地球を防衛する傭兵になりました 作:No.28
緊急連絡! 敵の大群が迫っています!!
α型、β型、共に数え切れません!!
……!?
エイリアンまで来たぞ!! 待避、待避!!
間に合わない!! ……うわぁぁぁぁぁっ!!
スカウト7からの通信が途絶した。最後に彼らが残した情報によれば、このベース196目掛けてプライマーが大規模な攻撃作戦を決行したものと思われる。
ベース196は一般に公開されていない地下施設、なぜプライマーがこの基地の存在に気づいたのか……。
付近に展開している部隊を招集し、防衛線を構築する。各部隊は協働し、敵の攻撃に備えろ。
「来たぞぉぉっ!!」
その言葉で戦場全体が緊張状態に入る。横5キロメートルにも及ぶ巨大な防衛線は、その全てにAFV5両、コンバットフレームニクスが3機、それらが500メートルおきに防御にあたっている。
俺達の防衛するエリアは【ポイントフォックストロット】。フォネティックコードで言うところの【F】だ。
この戦力数、普通なら勝ち戦だが、恐ろしい事に脅威なのは敵はエイリアンの指揮する部隊だという点だ。人間のような見た目のあいつらは、怪物を引き連れて、大挙してここに押し寄せてくる。
更に怪物は、司令塔であるエイリアンが死んだところで止まることがない。何を先に倒しても後々が辛い相手だ。
「ブルージャケット、頼むぞ!!」
『任せろ。我々は狙撃のプロだ。奴らは俺達の狩場に誘い込まれたに過ぎん!』
「シールド、構えろ!!」
『ニクス3、バトルシステム起動!』
地響きを感じ取った仲間たちが、戦闘準備を整えていく。俺もPA-11アサルトライフルに弾倉を込める。
『こちらスカウト2。敵部隊がタンクの有効射程内に入った』
『了解! タイガーチーム、曲射用意!!』
俺達レンジャーチームに随行する戦車部隊タイガーが、砲身を上に向けて曲射弾道による遠距離攻撃を開始した。横並びのタンクから凄まじい数の115mm榴弾砲が発射され、タンクの最大射程距離である2.5キロメートル先から爆発の音が絶え間なく響く。
それだけで終わるのが怪物駆除だが、そうはいかないのが戦場だ。スカウトチームから全体に通信が入る。
『こちらスカウト4! エイリアンが怪物を引き連れて進路を変更しました!! ……うわっ!? こっちに来るぞ! 迎撃、撃て! 撃て!!』
『護衛部隊2-6、スカウトチームを連れて離脱する!! 全員、急いでグレイプに搭乗しろ!!』
偵察部隊スカウトの弱いところだ。彼らは戦場の目を司るが、戦闘に加わることは難しい。偵察のため戦闘訓練は最低限しか行っておらず、野外で長時間活動するためのサバイバル訓練や、敵の目から身を隠すためのレーダースクランブラーの携帯に留まり、レンジャーと比べてその戦闘能力は低い。
だから、通常はスカウトチームの護衛部隊が、スカウトが安全を確保したエリアに待機し、有事の際に備えるのだ。
『護衛部隊1-7、離脱した。防衛部隊、あとは任せた!』
『こちら護衛部隊2-6、離脱完了!』
スカウトチームの乗るグレイプが戦場から離脱する。ビル街を離れた場所で応戦を始める前衛のタンク、その後方で火力支援を行うニクス、そしてその隙を埋めるようにレンジャー、フェンサー部隊が展開している。
更には最も後方の部隊に、怪物退治において右に出るものは無いというエリート部隊、ブルージャケットが控えている。
『獲物を捉えた。曲射止め! タイガー、徹甲榴弾に切り替えて射撃を始めろ!!』
『こちらニクス4、敵影捕捉! ミサイル発射!!』
タンクが直射弾道に切り替えて攻撃する。その弾頭の行先にはα型の怪物が迫ってきていた。戦車砲は怪物に直撃し、大きな爆炎を上げる。ニクスのミサイルが大枚して敵に降り注ぎ、前線の怪物を焼く。射程距離にしておおよそ1.5キロメートルに差し掛かったところか。
ニクスのミサイルは射程距離、すなわち飛翔距離が非常に長い反面、一機に搭載可能なミサイルの総数は40基、総数を合わせても80基と、ミサイルキャリアーの筆頭であるネグリング自走ミサイル車両の100基には及ばない。生産もネグリングの方が3倍近く安価である事を考えれば、ニクスは近接戦闘も可能であるという面で優位性を見出す必要がある。
