セッ○スしないと出られない部屋に男女を閉じ込めるのが性癖の魔族に巻き込まれた話 作:柚香町ヒロミ
明るめかつ幼馴染ケンカップルものです
「お前は大雑把すぎる! もっと慎重に行動出来ないのか! すぐに前に出て……薬草がいくらあっても足りん!」
「うるさいわね! あんたが細かすぎるのよ! だいたいさっきだってあんたがさっさと毒矢を当ててれば───きゃっ!?」
とある男女の二人組、弓兵と拳闘士が素材集めのために洞窟内を歩いていた時、それは起きた。ランプの薄い光が急に眩い光を放ち二人を包み込んだのだ。驚いた二人が目を開くと見慣れぬ部屋にいた。壁も、床も、ベッドさえもピンクピンクピンク。辺り一面ピンクに染め上げられた部屋だ。あまりに異様な光景に二人が固まっていると謎の声が脳内に直接響いた。
『聞こえていますか……その部屋から出るにはセッ○ス……セッ○スをしなければなりません……それ以外の方法は意地でも認めません………セッ○スです……セッ○スは全てを解決するのです……では健闘を祈ります………』
「「は!?!?!?」」
脳内に響く言葉に二人は絶句した。それと同時に一つの可能性に思い至る。
『セッ○スしないと出られない部屋』
それは冒険者達の間でまことしやかに囁かれていた噂だ。とある魔族が他種族の性交渉を見るのが三度のご飯よりも大好物で色んな種族を拐っては強制的に『そういう事』をさせている、と。
「ふざけないでよ! なんでわたしがこんな堅物で、細かくて、嫌味ったらしい男とそんな事しなきゃならないのよ!」
「それは俺の台詞だ! 何故俺がお前みたいな脳筋で、ガサツで、喧しい女を抱かねばならんのだ!」
「なんだと!?」
「なんですって!?」
性格が正反対の二人はいつものようにいがみ合うが同時に動揺もしていた。なぜならその魔族はただ二人の男女を攫うのではなく『性交渉をしてもかまわないくらい想い合っている男女』を攫うらしいという噂もあるからだ。そしてその噂はというと──。
(こいつがわたしの事を好きなわけない……)
(こいつが俺の事を好きなわけない……)
(わたしは好きだけど!)
(俺は好きだが!)
当たっていた。二人は自分の気持ちに素直になれないケンカップル(未満)だったのである。
「そもそも抱くってなによ。あんたにそんな甲斐性あるわけないじゃない。ドーテーが!」
「はぁ!? 女を抱いたことくらいあるに決まっているだろう! 一夜限りの関係なんて日常茶飯事だったわ! お前こそ内心ガクブルしているんじゃないか? 生娘が!」
「はぁー!?!? ありますぅー!! あんたとコンビ組む前はそれはもうヤリまくってたわよ!!」
両者共に真っ赤な嘘である。二人とも年齢=恋人いない歴&互いが初恋のピュアピュアっ子である。
(え……そうなの……)
(なん、だと……)
しかしそんな事を知る由もない二人はめちゃくちゃショックを受けていた。性格こそ正反対だが性根は割と似ているのだ。
「……ふーん。へー、ほーう……じゃ、じゃあシましょうか。減るもんじゃないし……!!」
「そうだな。この後のスケジュールもある。無駄な時間を浪費するのも惜しい。するか」
「……」
「……」
先程までの騒がしい掛け合いがピタリと止まりベッドで向き合う。二人には性交渉の経験がないためどうしていいか分からず固まっていたのだ。しかしただ見つめ合うのも照れくさかったのか拳闘士は目を逸し靴を脱ぐ。
「……服は着たままでいいわよね?」
「えっ」
「えって何よえって」
「いや……普通裸でするものだろ?」
「……まあそうかもだけど。着たままでも出来るでしょ。それともわたしの裸が見たいわけ?」
「見たい」
「……え」
「あ」
普段は素直じゃない弓兵だが彼はれっきとした男である。好きな女の子の裸が見たいという欲望を抑えきれず即答した。建前よりも本音が先にポロリしてしまったのだ。弓兵の返答に拳闘士は固まった後真っ赤になってプルプルと震え近くにあった枕を顔面に叩き込む。
「へ、変態!」
「へぶっ」
「へんたいへんたいへんたい!」
「っ……ああそうだ!! 変態だが!?!?」
「は、ちょっ、何開き直って……わー!? どこ触ってんのよスケベ!!」
それからドタバタしたものの接近戦が得意なはずの拳闘士はろくに抵抗もしないまま弓兵にされるがまま美味しく頂かれたのだった。
「……」
「……悪かった。謝るから」
全てが終わった後、弓兵が拳闘士をおんぶする形で部屋を出た。拳闘士は弓兵の背中に頭をグリグリ擦りつけながらムスッとしていた。
「……ケダモノ。優しくするんじゃなかったの?」
「……す、すまん……抑えられなかった……」
「…………一夜限りの関係が日常茶飯事、ねぇ……嘘ばっかり」
「なっ……お前だってヤリまくりって言ってたくせに……!」
「わ、わたしはいいの! ……ほら早く運んでよ。誰かさんのせいで動けないんだから」
「……了解」
口では文句を言いながらも甘えてくる拳闘士に弓兵は緩みきっただらしない顔を見せないよう前を向き、元いた洞窟から近場の街まで移動する。その足取りはどこか軽やかなものであった。
そんな二人の様子を水晶玉を通して見続けている男……元凶の魔族がいた。
「やっぱりケンカップルの事後のしおらしい姿は格別というか不思議な栄養が詰まってますな……ぐへへへへ……それにしてもあの二人は閨では素直なタイプと……特に「やっぱり胸、大きい方がいい……?」「いや……むしろこのくらいの方が好きだ……」のやり取り最高かよ……録音しといてよかった後でリピートしよ……」
魔族はニチャリとキミの悪い笑みを浮かべながら先程のやり取りを思い出し悦に浸っていた。両片想いの男女の感情の機微こそが魔族にとって何よりの御馳走なのである。
「次はどんな子達を攫うか……おねーさんとショタ……腐れ縁の幼馴染……身分違いの召使いとお嬢様もいいな……リストアップしないと……」
魔族の欲望は尽きることがない。しばらくは満たされても次第に心が渇いていく。自分の性分に内心呆れながらも爛々と瞳を輝かせ次の対象を選ぶ魔族なのであった。