眠気半分で書いたのでよくわかんなくなりました。
ちょっとダメダメかもしれません。
「おい、暁山がいるぜ。
ちょっと珍しく無いか?」
「と言うか来てるとこ見たことないな。
...ほんと
背後のテーブル席。
そこから聞こえる雑音を、少ないジュースを吸い上げるストローの音でかき消す。
僕の心の話ではあるが、さっきまでこのジュースをお友達料金で無料にして貰ったのに、こんな茶々を入れられては上がっていたテンションも下がる。
高低差で風邪をひきそうだ。
ショッピング帰りで疲れた体を休めに来たのに同学年と会うとは。
咲の話では神高生の来る頻度が増えていると言うし、皆や咲には悪いが、今度個人で来る時には別の場所へ行こう。
会計をして出ようと立ちあがろうとした時、前から伸びてきた手がそれを止める。
手の主はカウンターから出て、男子高校生2人の目の前へ迫った。
「でも女だったら......ってうわ!?」
「ご注文わァ?」
見たことない様な顔で圧を発しながら、ただ駄弁っていた2人に注文を催促する。
きっと彼らは咲が店番をしている時にしか来ていないのだろう、店長さんの圧に怯えながら慌ててメニューを確認している。
その様子を見て『はあ』とため息を吐き、受けた注文を書くであろうメモ帳をしまって店長さんは口を開いた。
「あんなぁ、お前ら咲に告白した男子学生2人だろ?」
「「な、何故それを...」」
「監視カメラ。」
彼が指差した右側頭上には、照明の光をレンズが反射するよくある監視カメラ。
「......で、お前らは少なくとも自分に自信があって咲に告白したわけだろ、俺の
男か女かを気にして
息子の友達へ陰口を吐くヤツに出すメシもコーヒーも無いからよ、ご足労のとこ悪りぃが、帰ってくれ。」
トボトボと帰って行く同級生を尻目に、店長さんはフンと鼻を鳴らしてカウンターの冷蔵庫を開いた。
気を使わせてしまった、彼らからこの店の悪い噂が撒き散らされれば、来る人も減ってしまうだろうに。
感謝と申し訳なさがまぜこぜになった気持ちのまま、もう氷が溶けた水しかないコップの中身を音を立てて吸った。
「ほらよ、もう1サービスだ。」
少しして僕の前に出されたのは、サービスにしては豪勢なホットケーキ。
乗せられたバニラアイスの上にはイチゴソースがかかっていて、シンプルに美味しそうだ。
出されたものを無碍にするわけにはいかず、小さく切り分けて口へ運ぶ。
出来立てのホットケーキはアイスによって僕でも食べれる程の温度になっており、ホットケーキ自体にほんのりとついた甘さと酸っぱめのイチゴソースがシンプルな見た目から想像できない程夢中になる融合を果たしている。
あのカレーが咲の専門と考えると、このパンケーキは店長の独壇場。
......とは言え、映えを重視する絵名にはウケなさそうだ。
別に良いか、美味しいし。
『ご馳走様でした』と皿の上にフォークを置いて満足の意思を伝える。
店長は無表情を装っているが、口角が上がっているのを隠し切れていない。
「......店長、ごめんなさい迷惑かけて。」
「タメ語で良い。
なんなら俺は店長って名前じゃなくて薫って名前があんのさ。」
なんだか不意をつかれた気分だ。
正直こうやって客として来る分には、店長の愛想というものはゼロに近い。
気難しいステレオタイプのおじさんなのかなと思っていたが、結構フレンドリーに歩み寄って来るタイプの人だった。
...と、言っても。
いきなり人の親を薫、と呼び捨てにするのはどうか。
少し考えた結果、妥協案に留めておくことにした。
「じゃあかおるん。」
「かおるん!?
......まあ可愛らしいが、この顔に合うかね、そのあだ名。」
どうやらまんざらでもないらしい。
その証拠に口元ははにかみ鋭い目つきはどこか緩んで見えた。
「かおるんが追い返したあの2人が悪い噂を流したら、ここに来る客が減っちゃうかもしれないじゃん。
それなら僕がさっさとここから出ていった方が良かったはずなのに......」
カウンターテーブルに突っ伏し、自分の存在に軽く嫌気が刺す。
杏や類はもちろん、少し前の文化祭から僕にプラスの感情を持って接してくれる人は増えたが、それでも興味本位でプライベートに立ち入って来る上級生や陰口を吐く同級生が消えたわけじゃない。
今日の様に僕が思わなくても、かおるんの様に他人でも不快に思ってしまう様なことを言われるのなら、僕がいなくなった方が良いのではという考えが、頭の中をぐるぐると回る。
確かに奏、ニーゴと出会い救われた面はあるかもしれない。
でも毎日プラスが増えて行くのに比例して、マイナスもだんだんと増えて来るのだ。
無視という行動にも限界がある。
ポスンと突っ伏して上に向いた後頭部に優しい衝撃が走る。
見上げてみれば、カウンター越しに伸びたかおるんの大きな手が、僕の頭を包んでいた。
優しく髪型が崩れない様に、左右にその手が動かされる。
「お前はよくやってるよ。
あの調子だと、常日頃から言われてんだろ?
