ハドラーちゃんの強くてニューゲーム   作:モッチー7

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第49話

最後までバーンに届かなかったホーモンの攻撃を。にも拘らずバーンに殺して貰えなかったホーモンの抵抗出来ぬ変わり果てた姿を。

それらを見届けたクレオが、消滅させるべき怨敵であるバーンに殺意満載の視線を向ける。

「出て来て……」

すると、1匹の白馬と1匹のスライムが現れた。

「い……今頃スライム!?」

ガンガディアは何で魔物の中でも貧弱なスライムを選んだのかが理解出来なかったが、幸い、このスライムはただのスライムではなかった。

 

スラツン

 

他称神級賢者ダイカンが育てたスライム。

 

HP:600

MP:200

攻撃:400

防御:286

速度:224

 

松風

 

クレオがテイムしたレジェンドホース。

 

HP:686

MP:20

攻撃:575

防御:566

速度:415

 

それに対し、バーンは鼻で笑った。

「今更……その様な者達を余にぶつけて、何になると言うのだ?」

対するクレオは自信満々に答える。

「天地魔闘の構えの名声に、泥を塗る。ホーモンの分も含めて」

「泥を塗る?この余にか?」

バーンは堪え切れずに笑ってしまった。

「……ふ、ふふっ!うふふっ!はは……あははは……あははははは!」

その笑い声が、とある事情で表情と抑揚を捨てた筈のクレオの顔に怒りを宿らせる。

松風(レジェンドホース)に跨りスラツン(スライム)を頭に乗せたクレオは、倒すべき怨敵バーンに殺意の視線を送る。

それを観ていたガンガディアは疑問に思う。

(天地魔闘の構えに泥を塗る……それはつまり、クレオが天地魔闘の構えを破る事を意味する。だが、どうやって?)

ガンガディアが考え込んでいる間に、バーンは既に天地魔闘の構えをとっていた。

「来い。神化の実を食いし、騙神の娘よ」

バーンの言葉に、バーンの本音が透けて見える気がしたクレオ。

「……貴方は、神が御嫌いですか?」

「だが!全てを凌駕する力を持ち、新たな世界を創造しうる叡智を備えた者が再び世に現れたのなら……それはもう、『神』と呼んで差し支えなかろう?」

「人は……人はそれを『傲慢』と呼ぶ」

「ならば来い。余が『神』か『傲慢』か……その目で確かめると良い」

 

バーンの挑発を受けてバーンに特攻するしかなくなってしまったクレオ。

そんな彼女が握り締めている武器……『ルビスの剣』と『ビリオンダガー』を見て、ガンガディアはクレオの作戦が大分見えてきた。

(大魔王バーンの天地魔闘の構えの特徴は、『天』すなわち攻撃(カラミティエンド)、『地』すなわち防御(フェニックスウイング)、『魔』すなわち魔力を用いた行動(カイザーフェニックス)、この三行動を刹那の拍子(75分の1秒)の間に全て行う返し(カウンター)の必殺奥義。つまり、ホーモンの様なただガムシャラに高威力な攻撃を単発で撃っても、いとも簡単に対応されてしまう……ん?単発!?)

そうこうしている内に、クレオを乗せた松風(レジェンドホース)がバーンに向かって駆ける。

「松風!」

松風(レジェンドホース)の瞳が怪しく光った!

なんと、バーンは深い睡魔に襲われた!

(あれ程の優秀なステータスをたたき出すバーンがこの程度で熟睡するとは思えない……だが、これで少しはバーンの動きが遅くなる!)

スラツン(スライム)の口の動きを見て、ガンガディアの予想は確信に変わる。

(そうか!クレオが導き出した天地魔闘の構え対策は手数!刹那の拍子(75分の1秒)の間に繰り出す三行動だけでは対応出来ない程の数の攻撃を一斉に撃ち、バーンがてんてこ舞いになっているその隙に一気に圧し切る!?ならば!)

