五世紀に渡るゴールデンバウム朝銀河帝国の歴史は、宮廷である新無憂宮を中心に、善悪美醜、様々な物語で彩られている。

これはその一片の物語。
崩御した征服帝コルネリアス一世の跡を継いだ、マンフレート一世の時代。
皇帝と皇后の、珍妙な物語である。

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遊冒帝と紫憂后

 五世紀に渡るゴールデンバウム朝銀河帝国の歴史は、宮廷である新無憂宮(ノイエ・サンスーシ)を中心に、善悪美醜、様々な物語によって彩られている。これはそれを構成した一片の物語である。

 

 この物語が生まれた原因は、第二四代皇帝コルネリアス一世が大親征を実施したことであった。後に“征服帝”と称されるコルネリアス一世は、先帝である“晴眼帝”マクシミリアン・ヨーゼフ二世の方針を受け継ぎ、内政面においては十分に成功していた彼だが、それだけでは満足しなかった。

 

 彼は“全人類の支配者にして全宇宙の統治者”という銀河帝国皇帝の称号を限りなく現実に近づけることを熱望し、従って帝国の権威及ばぬ地であるサジタリウス腕に広がる自由惑星同盟を帝国の旗の下におさめるべく、自身に臣従させようと交渉を望み、それが上手くいかないとなると自ら帝国軍を率いて同盟領へと攻め込んだ。

 

 この親征は初期から中期にかけてはまさに大成功とよべるほど順調に進み、同盟全土に銀河帝国の双頭鷲の旗を翻らせるのも時間の問題かと思われた。しかし、そこで想定外の事態が発生した。皇帝が長期にわたって帝国本土を留守にした為に、それを好機と見た宮廷内で皇帝に不満を抱く廷臣たちが結託し、宮廷クーデターを起こしたのである。

 

 無念さを滲ませながらも同盟の完全併呑を諦めることを即断したコルネリアス一世は間違っていなかったことだろう。ひとまず橋頭堡となりうるイゼルローン回廊の出口付近一帯の帝国領土化だけで良しと考え、それ以外の占領地を放棄して自分は本国に戻ることを決断したのである。

 

 もっとも、皇帝がいかに正しい判断をしたとしても、現実がその判断についてくるかは別の問題である。あともう一歩で同盟首都というところまで帝国軍は順調に進軍を続けていたのであり、突然の撤退指示に帝国軍は大きく混乱し、反撃の機会を辛抱強く待っていた同盟軍はその隙を見逃さず、帝国軍は大損害を受け、帝国全軍がオリオン腕に撤退せざるを得ない状況にまで追い込まれたのであった。

 

 このような結末であり、結果から言えばコルネリアス一世の野望は失敗に終わったわけであるのだが、ダゴン会戦の時のように同盟軍が勝利の余勢をかって帝国領に逆侵攻するようなことはできず、しばらくは戦後復興に集中するより他ないほどに戦災で荒廃していた。

 

 その間にコルネリアス一世は、宮廷クーデターを起こした不平貴族・官僚たちを粛清し、皇帝の権威を再確立して国内の再整備を行い、同盟が戦災から立ち直る頃には帝国軍の再建も終わらせ、帝国軍が雪辱戦を行うべく断続的に同盟領を攻撃できる程度には帝国の混乱を収拾させていたので、敗軍帝の時のような同盟軍によって帝国領土が荒らされるなどということは起こさせなかった。

 

 その後も同盟を併呑して人類社会を統一したいという気持ちはあったが、流石に皇帝たる自分が長期にわたって帝都オーディンから離れるのはリスクが高すぎるということは苦い教訓とともに理解しており、その後は内政に注力した。治世初期の大親征の失敗という事実があっても、コルネリアス一世が名君と後世から評されるのはこの辺りが所以なのかもしれない。

 

 そうして長い時間をかけて内治を固めなおした頃には、もうコルネリアス一世は老人といってよい年齢になっており、“自分の次の皇帝の時代”についても深く考えるようになっていた。思うに、一番心配なことは、自分と正妻との間にできた皇太子マンフレートのことであるように思われた。別に知性や身体能力に問題があるというわけではない。マンフレートには青年時代から帝国軍に所属させており、現在は近衛兵総監の地位にあって、人望も能力もまずまずである。ただ……少々無責任な放蕩息子であったのだ。

 

 マンフレートは丈夫な肉体を持つ暴れん坊だが、陽気で妙な愛嬌持ちなせいで人を惹きつける一方で、かなりの気分屋で怠け癖があり「気が乗らない」という理由で公務をサボっては友人たちと北苑の狩場で鹿狩に興じたりしており、周囲の者は皇帝の息子だからとだいたいのことは大目に見て追従していた。

 

 しかも自分や重臣たちは大親征の失敗で抱えてしまった帝国の負債返済に忙殺されていたために、マンフレートと面と向き合い、時間をかけて叱ってやるということもあまりできず、どうにも政治的能力に多少の不安があったし、なによりも次期君主たる自覚と責任感が薄すぎるまま大人になってしまったように思われたのだ。

