地球を防衛する傭兵になりました 作:No.28
あたらしいしょくば。
グレイプ11両の車列の車列が、無人となった市街地を走っていた。この辺りのエリアはマザーシップの進路上に重なってしまったり、怪物の群れが多数確認されていたり、ドローンが降下してきたりでとても住める環境では無くなってしまい、家財の一切を放り捨てて地下街のシェルターへ逃げ込んだのだとか。
「静かだな……不気味だぜ」
「人っ子一人も見当たらねぇ。そりゃそうか」
地下シェルターはこの先のベース251からそう遠くない距離にあるのだそうだ(それでも3kmは歩かなければならないそうだが)。その為、ベース251とシェルターを繋げる計画があるらしい。しかし地盤の問題や地下水道、進路上に電線が埋められているなどの理由から実行には至っていないそうだ。
「中尉、何かあったら守ってやる」
「ありがとう」
「そこの一等兵! お前中尉殿になんて口の利き方を!!」
「いや、いいんだって」
こんなやり取りを続けているうちに、ゴールへとたどり着きそうだ。ゴールと言っても到着予定地というだけで、ここに到着すれば全て終わりというわけではない。私も最低限戦えるよう、ここで訓練を積むことにした。ACは戻ってこない上、ニクスに搭乗する事も出来ない。ライセンスを持たない人は起動すらできないそうだ。
だったら私ができるのは、みんなと同じようにライフルを持って戦うことだけだ。
「着いたぞ! さあ降りろ降りろ!」
「よし、行くぞ中尉!」
一等兵さんに連れられて、私も同じようにグレイプから降りる。車両が続々とベース251内部に格納されていき、私たち120人+ひとりのレンジャー達はベース251の中に入っていく。
私も一等兵さんの後に続いて基地の中へ入った。
基地は今まで見た事のある、いわゆる地上に展開するタイプではなく、居住スペースから車両格納スペース、訓練場に至るまで全てを地下に押し込めた形である。
そして私達は、その中でも特に広いエリアに居た。居住スペースである。プレハブ小屋がいくつか並び、その手前で整列している。
「ベース251にようこそ。この基地は今、深刻な問題を抱えている──」
この基地の司令官だという大尉殿が話し始める。
──人手不足だ。兵士が足りない為に任務に遅れが出ている。これではマズいと、私は各基地に増援を要請した。諸君らの様な兵士をな。
だが!! 蓋を開けてみれば、なんと訓練過程を終えたばかりの一兵卒が大半だ!! これでは到底、我々は人類のために戦うことなどできん!!
貴様。訓練過程でどのようなことを学んだか言ってみろ。
──はっ! 私は射撃に優れているとされ、事実動く相手に当てることの重要さを知りました! その経験を加味され、狙撃兵科に配属されました、サー!!
つまり、卒業したてのへっぽこスナイパーだ。次! 貴様だ。貴様は訓練で何を学んだ?
──私は敵へ恐れず突撃する事こそが兵士の花であると学びました。よって上官に掛け合い、突撃歩兵として配属されました、サー!
つまり、向こう見ずのマヌケだ。貴様は?
──俺は訓練よりも前から怪物を倒し、入隊後も敵を倒し、市民を守る事ばかり考えていました! 兵科も小銃兵であります、サー!
なるほど……つまり少し戦いが出来るだけの馬鹿だ。
こういう事だ! 貴様らは基礎を終えただけ、まだ応用すら分からないペーペーの新米だ! 役立たずを寄越せと頼んだ覚えはない!!
よって我がベース251の精鋭部隊が、貴様らを根っこから鍛え上げてやる。光栄に思え!!
