超次元ゲイムネプテューヌ Origins Succession   作:シモツキ

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第二十一話 シスターVSシスター

 その人が、その存在が女神である事は、一目で分かった。姿形もそうだけど、同じ女神だからこそ感じるものが、その存在にはあった。

 見覚えのない、知らない女神。だけど…その女神が仲良くしようとしてる訳じゃない事だけは、間違いない。

 

「だれ、なの…?」

「今の、あんたがやったわけ!?」

 

 見上げるわたし達と、見下ろす女神。冷たい訳じゃない、けど酷く静かな瞳で女神はわたし達を見下ろし…ロムちゃんとラムちゃんが、それぞれに声を上げる。

 今の。それは、爆煙を指す言葉。わたし達を…マホちゃんを襲った、語られる説明もない一撃。そして、ラムちゃんの言葉に…女神は、頷く。

 

『……ッ!』

 

 その首肯を受けた瞬間、わたし達は全員殆ど同時に女神化。意思疎通を交わすまでもなく、わたし達は飛び上がろうとし……

 

「──彼女は、まだ生きています」

 

 わたし達を制したのは、他でもないその女神の言葉だった。マホちゃんが、まだ生きている…その言葉に、反射的にわたし達は動きを止め、警戒しながらも視線を女神から爆煙へ移す。

 全員女神とはいえ、起こったのは側にいたわたし達が無傷で退避出来る位の、決して大規模じゃない爆発。でも、普通に考えたら、爆発に巻き込まれた人が無事で済む訳がなくて…無事な訳ない、でも無事でいてほしいっていう、相反する思いを抱きながらわたしは見た。

 視線の先で、少しずつ薄れていく爆煙。けど…そこに、マホちゃんの姿はない。

 

「……っ…!」

 

 湧き上がる怒り。許せない、許すものかと、激しい感情が燃え盛る。

 けど、同時に思考の端で、冷静な疑問が浮かび上がる。今の爆発は、人一人を完全に消し去る程の規模じゃなかった筈。なら、マホちゃんの姿がないのはおかしいって。それに、あの女神の言葉とも食い違う、って。

 

「…マホちゃんを、どこにやったんですか?」

「それは、お答え出来ません」

「なら、無理矢理にでも吐かせるまでよッ!」

 

 素直に答えてくれるなんて思っていなかった。だからユニちゃんの言葉を合図にするように、わたしは…わたしもロムちゃんもラムちゃんも武器を向け、四人で一斉攻撃を掛けようとする。でも……

 

「良いんですか?彼女は無事だと言いましたが…安全を保障するとは、言っていませんよ」

『……!』

 

 また、わたし達は止められた。わたし達の反応を先読みしたような、冷静そのものな女神の言葉で。

 

「…マホは人質って訳?女神の癖に、随分と卑劣な手を使うじゃない」

「どのように思って頂いても構いません。私には、果たさなければいけない目的がありますから」

「はたさなければいけない、目的…?」

「なによ目的って!それがマホちゃんをうったのとどう関係するの!?」

 

 ユニちゃんの怒りと嫌味を込めた言葉にも、女神は動じない。果たさなければいけない目的がある…その言葉通り、女神からは覚悟めいた、揺るがない何かが感じられて…また、次の言葉を発する。

 

「…ですが、力尽くで吐かせる事自体は否定しません。少なくとも、先に武力を持ち出したのはこちらですから」

「だったら…!」

「但し、私が相手をするのは一人だけ。…女神パープルシスター、貴女だけです」

 

 それが守られないなら、マホちゃんもそれまでの事。そんな含みも持たせて、女神はわたしを見据える。

 あまりにも、一方的な主張。言葉遣いは丁寧だけど、言っている事は脅しと変わらない。

 

「あんなやつの話なんて、聞かなくていいわよネプギア!」

「うん。わたしたちも、戦う…!」

「ありがとね、二人共。…でも、そうはいかないよ。この戦いには、マホちゃんが懸かってるんだから」

「ネプギア、まさか向こうの話に乗る気?相手は全く信用なんて出来ない、正体不明の女神なのよ?乗るにしても、乗るフリをしてアタシ達が……」

「それは、駄目だよ」

 

 皆、わたしを止めてくれる。そんな話に乗る必要はないって。それは当たり前の事で、わたしだって立場が違えば、同じような事を言っていたかもしれない。…だけど…わたしは、首を横に振る。

 

「ここで乗るのは、下策なのかもしれない。そういう相手の裏をかく方が戦術的だっていうのも分かってる。…でも、わたしは正々堂々戦うよ。あの女神の言う通り、一対一で戦う。…わたしは女神、パープルシスターだから」

 

 わたしは正々堂々戦う。それが非合理的な判断だとしても、信用出来るような相手じゃないとしても、女神としてわたしは真っ向から立ち向かって…そして、勝つ。勝って、マホちゃんを取り戻す。

 

「…パープルシスターだから、か…そんな言われ方したら、止められないっての。アタシだってブラックシスターの名前を背負ってるんだから。…けど、万が一の時は動かせてもらうわよ?向こうは罠や伏兵を用意してるかもしれないし」