 

 コルネリアス一世は先帝マクシミリアン・ヨーゼフ二世のように女性関係が潔癖ではなかったので、正妻以外に幾人かの愛妾がいて、その間に庶子を儲けており、その庶子の中で優秀な子を次期皇帝として冊立するという手法も考えないではなかったが、庶子たちはマンフレートよりは責任感はあるかもしれないが、庶子同士となるとどんぐりの背比べで、かつ互いをライバル視していたので、だれか一人を選んで後継者とするというのはどう考えても宮廷にいらぬ混乱を招きそうであった。

 

 いろいろ考えた末に、コルネリアス一世は決断した。マンフレートは頭が良くて面倒見が良い女と結婚させよう、と。ややトンチキな考えなようでいて、帝国においては妥当な処方箋ではあった。身分を問わず、銀河帝国は男尊女卑な気風があり、女性は家庭的な存在であるべきであり、公的な仕事をさせるより家庭内の仕事をするべきであると認識されている。

 

 が、領地を持つような貴族家においては一言に『家庭内のこと』と言っても、その家の範囲内に領地経営などが含まれてしまうのであり、夫が軍人なり官僚なりをしているから妻が事実上の領主となって領地を切り盛りしているなんてことは帝国貴族社会では珍しくもないことであった。それが皇帝の正室、皇后ともなれば、夫を補助する名目で持って半ば公然と国政に参加することも女性側の力量次第で不可能ではないのだ。

 

 そうした考えからコルネリアス一世は息子の嫁探しを始め、秘密裏に利発な才女を持つ貴族家の令嬢をリストアップして、能力や性格、家柄などで候補を絞っていき、これはと思った令嬢とマンフレートを結婚させた。その令嬢はよく息子を補佐し、目論見通りにいっているように思える結果も出ていたので、これなら安心だと崩御するときもコルネリアス一世は思っていたことだろう。

 

 ――そう、それなりにまともに回っていたのだ。マンフレートが皇帝に即位してからしばらくの間は。

 

 

 

 

 

 

 新無憂宮の一室で、書類のサインをしていたやや青みの強い紫紺の髪が特徴的な令嬢は、それがひと段落つくと、心底疲れたようにため息をついた。第二五代皇帝マンフレート一世の皇后、メヒティルト・フォン・ゴールデンバウムである。

 

「どうしてこうなったのかしら……」

 

 物憂げに彼女はそう呟いた。部屋には彼女一人である。別に誰かに聞いてほしかったわけではない。思わず溢れた独り言である。しかし、最近の彼女の悩みそのものであった。

 

 彼女が先程までさばいていた書類は銀河帝国の国政に関する書類であった。自分がそうしたものに関わることについては、おかしなことではない。もとより息子の政治的補佐役たることを先帝から望まれて、自分はマンフレートと結婚して帝室の一員となったのであるし、まだ皇太子妃に過ぎない頃より夫をよく政治的な方面から助けてきた自信がある。

 

 おかしいのは、どうして本来神聖にして不可侵なる銀河帝国皇帝以外の何人も使うことが許されないはずの玉璽を手に取り、書類に押しているのであろうか、という点であった。

 

 銀河帝国の国法上において、帝国の統治者は皇帝ただ一人である。他の人類はすべて臣下であるか、さもなくば支配すべき臣民である。共同統治者などという概念が存在する余地はなく、よって玉璽を使う正統性があるのは皇帝ただ一人である。本来皇后といえども勝手に使えば大逆罪に問われかねない代物であるというのに。

 

 夫のマンフレートとは、悪くない関係を築けている……つもりだ。断言はできないし、近頃疑わしく思う機会が増え続けているような気さえするが、それでも一定の信頼は勝ち取ってきた、はずだ。

 

 メヒティルトは執務机の引き出しをあけて、二枚の紙を取り出して机の上に並べて眺め、そして思った。どうしてこうなった。

 

 まわりに誰もいないことを確認して、メヒティルトは頭を抱えて弱々しく呪詛を漏らし始めた。皇太子時代からマンフレートは問題の多い人物であり、仲の良い近衛将校のお友達と公務をそっちのけで遊びだすのはよくあることで、自分はそのフォローをさせられていたが、マンフレートが皇帝に即位してから、これがより一層酷くなったのである。

 

 皇帝に即位したマンフレートは近衛兵総監の後任としてお友達の一人であるラムスドルフをつけて近衛兵への影響力を維持し、頻繁に新無憂宮から脱走しては、一介の帝都の住民であるかのように装ってあちこちで豪遊されるようになられたのである。

 

 銀河帝国は絶対君主制の国である。皇帝の裁可がなくては国家の大方針を正式に決めることができず、万事の国事が滞る。心ある廷臣たちがもっと玉体としての重さを考えて欲しいとその旨を進言したところ、

 

「やかましい! そんなことをどうして俺が配慮してやらねばならん! この宇宙で最強の権力者は俺だ! 俺が今日は遊ぶと言ったら、遊んでいいのだ! 違うか?!」

 