自分がすべき事を察したガンガディアの行動は早かった。

「右手に火竜変化呪文(ドラゴラム)!左手に火竜変化呪文(ドラゴラム)!合体!」

そんなガンガディアの行動に驚くハドラー。

「クレオ!ガンガディア!」

だが、ガンガディアは構わず頭部が2つあるグレイトドラゴンへと姿を変えた。

クレオは一瞬だけ振り返り、この嬉しい誤算にクスッと笑った。

(ガンガディアさん……貴方は本当に賢いです。本当にトロルなのか疑う程に)

そして、クレオはガンガディアと共に天地魔闘の構え攻略の最後の仕上げに取り掛かる。

先ずはルビスの剣を使ってギガデインを放ち、バーンのフェニックスウイングをそちらに集中させる。

その数秒後にスラツン(スライム)がベギラゴンを放つと同時に松風(レジェンドホース)が白く輝く光の炎を広範囲に吐いた。

それに釣られる様に双頭のグレイトドラゴンとなったガンガディアが2つの口から灼熱の炎を吐いた。

(わざと発射タイミングをずらして1度に全てをフェニックスウイングで……と言う事態を未然に防ぐ!)

更に、どうあがいても最初に当たる直接攻撃はビリオンダガーによる斬撃。

それをカイザーフェニックスで押し返しても、ルビスの剣による斬撃、スラツン(スライム)の体当たり、松風(レジェンドホース)の蹴り、ガンガディアの爪が追撃する。

ビリオンダガーによる斬撃以外の4つ直接攻撃の内の幾つかをカイザーフェニックスで押し返したとしても、バーンは必ずダメージを背負う。

(さあ……どう出る!?大魔王バーン!)

 

対するバーンは質より量を選んだクレオを嘲笑う。

「やはり貴様は、『神』に非ず」

すると、突然バーンの前に光の障壁が現れた。

「マホカンタか!?」

クレオのギガデインを跳ね返され、スラツン(スライム)のベギラゴンを相殺してしまう。

(く!……だが、まだ松風(レジェンドホース)の光の炎とガンガディアの―――)

しかし、バーンのフェニックスウイングが松風(レジェンドホース)とガンガディアの炎を弾き、その炎でガンガディアを焼く。

「ぐおぉーーーーー!?」

「ガンガディア!」

「ガンガディア!?」

ハドラーちゃんとクレオの悲痛な悲鳴が上がる中、バーンが待ってましたとばかりにカラミティエンドを振り下ろして松風(レジェンドホース)の顔を斬り裂く。

「ヒヒィーン!?」

耐え切れなくなった松風(レジェンドホース)は、ホーモン同様『瞳』に変えられてしまった。

「ぐっ!?」

松風(レジェンドホース)とガンガディアが早々に敗北して『瞳』になってしまう想定外に驚くクレオ。

そして、謀らずも宙に投げ出される形になってしまったクレオとスラツン(スライム)をカイザーフェニックスが襲う。

「ぎゃあーーーーー!?」

 

結局、天地魔闘の構えを構成する技をなに1つ相殺出来なかったクレオ。

しかもスラツン(スライム)と松風(レジェンドホース)とガンガディアが『瞳』に変えられた戦況では、先程の連携攻撃はもう使えない。

クレオに残された手は、『誰よりも先に行動出来る』と言うビリオンダガーの特性に賭けるだけであった。

「うわあぁーーーーー!」

クレオはどうにかバーンの右脇腹にビリオンダガーを突き刺す事に成功したが、続け様のルビスの剣による袈裟斬りはあっけなく弾き飛ばされた。

「……もう終わりか?やはり貴様の『神化』は……偽りの様だな?」

クレオは再びカイザーフェニックスを受けて吹っ飛んでしまう。

「そんな貴様には、死より深い敗北を与える」

最早立ち上がる事すら出来ないクレオは、悔しそうに右手をバーンに向けて伸ばすが、無情にもバーンには届かない。

「うう……くく……うう……ご、めん……ホー……モン……」

こうして、クレオはバーンに大したダメージを負わせる事が出来ずに『瞳』に変えられてしまった。

 