であるにも関わらず、この戦場にはネグリングではなくニクス・ミサイルガン仕様が大量に配備された。それは何故か。
『こちらポイントアルファ! 迂回した部隊が側面を攻撃してきた! ニクス、どうした早くやれ!!』
『こちらニクス、酸で駆動系をやられた! この場で応戦する!!』
ポイントアルファが敵からの攻撃を受けている。これが、配備されたのがネグリングであれば防御線を構築した時、近接戦闘に持ち込まれた時の脆弱性が表に出てくる。
ネグリングでは接近された時の対処法が無いのだが、ニクスであれば、近接戦においては歩兵十個小隊にも匹敵するその火力で、敵からの攻撃にも耐えられる。短時間であれば。
『ポイントエコー、攻撃を受けた、交戦開始!!』
『こちらポイントゴルフ! ニクスがやられた、誰か寄越してくれ!!』
左右で戦闘が開始されたようだ。もう間もなくここにも敵が押し寄せてくる。後方のブルージャケットが敵影を捉える。
『こちらブルージャケット6チーム、敵を捉えた! 射撃始めぇ!!』
『怪物風情が、ブルージャケットの力を見せてやる!!』
1キロメートル圏内に敵が入ったようだ。ブルージャケットが次々に射撃を開始する。ビル街を抜けて住宅街に布陣する俺達は、怪物に対して一方的に攻撃を加えられるようになっている。怪物は、大した遮蔽物のないエリアを抜けて俺達に肉薄しなければならない。
「来たぞ、フェンサーチーム、レンジャーチームは攻撃用意!!」
ライフル、ショットガン、ロケットランチャー。軽量機関砲、自動散弾銃、ハンドキャノン。
各々役割の違う武器を構え、射撃用意に移る。有効射程に入らなければ、どの武器も大した威力を発揮できない。多少の危険やリスクを犯してでも、接近戦を挑む必要があるのだ。
近づいてくる。ニクスとエイリアンが射撃戦を繰り広げ、俺達はひたすら怪物が接近してくるのを待つ、そしてその時が来た。
『ポイントフォックストロット、全部隊射撃開始!!』
『撃てェェェェーーーーーッ!!!』
ロケット砲から徹甲弾、散弾からライフル弾に至るまで、この戦場のありとあらゆる火力が戦線に集約していく。α型もβ型も、火力の前には等しく無力だ。赤いα型ですら、火力を集中されればものの数秒で灰になる。
弾倉を取り外して交換し、次の攻撃に備える。ブルージャケット隊がエイリアンの頭部や胴体に火力を集中させて撃破した。
タンクとニクスが爆発を以て多数のα型を巻き込み、リボルバーカノンが飛翔するβ型を地上から粉々にする。
『敵、第二波接近戦!! ……なんだあれは!?』
『こちらスカウト8、見た事のない新種のα型です!! 速いぞ!?』
『おっ、追いつかれる!! うわぁぁぁぁぁぁっ!!!』
怪物を殲滅する傍ら、向こう側でビルが崩れていくのが見えた。新種らしきα型の存在も気にかかるが、今は正面の敵を倒す必要がある。
『タンク! 新種が来るぞ!! 近くの敵は任せて敵の数を減らせ!!』
『了解、タイガーチーム、曲射用意!!』
徹甲榴弾を遠くへ撃って破棄し、曲射を始める。俺達はタンクの近くに集まり、ニクスに群がる敵を撃ちながらタンクを護衛する。
ブルージャケットは俺たちより50メートルほどは離れているので、よほど近づかない限り攻撃を受ける心配はない。それよりも敵に接近されているぶん俺達の方が危険だ。目の前のβ型が糸を噴射する格好を取るのを見て、急いでライフルを胴に当てて足止めする。そこから横のショットガンを持ったレンジャーが近づいて、硬直していたβ型に散弾を撃ち込み吹き飛ばす。
「助かった!!」
「それよりもタンクを守れ! タイガーがやられたらおしまいだ、お前こそ頼むぞ!!」
「了解!」
短いやり取りを終えてまた別の敵を攻撃する。戦車砲が発射される音が戦場に響き渡る。ブルージャケットが叫ぶ。
『やばいぞ、敵の新種だ!!』
