地球を防衛する傭兵になりました   作:No.28

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 緊急事態だ、エイリアンの揚陸艇が接近!
 敵の船は市街各地へ降下しており、別エリアを巻き込んでの大規模戦闘に発展した。
 既にベース249、ベース253が壊滅しており、彼らを攻撃した部隊もまたこのベース251に迫ってきている。

 各部隊は緊急出撃!
 エイリアンを殲滅し、地下シェルターの存在を奴らに知らせるな。市民を守っている隊員は怪物を追い払える程度の数しかいない。我々でエイリアンを防ぎ止めねば、市民の命も仲間の命も無いと思え!



十三話 精鋭部隊

 

 

 

 

 緊急出撃命令が下され、格納ビークル全てを駆り出して防衛に当たるという極めて異質な状況に、彼らはいた。

 街には痛々しい破壊の後が残り、既に幾度となく敵の侵攻を防ぎ止めている防波堤でもあるこのエリアも、遂にエイリアンの直接攻撃が仕掛けられようとしていた。

 

 既に攻撃を受け壊滅した基地の残存部隊が合流し、彼らと共に戦闘を繰り広げることになる。拠点で装備を整えて準備をしている間に生存者が伝える敵の外見や攻撃性、狡猾さは、これから戦いを挑むであろうベース251の面々を震え上がらせた。

 訓練を受けているのか挟撃するように進軍し、歩兵を掃討する為の武器や車両に対する為の武器さえ持ち、更に装甲に身を固めたエイリアンが来たのだと。それを聞いた防衛部隊は酷く恐れるが、ひとり、いやふたり。それに該当しない例外がいた。

 

「火炎放射器? ロケットランチャー? それがどうした! 市民を守り、最後まで戦うのがEDFだ。俺達に敗北は無い!」

「それに、私も待っている人がいるから死ねないしね」

 

 繰り上げ昇進で一等兵から伍長になったハリケーン隊のリーダーと、その副隊長を務める中尉が、武器を掲げて仲間を鼓舞する。

 

「俺は敗北主義者などではない。それを見せてやる。お前達も、俺達の戦いを見ていろ!」

 

 ハリケーンリーダーと副隊長が輸送車両グレイプに乗り込む。その姿を見て何か思うところがあったのだろう。他のレンジャー部隊も後に続いて搭乗する。

 

「おい、相手は少数で基地ふたつを壊滅させた化け物だぞ!? 行って何になる!!」

 

 彼らを止める生存者に、最後にグレイプに搭乗しようとした一人が笑って答えた。

 

「シェルターに家内を置いてきたのを思い出した」

「……!!」

 

 その言葉を受け止めた生存者のひとりは驚き、そして握りこぶしを作って俯く。

 

「まあ、あれさ。お前らの仇は取ってやる。安心しろ」

 

 そう言って、ショットガンを片手に乗り込む隊員の背中を、彼はじっと見ていた。グレイプ5両編成の車列は次々と発進していく。それを見送る隊員の、その後ろにいる残存部隊の生き残りたちもまた、短い対話を聞いて同様に俯いていた。そして誰かが呟いた。

 

「……やられたままで、いられるか……」

「隊長……」

 

 焦げ付いたヘルメットを被り直し、ロケットランチャーを手に立ち上がる。隊長と呼ばれた隊員の決意は、ゴーグル越しに映るその燃える瞳に現れていた。

 

「タンクとレールガンがあれば、奴の装甲を貫ける。そうでないとしても、大きな痛手を与えられるはずだ。ベース251司令に掛け合ってビークルを出撃させろ、手段は問わない。数百人のEDF隊員と数千人の市民たちの今後を左右する戦局だ、死ぬつもりで臨むぞ」

「しかし隊長! 敵はニクスを軽々と倒してのけた相手です、今更何ができると!?」

 

 隊長は悲観して叫ぶ部下の顔を見て話す。

 

「俺も、みすみす家族を死地には向かわせられん」

「新入り、安心しろ。あのニクスは廃棄直前のA型だったから負けちまった。ビークル部隊とレンジャー部隊とで連携すれば、勝機は充分にあるさ」

 

 グレイプの後続が全て基地を出るのを確認し、続けて5両のブラッカーE1タンク、イプシロン・レールガン搭載装甲車両3両が、出撃準備を整える。全て、ベース249、ベース253の生存者が操縦しているものだ。

