールちゃんは私をクールダウンさせて…くれたんだかどうか、よく分からなかった。ただ少なくとも、エストちゃんはくすくす笑っていて、エストちゃんが面白がっているのだけは間違いなかった。
なんか凄く釈然としないけど、落ち着いた方が良いのは事実。だから私はイストワールさんが再び扉を開く中、ゆっくりと深呼吸し、気持ちを整える。
「…ふぅ、完了です( ´ ▽ ` )」
さっきと同程度に開いた扉と、一息吐いたイストワールさんの声。その頃には私も平常心を取り戻し、扉の向こうからの来訪者を待つ。
「…………」
…………。
………………。
……………………。
「……あ、あれ?イストワールさん、これちゃんと繋がって……」
「──こそ謎の空間に飛ばされたり、いきなり空だったりしませんように…っ!」
おかしい、全然来ない。そう思ってイストワールさんに呼び掛けたところで、ふっと現れる金髪の…プラチナブロンドの髪をした女の子。その子は何故か、きゅっと目を瞑っていた。
「…え、っと…ルナ?」
「ふぇ?あ…よ、良かったぁ……」
これはどういう事なんだろう。そう思って私はその子に…一見ちょっと気弱で常識的な、でもその実変なところに暴走スイッチがある私の友達、ルナの名前を呼ぶ。するもルナは目を開け、私を見て、周りを見て…見るからに安堵し脱力。
「…もしかして、こっちに来るの…というより、扉潜るのを躊躇ってたりした…?」
「う、うん…一応大丈夫とは言われたけど、こっちから確認する事は出来なかったから……あ…け、けど勿論、信次元に来たくなかったとかじゃないよ!?全然そんな事ないし、むしろ楽しみだったから!楽しみ過ぎて『今日のルナちゃんは落ち着きがない』って言われちゃった位だから!」
「そ、そうなんだ…ごめんね、次元間交信をすればその問題は発生しなかっただろうけど、色んな次元に対して双方向での接続を短時間で色々やると、次元の境界が不安定に……って、ルナー…?」
こくりと頷き答えたのも束の間、わたわたとルナは釈明。その、何ともルナらしい反応に、私は思わず苦笑い。それから今回はイストワールさんからの一方的な呼び掛けだけで、普段の様な次元間交信をしなかった理由を説明した…ものの、途中からルナはぽかんとしていた。…ま、まぁそれはそうか…次元の境界とか、隔たりが不安定にとかって、私もくろめ達の一件があったから知ってるだけだし…。
「…はっ!え、えっと…あれだよね。何事もやり過ぎは良くないって話だよね…?」
「うん、分かってないね…でも微妙に間違ってもいない辺り、流石だよルナ……」
実際やり過ぎると碌な事にならない訳だから…と思って私が返すと、何故かルナはえへへ…と笑ってちょっと照れる。…うーん、可愛い。でも褒めてないからね、ルナ。
それからルナは、ディールちゃん達の方へ行って挨拶。二人は面識があるし、エストちゃんは社交性が高いだろうから、私が間を取り持つ必要はない…って事で、また次の人を出迎える準備へ。
「イストワールさん、休憩を入れなくても大丈夫ですか?」
「問題ありません、先程も言いましたが…いい加減わたしも、慣れてきましたから٩( 'ω' )و 」
ぐっ、と小さな…背格好の関係で本当に小さな力こぶを作るジェスチャーを行った後、またイストワールさんは次元の扉を開いてくれる。
形成される、三度目の扉。ルナの時とは対照的に、すぐに扉の向こう側から姿が現れ…彼はすぐに、私に声を掛けてくれた。
「よ、っと。数日振りだな、イリゼ」
「うん、数日振りだねカイト君」
私に先んじて呼び掛け、軽く手を挙げた男の子。彼に…カイト君に、私も手を挙げて言葉を返し、私達は小さく笑い合う。
「ありがとな、わざわざ招待してくれて」
「お礼なんて必要ないよ。信次元、それに私の国を知ってほしいと思って招待した訳だし…迷惑をかけちゃったお詫びも兼ねてるんだからね。…まぁ、それで言うならカイト君一人じゃなくて、そっちの次元の人達皆を呼ばなきゃいけなくなっちゃうけどね」
そう言って私が苦笑いをすれば、それは無理だもんなぁ、とカイト君も肩を竦める。…そうだよ、これだよこれ。よく分からない内に私弄りになったり、初っ端から天然を発揮してたりでさっきまでは妙な会話になってたけど、私が想像してたのはこういう普通の会話なんだよ…!
