セッ○スしないと出られない部屋に男女を閉じ込めるのが性癖の魔族に巻き込まれた話   作:柚香町ヒロミ

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今回は身分差ものです(サブタイトルで分かるだろ)

でもお嬢様が俗物です


四組目 〜召使いとお嬢様〜

 

 

 

 

 

「閉じ込められてしまいましたわ!!!!」

 

「そうですね」

 

「これは困りましたわね! まさか例の噂の……『セッ○スしなければ出られない部屋』に閉じ込められてしまうなんて!! 困りましたわ!! ちょー困りましたわ!!」

 

「お嬢様。高貴な方がセッ○スとか言ってはいけません」

 

 口調の割にはどこか嬉しそうな様子のお嬢様とそんなお嬢様に淡々と受け答えする召使いが立っていた。

 

 いつものように家で優雅に紅茶を嗜んでいたお嬢様とその傍らにいた召使いであったが突如強い光に包まれて気がつけば全面ピンクの出入り口にもない異様な空間に飛ばされていたのである。

 

『セッ○スしなければ出られない部屋』

 

 それはとある魔族が己の欲望のために創造した一度入ればセッ○スするまで出られない強制性交空間である。食事や衛生面は完璧に配慮されているため身の安全は保証されているのが逆にタチが悪いと噂されていた。

 

 普通箱入り娘のお嬢様がそのような悪趣味な空間に閉じ込められたら泣き叫んでしまうかもしれない。しかしこのお嬢様は一味違った。

 

(よっしゃああああぁぁぁ!!!!!!! 毎晩魔族の方に祈っていた甲斐がありましたわ!!!!!!)

 

 お嬢様はむしろこの部屋に召使いと閉じ込められる事を望んでいたのである。その祈りというには若干俗物的な願望が叶い脳内でガッツポーズをしていた。

 

「オホン。しかし閉じ込められてしまったからにはそういう事をしなければなりませんわね。そう、わたくしとあなたでそういう事を……」

 

「しませんが」

 

「そうですわね。しなければここから出られ……えっ!?」

 

「お嬢様がいくらお転婆で、アグレッシブで、色々と破天荒な御方ですが高貴な身分なのは変わりません。私のような下賤な者が触れていい存在ではないのです」

 

「そ、そうかもしれませんが……!」

 

「……それにお嬢様には近いうちに伴侶となる方が選ばれるはずですから。婚姻前に傷物になっていたとあっては大問題です」

 

 召使いの言葉に浮かれていた気分が氷水を掛けられたように冷えていく。お嬢様はもう結婚を意識する歳なのだ。父親は必ずお前が幸せになれる伴侶を選んであげるからねと言ってくれたがお嬢様にとってそれは幼馴染の召使いだった。だからこそお嬢様は相手が決まってしまう前に召使いと共にこの部屋に訪れたいと願った。しかし召使いは乗り気では無いようで冷静に、そして冷淡にお嬢様を抱く事を拒絶した。

 

「……ええ、そうですわね。お父様がお選びになっているんでしょう? あなたも手伝っているのよね?」

 

「はい。私とお嬢様は幼い頃から共に過ごしていますからどういう男性が伴侶に相応しいか分かるだろうと」

 

「………っ……そう。いい相手は見つかって?」

 

「アドゥリン家の三男……ガリヘス様が候補に上がっていますね。アドゥリン家は高品質な宝石が採れる鉱山を有していますし家柄もお年も近い。性格も穏やかだそうで跳ねっ返りなお嬢様とも上手くやっていけると」

 

「……………その話はもういいですわ」

 

「お嬢様が聞いたのでしょうに」

 

「……あなたはいいの? わたくしが嫁いでも」

 

「質問の意図が分かりません。あなたが他所に嫁ぐのは当たり前の事。私の意思が入り込む余地はありません」

 

「……そう」

 

 お嬢様は自分が嫁ぐ事に少しは揺らいでほしいと質問を重ねるが召使いは眉一つ動かすことなく答えていく。私情など一欠片も入らないその返答に涙が滲んだ。

 

(……噂なんて宛になりませんのね。召使いはわたくしの事なんて少しも………)

 

 魔族が拉致するのは性行為をしても構わないくらい相手を想い合っている男女のみ。そう噂されていたからこそ実際にこの部屋に連れて来られた時は舞い上がる心地だった。だがそれは間違いだったのだと項垂れ涙を流すお嬢様の頭を召使いの手が一瞬、触れようとするが躊躇う様に下ろされる。

 

「……ここで助けを待ちましょう。屋敷内で拐われたのですからきっと家の者達も手がかりを探してくれるはずです」

 

「それはいつまで?」

 

「……分かりません。けれどお嬢様は私が必ずお守りします」

 

「……それはいつまで?」

 

「……いつまでとは?」

 

「この部屋から出るまで? それともわたくしが他所に嫁ぐまで?」

 

「……勿論、お嬢様がご結婚されるまでです。それからは婚姻される方とその家が護ってくださるでしょうから」

 

「───嫌ですわ!!」

 

 平然と未来の伴侶について話す召使いにお嬢様は耐えきれず召使いに飛びつくように抱擁した。

 

 顔は涙でぐしゃぐしゃで美しく整えていた髪も乱れ幼い子どものように嫌、嫌と癇癪を起こすお嬢様に召使いは口を閉ざす。

 

「わたくしはあなたがいいの! あなたを旦那様にしたいの! わたくしは……っ……小さな頃からあなたの事を想っていましたのよ……!!」

 

「……っ……」

 

 お嬢様の告白にそれまで無表情を貫いていた召使いの瞳が僅かに揺れる。だらりと下げていた腕がお嬢様の背中に回ろうとして止まり、拳が強く握られた。

 