クレオとガンガディアの敗北を見届けたハドラーちゃんが静かに深く怒る。

「……待たせた様だな?……バーン」

「次は貴様か?ハドラー」

「ああ……俺の治癒は完了した……今度は俺が、お前を倒す番だ―――」

だが、ガッルールが恐怖に震えながらハドラーちゃんに向かって片膝をついた。

「お待ちください!ハドラー様!」

「ガッルール!?お前、まさか!?」

「もう1度……もう1度だけチャンスをください!」

涙目で懇願するガッルールの姿を見て、ハドラーちゃんは前回の地底魔城決戦の際にガンガディアに言われた事を思い出した。

「ハドラー様、お叱りを覚悟で進言します。この場を決して動かぬようにしてください」

この時のハドラーは凍れる時間(とき)の秘宝の影響で精神力が弱体化(ハドラーちゃん曰く、『黒歴史である魔軍司令時代に片足を突っ込んだ状態』)していた為、ガンガディアの進言に甘んじて玉座の間に閉じ籠ってしまった。

そんな精神力の弱体化をアバンに見透かされ、

「彼らの必死の戦いを蔑むなど……邪悪な魔王としての器すら疑わしい!それがお前の本心だと言うなら……ハドラー!既に敗れたり!」

結局、ハドラーはアバンに負けた……

バルトスの言う通り、あの時のハドラーはハドラーらしさを失った抜け殻だった……

だからこそ……

「私は貴方様のために命をかけて戦います!」

と涙目で語るガッルールの背中に隠れる気になれないハドラーちゃん。

「……無駄だ。貴様如きではバーンは倒せん」

「ハドラー様!?」

「どけ!時間の無駄だ!」

「お待ちくださいハドラー様!今1度だけチャンスを!」

このまま、ガッルールの出番が無いままハドラーちゃんと大魔王バーンとの一騎打ちが始まってしまうかと思いきや、

「相変わらずの脳筋だな……魔王様」

マトリフの突然に台詞に、ハドラーちゃんは後ろを振り返ってしまった。

そこには、ミストを倒してハドラーちゃんの許に帰り着いたフレイザード2号とアバン一行とバランがいた。

「そいつらは出来るだけお前さんを大魔王バーンの所に向かわせる役割を果たそうとしたんだ。アンタの傷が浅い内にな」

「!?」

(そんな事は解っている!だが、そいつらが死してなおのうのうと生きている事が、果たして本当のハドラーらしさと言えるのか!?)

そんなハドラーちゃんの心の葛藤を察したアバンが進言する。

「信じるに値しない者には、仲間も身を投げ出したりはしませんよ」

その言葉が、ハドラーちゃんに冷や汗をかかせ、ハドラーちゃんにガッルールへの命令を下す勇気を奮い立たせた。

「ガッルールよ。そこまで言うのであれば、やって魅せい」

それに対し、ガッルールは満面の笑みで答えた。

「!?……はい!喜んで!」

(これが……バルトス(おまえ)の言う魔軍司令時代のハドラー(かつてのおれ)とアバンの差か?)




『天地魔闘の構え』攻略法を試す展開第2弾。

今回は合尾クレオパトラ(通称『クレオ』)が数の暴力で天地魔闘の構えを押し返すと言う戦術を披露し、ガンガディアがそれに同調・便乗した訳ですが……
やはり駄目でした……

質もダメ。
量もダメ。

マトリフとアバンの説得のお陰で、どうにかハドラーちゃんがガッルールより先に天地魔闘の構えと戦う事態は避けられましたが、果たしてガッルールの天地魔闘の構え対策は?
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