『速いっ! もう目の前まで来やがった!?』
タンクが後退し、貫通力に優れるハンドキャノンを持つフェンサー部隊が前面に押し出て射撃を開始した。俺達も護衛対象をタンクからフェンサーに移しつつ、戦闘を継続する。
歩兵はフェンサーの後方に位置し、フェンサーは味方を守る。緑色のα型は、つい5秒前までビル街にいたというのに、既に歩兵部隊の真正面にまで接近していた。
「速いぞこいつら!!」
「速いだけじゃない、小さい個体もいやがる!!」
「機動力と火力を両立したんだ。甲殻の硬さはそうでもない、撃て!!」
全員が接近してくる敵を撃ち、緑のα型を排除していく。ロケットランチャーの爆風と、貫通するハンドキャノンが特に有効のようだ。火力を集中させるのでなく、広く満遍なく、全体的に飽和攻撃を行う。タンクの榴弾砲による爆発も効果的だった。
ブルージャケットのスナイパーライフルは、まだ残存しているエイリアンを攻撃している。
『こちらポイントアルファ! 敵影無し、作戦終了!!』
『ポイントブラボー同じく!』
『チャーリー、敵影は確認できない!』
右翼方面の敵は全滅したようだ。逆にこちらの敵はまだかなりの数が残っている。だが誰かが死傷したりなどの報告は一切ない。戦局は優勢だ。
『ポイントデルタ、作戦完了だ』
『ポイントエコー、作戦継続中。もうまもなく殲滅する』
「ポイントフォックストロット、同じく敵が残っている。交戦を続ける!」
エコーも同じようにまだ敵が残っているようだ。通信への応答の裏で銃声が聞こえる。
緑のα型を撃ち、その数を減らしていく。順当に推移しているように思われた戦況は、思わぬ所で陰りを見せる。
『こちらポイントホテル! テレポーションシップだ!!』
『ポイントゴルフ、目の前にテレポーションアンカーが降下してきた!! 奴ら、俺達を集中攻撃して突破するつもりだぞ!?』
ポイントG、Hに展開する部隊の正面に、テレポーションアンカー、テレポーションシップが接近・降下してきたようだ。こちらの敵はもうまもなく殲滅できるが、防衛線を崩せば戦線が崩壊しかねない。全ての部隊を動員するのではなく、一部のレンジャー部隊が増援としてゴルフ、及びホテルへ向かう事になるだろう。
『こちら前線司令部。全てのエリアのレンジャーチーム1から3は、至急ポイントゴルフ、ポイントホテルへ集合せよ!!』
アサルトライフルのグリップを握り締め、走る。俺に数人の隊員が着いてきており、全員で道路を直進する。
向こうから凄まじい数の銃声が響き、その曳光弾の向く先はテレポーションシップだ。遠目から見てもわかる程の巨大さであるそれは、続々と怪物を投下している。
『こちらポイントゴルフ!! ニクスがやられた、早く来てくれぇ!!』
数に押されニクスがやられたようだ、あまり戦況は良くない方向に向かっている。このベース196は他の基地と比べてビークル類を多数保管してある機甲師団の中枢だ。ここを突破される訳には行かない。
『前線司令部だ。ポイントフォックストロットのニクス隊はゴルフに向かえ。同じくポイントインディアのニクス隊はホテルの敵を殲滅しろ』
『インディア、ニクス隊。了解した、作戦を継続』
『フォックストロット、ニクス隊、敵を殲滅。ゴルフの救助に向かう!!』
ポイントゴルフに差し掛かるタイミングで流れてきたα型が接近してくる。隊員が叫んだ。
「うわぁっ!! 怪物です、こっちに来ます!!」
「焦るな、落ち着いて狙え!!」
ライフルとショットガンを撃ち込みつつ前進、倒れた敵の屍を回り込みなから、ゴルフの部隊に合流、ポイントゴルフに到着した。ポイントゴルフは戦線が崩れて乱戦の様相を呈しており、ニクスは敵からの集中攻撃が理由で倒れたようだ。
『フォックストロットの部隊か? 助かった!!』
「アンカーを壊すぞ!! タンクは生きてるか!?」
『後方で戦車砲を撃ち続けてる!! あいつらを盾にするのか!?』
「それしかない、タンクを呼んでくれ!!」
通信機に大声で呼び掛けながら、接近してくるα型にライフルを向けてトリガーを引き続ける。マガジンを交換しながらタンクの到着を待つ必要があった。