「「サー、イエッサー!!」」
私は奥の方だったからか目をつけられずに済んだ。ああいう人はあんまり得意じゃないんだけどなぁ……。
一等兵さんは私の前で走っている。射撃訓練場に集まれという事だから、全員で駆け足である。私は身長の割に体重があるから遅れがちだ。
「ねえ、一等兵さん。 訓練中もああいう人が上官だったの?」
「ん!? ……俺の訓練を担当したのは、今巷で最も有名なレンジャー部隊と言われてる軍曹殿だ。
「軍曹、そういう人もいるんだ……。じゃあ、あの人は? えーっと、大尉!」
「奴の身体、見ただろう? ぶくぶくに太ってやがる。きっと金で成り上がったんだろ。あれじゃあ市民を守る事なんざできん!! 俺が大尉となった暁には、この基地の司令官として戦い、街からプライマー共を追い出し、市民を守る!!」
確かに、私たちの前でなんやかんや言っていた大尉はお腹周りが残念なことになっていた。一等兵さんが大尉になったら、確かに頼もしい人になりそうだ。私としてはあの大尉より、こっちの
「到着するようだ、そろそろ黙るぞ」
「うん」
そうして口を閉じてまた少し走り、着いた先はいくつかのマトがあるだけの簡易的な射撃訓練場だった。私もみんなと同じようにPA-11アサルトライフルを持って整列する。
先に来ていた大尉がマトの50メートル前方で立っている。
「よぉーし。まずは貴様からだ。こい!」
「イエッサー!」
一等兵さんが走っていく。 あれ? ってことは次、私?
彼が正確にマトを撃ち抜いていく。腕は見事だ。
「よーし、上出来だ。次、貴様!!」
「あ……イ、イエッサー!!」
私も駆け寄る。男性ばかりのレンジャー部隊にあって、見た目160cm前後の女の子はどうやら物珍しいものに映るらしい。当然かもしれない。大尉も私の事を見て怪訝な顔をしている。
「ん!? 貴様は兵士か? 階級と前までの部隊名、元の所属基地を言え!」
「え? あ、階級は中尉、部隊名はラプター。所属基地はアウトポスト89です、サー」
「…………ラプター……どこかで聞いた事が……ああっ!!」
大尉が絶句して、膝を折って尻もちをつく。
「も、もも、もしかして……マザーシップを撃墜した英雄!?」
「いや……正確には、私がロボットに乗って、マザーシップを落とした、ですけども……そうです」
私が応えると、後ろにザワザワと喧騒さが浮き出てくる。私は大尉を見つめている。
「だから歩兵としては戦えません。鍛えてくれるんですよね? 大尉どの?」
「は、はははいぃ! め、滅相もありませんッ!!」
「え? だから鍛えてくれるんですよねって……」
「い、いえいえ、私などがマザーシップを落とした方に……!!」
「……だめだ、これは」
話にならなくなってしまったのか部下ふたりがふとっちょ大尉を運んでいき、3人目の部下が正面に立つ。
「………上官がすみません。私はこの基地で訓練兵教育をしていました、軍曹です。英雄と会えて光栄です。
……ですが、基礎訓練過程を終えていないということですよね。でしたらここで一通り終えてしまいましょう。射撃が出来れば狙撃兵に、体力があればライフル兵に、その他条件によって突撃兵や対戦車猟兵と、その兵科が変わるんです、中尉」
なるほど。私は体力だけはあるから、ライフル兵が良いのかな。長時間走っていられる(今思えばそれも機械の体のおかげかもしれない)し、撃った経験のある銃が今手元にあるライフルPA-11しかない。
「ではライフル兵ですね? 中尉殿はこの距離からマトに弾を当ててください。10秒間撃ち続けて、どれだけ命中させられるかで成績の善し悪しを決めますから」
懇切丁寧に教えてくれる軍曹さんの指示通り、ライフルを構える。引き金には指をかけていない。
「射撃用意!! ………撃て!」
合図と同時に引き金を引き絞り、反動を抑えるためだけにがっちりと腕を固定する。機械の体だからできる、この無理矢理反動を抑える感じ。ズルをしている自覚はある。
銃身が跳ね上がろうとするのを力で無理やり押さえつけた。
10秒間撃ち続けると、40発なんてあっという間に弾切れしてしまう。弾倉を取り換えて、記録を確認する。