 などという放言をして聞く耳を持たない。たまりかねた廷臣たちとメヒティルトはこうなったら力づくで皇帝を宮廷に留め置こうとした。近衛兵総監ラムスドルフもマンフレート一世の味方であったので、近衛兵に対抗できるとしたらそれは皇宮警察であると考え、メヒティルトは皇宮警察本部長になにかあったら自分が陛下を宥めるから陛下を新無憂宮からお出しするな。宮廷の外縁部で見かけたら不敬であろうとも拘束しろと命じた。

 

 だが、マンフレート一世はそんな皇宮警察の警戒網をやすやすと飛び越えていった。いや、飛び越えたというより潜り込んで抜け出していた。皇太子時代、近衛兵総監の地位にあった彼は、その職権を利用して“より宮廷警備を盤石ならしめる為”と称して、歴代皇帝が政争や暗殺を恐れて密かに建造させた地下の秘密通路の数々の調査を冒険感覚でやっていたのである。

 

 その為、マンフレート一世は秘密通路の構造や仕掛けのかなりの部分を熟知しており、友達である近衛将校らの協力もあってその通路を活用して誰からも見咎められることなく、地下から自由に新無憂宮を出入りすることができたのである。

 

 あまりにも自由すぎる皇帝の振る舞いに、各々の宮廷派閥が皇族を抱えて皇帝交代を目論んでいると思わしき動きを見せ始めたのでメヒティルトは絶望した。もし皇帝廃位からの新皇帝誕生などということになれば、皇后である自分の未来もどうなるかわかったものではない、と。

 

 そんな不安に駆られたメヒティルトは閨でマンフレート一世と二人きりになった際、泣き崩れながら皇帝にまともに公務してください、怠けないでくださいと嘆願した。これが意外にも効果的であったらしく、マンフレート一世は妻を慰め、しばらくはメヒティルトを伴って、ちゃんと形式的な公務をするようになったのである。

 

 そして一週間ほど前、再びマンフレート一世陛下は新無憂宮から忽然と姿を消した。二枚の書き置きを妻に残して。その内容は、以下のようなものであった。

 

『愛しのメヒティルトへ。

お前に言われて一年ほどまともに公務を頑張ってみたが「よきにはからえ」「皇后の判断を尊重する」という趣旨の言葉を繰り返すだけで、俺がいる必要性ないじゃないかと思ったから、全部お前に任す。

それでまた廷臣どもが「皇后に何の権限があって」とかガタガタ煩いようなら、添付している紙を見せて黙らせろ。

というわけで、俺はちょっと友人たちと遠方の星へ旅行に行ってくる。一ヶ月くらいで帰ってくる予定だから、その後のことはその時話し合おう。じゃ、頑張ってくれ。

 

追伸

ちゃんと旅行土産も買ってくるから楽しみしておいてくれ』

 

『都合により我は暫時帝都を留守にする。

我が帝都に帰還するまで皇帝としての全権限を我が妃メヒティルトに委任する。

メヒティルトを皇帝マンフレート一世の言葉と思い、臣下一同これを補佐し、留守中の国事を遂行されたし。

 

銀河帝国皇帝マンフレート一世』

 

 どうしてこうなった。本当にどうしてこんなことになったのだ。この理不尽な状況を齎した大神オーディンをお恨み申し上げる呪詛の言葉を何百と吐き散らしていると部屋にコンコンとノック音が響いたので、気をとりなおして姿勢をただし「お入りなさい」と告げると、女官が入ってきた

 

「内務省より陛下の居場所がわかったとのことで。こちらがその報告書です」

「! 読ませてちょうだい」

 

 女官が差し出した紙を開き、報告内容を読み終えると、メヒティルトは脱力したように呟いた

 

「なにしてるの、あの人……」

 

 哀れな皇后陛下の様子に、女官は心から同情したが、努めて態度には出さなかった。

 

 

 

 

 

 一方その頃、首都星オーディンから超光速航行で一週間ほどの距離にある辺境惑星ミルベリアの知事を務めているダミアンは、おおよそ常識というものが通じない現在の状況をどのように飲み込めばいいのかと困っていた。

 

 午前中は、なんら問題もない平穏そのものな日常であるはずだった。対して豊かでもない辺境の星の退屈で代わり映えのない業務。それが一変したのは、宇宙港から届いた報告だった。星系外縁部に数十隻規模の武装船の船団の姿を管制所がとらえたというのだ。

 

 しかもその船団を構成する宇宙船のいくつかは近辺を荒らしていることで有名なヴァリヤーグ宇宙海賊団であることを示す紋章がペイントされていたと聞き、宇宙海賊の群れの襲撃かと思ったダミアンは焦った。人口百万程度の辺境惑星であるミルベリアの防衛用の軍備など、廃棄寸前のオンボロ軍艦が数隻ある程度で、しかもそれを操る人材の質と数は心もとないどころではなかったので、この星が大規模な海賊被害にあうことは確実に思われた。

 