「…ありがとう、カイト君……」
「あ、おう。……何が…?」
「うん、だよね…そりゃそうなるよね…でもそうやって、取り敢えず感謝されたらその思いは受け取ろうとするところ、ほんとに私は良いと思う」
一回受け取ってから怪訝な顔をしたカイト君に、私はうんうんと深く頷く。
今も前も私は女神だけど、同時に今は国の長でもある。だからこの辺りで一つ、威厳のありそうな事でも言って……
「…イリゼ、何か少し意気込んでないか?」
「うっ…な、何の事カナ-…」
……バレた。速攻見抜かれた。表情からして、そう感じた、って程度だろうけど…うぅ、さっきからずっと上手くいかない…。
「…ま、いいか。それより楽しみだ、皆と再会するのも…ここでまた、知らない世界に触れていくのも」
「…そっか、なら覚悟しておいてね?沢山沢山、色んな事を知ってもらうんだから」
興味と好奇心、自分の中で生まれた感情を素直に表現するカイト君に私はまた口角を上げ、にっと笑う。
この短いやり取りだけでも、分かる。カイト君の本質、どこまでも真っ直ぐで、目の前の事を真正面から受け止める在り方は、今も健在なんだって。だからこそ、私は楽しみに思う。そんなカイト君が、私の国を見てどんな反応をしてくれるかを。
「それと…もし良かったら、また手合わせしてくれるか?多分、今も敵わないが、それでも……」
「いいよ、勿論構わない。…見せてもらおうか、今の…きっとあの時よりも進んだ、新しいカイト君の実力を」
「あんまり油断するなよ?敵わないとは言ったが…負けるつもりでやる気なんか、これっぽっちもないからな」
「えっ?…あ、う、うん…望むところだよ望むところ…!」
やる気に満ちたカイト君の表情。それに私は、女神らしく言葉を返した。…べ、別に何もないよ?ネタ発言したのにノータッチで内心軽く動揺したとか、そんな事ないからね…?……こ、こほん。
そうしてまた、扉を開いてもらう。問題ないと言うイストワールさんだけど、連続で開いている訳だから、もう少ししたら一度休憩を…と考えていたところで、次に現れたのは一組の男女。
「お邪魔します、っと。やっほー、ぜーちゃん元気?」
「いらっしゃい、茜。それに…影君も。来てくれて、ありがとね」
「…まあ、別次元の守護女神から直々に呼ばれたら、行かない訳にはいかないからな」
軽快に扉から出て、早速にこりと笑ってくれたのは茜。クールというか枯れているというか、とにかく茜とは対照的なテンションを見せたのは影君。なんとびっくり、数日前の再会で知った事だけど、二人は今夫婦らしくて…ある意味、この二人が一番時の流れを感じさせてくれた…と、私は思う。
「んもう、またそういう事言って…そーゆーとこ良くないよ、えー君」
「や、まぁ…一応数日前も会ってる訳だが、昔の別れ際の事を思うと、な…」
「あぁ…今思うと、あの時ちょっと格好付けてたでしょ、影君」
「いやそんな事は……」
「あー。えー君、無意識的にちょっと格好付けちゃうところあるからね。ま、常にえー君は格好良いんだけどね」
昔の別れ際、というのは私と影君が嘗て出会い、色々あった末にそれぞれの次元へ戻ろうとした時の事。あの時影君は、もう二度と会いたくないと言っていて…なのに再会し、更に今度は招待までされてるんだから、確かに影君からすれば気恥ずかしい部分があってもおかしくない。
そして、思い返せばその直後、茜と一緒ならいいとも言っていた。…あの時は、こんな形で実現するとは思わなかったな…。
「…それはさておき、さっきから微妙に気になる視線を感じるんだが……」
「気になる視線?…あー、あれじゃない?茜、事ある毎に影君の話してたし、基本べた褒めだったから、『まさか、この人があのえー君さん…?』…みたいに思われてるんじゃないかな?少なくとも、私は前会った時そうだったし」
「…茜……」
「いやぁ、えー君の事を話すと止まらなくなっちゃってね。あの頃は私も若かったなぁ…」
見た目は若いのに、かなり歳を重ねたかのような事を言う茜に対し、私は苦笑い。…まぁ、見た目云々を女神の私が言うのか、って話だけども。
「まぁ、とにかく宜しくねぜーちゃん。あぁそうだ、出来るだけえー君を勝手に連れ出したりはしないでね?今のえー君は要注意人物だから」
「あ、うん(前に会った時から要注意人物だった気が…というか、その相手と夫婦になった茜って一体……)」
「茜は物好きなんだ。イリゼと同じで…な」
「地の文とかじゃなくて、普通に思考を読むのは止めてくれない!?」
地の文を読まれるのはもう慣れたけど(いやよく考えたらこれも本来おかしいんだけど)、こうまで的確に思考を読まれる事は早々ない訳で、思わず全力で突っ込んでしまった私。すると二人は、揃って「変わらないなぁ」とばかりの表情をしていて…ど、どこで懐かしさを感じてるのは二人は…!
