私事ではありますが、BiCute Bunnies Figure -ストリートver.-のミクをクレーンゲームで獲りました。
とてもこうセクシーなフィギュアなんですが、獲っている時と獲った後の小学生の目線がやべーやつを見る目で、素手で持ち帰ったせいで羞恥心が凄かったです。
6月に出るニーゴミクのフィギュアも楽しみです。
土曜2時半。
音楽プレイヤーから『悔やむと書いてミライ』を再生する。
光に包まれる中で、ある程度の覚悟を決める。
一度は振られたことから大概のことには驚かないが、それでもちょっとした恐怖心はあるのだ。
光を抜けると、そこには何故かニーゴメンバーが勢揃いしている。
わたしが呼んだわけでなければ、咲が呼んだわけでもない。
少なくともナイトコードでの会話中に、呼びかけるような事はしていなかった。
「......みんな。」
「あれ、奏も来ちゃったよ!」
「別に示し合わせたわけじゃ無いのにね。」
「奏はどうしたの?」
「わたしは━━」
自身の用件を伝えようとした時、ふと視線の端に見覚えのある赤髪が見えた。
口から出かけた言葉を喉の奥まで押し戻し、そちらへ振り向いて少し歩く。
後ろにみんなが付いてきている事を感じながら歩き、彼の前で足を止めた。
「あ、奏さん。
......と言うか、全員セカイに来れるんですね。」
「━━ええ!?
何で咲がここにいるのよ!?」
後ろで声を荒げている絵名の驚きも、わからないわけでは無い。
声にこそ出さないがまふゆも瑞希も、事前に聞いていたわたしも実際見てみると驚いた。
それに輪をかけて驚いたのが、今彼がしている行動だ。
仲睦まじげな様子で、ミク、リンとババ抜きをしている。
2人とも胸元に咲が作ったであろうぬいぐるみをかかえ、そのポーカーフェイスの裏に楽しそうな雰囲気を醸し出している。
ミクがカードを引いたのを確認すると、彼は手札を伏せ、ゆっくりと立ち上がりその顔をこちらへ向けた。
思わず息を呑む。
「じゃあ
その目はとても虚ろで、信じられないくらい深かった。
「まあまずは、こうして......」
「「「「え。」」」」
すると彼はいきなり、指を喉奥へ突き刺した。
そんな事をすればもちろんえずく。
えずいてえずいて、涙が2、3滴落ちる。
「咲━━」
えずいてえずいて。
『大丈夫か』と伸ばしたわたしの手は払われた。
それと同時に俯いていた彼の顔はまた前を向き、雰囲気もあの時のように変化した。
先程まで仲良くしていたはずのミク達も変化を察知したのか、立ち上がり後ずさっている。
彼は髪をかき上げて、手に持ったメモを軽く見てから気怠そうに口を開いた。
「どうも初めまして。
えっと...四宮咲改め、四宮シンゴです。」
「シンゴって......
どっからどう見ても咲じゃない。」
何言ってんの、と絵名が付け加える。
だが目の前にいるシンゴという男は、咲からは見たことのない行動を見せる。
「...あっはっは!
そりゃそうだよね!
見た目の変化が対して無いのに、別人のように振る舞われてもなぁ!
そんなんただのバカだもんよ!」
彼は、笑った。
咲が見せる微笑みとはまるで違う、偽物では無い本当の笑顔だ。
至る所に見られる細かい所作も、咲と彼は別の存在という事を知らしめて来る。
シンゴはひとしきり笑い終えると軽く咳払いをして、今度は真面目な顔で口を開いた。
「ー━で、
簡単に言ってしまえば二重人格、解離性同一性障害だな。
まあ、何であいつが俺の事を友達に話そうとしたかまでは分からないが、俺とあいつは意思疎通出来ないし。」
そう言って彼はヒラヒラと、メモ用紙を指先で弄ぶ。
彼の話を聞く限り、望月さんとアップルパイを食べていた時に見えたあの人影は、シンゴと人格を入れ替えた咲だったと言うわけか。
あのメモ用紙はきっと、咲がシンゴに向けた台本のようなものだろう。
意思の疎通ができないと言うからには、記憶の共有も出来ないはずだ。
「まああいつが伝えようとしてたのはここまでだが、こっから先は俺から友達であるあんた達へ、伝えておきたい事を勝手に話させてもらう。」
そう言うと彼はリンを引き寄せ、頬を両手でむにむにと弄り始めた。
リンはリンで心底嫌そうな顔をしている。
「まず俺の人格には、モデルがある。
10年前事故で死んだあいつの親友がモデルなんだ。
まー本名までは知らないが、十中八九『シンゴ』なんだろうな。」
聞いたことのない話だ。
そもそもわたしは、彼の過去をそこまで知らない。
わたし自身そこまで過去の詮索を好まないように、彼も過去を話したがらなかった。
「その事故の後からあいつは泣かなくなった訳だけど、ある時からその親友を演じるようになった。
『裏表なく笑い、ヒーローの様に快活な男』。
そんなのを演じ続けて、つい数ヶ月前2つの人格に別れちまった。
それが咲とシンゴ。」
数ヶ月前というと、わたしと咲が出会った頃。
あの頃からいたと言うなら、わたしの恋した彼は。
「ああ、咲の彼女、そんなに不安にならんでもいいよ。」
表情に出ていたか、彼はリンの腕を動かしながらこちらに呼びかけた。
「あなたと交流し始めた頃から俺の出番は無かった。
ここにいる皆と会う時には、俺を出す様な事はあいつしなかったんだよ。
......さて。」
リンから手を離し、彼は人差し指中指の2本を立てて口の前へ持っていく。
「まあ、咲を頼むよ。
俺はシンゴの偽物だけど、あいつはこの世に1人だけなんだ、勝手に消えようとするかもだから無理矢理にでも止めてやってくれ。
あー、これ嫌いなんだよなぁ...」
そう言い残すと、彼は喉奥へ2本の指を突っ込み、さっきよりも激しくえずいた。
大きめの涙が地に落ち、ポタリと音を立てた。
「......と言うわけで、僕は二重人格なんです。
もし不意にナイトコードの中で人格が変わったら大変なので、こうやって話したかったんですよ。」
その後は何事も無く解散した。
咲が帰ってから多少は皆で喋ったが、それだけだ。
ひさびさに自分からベッドに入り、語られた言葉を反芻する。
『勝手に消えようとするかもだから、無理矢理にでも止めてやってくれ。』
わたしは未だに、彼の抱えるモノを掴みかねていた。
「あの言い草からして、咲の人格は本人が望めば消えちゃうのかな......」
「ちょっと瑞希、冗談でもそう言うこと言わないでよ。」
「......明日、咲に話をしてみる。
一方的に話されるだけじゃなくて、こっちのことも聞いてほしいから。」
「奏。」
ちょいちょいと、まふゆがこちらに向けて小さく手招きをする。
髪を踏まない様に慎重に立ち上がり、下を向いたままのまふゆへ耳を貸した。
「咲の『消えたい』気持ちは奏にしか壊せない。
咲を救えるのはきっと奏だけだから。」
「......うん。」