 ダミアンは上位統治機関である総督府と連絡をとって救援要請を出し、次いで民間人をしばらく山間部に避難するよう布告を出そうとしたところで、海賊艦隊から超光速通話の電波が入ったとの方向が入った。脅迫か何かをするつもりなのだろうか。

 

 しかし通信機の画面に映った相手側の顔は、非常に見覚えのある顔だった。具体的には、大抵の公共施設でゴールデンバウム王朝の開祖であるルドルフ大帝の肖像画と並んで掲げられている肖像画の顔と非常によく似ていた。いやいや、たしかに今上の皇帝陛下は遊興癖が酷く、帝都を良くも悪くも騒がしていると噂される御仁ではあったが、宇宙海賊の捕虜になられるような御仁ではあるまい。きっとヴァリヤーグ海賊団の頭目が偶々偶然我らが皇帝陛下の御尊顔と似ているだけのはずだ。

 

「おい、ミルベリアの知事のダミアンだな? うん、内務省から盗み出した資料の顔写真と同じだ。間違いない。俺は第二五代銀河帝国皇帝のマンフレート一世だ。このようにほれ、帝冠も持ち歩いておる。さて、ひとつ命令するが、そっちについたら宴会をしたいから、酒の用意をしておいてくれ。今日の夜には着く予定だから、いいな? ああ、別に高級酒である必要はない。ただ量は必要だ。飲む奴がたくさんいるからな……ん? おい、聞いているのか、ダミアン知事」

 

 国営の立体TV放送で時折聞く皇帝陛下の声そのものな声音が通信機越しに響き、ダミアンは現実逃避をやめたが、自分がどういう表情をしているかまったくわからなかった。皇帝の要望を確認し、詳細をメモに書き留めて挨拶もそこそこに通信を切った。しばらくダミアンは自分がしたメモを呆然と眺めていたが、やがて側に控えていた秘書官に語りかけた。

 

「いやあ、秘書官。変な白昼夢を見たんだ。何の脈略もなく通信画面に登場した皇帝陛下から宴会のセッティングをしてくれと勅命を受けるって内容なんだけどさ。自分、疲れてるのかな」

「……知事殿、信じたくない気持ちは痛いほどわかりますが、残念ながら白昼夢ではございません」

「…………そっかぁ…………それで皇帝陛下は、今どういう状態なのだ?」

「………………わかりません。とりあえず、見たことそのままの報告を総督府にあげればいいのでは?」

「そうだなぁ。そうしておくか」

 

 疑問は尽きなかったが、皇帝陛下からの直接の命令となると従うしかなく、急いで宴会のセッティングを行なった。時間がなかったので、本当に安酒の山と軽い軽食ばかりで、とても高貴な方々に対して振舞って良いものではなかろうと思える品々しか用意できなかったし、会場はちょっと広いだけの大衆酒場であったが。

 

 そして現在、頑張ってセッティングした宴会場で全人類の頂点に立つ尊き御方と、それを護衛すべき近衛軍の将兵たちと、宇宙海賊の指名手配書で見た顔がいくらか混ざってる得体の知れない装いの輩が安酒を片手に、優雅さの欠片もない無礼講のお祭り騒ぎに同席していた。

 

 しかも途中から見知った顔が混ざり始めた。ヤケになった自分の管轄する政庁の役人たちが混ざっているのは良いとして、まあ、一万光年くらい譲歩してよいとして、その辺の住民も混ざり始めているのはどうことだ? え、酔っ払ったバカが街中でタダ酒を振舞いはじめたせいだって??

 

 しばらく現実を受け入れられずに逃避していたダミアンだったが、いつまでもそうしていることはできず、やがて意を決して、酒精で顔を赤くしている帝国皇帝に話しかけた。

 

「陛下、今更ですが、此度、このミルベリアの星に御行幸なされたのは何故でありましょうか」

「ん? 大した理由はないぞ? 単に宮廷暮らしが窮屈になってきたし、首都星オーディンにとどまっていてはすぐに宮廷の皆がやってきて、あれこれとやかましく言ってきて、満足に羽が伸ばせないだろうから、こうして遠方に遊びにやってきただけだ」

「な、なるほど。それでも、何故この星に? 私は内務省よりこの星の知事の地位を与えられておりますが……正直に申し上げまして、一面に広がるサトウキビ畑以外、この星にはほとんどなにもありませんぞ」

「ああ、これも大した理由ではないんだがな。うちの近衛兵に、この星の出身のやつがいて、もうしばらく子の顔を見れてないって言ってたから、そこでいいやと思ってな」

 

 ダミアンは政庁に戻ってその近衛兵とやらの家族を調べ上げ、報復を加えてやりたい気持ちになった。その近衛兵がいなければ、陛下は別の星に行幸なされ、自分が精神的苦痛を味わうこともなかったはずだ。

 

 もちろん、いかに田舎惑星の民とはいえ、名誉ある陛下の近衛兵を輩出した家族ともなると、おいそれと危害を加えれば面倒事になることは明らかになるため、実際には報復などできるわけがないのであるが……

 