「全くもう…調子狂うなぁ……」
『え、今更…?』
「今のは独り言なんだから反応しなくていいのっ!」
調子が狂う。そんな事を呟きながらも、私は自分がそう悪くは思っていない事を感じていた。…歓談中の面々の一部から余計な発言が聞こえたけど、こっちこそ気にしない。思わず突っ込んじゃったけど、もう私は気にしない。
気を取り直し、イストワールさんに次の扉を開いてもらう。次に接続する次元から招く子は、少し特殊だから、気を付けてあげないと…と少し心を引き締める。
「…………。…あ、イリゼ」
「おわっ…と、取り敢えず入っておいで、イリスちゃん…」
扉が開き、そろそろ来るかな…と思っていたところで、不意に扉へ浮かんだのは…生首。それは決してグロテスクな何かが起こったとかではなく、扉から顔だけを出しているという、ただそれだけの事。でも、分かっていても見ていて落ち着かない光景である事は間違いない訳で…私がほんのり動揺しながら手招きすると、顔だけを出していた女の子、イリスちゃんはこくりと頷いて扉から出てきた。
「ん、と…こんにちは、イリゼ。イリスは、元気。イリゼは?」
「え?…うん、私も元気だよイリスちゃん(なんだろう、この例文みたいな問い掛けは…)」
まるで特徴のない、むしろその特徴のなさが特徴的と言えそうな問い掛けに私は返す。するとイリスちゃんは周りを見回し…ディールちゃんとエストちゃんを見たところで、ぴたり、と動きを止める。
「ロム、ラム。……じゃ、ない…?」
「あー、っと…そうだね、二人はディールちゃんとエストちゃんっていうの。…まぁ、ロムちゃんラムちゃんじゃない、とも言い切れない部分は無きにしも……って、イリスちゃんどうしたの?」
「違うなら、まずは自己紹介。仲良くなるには自己紹介って、イリスは学んだ」
「そっか。けど、大丈夫?二人以外にもいる訳だけど、一人でちゃんと自己紹介出来る?」
「う…そう言われると、少し不安。…なので、イリゼが一緒にいてくれると、嬉しい」
その辺りの事情は複雑というか、私もよくは知らないからなぁ…と思いつつ小声で呟いていると、イリスちゃんは無言で私の横をすり抜け皆の方へ。どうやら自己紹介をしようと思ったらしく、けど私が大丈夫か訊くと、イリスちゃんは私を見上げて一緒に来てほしいと言った。
イリスちゃんはいつも無表情で、声音も淡々としている。でもなんだか、今の発言からは私への信頼を感じられて嬉しかった。後、シンプルに可愛かった。
という訳で、イリスちゃんの自己紹介に付き合う私。ここまでのやり取りを聞いていたのか、皆は温かな雰囲気で聞いてくれて…イリスちゃんの自己紹介は端的だったけど、終わった時にはほっこりした空気が広がっていた。
「自己紹介、上手くいった。これは、イリゼのおかげ」
「ううん、これはイリスちゃんが頑張ったおかげだよ。…イリスちゃん、今回は前出来なかったような事もしようと思ってるから、楽しみにしててね?」
「分かった。イリス、楽しみにする。大いに期待しておく」
素直に受け取ったイリスちゃんの反応に、私は微笑む。私も皆もそうだけど、次元移動は意図せずしてしまった、起きてしまったという事も多い訳で…だからそうじゃない、招待して訪れてもらった今回は、皆に気兼ねなく楽しんでもらいたいし、その為に私は頑張りたい。
「それでは、次の次元と接続します。信次元と比較的近い性質を持つ次元は、次で最後になりますね(´・ω・`)」
「なら、これで一旦休憩にしましょうか。いいですよね?イストワールさん」
ちゃんと休んでもらえるよう、少し声のトーンを落として言えば、イストワールさんには伝わったようで一つ首肯。そんなやり取りを交わしてから、休憩前最後の接続を行ってもらい…迎えたのは、がっしりとした体格の男性。
「…ご無沙汰しております…は、適切ではありませんね。本日はお招き頂き感謝します、イリゼ様」
「うん。こちらこそ、応じてくれた事を感謝するよ、ワイト君」
潜った先、信次元へ完全に姿を現したところで、挨拶と共に頭を下げるのは一人の軍人。その言葉に、ワイト君の挨拶に私も言葉を返し…笑みを見せる。
「…ワイト君、ですか…やはり、まだ少しむず痒さがありますね。元々、長い付き合いだったという訳ではありませんが…」
「あはは……正直言うと、私もワイトさん…もとい、ワイト君への『君付け』はまだちょっと慣れなかったり…」
小さく肩を竦め、ちょっぴり雰囲気を和らげたワイト君の感想に、私も苦笑い。私なりの、これまでの…国を持たない女神だった頃の自分との切り替えとして、イストワールさん以外は基本さん付けを止め、敬語も外している訳だけど…やっぱりもっと呼んで回数重ねないと、慣れないものだよね。
