大満開の最終回以降の話と食い違うところが随所に存在しますがどうか目を瞑っていただけるとありがたいです。
───今日は、風が騒がしいな…
髪で風を浴びて、傾いた太陽に目を細める。
俺の名前は
そんな俺は現在、非日常を経験しようとしている。
内容は簡単、女の子を屋上に呼び出しているのだ。
女の子、屋上、呼び出し。
この三つを並べればいくら勘の悪い人でもすぐにアタリが着くのではないだろうか。
そう、俺はとある女性に気持ちを伝えるため、ここにいるのだ。
学業過程は既に終了し、帰りのHRも早々に終わった。誰よりも足早に教室を飛び出した俺は、こうして屋上にいるわけだ。
まだ空は赤く染まっておらずグラウンドには部活生たちが集まり始めたばかりの時間。放課後となってからまだ10分と経過していない。これほど早く屋上で待っているのは呼び出した相手をたとえ一分一秒たりとも待たせるわけにはいかないからである。
少し遅れた程度ならば呼び出したあの人はきっと笑って流してくれるだろう。だけどこれは俺なりの誠意の証であり、ほんの少しでも心象が良くなればというちょっとばかしの下心だ。
それからしばらく、時間でいえば10分も経過してはいないだろう。
グラウンドでは部活生たちが既に活動を始めている。道具を用意している人達の談笑や、走り込みを始めた運動部のザッザッという土を踏みしめる音。これらはこの学校の正しい放課後を象徴する音だ。
そんな放課後の音に紛れてガチャという扉の開く音がする。
俺はグラウンドを眺めるのを慌ててやめると扉の方を向く。少し空いた扉の隙間から彼女の長くて艶のある黒い髪が顔を覗かせる。
そして扉は完全に開き、その向こう側から待ち人は現れた。
「…私を呼び出したのはあなただったのね、和樹君」
「はい、今日は突然お呼びしてすみません。
そして来てくれてありがとうございます、東郷美森さん」
そうして俺ができる限りのスマイルで答えるとその十倍もの微笑みで打ち返される。俺が呼び出したのは讃州高校に在籍する女神こと東郷美森さんだ。
彼女はその長くて艶のある黒髪、抜群のプロポーション、優秀な成績、そして大和撫子を体現するかのごとき芯の強さと物腰の柔らかさを併せ持つ完璧美少女である。入学して早々彼女の美貌は学校中の男子たちの心を射止め、今なおつかんで離さない。当然数多くの男子生徒からアプローチを駆けられたようだがそのすべてがことごとく玉砕であり、現在では女神様として遠巻きから眺められるような存在にまでなっている。
「遅れちゃってごめんなさい。勇者部の皆に連絡してたの」
「大丈夫です。実は俺なんてここに来てから慌てて部活のみんなに連絡してたので。東郷さんのそういうきっちりしてるところは俺も見習いたいです」
「ふふ、ありがとう。それにしてもあなたも大変ね、部長さんの破天荒ぶりは大変でしょう?」
「あの人との付き合いはもう腐れ縁みたいなものですから、慣れます」
東郷さんの在籍する『勇者部』と時を同じくして立ち上げられた俺達の部活。
一つ年上の幼馴染みが始めたその部活は『ヒーロー部』という名前の人助けを目的とした部活動で、年下の俺は入学早々無理矢理部員として引きずり込まれた。
はじめは彼女たち勇者部と俺たちヒーロー部の活動目的が駄々被りしているという関係上両部長が互いを目の敵にしていたのだが、ボランティア系の部活はいくつあっても困らないということから共存の形となりつつある。
ちなみに俺と部長以外にも奇人変人のメンバーがいるのだが…どうして俺以外変な奴しかいないんだ?
まあ今はどうでもいい、割愛していこう。
「でも部長さん、この間は風先輩とうどん大食い対決をしてかめやに迷惑かけていたし…大丈夫かしら」
「さすがに少し目を離したくらいで問題を起こしたりは、たりは…た、りは……」
「……あるのね」
「無い…無い、と思いたいッ!」
以前ヒーロー部も勇者部も学校外の活動に出ていた際、それぞれの部長だけが学校に残っていたことでトラブルを起こしたのだ。
曰く、
「一番美味しいうどんは何か!?