「……えーと、では、ここいらの近辺で暴れていたために指名手配中のヴァリヤーグ海賊団のメンバーの顔と思しき方々はいったい」

「それは俺の方から話そう」

 

 まったく酒を飲んでおらず、生真面目な顔をした近衛兵総監のラムスドルフが口を開いた。

 

「ここに来る途中で連中の襲撃にあってな。どうも自分たちが陛下の存在を隠しながら旅をしているのを、どこかの貴族が後ろ暗い金目のものを密かに移動させているのではと勘ぐったらしい。そして私たちが撃退して捕虜にしたのだ」

「そ、それはよろしゅうございました。ですが、捕虜にしては、彼らは自由に振舞いすぎでは?」

「陛下が恩赦したからな。今や彼らも栄えある近衛の将兵だ」

「は?」

 

 ダミアンはポカンと口を開いて凍りついたように固まった。ラムスドルフはどこか得意げに陛下の御慈悲にむせび泣いて、連中の方から忠誠を誓い出して見物であったぞなどと語り続けるが、その情報を受け取れているのか怪しいほどであった。

 

 マンフレート一世は手に持ったジョッキに入っている麦酒を一気に飲み干すと、酒場のカウンターに土足で登って会場に向かって大声で演説し出した。

 

「皆の衆! 皆の衆! 俺は非常に嬉しく思ってる! 新しく忠実な人材をたくさん確保することができて! これからはもっと自由に! 俺は宇宙狭しとあちこちを冒険できるようになるだろう!! 期待しているぞお前たちィ!」

「おお、期待してくれていいぜマイン・カイザー!!」

「俺たちゃ、もうならず者の宇宙海賊じゃなくて、陛下を守る近衛だかんな!」

「おうとも! お天道様にまっとうに顔向けできるようにしてくれた恩に感謝し、ニューボスに敬礼!! ギャハハハハ!!」

「よぉし! ヴァリヤーグ海賊団解散と近衛入隊を記念してもっと盛り上がろうぜお前ら!! 遠慮するな! 今日は無礼講だ! 気がすむまで飲めッ!!!」

「「「「「おうとも、皇帝ばんざい(ヤー、ジーク・カイザー)!!」」」」」

 

 まったく理解できない光景であった。なので理解することを諦めたダミアンは酔いつぶれようと思い、ひたすらに酒を勢いよく飲み始めた。

 

 

 

 

 

 後世、“遊冒帝(ゆうぼうてい)”と称されることになるマンフレート一世が専制君主として無能であったという評価を否定する者はいない。彼は皇帝に当極するや否や、国家指導者としての義務を投擲し、国政に関心を示すことなく、さらには形式的国事行為すら怠るような男だったのだから当然である。しかし、彼個人の能力的な話となると、また別の評価があった。

 

 大親征が失敗に終わった先帝コルネリアス一世にとって、近衛部隊の改革は喫緊の課題であった。彼らは皇帝といよりは帝国政府の方に従い、結果として宮廷クーデターに近衛部隊の多くが参加していたというのは、見過ごせないことであり、近衛部隊が政府ではなく帝室にのみ従うようになる改革を望むのは自然なことであった。

 

 皇太子時代のマンフレートは近衛兵総監に着いてから、近衛部隊改革を実質的に指導し、成功させていた。彼は大胆な人事を行い、あえて名門貴族や門閥貴族出身者の採用を絞り、下級貴族や平民出身者を近衛士官として多く採用した。これは開明的な理由からではなく実利的な理由からであった。

 

 貴族階級とは、血縁による横のつながりが強く、当人が優秀だろうがなんだろうがそれを無視することは事実上不可能であった。ならば皇太子である自分自ら帝国社会の下層に位置する者たちの中で才能ある者たちを探して抜擢し、彼らに近衛将校たる栄誉と地位を与えた帝室にのみ恩義を感じるようにしてやればいい。

 

 言葉にすれば簡単ではあるが、大抵の場合、貴族階級ほどの高等教育を受けていない者たちを主体にしてしまうと、能力不足や経験不足でろくに仕事ができない組織が誕生するという結果に終わる例の方がはるかに多いこの改革をやってのけ、近衛部隊を帝室に忠実な――というよりはマンフレート個人に忠実といったほうが正確な表現であるのだが――部隊にする成果を見せてコルネリアス一世を満足させていた。

 

 ……そして父帝が死ぬと、マンフレートは皇太子時代に作り上げた自身に忠実な近衛部隊という武器と、銀河帝国皇帝という権威を盾に、心ある廷臣たちを無視しては新無憂宮を頻繁に抜けだして御遊興遊ばされるという、帝国を統治する側にいる者たちとって、大変頭が痛い皇帝陛下となられてしまったのであった。

 

 では、マンフレート一世の時代の帝国は悪い時代であったかというと、そうとは言えなかった。

 

「どうして陛下はいきなり何も言わずに宮廷から抜け出すのですかッ! しかも今回は大した数の護衛も連れず首都星からも出て、さらには宇宙海賊に襲撃されたのを返り討ちにして、気に入ったから恩赦して取り込んだってどういうことなんですかッ?!!」