「うん、警戒はお願いね」

「むー…気を付けなさいよ、ネプギア」

「けがしたら、わたしが治してあげるから…ね?」

「二人もありがと。でも、回復を受けるのも一対一とは言えなくなるかもだし…怪我しないように、頑張るよ」

 

 無謀と思われても仕方ないわたしの意思を理解してくれた三人に頷いて、わたしは一歩前に出る。軽く地面を蹴って空に上がり…黒髪の女神と同じ高度へ。

 

「…ご理解頂けた事、感謝します」

「貴女の目的はなんですか?元々わたし達を狙っていたなら、こんな決闘まがいの勝負をしようとはしない筈。違いますか?」

「私の目的を話す事は出来ません。ただ、この場における目的であれば…貴女達から、シェアエナジーを頂く事だと言っておきます」

「…それが、貴女が勝った場合の要求ですか」

 

 言葉を返したわたしに、女神からの返答はない。それはきっと肯定という事、そう判断したわたしは構える。

 

「遠慮はいりません。どこからでもどうぞ」

「遠慮、なんて…ッ!」

 

 余裕の表れなのか、それともカウンター狙いで誘っているのか、女神は仕掛けてこない。

 だからわたしは、その言葉に乗る形で射撃。分からない以上、注意する必要はあっても手をこまねいているんじゃ状況は変わらないし、今マホちゃんが安全な状態かどうかも分からないから。慎重に戦うつもりはあるけど…無駄な時間はかけられない…!

 

(武器は…盾だけ……?)

 

 初撃は単射。上に回避する女神へ数度単射の射撃を続けて、そこからはフルオート連射へ切り替える。

 飛び回り回避する女神の武器らしいものは、右手に備える盾だけ。女神化したうずめさんと違って、それ以外の武器を持っている様子はないし、衝角っぽい部位はあるけど、女神の盾は十分な攻撃力も備えた複合兵装の様にも見えない。…だとしたら、肉弾戦が主体の女神?足技主体の女神の話なら、聞いた事はあるけど…。

 

「逃がさない…ッ!」

 

 追従する形でわたしも高度を上げ、連射を続ける。対する女神は素早く飛んでわたしの射撃から逃れ続け、躱し切れない分は盾で着実に防御していく。

 

「スピードも射撃の精度も中々のもの…反応も、悪くない…」

「このまま逃げ続けるつもりですか!?ならわたしも……」

「いいえ、少し動きを見させてもらっただけです。貴女の実力を、測る為に」

「……っ!」

 

 ただ撃つだけじゃ捉え切れない。それが分かったわたしは速度を上げ、距離を詰める事で中・長距離戦から近・中距離戦へと移行しようとし…次の瞬間、光芒がわたしに襲い掛かった。

 

「これは…!」

「次は、こちらからいかせてもらいます」

 

 咄嗟に身を翻し、捻りながら真横に飛ぶ形で回避するわたし。光芒は一瞬前までわたしがいた場所を駆け抜け…すぐさま次の光芒がわたしに迫る。

 それは女神から、ここまで回避に徹していた女神が展開した四枚の平面ユニットから放たれた攻撃。今見えているユニットは四つで、そこから次々と攻撃が来る。

 

「……っ、やぁああぁぁッ!」

 

 狙われるわたし、逆転した立場。わたしからも反撃は仕掛けるけど、回避を強いられている分、圧力のある攻撃が出来ない。だから女神には難なく躱され、状況は変わらない。

 でも、連続砲撃は見切れない程でもない。だからわたしは回避運動から急ブレーキをかけ、光芒にわたしを追い越させたところで再び接近を仕掛ける。攻撃に向かっていく形になる分、回避は一気に難しくなるけど、それを何とか乗り越え、近接戦の間合いに入る直前、最後の砲撃となった光芒を真っ向から斬り払い……M.P.B.Lを、振り抜く。

 

「そこ…ッ!」

「甘い…ッ!」

 

 正面ではなく、そこから斜め前へ一歩分踏み込み、左側面に近い位置から振るった一撃。けど、M.P.B.Lの刃が女神を捉える直前で、素早く方向転換した女神の盾に斬撃を阻まれ、一瞬わたしと女神はせめぎ合う。そしてそこから、ほぼ同時に後方へ飛ぶ。

 

「ふ……ッ!」

「は……ッ!」

 

 距離が開き切る前に、わたしも女神も無理矢理姿勢を立て直して撃つ。同時に回避行動も取る。期せずしてわたし達の動きはシンクロしたような形になり、それぞれの射撃と砲撃が相手の側を駆け抜けていく。

 そこからは、互いに撃ち合う機動戦に移行。機動力はほぼ互角で、手数は四門を備える女神の方が上。はっきり言って…強い…ッ!

 

(でも、負ける訳にはいかない…ッ!)