『肉うどん』VS『ごぼう天うどん』」
うどんに関しては他県と比べて一日以上の長がある香川県民としてはたしかに気持ちはわかる議題である。なのだが、議論では終わらずお店にまで出向いたばかりか倒れるまでうどんを食べた結果互いに動けなくなりお店から救援依頼を受けるという事態にまで発展したのだ。当然迎えにいったものの両者の泥沼の争いは今なおかめやで語り継がれている。
というよりどうして自分史上初の世紀の一大イベントを始めようとしている最中にこんなことで頭を悩ませなくてはいけないのか…!
とりあえず、この件にひと段落がついたら一発殴らせてもらおう、そう思った。
そうして世間話にも一区切りがついたところで俺は肺から空気を吐き出し、新しい酸素を体に取り込む。
一連の深呼吸の動作を見ていた東郷さんの体が少し強張り、柔和だったその顔に緊張の色が走る。
今から東郷さんにつたえる言葉には決して言い返答はもらえないだろうなと思っている。
いくつか理由はあるが東郷さんは数多くの男子生徒からの告白を断りその全員を須らく絶望の淵へと落としてきた少女だ。まず、その手の話題に良い顔色は出さないであろう。
そして小学校時代から彼女と親交があるという乃木園子さんに聞いてみたところ小学生の頃から規則を重んじ風紀を乱す人は許せない、という性格であったとも聞いた。
さらにいえば彼女はとても強い人間であり一度決めたことは曲げない強い意志と信念も持っている、と部長である犬吠埼さんからも聞いたこともある。
つまりここから導き出される結論は、
『東郷さんは不純異性交遊を認めるような性格ではない』
ということだ。
結果は見えている。どうなるかは明白だ。
きっと東郷さんの口からは謝罪と拒絶の言葉が返され、今日以降の彼女たちとの交流にも支障が出るだろうということが想像に難しくない。
だが、俺にはもうこの気持ちを抑えることができない。この感情を隠し続けることができない。
この気持ちを確信した時から常に視界の先で彼女を追ってしまっている。部活動で彼女たちと関わるたびに笑顔が瞼の裏から離れない、普段からもよく笑う彼女だが勇者部の皆と笑っているときの心の底からの笑顔が俺の心を掴んで離さない。
花が咲く、と言わんばかりの満開の笑顔。
その笑顔を浮かべると自然と、勇気が湧いてきた。
「…きっと、私は和樹君の気持ちには応えることができないわ。それではとても…」
「いいえ、いいんです。それでも俺は今日貴女に伝えなければ先には進めない、そう思うんです」
「……そう、そんなにも」
一度目を閉じた東郷さんが次に目を開いたときその目つきは変わっていた。
彼女も覚悟を決めてくれたのかその目にはハッキリとした強い意志のようなものを感じることができた。
「和樹君……あなたの気持ち、この東郷美森が受け止めます!」
「ッ! お、おれは……俺はッッッ!!!」
「俺は『結城友奈』さんに告白したいと思っています!!! どうか彼女に告白することをお許しくださぁぁぁぁい!!!!!」
「絶対に許しません!! 友奈ちゃんに近づく悪い虫は、一匹たりとも認めませぇぇぇぇぇん!!!」
そう俺の想い人は結城友奈さん。
笑えば枯れた花すら咲き誇るといわれる、この世界に舞い降りた天使だ。
❀❀❀
俺が彼女と出会ったのは1年と半年以上前。
神世紀301年の一月中旬、300年もの間殺人ウイルスから俺たち人類を守ってくださっていた神樹様が突如としてその姿を消した。
信仰の対象を失った人類はとても混乱した。
神樹様を奉ずる『大赦』からは正式な通達もなく俺たち一般市民は不安に駆られた。
俺とて神樹様が消えてしまったという事実には少なくないショックを受け無気力な毎日を送っていたくらいだ。俺などより信心深い人たちはそれはもうショックも大きかったのだろう。