「ふむ……ブレ無し。すごいな……これならライフル兵としてはやって行けるでしょうが……いいんですか?」
「え?」
「中尉は階級こそ前線指揮官ですが、貴方の階級は専用のビークルあってのものと聞きます。民間人としてこの基地で保護することもできるのですよ?」
なるほど、いいんですか、と聞いたのは私が戦えないかもしれないから逃げ道を用意してくれたということだろう。
軍曹は優しい人だが、だからと言ってそれに甘えるつもりは無い。一等兵さんがいるうちは私も前線で戦いたいのだ。彼が行く先を見てみたいし、プロフェッサーがここに来るまで私はどうにかして戦えるようになっていなければならないからだ。
「大丈夫。基地に来た時から覚悟は出来てる」
「そうですか。 ……英雄は、心まで勇ましいという事ですか? 私も見習いたいものです。 ……よし、では次!!」
私は下がり、次のレンジャーが駆け寄っていく。
「これを以て、全員の確認が終了した。後々配属する隊を編成するので、配布された紙にある番号を呼ばれた者から集まるように! なお、当面は向こうにあるプレハブ小屋で生活する事になる。小屋ひとつにつきしっかり200人ほど住める計算だ、遠慮なく私物を部屋に置いていいぞ!!」
「「サー、イエッサー!!」」
そして解散していくレンジャー部隊。私はというと、何故か十数人に囲まれていた。
「あなたが、英雄!?」
「しかも中尉と来た。こんなところで会えるなんて!」
「マザーシップを落とした英雄、ここにいたとはな」
みんなして私にわちゃわちゃ話しかけてくる。一等兵さんはというと、少し離れた場所で腕立て伏せをしている。ゆらゆら揺れるブッシュハットが印象的だ。特徴的なゴーグルも相まってちょっとかわいい。
「おい一等兵! お前も来いよ!!」
「俺に構うな、今忙しいんだ!」
うーん凄い熱入ってる。私もした方がいいのかな、腕立て伏せ。いやそもそも、ほぼ全身が機械だから筋肉も何もつかないのか。重たいものでも難なく持てるっていう利点だけは良いかも。
「しかし似合わないジャケットだ……。誰のです?」
「これ? これは一等兵さんの……」
腕立て伏せをする彼を見ながら言う。寝ている間にジャケットをかけてくれたのだ。少し暑いのでそれを脱ごうとすると、正面にいたひとりが短い悲鳴を上げる。
「うわっ!!」
「おい、どうした!? ……うおっ!」
私は急いでジャケットを着る。忘れてた。今人工皮膚が破けてて中身が丸見えなんだった。先進技術研究部の格納庫で助けてくれた一等兵さんは触れないでいてくれたけど、普通はそういう反応だよね。
「……………アンドロイド?」
「マジかよ……どうなってんだ!?」
「噂で聞いたぞ! 未来から来た人類の最終兵器があるって! そのパイロットなんじゃないのか?」
未来から来たこと以外は間違ってない。機械人間だから確かにアンドロイドと言うべきだし、人類側の……最終兵器かはわからないが、戦果を挙げて勝利に貢献するつもりではいた。
「と、とりあえず小屋に行こう。あれが俺達の部屋らしいからな」
「そう、だな……中尉殿、あなたは?」
私も行こうかな。休める場所が欲しい。そう言うと、聞いてきたレンジャーが頷く。
「じゃあ決まりだ。一等兵、お前は!?」
「98……99………100ゥッ!! ……ふぅ、よし!! ん? どうしたお前たち、こぞって俺を見て」
一等兵さんは夢中で聞いていなかったようだ。私が近づいて説明する。
「これからあの小屋で暮らすんだって。部屋は自由に決めていいらしいよ。一緒に来る?」
「ん? ……ああ、説明のあったプレハブ小屋か。 よし、俺も行こう」
「うん、決まり!」
一等兵さんを連れてみんなでプレハブ小屋に向かう。簡単な室外機が沢山取り付けられていて、本当に見る通り、詰め込めば200人は住めそうだ。そうでなくとも向こう側に数棟建っているので、ここにやってきたレンジャー部隊一個大隊の家を用意するぐらい簡単なんだろう。
プレハブ小屋は玄関から廊下がずっと続き、その左右に部屋があって、最奥と中央に階段がある。2階、3階まであって、その何処にでも、自分の部屋を決めても良いのだそうだ。
他に集まったレンジャーがどこそこが俺の部屋だお前の部屋かなんだと騒ぎ立てる中、私と一等兵さんだけが3階の一番奥の部屋とその手前の部屋を選ぶ。