 

 連射、単射、照射を瞬時に切り替えて、こっちの攻撃に慣れさせないよう立ち回る。同時に少しずつ、気取られないよう時折後退も混ぜながら、今一度接近しての攻撃を狙う。

 自律浮遊する砲撃ユニット、っていうのは強力なものだけど、懐に入られた場合の対応力は、大型の銃器と同じかそれ以下。つまり、接近をすれば優位になるのはわたしの方。

 

「貰いました…!」

 

 まだ接近戦には程遠い、それでもある程度の距離まで近付いたところで、わたしは敢えて単純な回避運動を行う。すると当然、女神はわたしへ…わたしの回避先を狙う偏差砲撃を仕掛けてきて、わたしは光芒へ突っ込む形になってしまう。

 でも、それは想定通り。むしろ正確だって思う程に、女神はしっかり回避先を狙ってきていて…だからわたしは、その光芒に向けてビームを照射。エネルギー同士がぶつかり合い、閃光を伴う爆発を起こし…その爆発を潜り抜ける形で、わたしは一気に接近を仕掛ける。

 

「もらったのは、こちらの方ですッ!」

「やりますね…ですがッ!」

「な……っ!」

 

 爆発と閃光に、女神の注意は向いている筈。視覚的にも聴覚的にも、完全無視は出来ない筈。だからこそわたしは、それを隠れ蓑に接近を仕掛け……たけど、女神の反応速度はわたしが想定していた以上。わたしが近距離に踏み込む寸前に後退をかけ、同時に右腕を振ってくる。右腕を振り…盾を、投げ放つ。

 

(盾での攻撃…いや、違う…ッ!)

 

 咄嗟の行動だと思い、迫る盾を反射的に躱すわたし。でもその時点で、四つの平面ユニット全てがわたしの方を向いていて…今のが対応させる前提の攻撃だったとすぐにわたしは気付かされる。

 四基からの、一斉掃射。ほんの一瞬だけど、撃たれる前に気付けたわたしはM.P.B.Lの刀身にビームを纏い、翼を広げて真っ向から受ける。光芒を斬り裂く形で受け…何とか、凌ぐ。

 

「く、ぅ……ッ!」

 

 防御はし切れた。体勢は崩れたけど、落下する程じゃない。それに狙っていた攻撃は潰されたけど、結果的に盾を手放させる事が出来たと思えばむしろチャンスで……

 

「読みが甘いですよ、パープルシスター」

「……──っ!」

 

 そう、思った時だった。背後から感じた脅威に、本能的にわたしは振り向き…直後、浮遊ユニットの一つが砕ける。後ろから飛来した…戻ってくる形となった、女神の盾に砕かれる。

 破壊されて、やっとわたしは盾がブーメランの様に飛翔していた事に気付いた。そして、もし後一瞬、反応するのが遅れていたら…被害は浮遊ユニット一つじゃ済まなかった。

 

「仲間と共に、幾度も脅威に立ち向かい、この次元を守ってきた女神パープルシスター。…貴女の実力は、この程度ですか?」

「…余裕、そうですね」

 

 戻った盾を腕に装着し直した女神は、余裕に満ちた声で言う。それでいて、四基の平面ユニットはわたしの方を…というより、わたしのいる一点じゃなくてわたしとその周囲を狙っていて、余裕を持ちながらも油断の気配は微塵もない。

 一対一の状態に持ち込んだとはいえ、考えてみれば、この女神は一対五…マホちゃんを除いたとしても、四人の女神を同時に相手に回す形で仕掛けてきた存在。なら、弱い訳がない。四人同時に戦って勝てる…とまでは考えてなかったとしても、少なくとも一対一なら十分勝機はあると思ってなくちゃ、それだけの実力がなくちゃ、仕掛けてくる筈がない。

 

「…ふー、ぅ……」

 

 心を整える為に、一度ゆっくり息を吐く。何となく思っていた通り、そのタイミングで女神が仕掛けてくる…って事はなく、わたしの次の一手を伺うように待っている。だからわたしは、きっちりと整えて…上昇。上がりながら、威力と連射性のバランスを取ったセミオート単射を仕掛けていく。

 

「上を取る、ですか。空戦においては定石ですが……」

 

 飛来する光弾に対し、女神は冷静に対処。無駄のない、最低限の動きでわたしの射撃を躱しながら、着実に砲撃で返してくる。ローテーションの様に、一基ずつ砲撃を行う事で、わたしが近付く隙を徹底的に潰してくる。

 今女神の言った通り、空中戦で上を取る事には意味がある。上昇と降下なら後者の方が速度が乗り易いし、逆に前者は地上と平行に攻撃をするより、多くの力が必要になる。上を取れば、攻撃の面でも防御の面でも有利になるのが戦いで…でもその優位性は、機動力と反比例する。空戦仕様の量産型キラーマシンや、昔存在した戦闘機では定番且つ強力な策になるけど、機動力に長ける猛禽型のモンスターや、それこそ女神が相手だと、鋭い軌道を描いながら上昇したり、上昇や落下の力に囚われず動き回ったりする事も容易な以上、下にいるよりは有利になる、位の効果しか得られない。現に今、わたしは上方を取っているけど、全然優位になっていない。

 こうなる事は、然程優位にならない事は分かっていた。それでもわたしがこうしたのは…女神を見る為。もっと多く、もっと深く、見切る為。

 

「大した反応速度です、こうも的確に捌いてくるとは……」

「それは、お互い様…でしょう…!」

 