 

「無謀すぎる、無茶だ!!」

「新入りに同意見だ。今すぐ交戦を中止して、敵が通り過ぎるまで身を潜めるべきだ」

 

 口論を押し退けるように、隊長がやってきたレールガンの砲塔によじ登って座る。

 

「俺達は軍人だ。例え無茶でも、守るべき仲間がいる限り戦う。ハリケーンチームとかいう、大バカ達に思い出させられた」

「隊長、俺も続きます」

 

 ひとり、またひとりと立ち上がり、ビークルに乗り込む。残っているのは、戦うことを否定していた数人だけになった。

 

「……それでも俺は……」

「自分も、怖くて足が………すみません」

 

 隊長は一度降りて、彼らを一瞥して一言伝えた。

 

「怖い気持ちはよぉくわかる。俺は今も怖い。だが、戦わないと最初から負けてるようなもんだ。少しでも勝つ可能性があるなら、俺はあいつらの下について一緒に戦う。 お前達はここで待っていろ。恐怖心は簡単には拭えない。俺達が戦いに勝ったら、その時はもう一度俺の下に来い。また共に戦おう」

 

 隊長がもう一度ビークルに乗り込み、ビークル隊は出撃していく。残った兵士たちは、その背中を黙って見ている事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レーダーを見ていた斥候兵が、無線で伝えてくる。

 

「確認しました。エイリアンです。重装甲のエイリアンです! 進軍スピードもかなり早い……!? 一分で接敵します!」

「来たか…」

 

 斥候の報告を受けてハリケーンリーダーが呟く。顎髭が特徴的な為、ヘルメットの赤色と相まって判断しやすいのもあって目立つ。今兵士全員の士気を維持している彼は、対エイリアン攻撃部隊全員にとっての旗印だった。

 

「俺達だけで重装エイリアンをやる。かなり辛い戦いだが、俺達がやらねば市民が危ない。弾倉の確認をしておけ!」

「サー、イエッサー!」

 

 よし。と、そう呟いてハリケーンリーダーはビルの影から顔を覗かせて、レーダーの敵エリア方面を偵察する。ビルからビルへ身を移しつつ退避するスカウトチーム、そしてその後方にそびえるように数体の重装甲型エイリアンが歩いてくる。視線を下に向けてビル影を頻繁に確認し、アンブッシュを警戒しているようだ。

 

「やつら、軍事訓練を受けてやがるんだ。待ち伏せの警戒なんてシロートはやらねぇ」

「油断はするな。影に誘い込んで、一体ずつやるぞ」

 

 大通りに出る道を挟むように建つビルの影にふたつの部隊が、隠れるように待ち伏せている。各々の武器を握りしめ、見つかった途端に全弾を撃ち込むつもりで構えている。

 

「ロケット砲、射撃用意よし」

「奴らめ。全弾叩き込んでやる……!!」

 

 全員が確認を終え、いよいよ戦闘態勢が整った。重々しい足音とともに、巨大な銃口が最初にビルの裏側から見え、続けて1体のエイリアンがその姿を全員の前に見せた。ハリケーンチームの隊長が叫ぶ。

 

「チーム1、撃て!」

「うおおぉぉぉぉぉーーーっ!!!」

 

 第1部隊全員のライフル弾が、散弾が、ロケット砲弾が、エイリアンへ一斉に降り注ぎ、アーマーの胴体部分や腕部が爆風、銃創、そのふたつで傷つけていく。エイリアンは怯み、銃口を向けようとしても爆発の衝撃で上手く構えられず、後続のエイリアンも先頭で攻撃を受けている個体の体が邪魔で、前に出てこれないらしい。

 

「チャンスだ、こいつを倒し切るぞ! アーマーを壊して中身を狙え!!」

「どっかだかの軍曹が言ってたぜ。こいつ、戦闘ロボットじゃないってな。中のヤツも、撃てば死ぬ!」

「殺すさ、ロボットだろうが、そうでなかろうがな!!」

 

 軽口を叩き合いながらも、その火力を吐くことを止めない。エイリアンは度重なる衝撃に怯み続け、遂にその胴体部が顕になる。灰色の肌に、紫の鮮血。人とは思えない禍々しさだ。