「いや、だって事前に言ったら宮廷の皆にあれこれ言われて面倒臭いし……あの海賊ども面白いし部下になるってなら許してやろうかと思って……」

 

 田舎惑星のミルベリアで無礼講の酒盛りを繰り替えしたり、住民対抗サッカー大会を開いて御自ら参戦したり、街中の川で水泳に興じたりして思う存分羽を伸ばして帝都オーディンの新無憂宮に戻ったマンフレート一世は、顔を真っ赤にして怒るメヒティルトに、冷や汗を垂らしながらどうしたものかと悩んでいた。

 

「それにさ、置き手紙にも書いたと思うんだけど、俺が公務やったって、ひたすら君の判断に任せるって言うだけじゃん。じゃあ、俺いなくても問題なくない?」

「それが大事なんですよ! それが!!」

「……なんで? 君に全権委任するって書類も一緒に残したから問題ないんじゃないの?」

 

 心底不思議そうに首を傾げる夫の姿に、メヒティルトはこめかみのあたりに鈍痛を覚え、深いため息をついた。政略結婚して既に数年の仲であり、マンフレート一世がひどくアンバランスな存在であることを彼女は理解していた。なんといえばいいのか、マンフレート一世には相応の知性があるのに、妙なところで素っ頓狂なところがあった。

 

「陛下は帝国の皇帝なのですよ? 皇帝の第一の役目は、人類の頂点に君臨し、絶対的な存在であることです。そんな御方が頻繁に行方不明になられるようでは、臣下臣民の心が動揺します」

「何故だ? 皇帝とは至上の権力者であり、神聖にして侵されぬ存在なのだろう? つまりこの宇宙で誰よりも自由な者、それが銀河帝国皇帝だ。歴代皇帝の例を見ても、皆やりたい放題やっているようにしか思えなかったぞ」

「それは一面的な見方に過ぎます……もう少し皇族としての義務感を……」

「俺の義務感なんて、父上の魂と一緒に葬儀の席でヴァルハラに送り出したなぁ……もうなにしても父上に怒られることはなくなったし……」

 

 あっけらかんとしてマンフレート一世はそう語り、メヒティルトはこの方向ではいくら話しても埒があきそうにないと感じ、切り込み方を変えることにした。

 

「しかし陛下があまりに宮廷を留守にされては、陛下の異母弟たちが帝位への野心を抱きます。そのあたりのことも考えてはもらえませんか」

「それは前にも言われたなぁ……思うんだけど、先んじて潰すなりしたらいいんじゃないかな?」

「今や大貴族の当主になってる人たちをおいそれとは潰せませんわ! よしんば潰すにしても、私たち帝国の内紛である以上、国力は大きく削がれます。辺境の叛乱軍も帝国の混乱に介入してくる可能性も考えると、取るべき方法ではありません」

「なんだ面倒臭いなぁ……」

 

 ポリポリと頬をかきながらマンフレート一世は疲れ果てたようにそう言った。

 

「そもそもなんであいつら帝位への野心なんか覚えるの? 君の施政になにか不満でもあるのか、あいつら?」

「……陛下のお言葉を借りるなら、だれよりも自由な存在になりたいと思うからでしょう。それに女の指導者が気に食わないという感情もあるかと」

「何を言ってるんだ。皇帝は男の俺だぞ? で、君に任せてるのは俺の意思、皇帝の意思だ」

「……それはそうですが、いつも新無憂宮にいるのは私で、陛下に変わって国政の決断をしているのも私で、陛下はいなくては周囲からそう見られるのも致し方ないことでしょう。“女帝陛下”とか“ジークリンデ二世”とか時折言われてしまうのですよ」

「……いいんじゃないか? 俺は君と一緒に帝国の頂点の眺めを共有したいと思っているぞ」

「どう考えても皮肉じゃないですかッ!! あんな野蛮人に例えられて素直に喜ぶような女がいるとすれば、よほど鈍感な感性でもお持ちなのか、さもなくば悪しき共和主義者です!! 陛下は私にライフル銃で脅迫でもされたいんですかッ!?」

「あー、うん、たしかにそれは、嫌だなぁ……」

 

 ジークリンデといえば、先々帝である晴眼帝マクシミリアン・ヨーゼフ二世の治世を支えた皇后のことである。この皇后に対する帝国の公式評価というのは、中々にややこしいものとなっている。

 

 彼女が平民出身者であったというだけならまだしも、皇后として夫を献身的に支えるだけにとどまらず、自らライフル銃を持ち、近衛部隊を指揮して皇帝警護の第一人者となっていたし、更には自らが女というハンディキャップをものともせず政治の表舞台にも立ち、皇帝の后という間接的な影響力行使にとどまらずに主体性を持った一人の政治プレイヤーとして大暴れした女など、長いゴールデンバウム王朝の歴史でも彼女が唯一無二の存在である。

 

 晴眼帝が中興の祖といわれるほどの名君だけあって、決して彼女のことも否定的に語られているわけではないのだが、歴史書物にはほとんど決まって“生まれる性別を間違えた”とか“女にあるまじき”とか“傑物ではあるが尋常な女ではない”とか“突然変異体”とか、そんな文字が躍る非常識な存在として描かれているのが常だ。