「しかし、宜しかったので?イリゼ様から直々に招待を頂けたのは光栄ですが、他にもっと呼ぶべき相手が……」
「貴方は呼ぶべき相手だよ、ワイト君。あの時、あの場所で出会って、同じ目的の為に力を合わせた一人だから、ワイト君を呼んだの。これ以上に、招待をする理由がある?」
「…失礼しました、イリゼ様。では、この国に…神生オデッセフィアに招かれた者の一人として、存分に楽しませて頂こうと思います。ブラン様からも、偶には立場を忘れて羽を伸ばしてこい、と言われましたからね」
「…それ、出来そう?」
「はは…まぁ、努力はします」
少し困った顔で笑うワイト君。努力しなきゃいけない時点で、忘れるのは難しいんじゃないかなぁ…とも思ったけど、私は言わないでおく事にした。
「…ところで、見慣れない方もいるようですが…彼等は信次元の住人で?」
「ううん、イストワールさん以外は皆私が招待した人だよ。あの時より前にも、あの後にも、結構私は別次元とか別世界に飛ばされててね…」
「それはまた…心中、お察しします…」
「え、ほんとに察せてる?勿論困りはするけど、割と私毎回飛ばされた先で友達が出来たり新しい繋がりが生まれたりしてるから、いつも戻った後は良かったって思ってるんだよ?」
「…タフですね、イリゼ様……」
「ふっ、オリジンハートを舐めてもらっちゃ困るよワイト君」
別に舐めてる訳じゃないんだろうけど、少しだけ自慢げな顔をして私は言う。一見厳格そうな、でも実はノリが悪い訳でもないワイト君は、「これは失礼」と言いつつまた軽く肩を竦め…そう、これだよこれ。私が求めていたのはこういう、大人な感じのやり取りなんだよ…!やっぱりワイト君は違うね!ナイスミドルな大人は違うよ!
「…あの、イリゼ様。不躾ながら、そのような発言は大人らしさに欠けるかと……」
「地の文を読まれた!?い、いや…さっき地の文ならまだしも的な思考はしたけど、だからってワイト君がそれやる!?」
やられた、油断してるところに地の文読みをぶっ込んでくるなんて…!しかも気を遣って丁寧な指摘の形を取ってるのが逆に堪える…!うぅ、最後まで大人な感じで会話出来たと思ったのにぃ……!
…と、嘆いても時既に遅し。私は惜しさを感じながらも何とか飲み込み…ワイト君が来た時点で休憩に入っていたイストワールさんにもう少し休むよう頼んだ後に、皆と歓談。暫くし、イストワールさんがもう十分休めたという事で、また私は次元の扉を開く際の補助を行う機材の前に立ち、次の次元との接続を待つ。
「ここからは、神次元との接続を行います。では、始めますね(`・∀・´)」
神次元。ここまで接続した次元よりは、信次元との性質に差のある…けど同じ『ゲイムギョウ界』であり、これから接続するのとは別だけど、同じ名を持つ次元とは定期的な交流を行っているという実績がある分、接続に対する不安はない。
そして再開後、最初の次元の扉が開く。そこから現れた二人の少女を、私は笑みと共に迎え入れる。
「ふー…待ちくたびれたッスよ、イリゼ」
「ごめんごめん、イストワールさんに無理はさせたくなかったからさ。…で、えぇと…もしかして貴女が……」
「初めまして、神生オデッセフィアの女神様。私はイヴォンヌ・ユリアンティラ。けど、イヴで構わないわ」
二人の内、一人は知っている人物。今接続した神次元の国の一つ、エディンの守護女神である篠宮アイ。でももう一人…ショートカットの黒髪に、珊瑚朱色に近い赤色の瞳をした少女の事は知らなくて、でも思い当たる人物はいた。差し出された右手と共に発された自己紹介で、私は予想通りの人物だったと理解を得た。
「私は神生オデッセフィアの守護女神、オリジンハートことイリゼ。まあ、その辺りはアイから聞いてると思うけど…宜しくね」
「えぇ。超次元とも神次元とも違う次元の技術、色々学ばせてもらうわ」
差し出された右手に応じて、私は握手。けどその際…というより、差し出された時点で、私は気付いていた。…イヴの右手は、生身のそれではない事に。
「…これについては、触れない方が良いのかな?」
「別に気にしなくても大丈夫よ。けど、少し意外ね。もっと驚かれるかと思ったのに…」
「それに関しては…まぁ、初めて見る訳じゃないから、かなぁ…」
その言葉と共に、ちらりと視線を向けてみれば、影君も気付いた様子でこちらを見ていた。…後、義手っていうと一時期ネプテューヌもそういう状態だったしね。機械ではないから、同列には語れないだろうけど。