 

「うっ……おぞましい、あんなのがいていいのか!?」

「気色の悪いエイリアン共め。宇宙へ帰れ!!」

 

 ひとりのロケットランチャーから放たれた砲弾がヘルメットに命中し、大きく揺らぐ。平衡感覚を失ったのかそのまま転倒した敵に対して、チーム1は弱点である肉体部分に攻撃を集中させやすい位置を取った。同時に後続のエイリアンが仲間を守るためやってきており、そのエイリアンを足止めするように後ろから攻撃するチーム2。

 

「来たぞ! チーム2、射撃!!」

「EDFッ!EDFッッ!!」

 

 仲間の体を乗り越えて攻撃してきたエイリアンの気を引く為、チーム2が射撃を始める。敵の後方に残っているエイリアンはこれで後3体。残存するエイリアンは残り5体。気味の悪い事に、敵も小隊編成で敵と戦うよう訓練を受けたらしい。だが、その少なさが今仇となっていた。

 

 凄まじい血飛沫を噴き上げて、エイリアンの1体が死亡する。残るは4体。ハリケーンリーダーが更に指示を下す。

 

「チーム2は後退しながら撃て! チーム1は一度隠れて待機、敵がチーム2を追跡したら挟撃するぞ!!」

「イエッサー!!」

 

 全員が指示通りに動き始め、チーム2はビルを盾にしつつ縦横無尽に動き回り、撹乱する。チーム1はチーム2を何時でも助けられるよう、エイリアンへの攻撃を一度停止する。

 チーム2を火炎放射器が襲い、凄まじい爆炎が周囲を包むが、全隊員がリロードをする為に物陰に隠れたらしく、運良く数人の火傷程度で済んでいる。エイリアンが更に踏み込んで攻撃しようとした時を見計らって、ハリケーンリーダーは叫んだ。

 

「チーム1、攻撃!!」

「おおぉぉぉーーーっ!!」

 

 後方にいた3体のエイリアンを巻き込むように交戦を再開するチーム1。ほぼ全ての隊員の弾丸が胴、頭、腕、足へ。一直線に襲いかかっていく。しかし堅牢な装甲によって弾かれ、また攻撃も予測できていたかのように振り向いたかと思うと、エイリアンのロケットランチャーの砲口も同時にこちらを向いた。

 

「たっ、退避!!」

「退くな、撃て! ここで倒せないと作戦は崩壊する!」

「おい行くな! 離れ離れになったら最後だぞ! ……くっ。俺達が離れた部隊を連れ戻す、中尉は向こうを、俺達はこっちのを集めるぞ!!」

 

 半分ほどの兵士がロケットランチャーの攻撃から逃れるために散開する。攻撃作戦の参加部隊指揮を務めるハリケーン隊から離別してしまったチームを含んだ、残ったもう半分の部隊は攻撃を続ける。

 

「くそっ……全部隊散開! 散らばって、各個に敵を攻撃だ。ゲリラ戦を展開するぞ!」

 

 作戦が瓦解し、残ったチーム1の残党部隊は別々の方角へ散らばり、電柱や鉄道橋のような身を隠せる場所に退避しつつ、退きながら銃を乱射する。

 

「チーム2は現状の戦力で敵を倒せ、生き残れ!」

『了解! ……っ!? 隠れろ、炎が来るぞ!!』

 

 エイリアンが火炎放射器を地面の味方部隊に向けて放つ傍ら、チーム1の少数はエイリアンから撤退できずにその場で交戦していた。火炎放射器を撃つ個体の更に奥から、無数の弾丸が飛んでくる。精度は良いというわけでは無いようだが、その弾幕は仲間を萎縮させるのに充分だった。ガトリングガンである。

 

「ちっくしょう、ガトリング砲だ!」

「数じゃ勝っても火力で負けてる! どうにかならないのか?」

「無理だ。今は味方がバラけてる。集まりなおさないと、攻勢に転じるのは難しい!」

「くそったれ、とにかく撃てぇっ!」

 

 ガードレールの前で伏せて身を隠し、ビルの影からライフルだけを出して攻撃し、塀や電柱を盾に射撃する。抵抗の方法は各員バラバラだったが、その射線は複数いるうちのエイリアンのうち1体にのみ注がれている。