「うるさいのは好かん! お前もか?」
「まあ、私も……そもそも人があんまり得意じゃないから、ここでいいかなって」
「そうか。 俺は平気なのか?」
「うん。最近わかったのだけど、私が大丈夫だと思える人は大丈夫………と思う」
「ふぅむ……よくわからん。そう言えばお前の番号は?」
一等兵さんはペラリと自分の紙に書いてある番号を見せてくる。私も同じようにポケットの紙を取り出した。
「俺は32だ」
「私、は………29だね」
「同じ隊だと良いが。そうすれば味方もお前も、そして市民も、俺の手で守ってやれる」
一等兵さんはとても頼もしいね。当たり前だ。そう言って笑い合いながら。私達はお互いの部屋に戻って、窓を開けてベッドに倒れるように横になる。機械の体だと意識してからは、無意識に制御していたものがぎこちなくなっていくような気がしていた。例えば呼吸やものを掴んだり、歩くことだって妙に力むようになってしまっている。
ジャケットの裾を捲って、マザーシップの砲撃を受けた時の怪我の様子を見る。胸部とは違い、腕に負った火傷は人工皮膚が焼け爛れて中身が半分見えそうになっているぐらいだ。恐ろしい事に、こんな惨状でも痛みは感じない。それどころか、ぎこちなさを抜きにしても一切動きに支障をきたす様子は見られない。
さすがは、キサラギ社の人間がやった施術なだけはある。そこだけはキサラギに救われている。これがもし普通の強化人間だとすれば、砲撃の時点で私も死んでいたかもしれない。
やがて、番号が呼ばれ始める。小屋の外からメガホンで数字が読み上げられ、そして呼ばれた人は小屋を飛び出して軍曹の前に駆け寄る。
『29!30!31!32!33!』
あ、私が呼ばれた。確か一等兵さんは32だから、一緒に呼ばれたってことはもしかして同じ部隊なのだろうか。
私は身体を起こしてベットから飛び出し、部屋を出て階段を下り、小屋の前に駆け寄って直立する。
あとから他の人たちも来るが、一等兵さんが私の二番目に早かった。逆に一等兵さんは私が先に来ていた事に驚いたらしい。フフーン、整理する荷物もないからね、私は。
「よぉし、集まったな。諸君は以降、ベース251所属遊撃隊・ハリケーンとする。わかったな、ハリケーン!!」
「「サー、イエッサー!!」」
全員で声を合わせて敬礼する。
「よし! この隊の指揮官は一等兵、貴様に任せる! なお、只今を以て一等兵、貴様はふたつ昇級、以後伍長とし、部隊の生存を第一に定めるよう命ずる。貴様は訓練成績だけでなく、戦闘においても味方や市民を守るよう、積極的に盾となるようだな?」
「はっ! 俺は市民を守り、美しい地球を取り戻すため、この身を犠牲にしてでも戦い抜く所存です!!」
「目標が甘いッ! 市民を、味方を守り、皆で生き残ってこそEDFの仲間だ!! 貴様ひとりが抜け駆けすることは決して許さん! わかったな!!」
「サー、イエッサー!!」
一等兵さんと軍曹のやり取りが終わると、軍曹はニコリと笑って大きく頷く。
「よーし、よく言った。市民を守り抜くその心意気は良いが、自分が死んでは元も子もない。生き残れ。それがお前達の重大な任務だ」
「サー! お言葉ですが、それでも俺は市民を守る事を優先したいです!!」
一等兵さんは半歩踏み出し、なおも食いついていく。軍曹は困ったような顔をするが、直ぐに笑顔に戻る。
「それも良い。だが忘れるな。お前が死ねば仲間は悲しむぞ。分隊は兄弟で
EDFは家族だ。俺達は市民の為、そして兄弟・家族の為にも戦う。それだけは覚えておけ、いいな」
「サー、イエッサー!」
一等兵さんが半歩下がった。軍曹も納得させられた、というような顔でもう一度頷き、解散と言って次の番号を呼び始めた。
ハリケーン隊の面々は早々に集まっていた。
「英雄と同じ隊に入れるなんて光栄です!」
「一等兵……いや、隊長! あんたも頼りにしてるぜ」
「任せろ! 俺がプライマーどもを宇宙に送り返してやる!」
「よっ、いいぞ大将!!」
みんなでワイワイはしゃぐ。軍隊とは思えない緩さだが、その奥には市民を守るという固い誓いがあり、それととても強い仲間意識こそがこの軍を強いものにしているのだ。