 

 一説には「すべての女がジークリンデを模範とするようになったらこの帝国は終わりだ!」と当時の司法尚書のミュンツァーが学芸省に圧をかけた結果だというが、真偽は不明である。ただはっきりしているのは、晴眼帝はそうした妻の評価は事実とそんなに変わらないと感じたのか何も言わず、当事者のジークリンデに至っては夫以外からの女性としての評価などどうでもよいと無関心な態度であったという。

 

 そんな風に歴史書に刻まれた女に似ているなんて言われるのは、当時の一般の帝国の女性にとっては遠回しな侮辱であった。要するに“おまえ、女じゃないな”と言われているようなものなのだから。とりわけ、帝国の上流社会に暮らす女性にとっては、そうした悪評は非常に素早く各所へと伝播しやすく「そんな常識のない女のいる一族と血縁を結ぶのは、ちょっと」と親族の縁談に支障をきたす恐れもあるだけに本人の問題というだけではすまず、洒落ですむような話ではないのである。

 

 とはいえ優秀でないならば、もっと他の表現を用いることもたしかで、言い換えればメヒティルトはジークリンデのように国家指導者としての力量が、廷臣たちから認めらてはいたという証左ではあったかもしれない。

 

「ああ、うん。わかった。じゃあ、異母弟どもの野心をどうにかするまでは暫くは無断外出を自重するよ」

「暫くでは困るのですが……どうして陛下はそんなに皇帝としての責務を投げ出したがるのです?」

「いいかい、メヒティルト、私は男だ。元来男という生き物は、女性とは違って理性より感情を重んじて物事を判断し、冒険に繰り出す生物なのだ。その衝動は止められようもない」

「逆じゃありませんの?! 普通、男が理性的で、女が感情的だと言われますわよ!!」

「ハハッ、細かいことは気にしたらダメだよ」

 

 またもや顔を真っ赤にしながら怒り出すメヒティルトを見ながら、マンフレート一世は、やっぱり彼女の怒ってる顔って可愛いよなあと思っていた。

 

 このように珍妙な皇帝夫婦であったが、二人は力をあわせて(九割九分はメヒティルトの力であったことは疑いないが)帝国を健全に運営し、後世の歴史家に曰く「皇帝自身の起こす騒動を除けば強い特色があるわけではない」時代を維持した。

 

 上記の評からわかるように、時折発作のように公務サボりや宮廷脱走は繰り返すマンフレート一世の所業は生涯変わることはなかったので、残念ながら皇后メヒティルトが女帝陛下と廷臣たちから言われることも変わらなかった。

 

 ただ夫の行状のせいで頻繁に頭を抱えているメヒティルトに同情を寄せる廷臣も少なくなく、いつしか新無憂宮の事実上の主人と化しているにも関わらず、いつも夫のことで憂いに満ちている紫色の皇后ということで“紫憂后(しゆうごう)"の異名が定着したという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===マンフレート一世即位から約一〇年後===

 

 

 

『我が愛メヒティルトへ。

 

ちょっとフェザーン人を装って自由惑星同盟やらいう叛徒どもの領域を冒険してくる。

だから半年くらい国を留守にするからその間よろしく。

 

P.S.メヒティルトの好きな色って藍色だよね。

なにか君が好きそうな藍色のインテリアが売ってないか探しておく。

俺が持って帰る御土産楽しみにしとけよな』

 

 時折、陛下が置き手紙を残して何の前触れもなく宮廷からいなくなるのにも残念ながら慣れてきてしまっていたが、さすがに今回のは酷すぎるのではないか。

 

 周囲に控える廷臣たちがハラハラとする中、置き手紙を読み終えたメヒティルトは深く、深く息を吸った。そして新無憂宮全域に轟こうかという怒声が響いた。

 

 

「ほんとあの人はああああああああああああああ!!!!!!」

 

 

 さて、遊冒帝は父の征服帝に続いて自由惑星同盟領内に足を踏み入れた歴史上二番目の銀河帝国皇帝になれたのかどうか。それは後世になんら記録が残っていないのでわからない。

 

 たしかなことはマンフレート一世がこのような置き手紙を残し、皇后のメヒティルトが激怒していたという記述が、当時の帝国の有力者たちが残した日記に散見されているということのみである。

 