 

「火力支援は無いのか!? 全滅しちまう!」

「空軍への支援要請コードを持ってる奴はチーム2だ、通信できそうにないんだろう!!」

「じゃあ、あれだ! 噂で聞くアーマードコアとかってやつだ! あれは出さないのか!?」

「もうやられてる、マザーシップの撃墜例を遺してな!」

 

 冗談じゃねぇぜ、そう悪態をつきつつもその銃口はエイリアンを向き続ける。エイリアンの装甲は強固だが、全員で食ってかかるように撃ち続ければ破壊は可能であるらしい。

 

「みんな無事!?」

「中尉殿! 負傷者は数名です! しかし、エイリアンを引き連れて囮になってしまったチーム2の安否はわかりません!」

 

 中尉と呼ばれた少女の姿に機械の人間。ハリケーンチームの副隊長を務める彼女がやってきて、全員に怪我の有無を聞く。その後ろには纏められてきた30人のレンジャー部隊がおり、その半分が遅れてやってきたハリケーンチーム先導のもと、エイリアンへの射撃を開始している。

 

「チーム2はなんとかなる、と思う。それよりもエイリアンを攻撃しよう。闇雲に、バラバラに攻撃してもアーマーに難なく弾かれてしまう。それよりも全員で火力を集中させて狙いやすい胴体部分のアーマーを壊そう。それで多少は戦いやすいはず!」

「胴体部か……了解! お前たち、聞いたな!?」

 

 弱い点を観察して見つけ出したのだろう。中尉が指示を下し、こちらへ向かってきている2体のエイリアンを、チーム1の半数と半数とで挟むように取り囲み、射撃を続ける。

 

「ぐぁぁぁっ!!」

「うっ、うわぁぁぁぁっ!?」

 

 しかし、ただやられているだけではなかったエイリアンの反撃で、ひとり、またひとりと倒れていく。幸いとロケットランチャーを持っていた敵はチーム2の方に向かったようだが、それでもガトリングと火炎放射器による攻撃は怪物100体を相手するより余程地獄であった。

 

「怯むな、攻撃しろ! エイリアンを殺せ!」

「不法入国者は厳しく取り締まらないとな。わかったら出ていけ、ここは俺達の星だぞ!!」

 

 ハリケーンチームがエイリアンのうちのガトリング持ちの個体に対して肉薄し、ライフルによる射撃を行いつつ銃口が届かない足元まで接近することに成功した。隊長が全員に聞こえるように叫ぶ。

 

「見たか、足元は奴らも手が届かない。恐れるな!!」

「行け、行けぇぇぇっ!!」

 

 ハリケーンチームの勇気に鼓舞されたレンジャー部隊が同じように向かっていく。薙ぎ払うように火炎放射器を撃とうとするエイリアンだったが、1発のロケット弾に阻まれてトリガーから指を離す。

 

「こちらブラスト1、敵は止めた!」

「サンキュー。レンジャーチームは中尉殿に続け!!」

「ハリケーン2、突撃!」

 

 中尉に続いて、レンジャーチームはハリケーン隊を真似るように足元へ潜っていく。接近した部隊が胴体へ執拗な銃撃を続けていく。胴体アーマーが割れると同時に俊敏な動きでレンジャーチームから距離を離そうとするエイリアンだったが、それを1発の鋭い弾丸が捉え、逃がそうとしなかった。

 

『間に合ったようだな』

『こちらシャープチーム。イプシロン自走レールガンだ。攻撃チームを支援する!!』

『タイガー1から5は、チーム2の支援に回れ!』

 

 鉄道橋の向かいから3両のイプシロン自走レールガンが姿を見せ、その後方からやってきた戦車が線路沿いに侵攻してエイリアンへ曲射弾道による砲撃を加えていく。

 

「ビークル部隊だ、助かるぞ!!」

「レールガンの火力ならエイリアンも楽勝だ。この勝負、勝てるぞ!」

 

 攻撃隊の士気が上昇していき、それに比例するようにエイリアンへの攻撃も苛烈になっていく。ショットガンやロケットランチャーなどの強力な銃火器による至近距離からの攻撃、アサルトライフルによる実直なダメージの蓄積と牽制、3基のレールガンによる一斉攻撃。鎧を着込んだ重装甲のエイリアンとはいえ、装甲を上回る火力の前には無力である。