そんな無気力な毎日を送っていた時、彼女に出会った。
河川敷。
混乱の影響もあってか川には当時の人々の不安を反映するかのごとく多くのゴミが氾濫していた。神樹様が消えて絶望した人が家財を丸ごと捨てた、なんて話もあったくらいだ。
彼女はそんな河川敷を一人で掃除していたのだった。
俺は特になにをするわけでもなく近所を散歩していて、河川敷を通った際に視界の端で彼女を捉えた。彼女は一人では到底片付けられないほどに散乱しているゴミを汗だくになりながらも整理していたのだった。
それを見ながら、
「(………神樹様がいなくなったこんな世界にもまだマシな人間ってのはいるんだな)」
と、どこか冷めた態度で見るだけであった。
そしてだらだらと無意味に時間を潰し夕方となって再び河川敷を通った時、俺は目を疑った。
朝の8時に見かけた彼女は夕方の5時になっても片付けを続けていたのだ。
季節は一月、彼女は一月の寒さを知らないのだろうか。河川敷ということで吹き付ける風は湿度を帯びていてとても冷たい。さらに冬は日が落ちるのが早く、5時と言えど既に空は赤色を越えて暗くなり始めている。
俺はいつの間にか立ち止まり彼女を見つめていた。
ジャージは泥や埃で黒く汚れていてどんな柄なのかすらわからない。この暗くなった河川敷では見つけることも困難なほどだ。そんな彼女は身の丈ほどもある大きな不法廃棄物を全身から汗を流しながら運び終わるとまた別の廃棄物を運び始める。よく目を凝らして見てみれば昼に見かけたときはあれほど散乱していたゴミがある程度まで綺麗に整頓されていた。あれならば本格的にこの河川敷の清掃が始まったとしてもすんなり事が運んでいきそうだ。
あれを……たった一人で?
神樹様が姿を消し誰もかれもが『未来』の先行きを心配し、絶望する者もいれば俺の様に無気力となる者がほとんどだった。
そんな中で、彼女だけは『今』を生きていた。
俺はそのことを自覚した瞬間、走りだしていた。
日は落ち始め空がほんの少し明るい程度、俺は河川敷へとつながる階段を駆け下りている途中で足を滑らせ転げ落ちた。幸いあと数段というところだったので大きなけがには至らなかったものの芝生の上に大の字で寝転がることとなった。
「っ~、いって~!?」
「わわ、大丈夫ですか!」
俺が転げ落ちた音を聞きつけ彼女が駆け寄ってきた。近くで見ると遠目で見た時の何倍もその汚れが濃いことに気がついた。
「あ、ああ。俺、は大丈夫だよ」
「きゅ、救急車!救急車を呼ばないと!」
救急車を呼ぼうと混乱している彼女を鎮めるためすぐさま立ち上がり身振り手振りで体に異常がないことを伝える。彼女もそれを見て混乱を鎮めてくれた。
「えっと、君朝からここでゴミ拾いをしてた…よね?」
「あははー、見られてましたか。そうですね、今日は朝の6時からやってます」
「6時!?」
俺が見たのは朝の8時、あの時すでに2時間は経過していたっていうのか!?
「……君はどうしてそんな、誰もやろうとしてないことをしようと思ったの? 見たところ中学生くらいだよね、俺ともそんなに変わらないのに……」
『一体…どうして…何故』
つまるところ俺が知りたかったのはそこだ。
みんながみんな大人も子供も『未来』への不安で心を沈ませ『今』は自分のことだけで精一杯なはずだ。
「…君は神樹様が御姿を消したことを知らないのか?」
そう聞くと彼女は少し何かを考えるようなそぶりを見せた後小さく首を振った。
「神樹様がいなくなったことは知ってます」
「だったら!」
だったら!どうしてそんなに気丈に振舞っていられるんだ!
俺たちを見守ってくださっていた神様が姿を消してしまったんだぞ!
この神世紀、神樹様を信仰していない人間なんて存在しない。その神様が姿を消してしまって、平常心でいられるはずはずがないじゃないか!