 光芒に背中で沿うように、すれすれで躱しながら撃った射撃は、しっかり盾で塞がれる。続けて放つ連射は滑るような飛行で躱され、逆にフルオートの射撃ごと飲み込むような照射ビームを返される。わたしが躱した先にも次々と、先回りするような攻撃が配置され…しかも女神は、微妙な距離を保ち続けている。接近戦を仕掛けるには遠い…でもこれまでのように、頑張れば接近出来そうに思える、状況的に接近戦を選びたくなる距離でわたしを誘っている。遠距離戦なら向こうの方が有利な筈なのに、距離を取るんじゃなくて、こういう戦い方をしてくるのは…きっと、分かっているから。距離を取ればわたしにも余裕が出来て、いつまでも勝負が付かなくなってしまう事も……わたしの基本スタイルは中距離から適宜動く事であって、その時々で遠近を使い分けたり組み合わせたりする事であって、お姉ちゃん達程近距離での圧倒的強さを持っている訳じゃないって事も。

 

(……やっぱり…読まれてる…)

 

 ここまでの撃ち合いや機動戦は、総合的に見ればほぼ互角。なのに、手玉に取られている…って程じゃないにしても、女神はわたしの読みを一手上回る事が何度もあるのに対して、わたしにはない。お互い初めて戦う相手で、戦いながら相手の特徴や長所短所を探っている筈なのに、わたしばかりが読まれている…そんな気がしている。

 その理由までは分からない。わたしの事を予め調べていたのかもしれないし、元から分析能力が凄く高いのかもしれないし、実はわたしが思っている以上に手を抜いていて、余裕に満ちている状態だから読めてる…なんて可能性もある。ただ、何にせよ…このままじゃ、勝てない。今はまだ、ほぼ互角だけど…その内わたしがジリ貧になる。

 

「…どうして、マホちゃんを狙ったんですか…」

「それを私が答えるとお思いですか?」

「…………」

 

 射撃に乗せるように、わたしは言う。どこへやったかを答えなかったのに、それなら答えるとでも?…そんな風に返してきた女神を、わたしは何も言わずに見据え続ける。そして数秒後…一瞬止まった攻撃と共に、女神は言う。

 

「…それが、あの時の最善だと判断したまでです」

 

 回答の直後、四門同時の攻撃が放たれる。今度こそ直撃させる…そんな意図が感じられる、シェアエナジーの砲撃が。

 迫り来る、四本の光芒。一見ただ撃っているように見える…けどその実、それぞれ微妙に違う角度を持った、計算された砲撃。下手に斬り払おうとすればどれかしらと角度が合わなくて防ぎ切れなくなるだろうし、避けても多分盾投擲の追撃がある。…でも、焦りはない。

 

(…不思議だな。最初は怒りが湧き上がって仕方がなかったのに、戦えば戦う程落ち着いてくる…。……大丈夫だよ、マホちゃん。わたしは負けないから。わたしは…勝つから…ッ!)

 

 戦いも、コミニュケーションの一つ。言葉を、作戦を、攻撃を…思いをぶつけ合う中で、相手から伝わってくるものがある。最初は抑えられそうになかった怒りばかりだった感情が今は違うのも、もしかしたら戦っている中で、女神から何か、伝わってくるものがあったからなのかもしれない。

 だけど、それは二の次。光芒が迫る中で、わたしの心に浮かんだのはマホちゃんの事で…わたしは言い切る。宣言する。──勝負は、ここからだって。

 

「…行きますッ!」

「え……?」

 

 空を、蹴る。翼を最大まで広げて、全力を込めて、一気に最高速まで加速して…わたしは、前へ。自分の周囲に展開したユニットから、角度を付けて撃つ…その形を取ったが故に生まれた、真正面の僅かな空白に向けて、突っ込む。

 悟られない為に、ギリギリまで引き付けた結果、翼や浮遊ユニットを光芒が掠める。でも、わたしは一切速度を落とす事なく光芒を超え……距離を、詰める。

 

「速い…ッ!」

 

 目を見開く女神へ向けて、単射を一発。当たるなんて思ってない、ただ防御を引き出す為だけの射撃を放ち、防御の為に動きが止まった一瞬で更に接近。女神が立て直すより早く、わたしの刃の届く距離まで踏み込み…横薙ぎ。その一太刀も女神には阻まれ…それでもまだ、わたしの攻撃は終わらない。M.P.B.Lを振るった勢いのまま、身体を捻り…左の脚を、叩き込む。

 

「まずは、一撃…!」

 

 元々体勢的に斬撃と似た位置しか狙えなかったとはいえ、本当の本命である蹴りすら女神は防御した。でも蹴りの衝撃で、女神は大きく姿勢を崩す。

 大きく後退する女神は、共に下がるユニットからまたビームを放つ。でも崩れた姿勢からの攻撃な分、狙いは甘くて、回避は容易。わたしはサイドステップの要領で避けながらM.P.B.Lの銃口を向け、追撃を掛ける。

 

「…まさか、貴女もここまで様子見をしていたとは…まだまだ本気ではなかったようですね…!」

「まだ底を見せていないのは、貴女もでしょう…ッ?」

 