「あぁでも意外云々でいうと、別にあるかな。アイがもう一人いても大丈夫かって訊いてきた時は、ヤマト君が来るのかと思ってたから」
「へ?なんでそこでヤマトが出てくるんッスか?」
「いやだってほら、この通り複数人で来てるのって、皆姉妹とか夫婦とかだし」
「ふ、夫婦…?…あ、あー…別にヤマトを呼んでもよかったッスけど、イヴから話を受けてたッスからね。なんならおまけで今から連れて来てもいいッスよ?」
「自分の兄の様な存在をおまけ感覚って…まあそれも、それ位気兼ねのない相手って事だよね」
「間違っちゃいないッスけど、早速またそういう方向にしようとするのは止めてくれないッスかねぇ…」
うんうんと私が頷きを返せば、呆れ気味にアイは言う。…こういうやり取りも、懐かしいなぁ…。
「ま、それはさておき楽しみにしてるッスよ。イリゼの国、神生オデッセフィアを…女神として」
「うん、楽しみにするといいよ。…その期待、余裕で超えてみせるから」
「そりゃまた大きく出たッスねぇ。これは一層楽しみッス」
楽しみにしている。その言葉に対し、私は薄く笑って、挑戦的な答えを返した。これが他の人なら、もっと好意的に応える回答を選ぶけど…女神だからこそ、アイだからこそ、私はそういう返しにした。私からの返答を受けたアイもまた、ぴくりと肩を震わせた後薄く笑い…あぁ、私も楽しみになってきたよ。ここまでも十分楽しみだったけど…こういう反応をされたってなれば、更に…ね。
「二人は結構仲が良いのね。先日の件があるまでまるで聞いた事なかったから、知り合い程度かと思っていたけど」
「いやぁ、何せ本気で顔面に膝入れた相手ッスからね」
「そうそう、私も本気で腹パンとかしたしね」
「あ、うん…やっぱり女神って、色んな意味で流石ね……」
間違いなくわざとなアイの言葉選びに私も乗り、二人してイヴから軽く引いた視線を受ける。…と、いうか…思い返すと私、出会って数分の女の子と一戦交える事になったり、いきなり襲われた上脚を刺されたり、胸にナイフ突き立てられた上に銃弾で駄目押しされたり、ワイト君にはあんな感じに言ったけど、別次元絡みだと中々ハードな経験もしてるよね…。
それから私は、後でもう少しイヴと話し、もう少し彼女の事を知りたいなと思いつつ、次の次元への接続を開始したイストワールさんに声を掛け……また別の神次元と、信次元が繋がる。
「扉の先に危険は…なし、っと」
「別にわざわざ先に入って確認しなくても…」
「危険…?…あぁ…ようこそ二人共。私の国、神生オデッセフィアに」
開口一番の警戒と、ほんのり呆れたような返しの言葉。そのやり取りと共に入ってきたのは、連続しての二人組で…今度は両方知っている相手。
「あ、いーすん様。扉の形成、お疲れ様です」
「目の前にいる私をスルー!?視覚的にも聴覚的にもいきなり無視!?」
「いや冗談ですよ、余裕なくなるの早過ぎません…?」
「うぐっ…ここまでこれだけの面子とやり取りしてきたんだから、私にとっては早くも何ともないの…!」
『あー……』
既に一話分として投稿しても成り立つ程度の文字数にはなってるんだから!…とまでは流石に言わない。けど二人には伝わったようで、二人揃って苦笑いしていた。…しかも、まだ終わりじゃないんだよね…。我ながらほんと、色んな次元や世界と繋がりを持ったものだよ…嬉しいし、ありがたい事だけど。
「じゃあまあ、改めて…先日振りですね、イリゼさん」
「守護女神就任、おめでとうございます。…って、まだ言ってませんでしたよね?」
「言われてなかったね。ピーシェ、ビッキィ、前の時はそっちにお世話になった訳だし、今回は遠慮なく寛いでいって」
あの時は珍しく、ちゃんとした次元に飛ばされたんだったなぁ…なんて思いながら、私は返答。するとそこで、アイが目を丸くしていて……なんだろう、ピーシェの事かな…ピーシェは私のよく知る神次元にもいて、今接続した神次元にもいるって事は、アイの次元にいてもおかしくはない訳だし…。
「しかし、前の時とは違う人達も多いですね…流石はめが…イリゼさん」
「え、今『女神』だとわたしも該当するから言い直した…?」
じとーっとした目でピーシェから見られ、ビッキィはあからさまに目を逸らす。言動共に、あまりにも分かり易かったものだから、思わず私は笑ってしまって…そのせいで今度は私がじと目で見られてしまった。え、冤罪だ…今のはビッキィの分かり易さに笑っただけなのに……。
「全く…わたしは自分のステータスにする為のような人付き合いはしないだけです」
「え、私もそうだけど?」
「…煽ってます?」