「……召使いなどに気安く触れてはいけません。今のお言葉も気の迷いです。身近な、歳の近い異性が私しかいなかったから勘違いをされているのです。お離れください」

 

「嫌! どうしてそんな事を言いますの!? わたくしはあなたに恋をしています! わたくしが悪い事をしたら叱ってくれて、怪我をしたら心配してくれて、楽しい事があったら一緒に喜んでくれるあなたが好きです!わたくしは真面目で、無愛想で、とても優しいあなたが大好きなのです! 勘違いなんかじゃありません! 」

 

「……おやめください。それ以上の言の葉は……私には呪いになります……!」  

 

「そんな……好きと言うことすら……想いを告げる事すら許されませんの……?」

 

「……お嬢様、私は……………『あー……なんかすんげえまどろっこしいんで予定変更。心の声が見えるようにしますぞ』」

 

 お嬢様と召使いの何処までも平行線な会話の途中、場違いかつ能天気な声が聞こえた。心の声?どういう事?と二人が思った瞬間、それが文字として空中に浮き出てきた。

 

「「え」」

 

【え?本当に見えますの? ……み、見えてる!見えてますわ!】

 

【え、あ、嘘だろ!? まさか本当に!?】

 

 互いへの想いから涙を滲ませていた二人だがその予想もしてなかった事態に唖然とする。

 

 心の声。頑なに心を閉ざしている召使いのその声が少しでも分かるのかもしれないとお嬢様は召使いが固まっているうちに質問してみることにした。

 

「わ、わたくしの事をどう思っていますの?」

 

【好きです。好きで好きで好きで毎日お嬢様の事ばかり考えています】

 

「ま、まあ…っ…」

 

「なっ……お嬢様っ!見ないで下さい、それはまやかしで……!」

 

「では……では……わたくしとセッ○スしたいと思ってます!?」

 

「わー!?なんてはしたない事を聞いてるんですか!」

 

【はい!抱きたいです!お嬢様を自分だけのものにしたい!もう何度も脳内で抱いていました!他の男がお嬢様と、と考えるだけで嫌です!その男をぶっ殺してやりたい!愛しています!】

 

「…っ……そ、そんなにもわたくしの事を……?」

 

「あ゛ー!!!!!!!!! ふざけんなよクソ魔族!!!!!! 人がどんな想いで隠してきたと思ってんだよぉ!!!!!!」

 

 赤裸々を通り越した惨いレベルで秘めた心の内を暴露された召使いは普段の冷静さをかなぐり捨てて頭を掻きむしり魔族を罵倒する。

 

 すると『はいはい図星乙。あ、もう必要なさそうだから心の声聞こえなくしとくね。バイビー☆』と腹の立つセリフを吐いて魔族の声は聞こえなくなった。

 

 魔族の捨て台詞にくたばれ!! と吐き捨てた後ぜえはあと荒く肩で息をしていたら上機嫌に笑うお嬢様に正面から抱きしめられ柔らかなぬくもりが伝わる。

 

「大好きですわ。抱いてくださいませ」

 

「……っ……そ、それはっ……」

 

「わたくしを、あなただけのものにしてくださいな」

 

「…………っ……………!!」

 

 その悪魔の囁きを堪えきれるほど召使いの忍耐は強くはなかった。無言で優しくお嬢様を持ち上げベッドへと運び丁寧に下ろす。するとお嬢様は誘うように挑発的な視線を向けながら寝転んだ。

 

「本当によろしいのですね、お嬢様」

 

「……もう。ベッドの中でまで『お嬢様』ですの? ねえ……」

 

 耳元で甘ったるい声に名前を呼ばれると召使いの理性は一瞬でとけていく。召使いも応えるようにお嬢様の名前を呼んだ。

 

 二人は見つめ合い深い口づけを交わし──一つになったのであった。

 

 

 

 

 

「……旦那様に殺されるかもしれません」

 

「わたくしが説得しますわ」

 

「いえ。お嬢様を手籠めにしてしまったのですから私自身が説得しなくては」

 

「手籠……物騒ですわよ、もう」

 

 それから一つになった二人が部屋から出ると嬉しさと悔しさが混ざりあった表情のお嬢様の父親が出迎えた。そして事の経緯をそれとなく濁して書いてある手紙と共にアドゥリン家以上に広大な鉱山の権利書と『結婚おめでとうございます。これご祝儀です by 例の部屋の魔族』とメッセージが届いていたのだった。

 

 

 

 

 

『よろしかったのですか』

 

「何が?」

 

『今回の件です。あの鉱山は静かだからと気に入っていたのでは?』

 

「んー、まあ気に入っていたけども。それより目の前のすれ違い&悲恋寸前の身分違いな両片想いカップルが幸せになるならそれでいいですぞ。良いもの見られたお礼でもあるし」

 

『あの二人の恋を成立させる価値よりもあの鉱山の利益の方が上だと思うのですが』

 

「はぁー、分かってないなぁ水晶玉クンは。両片想いのカップルが想いを伝えあってセッ○スするのを見るのはお金で買えないんですぞ!!」

 

『……金に困っている者達なら場合によっては買えるような』

 

「それはなんか違うんですぅー、あくまで自主的にー、自分の意思でー、くっついてー、えっちなことして欲しいんですぅー!」

 

『貴方様の嗜好は難解すぎます』

 

「まあ水晶玉クンは意思を持ったばかりですからな。そのうち分かる……かもしれませんぞ?」

 

『……分からない方がいい気がしてきました』

 

「何故に!?」

 

 そんな茶番会話をした後、魔族と水晶玉は次はどんな二人組を攫うか議論するのであった。

 

 

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