 フルオート射撃と、徹底的な追走で追い立てる。上下左右に細かく動く事で狙いを付けさせないようにする。当然そんな動きをすれば、わたしも射撃精度は落ちるけど…その為のフルオート射撃。ばら撒く攻撃。緩みを一切挟まない、勢いに乗せた追撃でまたわたしは距離を詰め、そのまま突っ込む形に刺突を仕掛けた。

 だけど、届く寸前で躱される。女神は砲撃で迎え撃つのを止め、垂直跳びの様に急上昇をかける事で刺突を躱し、追い越したわたしへ上から強襲。盾の衝角を突き出し、盾とM.P.B.Lとでせめぎ合う。

 その最中の、武器越しの会話。様子見、って程手を抜いていた訳じゃないけど…フルパワーじゃなかったのは事実。相手の事が全然分からなかったからこそ、少し力を抑えていて…そしてそれは、女神も同じ。今のわたしはもう、全力だけど…女神の方は、分からない。全力全開かもしれないし、逆にまだ余力や能力を残していても、おかしくはない。

 

(──だから)

 

 近距離のまま数度打ち合い、わたしがM.P.B.Lを振り抜いて弾く。即座に放たれた盾の投擲も斬撃で弾いて、続く砲撃は急降下で避けて、近接格闘中に溜めていたシェアエナジーを用いてビームを照射。薙ぎ払いで女神を下がらせ、高度を戻す。女神が十分に下がったところで攻撃を止め、女神を…そして自分自身を見据え、力を解放。切り札を……ビヨンドフォームを、解き放つ。

 

「…その、姿は……」

「…これから見せるのは、全力の先、その向こう側の力です。──覚悟は、いいですか?」

 

 プロセッサユニットは、白と闇色が調和を取りつつ組み合わさったカラーリングに。形状も、両肩と腰の浮遊ユニットを中心に変化し…構え直す。

 女神の底は、見えていない。勝てる保証もない。…けれど、わたしは勝つ。どんなに女神の底が深くても、わたしはそれを超えて…マホちゃんを、取り戻す。

 

 

 

 

 ビヨンドフォームを解放したネプギアと、その力を感じ取り、表情を引き締める女神。宙で相対する二人の女神を、ユニ、ロム、ラムは見つめていた。

 

(…強いわね…強いし、慣れを感じる…ネプギアに対する動きも、女神との戦いにも……)

 

 攻防戦を繰り広げる中で感じ取ったネプギア同様、二人の激突を観察し続けていたユニもまた、女神の動きがとても初対面のものとは思えないと感じていた。

 

「やっちゃえ、ネプギアー!」

「がんばって、ネプギアちゃん…!」

 

 事実としてはあくまでも偶然、しかしロムとラムに応えるように、応えるようなタイミングで、ネプギアは動く。

 周囲に光を、シェアエナジーとそれだけではない光の粒子を放ちながら、ネプギアは突進。急接近からの斬撃を仕掛け、女神は躱しつつも反撃の砲撃を放つ。しかしネプギアはロールをかけつつ軌道を逸らす事で反撃を避け、同時にロールで女神と軸合わせをすると射撃で返す。

 

(この感覚…善意のシェア、だけではない…?)

 

 遠近織り交ぜ積極的な攻撃を仕掛けるネプギアに対し、女神は反撃主体で立ち回る。本気を、全力を以って勝利を掴まんとするネプギアと、ネプギアの全力、その力を見極めんとする女神、それぞれの心情を表すような動きで両者は空を疾駆する。

 ネプギアが踏み込めば女神は引き、女神が誘い込んでの反撃を仕掛ければ、ネプギアは巧みな機動でそれを躱す。M.P.B.Lは斬撃と出力を切り替えての各種射撃で、平面ユニットは四基の連携と女神の的確な配置で、それぞれの女神の意思を乗せて力を見せる。

 

「はぁあぁぁッ!」

「そう来るのなら…!」

 

 直上からの急降下、それと共に放つ連射。射撃で反撃を牽制しつつ、近距離まで攻め込んだネプギアはそのまま斬り付けるが、先の一撃と似た攻撃だった事もあり、女神は着実に躱す。しかしそれもネプギアは織り込み済みであり、躱された直後に反転すると、上から下への慣性を捩じ伏せ急上昇からもう一度斬撃。狙いを付けるよりも速い次なる攻撃に、女神は砲撃の機会を逃すも、ならばと自身も腕を振って、斬撃を盾で迎え撃つ。そうしてまた、二人の女神はせめぎ合う。

 

「この対応能力…貴女もかなりの経験を積んでいるんですね…」

「貴女こそ、力も速度もこれまで以上。確かに見た目だけのハッタリではないようですね。…しかし、その程度ですか?その程度では、ないのでしょう?」

「よく、お分かりで…ッ!」

 

 試すように女神は言い、自ら力を抜く事で押し切られる。その上で自身の正面に平面ユニットを展開し、二基で反撃を、残りの二基で避けたネプギアへの追撃を行う。

 真上に避けたネプギアの、更に上方を狙う偏差砲撃。対するネプギアは、サマーソルト…蹴り上げるような宙返りをかける事で上昇にブレーキをかけ、紙一重で光芒をやり過ごすと、回転の頂点…女神に背を向けた状態で、両肩と腰、四基の大型浮遊ユニットから遠隔操作端末を射出する。そしてネプギアが再び女神へ向き直ると共に、四方に分かれた端末は向きを変え、ビットとして女神へと飛来する。