 

 鮮血を浴びてなお銃口を向け引き金を引き続けるレンジャー部隊を前に、2体のエイリアン、その巨体は漸く倒れ、動かなくなった。

 ハリケーンリーダーがチーム2に安否を問う。

 

「こちらチーム1、チーム2、聞こえるか? 応答せよ」

『こちらはチーム2。タンク部隊の支援のお陰で大体は生きてる。それでも少なくない数がやられた』

「そうか……とにかく、殲滅は完了だ。よく生き残った。……仕事は辛いか? だが、いずれ平和になる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦闘は終わり、街の治安は守られる。

 

 ベース251の管轄エリアから離れた土地だが、それでも守らない理由は無い。人類や街、人々の資産はすべからくEDFの庇護下に置かれている。だからこそEDFの隊員たちは、使命のもとに団結できるのだ。

 避難施設に家族がいるから。非戦闘員を守る義務があるから。自分の故郷が戦場だから。理由は多種多様だが、それでも一丸となって戦っている。

 

 ベース251とその管轄の市街を守り切った隊員達もまた、ベース251内の談話スペースでくつろぎながら雑談をしていた。

 

「前はコックをやってた。職場が潰れて、職探しのためにEDFに来たんだ」

「マジかよ、俺は農家だったぜ!」

「俺も漁師だった。家内が病気で金が必要になって軍に来た」

 

 様々な成り立ちでEDF陸軍にやってきたという彼らの視線は、ひとつ隣のテーブルを囲んでいるハリケーンチームの隊長、伍長と、その副隊長である中尉に注がれている。

 今回の戦いにおける前線指揮官を務めた、ベース251所属の特殊遊撃隊だ。

 

「よくやった、中尉。攻撃目標をひとつに絞るのは良い案だった」

「隊長こそ。咄嗟に人を纏めるよう指示を出してくれなかったら、各個に撃破されていた。グッジョブだね」

「調子狂うぜ。伍長と中尉が同じ扱いか?」

「中尉殿と隊長は以前の基地でも気の置けない仲だったそうだからな。まあそういうものだろう」

「そういうものか?」

 

 ハリケーン隊が雑談に花を咲かせているのを見守る他のレンジャー部隊。そこに割り込んでいくように、ベース249の生存者……イプシロン自走レールガン車両やブラッカーE1タンクを運転していたシャープチームの隊長が、隣のテーブル席に座る。

 

「礼を言わせてくれ。あんた達のおかげで仇を討てた」

「お前の支援のおかげで仲間は助かったぞ。EDFは仲間を見捨てない。互いにな」

「それに、一応負傷者だから基地に置いてきたのに来ちゃったら元も子もないよね」

 

 談笑を重ねる隊員達。そこにベース251のベース指揮官である大尉が現れる。なお、体格の良かった(非常に柔らかな表現)大尉は戦闘開始と同時に子飼いの兵士を連れて逃げてしまったので、この大尉は基地副司令官であった中尉が繰り上げ昇進したものである。

 

 そんな大尉がやってきて空いた席に座る。

 

「よくやってくれたな。市街地を守り、エイリアンを排除した。それは君達の功績だ、伍長、中尉、そしてハリケーンチーム」

「はっ!」

 

 隊長が立ち上がって敬礼するので、中尉以下ハリケーンチームもそれに習って敬礼する。大尉は軽く敬礼を返して続ける。

 

「まあ、座れ。今からする話は知っていてもらいたいものだ。 ……先進技術研究部が壊滅。被害は敵のエイリアンによってもたらされたものだ。研究員やその家族は殆ど逃げ遅れた。特に伍長と中尉は、元々先進技術研にいた人間だろう。聞かせておいた方が良いかと思って、な」

 

 それは、先進技術研究部が敵の攻撃を受けて壊滅し、人員がほとんど失われたという事実を示していた。私はプロフェッサーに救われてあの基地に。そして隊長はあの基地に配属されていた。だから大尉は私たちに話しておくべきだろうと思ったのかもしれない。

 

「そんな、プロフェッサーが?」

「プロフェッサー? あの研究主任か……彼の開発した武器で多くの人が救われた。残念でならない」

 