「じゃあ自己紹介だな。改めてハリケーン3だ。前の部隊が全滅しちまった、俺だけは生き残ってやるぞ!」
「同じくハリケーン4。前の基地では怪物を15体倒した、ここでも活躍してみせるぜ」
「ハリケーン5、元ベース228の所属だ。欧州でエイリアンに襲われて、どうにか生き残ってここに来た」
次は私だ。
「ハリケーン2。敵兵器を沢山落としてきたけど、歩兵戦はからっきしだから、1からのスタートということで頑張るよ」
そして隊長。
「ハリケーンリーダーだ! 俺が隊長になるのは必然だった!! 何故なら、俺はこの基地の司令官となり、プライマーをこの星から叩き出す為の起点となるつもりだからだ!! 遊撃隊というからには、俺達はビシバシ働く事になる。だが安心しろ! いつか地球は綺麗になる、俺達が戦い続ける事でな!」
全員の前で隊長は豪語してみせた。集まっていた次のグループも唖然としてこっちを見ている。ハリケーン3がクスリと笑った。
「なるほど、こっちもある意味、英雄だ」
「言えてるな! ハハハハッ!」
隊長がブッシュハットを揺らしながら怒る。
「な、なんだとぉ!? 俺はな、市民を守るという崇高な目的の為に………───」
深夜。隣で窓を開けてタバコを吸っている。隊長が隣の部屋なので、声を抑えて話す。
「戦うのは怖くない?」
「怖くないな。だが、怪物に食われるのはゴメンだ」
タバコの灰を灰皿に落としながら隊長は答えた。
「それは嫌なの?」
「当たり前だ。食われれば戦えなくなる。市民を守り抜いた末に食われるのなら致し方ないが、そうでない所で無駄死にするのは無駄だ」
確かにそうだろうとも。怪物に食われて良かった、などと思う人間はいまい。
「それにな、ハリケーン2。先進技術研に派遣されてすぐの交戦だったが、お前の事は知っていたぞ。英雄の噂もな。俺はお前のような力ある戦士になりたい。そして市民を守るのだ。
怪物どもを残らず駆逐し、エイリアンどもを追い出す。プライマーは元の星に帰ってもらう。そして、地球に平和を取り戻す!! ……俺の最終目標はそこだ」
「どうして市民にこだわるの?」
隊長は新しい1本を吸おうとしていたのを止め、話に集中する事にしたようだ。
「……俺の家族と連絡が取れん。数ヶ月もだ。欧州に住んでいた俺が日本に来た2ヶ月後のことだ。プライマーが襲ってきて、家族と連絡が取れなくなった。俺が入隊したのがこの時だ。
最初は助かるだろうと高を括っていたが、欧州の生存者のほとんどが、飛行型の怪物にやられたと聞いてな。そこで諦めた。そして決意したのだ。市民を守り、怪物を倒すことで、家族の仇を取ろうとな。だから、まだまだ道は長い。お前にも期待してるぞ、中尉」
そんな重い過去があったとは知らなかった。だから軽率に聞いてしまったのだろうが、それを私は後悔し、だがそれを振り返らずに隊長の言葉に頷いて答えた。
「うん。私に任せて、隊長」
「俺もだ、隊長」
下から顔を出して、ハリケーン5が便乗してきた。どうやら私の一個下の部屋を自室に定めたらしい。
「お前にも期待させてもらおうか。 俺の部隊は厳しいぞ、着いてこれるか?」
「任せなって。こう見えても6ヶ月間生きてきたんだ」
「私も、これからは慣れない戦いだけど、役に立てるように頑張るよ」
消灯時間直前の私たち3人は、こうして意志を固めたのだった。
明日から、怪物を倒す任務が始まる。
ハリケーン隊
ベース251にて遊撃隊を務める、新規部隊。上等兵を飛ばして伍長に就任した隊長と、副隊長の中尉、一等兵3人の、合計5人による遊撃班。ベース251訓練兵教官を務める軍曹が、ベース228奪還作戦の折に名付けられた特殊遊撃部隊ストームに対抗して命名したらしい。
ストーム隊
最精鋭の隊員達を集めて結成された、EDF陸軍所属特殊遊撃部隊。ストーム1、ストーム2、ストーム3、ストーム4の4部隊からなる戦闘部隊で、特に目覚しい活躍を見せるストーム1は、もはや戦場に求められていると言っても過言ではない。
余談だが、ストーム1の人数はひとり、あるいは4人ではないか、という噂が兵士の間に広がり、その詳細の一切が分かっていない。
没案タイトル
【ベース251に とうこそ】