 

「ビット…二基、いや四基……?」

「いいえ、十二基です!」

 

 高速で接近し、それぞれが別方向から砲撃するビット。その攻撃に女神は驚き、一瞬動きが止まる…が、すぐに素早く視線を走らせ、攻撃と攻撃の隙間へとその身を滑り込ませた。

 しかしそこへ、ネプギア自身がM.P.B.Lの射撃で追撃。更に四基のビットはそれぞれ二基の小型ビットを分離させ、計十二基となって射撃を防いだ女神を襲う。

 

「……っ…この数を操作しながら、自身も戦闘を継続するとは…!」

「わたしを、見くびらない事ですッ!」

 

 陣形を組み、統率の取れた精鋭が如くビットは飛ぶ。火力に長ける四基は攻撃と囮を同時にこなし、機動力に長ける八基はネプギアと四基の隙を埋めるように、或いは女神の行動を潰すように動き回る。

 その上で、ネプギアも斬り込む。ビットの操作に専念するのではなく、ビットを自在に操りながらも、ここまでと変わらない動きで女神を攻める。さしもの女神も、流石の彼女も、その猛攻の前で余裕を保つ事は出来ず、一度大きく下がる。攻防から回避に、飛行に専念する事で、ビットの包囲網から脱出を図る。

 

「逃がしません…ッ!」

 

 だが、それをただ許すネプギアではない。女神の意図に気付いたネプギアは、即座にM.P.B.Lと四基による追撃をかけ、同時に八基が女神を追う。射撃と砲撃を避ける女神を、一基一基がタイミングをずらして撃つ事により、着実に後退を遅らせる。一基ずつの、避け易い攻撃を行う事で、逆にその場での回避を誘発させる。

 そうして追い付いたネプギアは、女神の死角に回り込んで照射。決して大口径ではない、されど威力のある一撃が女神に迫り、振り向き盾を構えた女神を弾き飛ばす。そしてその一撃は布石であり、弾かれた女神の先にあったのは、全十二基による絶対の布陣。防御も回避も許さない、確実に攻撃を通す為の空間が既に出来上がっており…迷う事なく、ネプギアは発射。十二基からの光芒が女神へと迫り……

 

 

 

 

……しかし、次の瞬間ネプギアは絶句した。放った攻撃、十二の光芒の全てが…女神の平面ユニットに触れた瞬間、消滅した事で。

 

「……!?防いだ…?いや、でも…防いだにしては、攻撃の余波が……」

「…ロムちゃん、あれって……」

「うん…あのでぃすぷれい、みたいなの…似てる、かも……」

 

 ネプギアだけでなく、ユニ達もその光景に目を見開く。ユニは驚きを、続けて光景への疑念を露わにし…一方でロムとラムは、何かに気付いた、或いは感じ取ったような呟きを漏らす。

 その間、ネプギアは咄嗟にビット全てを引き戻し、ユニットに装着。驚きながらもビットの退避と充填を選んだのは、多くの戦闘経験を重ねているからこそであり…ネプギアは、もう一度撃つ。単射のシェアエナジー弾が真っ直ぐ女神に迫り…しかしそれも、平面ユニットに触れた途端にふっ…と消える。

 

「…消滅、している…?…ううん、違う…もしや、攻撃を……」

「二度目で見抜くとは、流石ですね。…えぇ、吸収させて頂きました。貴女の攻撃を…シェアエナジーを」

 

 見上げる三人よりも近く、真正面から見る形となったネプギアは、それが阻まれた訳でも、拡散させられた訳でも、ましてや相殺された訳でもない事が分かっていた。ネプギアに見えていたのは、ビームが消える…それもビームが元の状態であるシェアエナジーへと分解され、吸い込まれていくような光景であり……女神は、頷く。頷き、言い切る。

 シェアエナジーの吸収。それは、女神にとって特効となる力。アンチシェアクリスタル、ゲハバーン…嘗て相対してきた、或いは手にしてきた対シェアエナジーの力を思い出したネプギアは、これまでとは違う緊張感を覚え…しかし、焦る事はない。過去の彼女であれば、深く動揺していてもおかしくはなかったが…今の彼女には、緊張感を抱きながらも冷静さを保てるだけの胆力があった。

 

「(厄介な能力…けど、こんな対女神で有効に働く力をここまで使わなかったのには、何かしら理由がある筈…)ならッ!」

 

 エネルギーの充填を行ったネプギアは、再度ビットを射出。同時にもう一度ビームを撃ち込み、小型を分離させつつ四基を女神へ突撃させる。

 当然の様に、飛来するシェアエナジービームを吸収する女神。続けて接近する四基の進路上へ展開するように平面ユニットを動かすが、次の瞬間女神は退避。彼女がいなくなった空間を、四基のビットは駆け抜けていく。…先端の砲口から、ビームの刃を発振させた四基のビットが。

 