「私、神樹様とお約束したんです」
「お…やくそく?」
「はい!私たち人間はこれから自分の力で生きていくんだ、って。だから、まだ皆は混乱しているだろうけど私たちだけでも前に進んでいかなくちゃ、って」
彼女は力強くそういって汚れた軍手を握り締める。
彼女の言っていることは漠然としていてよくわからない。そもそも神樹様と約束を交わした?そんなことができるのは『大赦』の中でも極一部の巫女様くらいのもののはずだ、彼女はどう見ても普通の少女だありえない。
……だけど、そこに込められた想いだけは本物なんだということがわかった。
「…俺も手伝う」
「え?」
「お、俺も手伝うよ!なんだかよくわからないけど君はもうフラフラでしょ。だから俺が君の代わりにここの掃除をするよ!」
「え、ええぇ!? で、でももう暗いですしそんな私たちとは関係ない人に手伝ってもらうのは」
「俺はこの近所に住んでいるから関係ある!」
「ええ!?」
「というか私たち、ってことは君以外にもこんなことしている人が?」
彼女から詳しく聞いてみれば彼女がしている部活の一環として各地で自主ボランティアをしているというのだ。
彼女の他にもそんな人達がいるだなんて………すごいな。
「やるっていったらぜーったいやる!もう決めた!」
「そんなもう暗いし危ないですよ!」
「スマホのライトピカー!」
「眩しい!?」
あの手この手で手伝いの協力を拒む彼女、そのどれもがこちらの身の安全を心配するもので危うく「…天使かな?」と言い出しそうになった。
「軍手してないと怪我をしちゃいます!」
「(忘れがたい中学二年生の頃の思い出の品。堕天使の)グローブがカバンの底に!」
「服だって汚れちゃいます!」
「男の子の服は泥んこで汚れてもセーフだってばっちゃが言ってた!」
「えとえと、こ、転んだら危ない!」
「それはそっちも同じでしょ」
「ハッ!?」
ついに彼女もレパートリーが尽きたのかいくら頭をひねっても次なる言葉が出てこない。
勝った、となんだかよくわからない勝利の感触に少し優越感を感じていると、次の瞬間彼女の体がフラリとよろめくと力が抜けたように地面に倒れそうになる。
咄嗟に彼女の体を抱き留め、倒れるのを防ぐ。
そうして、抱き留めて初めてわかった。彼女、すごく体が軽い。女子の平均体重なんて俺は知らないし持ち上げたこともないが確実に軽い。
「はぁ、はぁ。あれ、力抜けちゃった…かな?」
「…ご飯食べてないの?すごく軽いよ」
「最近までちょっとね…やっと体が本調子に戻ったんだけど、無理しちゃったみたい…。えへへ、朝ごはんもっと食べてくればよかったな」
そんなことを言っていた彼女を比較的綺麗な場所に腰掛けさせ、彼女のスマホを借りて連絡を取る。連絡を受けた親御さんはすぐに来てくれた。
疲労から眠ってしまった彼女を親御さんに任せると完全に真っ暗となった河川敷に俺一人だけが残された。
おそらくはまだ6時やそこら、だが全く人の気配を感じない。誰もかれも今は家の中でこの混乱が収束することを祈っているのだろう。
「ふー、、はー、、」
深く息を吸って吐き出し、頬をあらん限りの力で叩きつける。
「よし、やるぞ!!」
それから先に、特に語ることはない。
ライトの明かりを頼りに二時間ほどゴミの整理をしていたところでおまわりさんに捕まってしまったのだ。そりゃそうだ、暗闇の中でライトをつけているから滅茶苦茶目立つ。
ボランティア精神は良いが神樹様が姿を消して危ないのだからはやく帰りなさい、と言われ親に連絡され強制連行されたのだ。
そして次の日、朝早くに家を飛び出した俺が昨日の続きを再開していると昼頃には沢山の人たちが集まってきていた。その中には昨日俺を補導したおまわりさんも混じっていた。
『大赦』から正式に「神樹様が消えたことは神の御意志、外の世界に存在していた殺人ウイルスが完全になくなったことで神樹様もこの世界を去られた」と公表されたことで多くの人が安堵した。彼女の言っていた神樹様は人類のこれからを信じてこの世を去ったというのもあながち間違いではないのかもしれない。
それからは数の暴力を知った。沢山の人が力を合わせたことで河川敷はみるみる綺麗になっていった。