そんなん見て見ぬ振りするのが無理ってもんだ。」
「でもそれじゃあ......」
「でももだってもないんだよ。
...お前、仲良いヤツが他の友達と一緒にいたら逃げるタイプだな。」
ちょっと図星だ。
文化祭の時の事を見抜かれている様で嫌だな。
確かにあの時僕は適当な理由をつけ、杏から離れた。
でもそんな咎める様に言う事だろうか、せっかく小豆沢さんを呼んだのなら杏は小豆沢さんと回った方が楽しかっただろうし、僕がついていった所で奇異の目で見られるだけなのだから。
「まあそれはいい、時により逃げるのは必要だ。
でも逃げ続けるのはダメだ、そんな事してたら周りにいるヤツ誰も居なくなるからな。
例えば、お前は1人だけグループの中で距離を取ってるだろ。」
そんなことまで見抜いているとは思わなかった。
確かに僕は距離を取っている、だがそれはある種の負い目からだ。
言い出せない秘密、それを抱え込んでいるうちは、僕と皆の間にある隙間を埋めることはできない。
本当の友達にはなれない。
「どうせ『無駄になる』とか思ってんだろ。
わかるさ、お前よりは軽いが、俺もそうだった。」
「えっ...?」
「親の事情でな。
誰にいくら説明しても理解されない、築いた関係もそれを言えば水の泡。
結局、今に至るまで
「自分からってことは、誰かに聞かれたの?」
「おう。
結局そうだ、いくら逃げても話す事を恐れても、関係が深くなってけば自然とボロは出る。
そこを突かれて歩み寄られた時、お前は逃げるか面を見て話すか、どっちだ?」
その質問に僕は答えられない。
きっと覚悟もできず、逃げ出してしまうから。
「......ま、どんなに逃げても、お前は逃げ切れねえな。」
「......何でさ。」
「咲がいるからだ。
色々なもんから解放されたあいつはやべえぞ?
人の心にずかずかと入り込んで、全部紐解いてっちまう。
それにあいつ、と言うか俺らはお前の秘密知ってるしなぁ。」
頭に未だ置かれていた手を跳ね除け、飛び上がった。
何で、話したわけじゃないし勘づかれる様な言動も避けたはずなのに。
「何でかと言われればまあ、所作だな。
だが知ってた所で誰に言うわけでもない、本人が言うまで心に秘めておくだけさ。
好きでやってんことを咎めるほど、俺らは無粋なわけじゃない。」
力が抜けた様に椅子に座り、大きくため息をついた。
今後どう言う顔をして彼と会えばいいのか、全くもってわからない。
すると、かおるんはカウンターを出て裏から何かを持ってきた。
それは古ぼけた段ボール、少し埃をかぶっている。
そこから取り出したのはノートと鉛筆。
「まあするつもりもなかった、取り留めない真面目な話はここまでにしてだな。
今度姪の誕生日にプレゼントする絵の練習台になってはくれねえか?
...いや、嫌ならそれでいいんだがよ。」
また、唐突だな。
と言うか可愛らしいノートだ、所々デフォルメされた熊があしらわれている。
ふと見えた1ページには、センスの光る現代で通用しそうなアクセサリーが描かれていた。
「えっ、かわいい!
これかおるんが描いたの?!」
「おう、一応有名なとこのデザイン学科にいたんでな。
まあ色々あって卒業はしてねえが。」
先程までの雰囲気が嘘の様に、笑い合う。
しばらくすると、外の雨で濡れた咲が滑り込む様に帰ってきた。
駆け寄って『おかえり』と言ってみる。
豆鉄砲を食らった様な顔をしたが、すぐいつもの顔に戻り『ただいま』と返して来る。
「ねえ、咲って僕の秘密、知ってるんでしょ。
変だとか思わなかったの?」
「変なわけないでしょう?
それ言ったら9年も寝てた僕のが変ですよ?」
「......だよねぇ!
あー、かおるんの話で困惑して損した!」
「かお゛る゛ん?!!」
ああ、どうだろう?
これなら咲と約束した『一年後も桜を見る』と言うか事も出来るだろうか?
わからない、わからないが。
幾らかほんの少しだけ、心の向きがプラスに向かっている気がした。
味方がいると言う安心感って、結構大きいものだ。