「即座に砲撃からビームソードに切り替える…やはり流石ですね、正解です。しかし……」

 

 冷静に今ある状況から打てる手、打開策を考えられる冷静さと、迷わずそれを実行出来る精神力。その両方に称賛の念を抱いた女神は、ネプギアへと賛辞の言葉を送る…が、だからといって降参をする気などは微塵もない。追撃すべく包囲した八基に対し、射線上へ平面ユニットを動かす事によって攻撃を躊躇わせ、その先に包囲網から抜けると、上昇の後ユニットで再び攻撃を仕掛ける。ネプギアと大型四基、それぞれに二基ずつ向ける事で攻撃と牽制を同時に行い、砲撃との挟み撃ちを狙って盾をネプギアの回避先へ。

 

「この、位置取りは……!」

「そういう、事です!」

 

 速度を落とさず、そのまま進んだネプギアは、M.P.B.Lを振るって盾を弾く。それにより、挟撃を凌いだネプギアだったが、次にネプギアが選んだのは直感的防御。直後、ネプギアへ女神の飛び蹴りが飛来し、互いが互いを弾き返す。双方姿勢は崩れていたが、引き戻していた大型が先に攻撃を仕掛け、女神はまた退避していく。退避しつつも盾を回収し、射撃と砲撃を行うに行えないネプギアを攻め立てる。

 

「どうやら、小型のビットはビームソードを展開出来ないようですね…!」

「わざと使わず、温存しているだけかもしれませんよッ?」

「だとしても、その強化された姿を以ってしても、私を圧倒出来る程ではない事は事実です…ッ!」

 

 盾、四基のユニット、更には打撃も駆使して女神は果敢に攻める。女神の言う通り、ビームによる砲撃以外に単独での攻撃能力を持たない八基では思うように攻められず、ビームソードを展開可能な四基も近距離に攻め込まれると操作ミスが自爆に直結する為に動かし辛く、ネプギアはビットの運用を封殺される。吸収されるといってもユニットの隙間を狙い撃てばいいだけであり、加えて近接戦においては得物の差でネプギアの方が有利となる為、女神は綱渡りのような戦い方となっていたが…それをするだけの、価値はあった。相手が見せた、真の力…それを一部であろうとも封殺し、食い下がる事が出来たのなら、自身にとっては大きな自信に、相手にとっては大きなプレッシャーになるのだから。

 そして、ビットを封殺してしまえば、女神の読みが…ネプギアの感じていた、一手先を読めるアドバンテージが再び活きる。ビヨンドフォームとなった事で向上した基礎能力に対しても、その読みで女神は喰らい付く。最早その動きに余裕はなくとも…女神の動きに、その心に、気圧される様子は微塵もなかった。

 

「…圧倒出来る程ではない、ですか……」

「少なくともこの戦闘、貴女にとっては短期決戦を狙う理由はあっても、長期戦に持ち込む理由はない筈です。それに……」

「それに?」

「女神パープルシスター。貴女の強さは、仲間と共にある事…力を合わせる事でこそ、真価を発揮するもの…そう、でしょう?」

 

 近距離で打ち合いながら、二人は幾度目かの言葉を交わす。女神の言葉を繰り返すネプギアに対し、女神は推測を、思いをぶつけていく。

 戦闘速度は落ちていた。互いに円軌道で飛びながら、相手の出方を伺うようにして仕掛けていた。されどそれは、疲労による継戦能力低下が招いたものではない。今は緩急における緩の状態…既にお互い、闇雲に仕掛けても埒があかないと分かっているからこそ、揺さ振りをかけるように敢えて速度を落としていた。

 

「…本当に、貴女はわたしをよく知っているんですね」

「えぇ、知っています。貴女の強みも、弱みも、好き嫌いも。そして何より…貴女がどれだけ、強い女神であるのかも」

「だから、わたしに一対一の勝負を求めた訳ですか。…なら、わたしにも貴女を知らせて下さい。貴女の、名前を」

 

 バタフライツイストを思わせる軌道で勢いを付け、盾を突き出す女神と、上昇の力を乗せた斬り上げで迎撃を図るネプギア。双方腕を伸ばした状態でぶつかり、押し合いになった事で腕は曲がり、お互いの顔が近付き…問われていたネプギアは、静かに返す。その返しを女神は肯定し、淡々と…それでいてどこか、ただの敵対者に向けるそれとは違う感情の響きを込めて言葉を重ねる。

 押し切る事も、引く事もなく、静かにせめぎ合う銃剣と盾。重ねられた言葉でも、更に自身を肯定されたネプギアは、女神を見据えたままに問い…女神は、言う。

 

「…グレイシスター。それが、私の名前です」

 

 強い意思の籠った瞳。その瞳で女神は…グレイシスターは答え、離れた。そう見せかけて、サマーソルトキックを放った。蹴りはグレイシスターが引いた事で、つんのめる形となったネプギアの顎を捉える軌道を描き…しかしグレイシスターの足先が触れる直前、ネプギアの両肩部浮遊ユニットより紫の光が、粒子が逆噴射が如く噴出された事で、紙一重ながらも当たらずに空振る。