「いや、さっきのお返しかなー」
「……器が小さい…」
「うぐっ……」
元々ピーシェにはちょっと対抗心の様なものがあったけど、守護女神となってからそれが強くなった…気もする。けど、今回はちょっと見込みが甘かった。完全に図星を突かれる形となった私は言葉を返せず、しかも「自分が悪いって思った時は、反論せず受け入れるところ、わたし結構好印象ですよ」と、余裕たっぷりに言われてしまったものだから、完全に私は返り討ちとなってしまった。くっ…。
「ま、まあとにかく期待してますね…!イリゼさんの国なら、きっと美味しい物も沢山あると思うので…!」
「(気を遣われてしまった…)な、なんで私の国だと美味しい物が沢山だと……って、あぁそっか…私向こうじゃ色々作ってたもんね…」
「考えてみると、来て最初にした事も、写真を除けば最後にした事も料理でしたね。…ま、参考にさせてもらいますよ」
「料理を…?」
『違う(と思うよ)…』
今のは狙ったのか、それとも素なのか、ビッキィのズレた問いに揃って突っ込み、私とピーシェは軽く肩を竦め合う。さっきはお返しをした私だけど、別にピーシェと仲が悪い訳じゃないし、良好な関係を築きたくない訳じゃない。少なくとも、私はそう。
ともかくこれで、神次元からの来訪も終了。そして、ここからは別次元ではなく、別世界になる。そうなると、難易度も大きく上がるとの事で…だから向こう側からも手を貸して貰ったり、向こう側に『目印』になってもらったりした上で、イストワールさんは扉を開く。
「ほいよっと。なんだかんだで、違う世界に行くのも慣れたよなぁ」
「だねぇ。あ、イリゼ!」
「待ってたよ、グレイブ君、愛月君。二人共、何か問題があったりはしなかった?」
片や活発そうな、片や純粋そうな雰囲気をした、二人組の男の子。その二人、グレイブ君と愛月君に私は挨拶で返し、続けて問題はなかったか訊く。それに対し、何事もなかったと回答を受けて、取り敢えず私は一安心。
「へぇ、ここが神生オデッセフィアか…こう、ワクワクするな」
「え、まだ景色のけの字もないような段階で…?」
「するんだよ。俺は今!神生オデッセフィア地方への第一歩を踏み出した!って感じでさ」
「いや一地方じゃないから神生オデッセフィアは…まあでも、そういう事なら分からないでもないかな。愛月君もそんな感じだったり?」
「んー…僕はどっちかっていうと、また皆に会える…といいうか、会えてる事の方が楽しみだったり?」
たとえ屋内でも、旅が日常なグレイブ君にとっては新天地というだけで心踊るものがあるんだろう、と私は納得。なら愛月君はどうなのかな、と思って訊いてみると、返ってきたのは朗らかな表情。それから皆の方を見て、知っている相手には笑顔を、知らない相手には興味の浮かんだ顔を見せ…それからまた、愛月君の視線は私の方へ。
「あ、そうだイリゼ。イリゼは今、国の指導者…なんだよね?なら、忙しくてこれまでみたいに出掛けたりは出来ない感じなの…?」
「ううん、大丈夫。勿論暇ではないけど…別次元や別世界からの来訪者をもてなすのも、大事な事だからね。それに、国の長だからこそ自由に時間を作れるって部分もあるんだよ?」
「そっか。まあ確かにグレイブもチャンピオンだけど、色んな地方に行ってはジムとリーグ荒らししてるもんね」
「おい、誰がジム&リーグ荒らしだ」
「だって実際そうじゃん。特にジムなんて、バトル中に破壊したり勝手に改造したりしてるし」
「毎回後でちゃんと直してるだろうが」
『そういう問題じゃないと思う…』
いやいやいや…と私達は揃って突っ込むものの、グレイブ君は不服そうな顔。まあ、グレイブ君の性格を考えればこの反応もそうだろうね、って感じだけど…ほんとこの二人も、中々に凸凹なコンビだよね。
「そんな事より、俺は色々と見て回るのが楽しみだ。前の時はこっちの世界のモンスターを見られなかったしな…!」
「グレイブ、勝手にどっか行っちゃ駄目だよ…?」
「分ぁってるっての。愛月こそ、ふらふら出てって迷子になるなよ?」
「失礼な、僕だって旅には慣れてるんだからそう簡単に迷子になんてならないよ。……多分…」
「た、多分なんだ…モンスターも良いけど、他にも色々あるから、二人共存分に期待するといいよ」
「おう!」
「うん!」
見た目相応の、元気な二人の返しを受けて、私の中のやる気は上昇。普段から旅をして、色んなものを見ている二人はきっと、街にしろ自然にしろ観光に対しては目が肥えている筈。そんな二人が楽しめるようにするのも、私の腕の見せ所…ってね。