+"遊冒帝"マンフレート一世
第二五代銀河帝国皇帝。
名前以外はほとんどオリキャラと化している。
ほとんど自分が楽しめるかどうか基準の衝動で行動している。
皇太子時代は辛うじて自制が効いていたが、至上の権力の座に着いた瞬間自制心の必要性がわからなくなってしまった人。謎すぎる方向に特化したカリスマを武器に、義賊的な宇宙海賊でもやってるのが天職かもしれず、皇族に生まれてしまったことがすべての間違いであるとも言える。
最初は「嫁に国家指導者の仕事を丸投げするボケ皇帝」以外に何も決めてなかったのが、話を作り込んでいくうちに設定が二転三転して能力を明後日の方向に浪費して嫁と廷臣たちの胃にダメージを与えているという、なんかもういっそ無能であったほうがよかったレベルで面倒な皇帝となってしまった。
控えめにいって暗君な御仁であるのだが、メヒティルトがしっかりものであり、そっちに国家運営の実権丸投げしてるし、気が向けばメヒティルトの言うこと聞く時もあったために、帝国史的には暗君認定まではされなかった。理不尽。
なお、メヒティルトには内心ベタ惚れしているので、愛人の類はいない。本当に全く身に覚えがないので、自分の庶子とか自称する奴がでてきたら近衛兵を引き連れてぶち殺しにいく。だって自分の妻への想いを侮辱されたようなもんであるし。

はたして即位から十年後に彼が決行した同盟への冒険計画は成功したのか、メヒティルトの妨害で失敗したのか、それは歴史の闇である。

+"紫憂后"メヒティルト
マンフレート一世の皇后。
ゴールデンバウム朝の歴史上に、女帝染みた存在がいるとしたら、どんな感じであろうかと考えてたらできあがった苦労人。夫のむちゃくちゃぶりにいつも振り回されている。
当人としてはそれなりに野心があって政略結婚を受け入れて皇后となったが、それはあくまで皇帝の補佐役として影響力を発揮するという帝国的な常識の範疇での話であって、自分自身が皇帝の代理人染みた仕事をすることなど全く想定してなかったため、男尊女卑の価値観が色濃い銀河帝国の事実上の指導者として気苦労の絶えない日々を送っている。
女帝陛下と一部の廷臣たちから言われるのは変わらなかったが、時が経過するにつれて「どう見ても振り回されているのは彼女の方だな」という認識が広まり、ジークリンデ二世と呼ばれることはなくなっていった。

+ヘルムート
未登場だが、マンフレート一世とメヒティルトの間にできる子ども。
メヒティルトは「次の皇后の為にも、立派な君主になるように教育しなくてはならない」と一生懸命教育した。おそらく、君主としては相応の能力と責任を持つ人物に育ったのだろうが、愛人を作るのに熱心で、庶子をたくさん作るという別の意味で皇后泣かせな皇帝となる。
メヒティルトさんはそっち方面では苦労していないから、そのあたりの教育がおなざりになっても仕方ないね()

+ラムスドルフ
マンフレート一世の親友。近衛兵総監。
いつもマンフレート一世の大脱走劇においては知恵袋的な存在であるのだが、あまり存在感を出すことができなかった。
マンフレート一世が宮廷脱走を決めるたびに、謎の人材発掘で近衛将校の顔ぶれがカオスなことになっていくのだが、彼は平然とそれを受け入れているので、おそらくマンフレート一世と同じ部類の変人である。

+ダミアン
辺境惑星ミルベリアの知事。
常識人であるだけに、唐突に現れたマンフレート一世がミルベリアに滞在している間中、脳が現実の理解を拒絶することが多かった被害者。合掌。

+"征服帝”コルネリアス一世
第二四代銀河帝国皇帝。
後継者育成大失敗してしまったが、息子の欠点を補佐する目的で配偶者としてメヒティルトを宛てがったおかげで帝国の政情は安定した状態を保てたので、ちゃんと息子のことは見れていたのだと思う。

+"晴眼帝”マクシミリアン・ヨーゼフ二世
第二三代銀河帝国皇帝。
国内の敵対派閥に対する徹底的な粛清を断行して帝国の体制を立て直したゴールデンバウム王朝中興の祖。
皇后ジークリンデを愛してはいたが、あれがまともな女ではないと言われたら素直に頷くしかないと思っていた。
帝国公式の歴史書にはこの皇帝夫婦について「いつブッラクホールに変性するかもしれぬほど突飛で強大なエネルギーを有した女性を、よく制御して人類のために役立てたのは晴眼帝の類稀なる器量の賜物」と評されている。

+ジークリンデ
晴眼帝の皇后。平民出身の侍女から皇后から成り上がった人だが、原作の帝国の歴史で触れられる女性で派手に活躍した人というとこの人しか思い当たらず、更にはヒルダをジークリンデのようだみたいに評すること表現もあった覚えがなく、そもそも男尊女卑の価値観が色濃い帝国でミュンツァーと並んで晴眼帝の改革を支えた傑物扱いされてるって相当とんでもないことなのではということから「如何ともしがたい公式評価がされていたのでは?」という認識が筆者の中にあり、あんなことになった。
なんていうか、夫の毒殺未遂をしてその視力を奪ったヘルベルト大公の身柄を確保したら、当たり前だという顔をしてアウグストの注射針による処刑を提案し、自分の手でやりたがるような女というイメージがなぜかある。

+ミュンツァー
晴眼帝の改革を支えた司法尚書
ジークリンデとの関係はというと、マクシミリアン・ヨーゼフと一緒にブレーキを踏む係であり、ジークリンデからは頭が固くて面倒くさい理屈屋と思われていた。


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