 そのまま離れていくグレイシスターを、ネプギアは追わない。その代わりとばかりに、M.P.B.Lの照射と大型四基の突撃を組み合わせて仕掛け…グレイシスターは、躱す。蝶が舞うように、木の葉が風に吹かれるように、次々襲う攻撃を躱し切り…四門同時に、斉射。

 

「私はグレイシスター!果たすべき目的の為、私を貫く為に、今は貴女を…ネプギアを、倒させてもらいますッ!」

 

 これまでに放ってきたものよりも一際強い輝きを持つ、シェアエナジーの光芒。四点から照射される、決意の込められた女神の一撃。それと共に空に響く、女神グレイシスターの声。

 迫る光芒を前に、ネプギアは回避行動を取らなかった。射撃で迎撃する事も、防御する素振りも見せなかった。これはどうにもならないと観念したのか、それとも何か策があるのか。グレイシスターも、ユニも、ロムも、ラムも、その理由は分からない。ただ、このまま光が伸びればネプギアに直撃し、深いダメージとなる事は必至。何しなければ、それは避ける事の出来ない必然。そして最後の瞬間まで、ネプギアは一切の動きを見せる事なく……

 

 

 

 

 

 

──だが、光芒は当たらない。一条足りとも、ネプギアに届く事はない。放たれ、迫った四つの光……その全てが、ネプギアを避けるように直前で屈折した事で。

 

『……──ッ!?ビームが…曲がる…!?』

 

 それはまるで、先のグレイシスターに対する意趣返し。ビットによる一斉攻撃を、グレイシスターが平面ユニットを用いた吸収で防いだように、グレイシスターの一斉砲撃は全て曲がって明後日の方向に消えていった。

 光芒が、ビームが曲がる。それは突如消える以上に本来あり得ない事であり、ユニとグレイシスターが驚愕の声を上げたのはほぼ同時。まさか、そんな馬鹿な…と直後にグレイシスターはもう一撃放つも、やはりそれはネプギアに届かず、彼女の周囲で曲がり逸れる。

 

 

「…ビームは直進するもの。減衰や拡散をする事はあっても、曲がる事はないもの。えぇ、常識ですね。当たり前の事です。……それが、通常の空間で放たれる、通常のビームであるのなら」

「……っ、その粒子…まさか、ただのシェアエナジーでは…ない…?」

 

 信じ難い光景を前に、驚愕による動揺と、無策に砲撃を続けようとも同じ結果になるだけだという判断から、攻撃の手を止めるグレイシスター。そんな彼女に向けて、ネプギアは彼女らしく丁寧な…それでいて、彼女らしからぬ不遜さも孕ませた声音で、言い放っていく。

 

「確かに、貴女はわたしをよく知っているようです。わたしの事を手に取るように、常識の様に理解している事は、よく分かりました。そして、貴女が強い力を持っている事も」

「…パープル、シスター……」

「ですがどうやら、何もかも知っている訳ではないようですね。ビヨンドフォームの事もそうですし…何より一つ、貴女はわたしへ対して大きな思い違いをしています」

「思い、違い…?それは……」

「わたしの真価は皆と共に戦う中で発揮される…それは、否定しません。けれど、それを一対一で戦う事の理由としたのなら、一対一ならわたしの力は一歩劣った状態になると思っているのなら……まずは、理解してもらいましょうか」

 

 翼を広げる。四基の大型浮遊ユニットを四方に向け、紫の粒子を放出する。引き戻した十二基のビットを、自身の周囲に漂わせる。そしてその状態で、上昇しながら…粒子を空に散布しながら、ネプギアはグレイシスターを見据える。普段のネプギアやパープルシスターを知っているのなら、知っていればいる程に、緊迫感を抱かせる雰囲気を放ちながら、ネプギアは天空へと舞い上がり……言った。

 

「言った筈ですよ、グレイシスターさん。覚悟はいいですか、と。──わたしのNG粒子に、貴女の常識は通用しません」

 

 プロセッサユニットの一部であり、シェアエナジーで形作られた両翼だけでなく、放出される紫の粒子…NG粒子もまた、二対四枚の翼が如き形相を見せながら、ネプギアは言い切る。

 その姿は正に、天から舞い降りし神。そして広がっていくNG粒子は…シェアエナジー、魔力、NP粒子の融合により生まれた紫の光は、神の威光が如く神々しく…尚且つ異質さを抱かせる輝きを、彼女の存在する空に放っていた。




今回のパロディ解説

・「やっちゃえ、ネプギアー!」
Fateシリーズに登場するキャラの一人、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンの台詞の一つのパロディ。…分かり辛いです、ネプギーアーの方が良かったかもです。

・『……──ッ!?ビームが…曲がる…!?』
ガンダムSEEDシリーズの主人公の一人、キラ・ヤマトの台詞の一つのパロディ。何年も前からユニに言わせたかったこのネタを、遂に出す事が出来ました…!

・「〜〜わたしのNG粒子に、貴女の常識は通用しません」
とあるシリーズに登場するキャラの一人、垣根帝督の代名詞的な台詞のパロディ。未元物質(ダークマター)ならぬ変幻物質(パープルマター)…なんて考えたりしてます。
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