そんな風に二人を迎えた後、また別世界への接続をしてもらう。残りの世界は後二つで、もう一踏ん張り。集中しているイストワールの邪魔にならないよう、私は心の中でエールを送り…残りの二つ、その一つ目との接続が確立する。
「…ふむ、どうやら前回の様なハプニングはないようだ。ご機嫌麗しゅう、イリゼ君」
「そっちこそ、ご健勝みたいだね。ズェピア君」
こちらは姿を現した直後、軽く見回した後、小さく笑みを浮かべた金髪の男性。彼の恭しい挨拶に私も合わせ…ワイト君同様、前とは違う敬称で挨拶を返す。…こ、こっちもこっちでまだ慣れない…慣れないけど、仕方ないね…。
「ふふ、まさか私が偶然ではなく、女神から直々に招待を受けるとは思っていなかったよ。吸血鬼が女神から、国への招待を受ける…不思議な時代になったものだ」
「私が招待したのはただの吸血鬼じゃなくて、同じ時間を共に過ごした吸血鬼、ズェピア・エルトナムだからね。私としては、至って当然の事だよ?」
「これは失礼。しかし、当然の事、か…うん、君らしい」
「私としては、元々さん付けをしてた男性が二人共ちょっと似てる反応をした事に驚きだよ…」
「おや、それはそれは…」
ズェピア君といいワイト君といい、飛ばされた先で出会った大人の男性はどうも、必要以上に謙遜をしているような気がする。私からすればどちらも有能な、凄い人物だというのに。……え、もう一人大人の男性がいるって?いや、ほら…彼はナイスミドル感はないでしょ?ズェピア君も、ナイスミドルって言葉が合うかと言われると、全然そんな事はないけども。何ならワイト君だって若々しいけども。
「それにしても、これは中々の大所帯…と、思ったが、まだ全員ではないようだね」
「うん、後もう一人だね。……あっ…」
「どうかしたかい?」
「いや、ズェピア君がいるんだから、飲み物の種類に紅茶も用意しておけば良かったかな、と……」
「いいや、用意しなくて正解だとも。イリゼ君とて、招いて早々に紅茶の批評をされたくはないだろう?」
「そ、それは確かに…(あ、雰囲気がマジだ…用意してたら、多分がっつりと批評されてたよこれ…)」
穏やかで大人な彼の事だから、良くない点があったとしても、私を非難するような言い方はしないと思う。けど、ズェピア君の雰囲気は語っていた。私に紅茶の話をさせたら、長くなるよ?…と。
「…こほん。ともかく、今回はたっぷりと神生オデッセフィアを、信次元を知っていって。別世界な以上は困る事もあるだろうし、その時は何でも言ってくれていいからね?」
「いやいや、多少の事は自分で…と、思ったが、ホストの顔を立てるのがゲストというもの。それに君の…女神オリジンハートの国なんだ、たっぷりと満喫させてもらうよ」
その言葉と共に笑みを浮かべるズェピア君は、やっぱり物腰柔らかで……でも、感じる。ほんのりとだけど、興味を。暖かな期待と、それとは対極の、どこか冷めた視点から見ているような、そんな二つの思いが入り混じった、私に対するズェピア君からの興味を。
ならばそれに応えるまで。別次元だの、吸血鬼だのは関係なく…応え、そして超えるまで。
「…では、次で最後ですね(´-ω-`)」
「はい。最後も、宜しくお願いします」
一つ開くだけでも苦労する筈の事を、一日の内に何度もしてくれているイストワールさんには感謝しかない。だからお礼として、終わったら予め作っておいたお菓子を食べてもらおう。そう思って、私は最後の接続を頼む。…まぁ、皆が帰る時、また開いてもらう訳だけども…。
とにかく、イストワールさんによって開かれる、最後の扉。つつがなく開いた扉から入ってくるのは、私にとっては見慣れた姿をした少女。
「およ?なんだ、イリゼといーすんじゃん!んもう、間違えてる間違えてる!間違ってこの次元のわたし呼んじゃってるよ?」
「えぇ!?あ、す、すみませんネプテューヌさん!ではすぐにやり直しま……」
「なーんちゃって!大丈夫、ちゃんと別次元…っていうか、別世界?のわたしだよ!って訳で、もっかい来るねー!」
『えぇぇッ!?』
ひょっこり現れた…と思いきや、最後の最後でまさかのミス。…かと思ったら、何とも分かり辛い冗談だった。しかも私達がぽかんとする中、まだ開いている扉へ彼女…別世界のネプテューヌは戻ると、私達の反応も何のそのとばかりに再び現れ……
「──セイバー、真名ネプテューヌ。召喚に応じ参上した。貴女がわたしのマスター……」
「ではないよッ!?」
……またボケてきた。重ねてボケてきた。恐らくその為に、わざわざ出直してきた。いや、らしいけども…!物凄くネプテューヌらしいけども…!