 プロフェッサーの生死が不明。こんな世界で行方不明など、もはや彼の末路を想像するに難くない。

 

「とにかく伝えたぞ。それと伍長、お手柄だったな。前線での指揮は見事だった。君の指揮のおかげでエイリアンはこの街を現状諦めている。だが、隣接しているエリアは全滅してしまったらしく、通信に応答する様子が一切ない。次のハリケーンチームの仕事は、この通信が途絶したベース253の調査だ。生存者を確認し次第、連れて帰ってこい」

 

「了解しました! お前たち聞いたな。次の作戦に備えて英気を養っておけ!」

「イエッサー。よし、今日は飲むぞーっ!」

「俺もだ!」

 

 ハリケーン隊が宿舎に向かい、大尉も事務室に戻っていく。中尉だけが席に留まって俯き、頭に両手を乗せて暗い顔をしている。

 

「プロフェッサーが……」

「気を落とすな。死んだと決まったわけじゃない。ここで会う約束をしているというのはその人なのか?」

「……うん。命の恩人なんだ」

「そうか。 いずれ再会できる、そう信じろ。生きる希望は捨てるなよ、中尉」

 

 隊長の慰めが、中尉の心を少し和らげる。先に宿舎へ戻っていったハリケーンチームの隊員達を追うように、中尉も自室へと帰っていった。隊長だけが席に残っている。

 

「(………あいつも疲れているのか。次の出撃までは、そっとしておいてやるか)」

 

 頭の中でそう思考しながら隊長は配られたサンドイッチを頬張った。今日も美味いな。呟きつつ咀嚼して、しばらく食べる事に集中していた。

 

 

 

 








 ベース251

 重装甲型エイリアンからの攻撃を受けた拠点の中で唯一防衛及び他ベース侵攻部隊の迎撃、殲滅に成功した基地。新鋭戦力ハリケーン隊を筆頭とした遊撃部隊、訓練を積んだ多数のレンジャーによる守備部隊、怪物の殲滅を率先して行う攻撃派遣部隊、他ベースからの要請を受けて出動する攻勢部隊など、兵士数は他ベースに劣りつつも、その立地から防衛戦においては非常に有利なポジションにある。
 他ベースが崩壊し、その生存者がなだれ込むように撤退してきた為、現在近隣の拠点を含めても最大規模の基地となった。
 航空戦力等は保有しておらず、他ベースから流れてきたレールガンが数両、残りは全てブラッカーE1型戦車のみ。フェンサーやウイングダイバーといった主力兵科もレンジャー以外は存在せず、最新兵器の多く揃うEDFにあって前時代的戦闘を展開する稀有な存在。



 ハリケーンチーム

 ストームチームと対抗しているらしい部隊。しかしストームチームの功績があまりにも大きすぎるため、それほど注目されていないが、二個小隊という小規模な部隊だけで重装型エイリアンの小隊を撃破したのは、ストームチームを除けば現状ハリケーンチームの指揮する部隊だけである。



 ストームチーム

 橋梁を挟んだ長大な防衛戦に出撃。ベース251での小規模戦闘と同時に並行して発動した対エイリアン戦線において凄まじい戦果を挙げる。ベース250方面へ進軍したエイリアン小隊によってもたらされる被害を気にしていたようだったが、ハリケーン隊の活躍によりベース251へ進軍していたエイリアンは殲滅されている旨の報告を受け、防衛戦線に残存するエイリアンの部隊を掃討し、作戦司令本部へと帰還した。



 先進技術研究部

 壊滅した。既に崩壊した拠点のひとつに数えられてしまい、生存者は現在確認されていない。研究主任1名、研究技術者36名、その家族を含む民間人185名の、計222名が消息不明である。



 重装甲型エイリアン

 確認されているエイリアンの中でも特に装甲と火力に優れる個体。現状、ロケットランチャータイプ、ガトリング砲タイプ、火炎放射器タイプの3種類が確認されており、それぞれ対ビークル用、殲滅戦用、対歩兵用の位置付けが為されている。
 特にガトリング砲タイプの編隊による総力戦となると、火力の差が如実に表れてしまう。今後のEDFにとって、重装甲型エイリアンへの対処は文字通り命運を左右する重要事項と言える。

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