特戦軍に保護されたオーストラリアのコミュニティー地区で暮らすようになったリンダ・コスタ。
歌手として人々を励ますリンダの姿に憧れの眼差しを送る少女、イルヴァ。
2人が出逢う時、運命の歯車が動き出す――――
『私は~~負け~な~い~』
タンクトップにミリタリーパンツ、軍用ブーツの出で立ちでマイクを手に歌うリンダ。
レイヴンズの拷問で負った傷を隠すことなく堂々かつ凛々しく歌う彼女の歌声に観客が瞳を輝かせる。
『何度でも~~立ち上がって~~前へ~~』
歌い終えた彼女に送られる盛大な拍手。その中でも一際目を輝かせるひとりの少女――――
イルヴァ・サッソ。
「リンダちゃん……格好いい!」
――――――――――――――――――――
馴染みの店の扉を開くイルヴァ。
「お、いつものやつか?」
ガイオ・コルツァーニ曹長――――この店のメインシェフでもある――――が厨房から顔を出す。
「うん、お願い!」
――――人気メニューであるカルボナーラを笑顔で頬張るイルヴァ。
「ん~美味しい!」
と、そこへ新たに客が入ってくる。
「この店、美味いんだ」
東洋系の男が後ろの人物に話しかける。
「へえ~いい匂い!」
見たところイギリス系だろうか――――ヨーロッパ人の女性が笑顔で入ってきた。
「お、ハラダ少尉に――――もう1人は見ない顔だな。新入りか?」
ドアが開いた音に反応してコルツァーニ曹長が厨房から顔を出す。
「ああ――――私と一緒にここにやって来たヴェガです」
「宜しくおねがいします」
「そうか、適当な席についてくれ。店のもんが注文を取りに行くから」
最近ここも賑やかになってきたな――――そう感じながらイルヴァはカルボナーラを平らげるのだった。
――――――――――――――――――――
パスタの上にあさりが沢山のったボンゴレ・ビアンコを頬張るヴェガ。
「美味しい!こういう料理が宇宙に存在したなんて」
「だろ?ここのパスタめっちゃ美味いんだ」
すると、ヴェガの目線がハラダから外れ店の出入り口へと向けられた。
「ん?」
彼女の目線を追うと、会計を終えた客の少女が出ていくところだった。
「何かあったのか?」
「――――――――ううん、何かを感じたけど気のせいみたい」
――――この時、ヴェガが感じた『何か』は気のせいではなかった。しかしそれが証明されるのは10年後の話である――――
――――――――――――――――――――
――――数日後
ステージで歌うリンダ。彼女の目線が観客に向けられると――――最前列でサイリウムを握った手を必死に振る少女の姿が見えた。
(――――あの子、よく見る)
熱心に応援してくれてる――――それがたまらなく嬉しい。
「~~さあ行こう~一緒~に~」
少女の方を見つめ、目線が合う――――ウインクして見せる――――
すると、少女が幸せそうな笑顔になるのが見えた。
――――――――――――――――
自宅に帰った後もイルヴァは夢の中に居るような気分だった。
(リンダちゃんにウインクしてもらえた――――最高!)
この時、イルヴァはこの先の人生で憧れの歌姫と深く関わっていくことになるなど知る由もなかった――――
~次回予告~
ファイル019『呪い』
ヴェガの兄アルタイルが囚われているとされる極秘施設の場所を見つけ出した特戦軍。
特戦軍に参加した各メンバーはそれぞれの思いを胸に救出作戦へと臨む――――
――――そしてエクセリオンに隠された呪いが少しずつ露わになっていく――――
【人物紹介】
イルヴァ・サッソ
人種…イタリア系
性別…女性
年齢…13
《解説》
特戦軍に保護されコミュニティーで生活する少女。以前は笑顔を見せなかったが同じくコミュニティーに保護され歌手として活動するリンダの歌と出会い、活発に笑うようになった。
同じくイタリア出身であるガイオ・コルツァーニとはパスタに対する考え方で意気投合している。
ガイオ・コルツァーニ
人種…イタリア系
性別…男性
年齢…46(2081年時)
階級…曹長(2081年時)
解説《2081年時》
元・CSSヨーロッパ支部所属であり現在は特戦軍所属の下士官。料理の腕を買われコミュニティーの料理店で腕を振るうシェフでもあり多くの常連を生み出している。
なお、ファイル03『姫と巨人』( https://syosetu.org/novel/286258/3.html )にも登場しておりアレクセイ・ヤムキンとはこの時に面識を得ている。