「あ、それならわたしはアサシンですかね」
「ビッキィはランサーとか、クラッシャーの適性もありそう」
「そういう話なら、わたしとディーちゃんは勿論キャスターよね。あーでも、アルターエゴもいけそうかも?」
「ならありきたりッスけど、カイトはセイバー、ワイトはライダーで、ルナはムーン……キャンサーではなかったッスね。代わりにヤマトをアーチャーかバーサーカーに推すッス。ヤマトいないッスけど」
「アーチャーならえー君もいけるね!だって接近戦もするし!」
「ライダーってなら俺や愛月もいけるな。鳥にしろ竜にしろ、色々乗ってるんだから」
「ズェピアさんは…プリテンダーって感じ?」
「…ははは、私にそんな大層なクラスは似合わないよ。あってもせいぜいしがないキャスターさ。というか、『フリ』という意味ではつい先程君がしていただろうに」
「う…何の話か、全然分からない…。これは恐らく、イリスには分からない、高度な対話……」
「うわぁ!?いきなり皆で乗ってきた!?突如としてカオスな状況になったんだけど!?後、結構序盤で違う作品のやつ出てきたよね!?ファンタジアでリビルドな方のが出てきたよねぇ!?」
これが『ネプテューヌ』の力だとばかりに、一気に収拾が付かなくなる超混沌的展開に。というか皆、ほんと乗り良いね!抜群だね!そのせいで大いに困ってるんだけどさっ!
「あぁもういいからいいから!そういう話は第一話と第二話の間にでもしてくれる!?」
「…ね、イリゼはなんだと思う?」
「あ、それは俺も気になるな」
「あぁいや、今その話をすると恐らくイリゼ様が反射的に……」
「え、私はルーラーで……ってルナもカイト君も乗せないでよね!?えぇい、もう今回の話は……」
「これにてお終い!そしてここから、総勢十三作品による大騒ぎの合同コラボが、はっじまっるよ〜!」
「締めの言葉すら取ろうとしないでくれないかなぁ!?」
駄目だ、これはもうどうしようもない。直感的にそう確信した私は強引に締めようとしたものの、それすらネプテューヌに乗っ取られて、更にカオスな展開に。あーもう、どうしてこうなるかなぁ!?……まぁ、これだけの面子がいたらこうもなるよねッ!
……と、本当に…本当に大賑わいな形で…こんな形を皮切りに、再会した皆との時間は始まるのだった。
今回のパロディ解説
・「〜〜見せてもらおうか〜〜カイト君の実力を」
機動戦士ガンダムUCに登場するキャラの一人、フル・フロンタルの名台詞の一つのパロディ。新しい、と入っている通り、シャアではなくフル・フロンタルのパロネタです。
・「〜〜俺は今!〜〜踏み出した〜〜」
ポケモンシリーズの一つ、金・銀及びハートゴールド・ソウルシルバーに登場する、あるNPCの台詞のパロディ。ポケモンシリーズは名無しキャラの台詞も有名ですよね。
・セイバー、アサシン、ランサー、キャスター、アルターエゴ、ライダー、ムーンキャンサー、アーチャー、バーサーカー、プリテンダールーラー
Fateシリーズに登場するクラスの事。これだけではなく、この流れの切っ掛けになったネプテューヌの台詞も、Fateシリーズの代名詞的な台詞の一つのパロディです。
・クラッシャー、ファンタジアでリビルド
ファンタジア・リビルド及びそれに登場するクラスの一つの事。システム的には似てる部分も多かったんですよね。逆に違う点も色々とあった訳ですが。
・「〜〜はっじまっるよ〜!」
アサルトリリィの主人公、一柳梨璃の代名詞的な台詞(アニメにおける掛け声)のパロディ。ただ、似たようなイントネーションで言うキャラ(作品)は他にもありますね。