俺もう要らなくない?と思ったが多くの人に「君がやっていたからだ」、といわれた。
その言葉には嬉しさと同時に申し訳なさを感じた。俺は彼女のやっていたことを引き継いだだけだというのに俺の功績だと言われているようで心が苦しかった。
それから半年と少し。
俺は中学三年生になりそれ以来彼女には会えてない。どこの中学の生徒かもわからないから当然だし、最近はよくボランティアをするようになったので探すほど暇でもない。たまに暇になると綺麗になった河川敷を橋の上から見下ろしながらまた彼女に会えないかな…などと黄昏るようになった。
そんな黄昏に浸っている最中、
「よう和樹、オレ様部活を作ることにしたのだ! どうだ、凄いだろう!」
現れたのは常にテンションのおかしい一つ年上の幼馴染。小さい頃は他の幼馴染を纏めてヒーローごっこなんてものもしていた。
「はぁ、凄いね…」
彼女と出会ってからというもの、常に彼女の顔が頭をかすめ何をするにも手がつかない。こんなテンションの高い男を前にしても気のない返事を返すばかりだ。
「人助けをする部活だ。弱きを助け、強きを挫く。名前は『ヒーロー部』! 格好いいだろ!」
「かっこいいね…」
「お前ももちろん入部するよな!」
「する、かもね…」
「他の奴らにも声を掛けておいた。来年お前たちが入学するのを楽しみにしているぞ!」
「楽しみだね…」
こうして行動力だけはある
そして月日はさらに流れ、高校生となった俺は彼女と再び再開する。
『こいつが我らヒーロー部期待の新人、新城和樹だ!』
『うちの友奈だって負けてないわよ、いっちょぶちかましてやりなさい!』
『はい風先輩! 結城友奈、1年3組です! よろしくお願いします!』
『ガクっ!? ちょっと友奈それじゃあただの自己紹介じゃない。もっとほら、相手を気迫だけで戦闘不能にするくらいしちゃいなさい!』
『え、えーと…ゆ、勇者スマイル!』
『…………ぐふっ』
『ど、どうした和樹!? 突然口から血を吐き出して倒れるなんて…おのれ犬吠埼、卑劣な真似を!』
彼女は俺のことを覚えてはいなかった。
当然だ1年も昔。それに暗くて視界も悪かったのだから俺の顔なんて覚えていなくて当然だ。
俺にとっては劇的な出会いだったものの、彼女にとっては何ということもない体験だったのだ。いつものボランティア活動、その一環で出会っただけの顔も知らない赤の他人。
それでも嬉しかった。
彼女とまた出会えたことが。
『これからよろしくね和樹君!』
『う、うん。どうぞなにとぞよしなに…』
『あらあら、なになに。もうお熱い二人ができちゃったの。東郷が黙ってないわよ~』
『早まるな和希! この犬吠埼が連れてきた女だぞ、きっと一癖も二癖もある変な女に違いないぞ!』
『なによあたしにケンカ売ってんの!?』
『和樹を誑かす毒婦め。このオレ様が犬吠埼もろとも成敗してくれるわ!』
『…結城さん、とりあえず馬鹿は放っておいて行こうか』
『あはは…部長さんと風先輩は喧嘩ばっかりだけど、私たち一年生組は仲良くしようね』キラキラ
『……ぐふ』
『わー! また和樹君が血を吐いちゃった!?』
❀❀❀
そんな彼女と交流を深めれば深めるほど俺は彼女に惹かれていった。
誰かのためにと頑張れる姿に、心が揺れた。
勇者部の女の子たちの前でだけ顔を覗かせる本当の彼女の笑顔に、心の底から嫉妬した。
そして、
『はい、お誕生日おめでとう!』
手渡されたのは押し花で作られた一枚のしおり。
どこにでもありそうで、どこにもない世界に一つだけのもの。
『和樹君が今日お誕生日だって聞いて急いで作ったの。急いで作ったから出来はそんなによくないんだけど…』
もじもじと不安で揺れる彼女の瞳と、そんな彼女の瞳と同じ桜の色で作られたしおりが手の中で交差する。
『…ううん。すっごい嬉しい、今日一番の誕生日プレゼントだよ』
その言葉を聞いて、彼女も満面の笑みを浮かべてくれた。
その時、俺はどうしようもなく深い恋に落ちてしまったのだと思う。
続かない。
なにがしたかったかといえば友奈ちゃんが可愛かったので恋愛ものを書きたかったけど最後まで書けなかった。満足したので成仏する。