『ウルフ隊! タンク、来てくれ!!』
『こちらウルフ、了解した。歩兵はタンクに隠れろ!!』
後方からタンクがやって来、その後部にピッタリと張り付くように随伴歩兵が来ている。
『お前達が救援か、感謝する!!』
「タンク、お前達を盾にアンカーへ接近、総員でアンカーに火力を集中させて破壊する!! やれるか!?」
『ウルフ隊を舐めるな! 全部隊、突撃ーーっ!!』
戦車が勇ましく敵の群れに榴弾を撃ち込みながら前進していく。俺達歩兵はタンクに張り付きながら、タンクがカバーしきれない側面からの怪物を攻撃する。
『アンカーまで残り10秒ぉぉぉ!!』
「始まるぞ、リロードは済ませておけ!! ショットガンは接近する怪物、ロケットランチャーはアンカーを! 小銃兵は適宜ターゲットを切りかえて攻撃!!」
タンクが更に前進し、ビル街の前方に差し掛かろうという時、停車して戦車砲を撃ち始める。
『到着した! 早いとこやってくれ、あまりもたない!』
「了解! レンジャーチーム、交戦開始!!」
アンカーと怪物を取り囲むように小銃兵と対戦車猟兵が展開し、ウルフ隊らのタンク5両を守るように突撃兵が守りを固める。ロケットランチャーや榴弾砲が着々とアンカー上部に直撃していく。α型が爆風の隙間を縫って肉薄してくるが、そこは俺達の出番だ、一気に叩き、すぐに沈黙させる。
『こちらポイントホテル。ブルージャケットがテレポーションシップを仕留めた、感謝する』
『ゴルフへ、こちらはフォックストロット・ニクス隊。間もなくミサイルによる攻撃を行う。少し離れていろ』
その言葉と同時にタンクと歩兵部隊は交代する。怪物がこれ見よがしにと数湧いて突撃してくるが、頭上から飛来するミサイルの直撃で殆どが消えていく。
「助かったぞ、ニクスチーム!!」
『戦線に参加する。早いところアンカーをやっちまおう』
ニクスのリボルバーカノンがアンカーを集中的に攻撃していく。アンカーにヒビが入り、活動が鈍っていく。ウルフ隊が榴弾砲をアンカーに直撃させたのをきっかけに、そのヒビは更に大きくなっていき、一際大きな光がアンカーを包んだかと思うと、大きな爆発を起こしてアンカーは、その基幹部から崩れていく。
『残った怪物を殲滅しろ!』
その命令の通りに怪物を殲滅し、レーダーを見る。
敵を示す赤点は既にこの場に無く、戦場を歓声が包み込む。
『やったぞ、生き残った!!』
『新入り、無事か!? よし、よく生き残ったな』
『こちらポイントホテル、感謝するよ!!』
戦闘は終わった。怪物の死体を処理せねばならない為、まだ仕事は残っているが、それでも今日を生き延びた歓喜は大きい。
そういえば、仲間達の話によれば新型のニクスが開発、その実験機が試験運用されているらしい。そんなのがあればこっちにも寄越して欲しいものだ。俺はタバコを吸いながら、頭の中で司令部に悪態をついた。
ベース196
EDF陸軍機甲師団の中核を成す基地。地下施設に多数のビークルが格納されており、その総数はニクス200機、タンク480両、グレイプ輸送車両170両、ネグリング自走ミサイル車両440両と、反撃部隊の主力としては充分に成立する程の戦闘能力を備えている。
防衛線196
横方向5キロメートルに及ぶ長大な防衛線。500メートルおきにニクス3機、AFV(タンク)5両、レンジャー部隊15個小隊、フェンサー5個小隊、ブルージャケット狙撃歩兵部隊3個小隊が防衛に当たっている。
スカウトチームによる進行部隊の早期発見による防衛戦線の構築は、結果的にベース196への攻撃を許さず、敵侵攻部隊への大きな打撃を与える結果となった。
負傷者39名、死亡者22名、破損コンバットフレーム4機、AFV7両大破。
備考:この損失でベース196を防衛できたのはむしろ誇るべき事である。何より歩兵によるテレポーションシップの撃墜方法が広く知れ渡っていた事、現地部隊がタンクを盾に使った事で攻撃部隊への損害が少なかった事を考えると、大勝利と言えよう。