地球を防衛する傭兵になりました 作:No.28
ベース251より兵員補充要請あり。
ただちに向かってください。
十五話 ベース251†††††
かつて私はこう言った。
希望はある、と。
希望はある。
なぜなら、我らがいる。
我々の名は……。
「待ったぞ、心配させないでくれ」
彼が入ってくる。集合の時間になっていたらしい。彼と行動を共にするべく、俺は彼に近づいた。
「今着いたばかりか。まあいい、時間には間に合った」
二人で扉の前に立つ。俺は兵士として、彼は徴兵された身として、このベース251に立っている。扉を開く。
「行こう」
彼の言葉に頷き、歩く。ふと一人の事が脳裏をよぎる。確か彼が言っていた。もう一人のストームチームとなるかもしれない者がいたと。思わず足を止めてしまっていた。俺を見兼ねたのだろう彼は、俺に声をかける。
「こっちに来てくれ。 ……相棒、ここだ。 …………まさか、覚えていないのか? ………………私だ。プロフェッサーだ」
そこまで声をかけられてようやく気付いた。考えを止めて足を動かし、プロフェッサーの元へ駆け寄る。
「問題ない、覚えているよ」
「そうか、よかった。あまり心配させないでくれ。君に何かあれば、我々は路を失う」
無駄な心配をさせてしまったようだ。俺とプロフェッサーは基地の廊下を歩き、やがてひとつの部屋に到着する。
そこには俺と同じような職業軍人や、徴兵された兵士が集まっていた。プロフェッサーが一足先に部屋の隅に行き、俺を呼ぶ。
「ここだ、来てくれ」
その通りに頷き、プロフェッサーの目の前まで移動する。俺たちはそこでようやく息を吐き、胸を撫で下ろす。安堵感から来るものだった。
「生きて会えたな。どれだけホッとしたかわかるか?」
「俺も同じ心境だよ。お互い無事でよかった」
椅子に座り、ため息を零す。
「ずっと最前線か。よく無事でいたな。しかもついに………成し遂げた」
「………犠牲は多かったがな。それでもやれるだけやった」
「コマンドシップを落とし、世界を救った。犠牲も多かったが、それ以上のことをしたんだ、君は。 ……長い戦いだったな」
プロフェッサーの労りが身に染みる。俺もプロフェッサーも、位置は違えど互いの分野での最前線で戦っていた。俺はとにかく戦い、プロフェッサーはこの時の為に生き延び続けた。
プロフェッサーは俺が背負っているアサルトライフル、T3ストークに目を落とし、その目尻がメガネ越しに緩む。
「私の作った武器は役に立ったか」
「ああ。こいつに救われた場面も多かったよ」
「そうか、それはよかった。 ……話すことがたくさんある。何から………」
微笑みながらそう続けたところで、もうひとつの隔壁が開く。大尉が来た。
「大尉が来た。後で話そう。まだ時間はある」
そうプロフェッサーが言った直後。
「集合しろ。クズども! 並べ!」
ブーニーハットが印象的な大尉が、部屋の中心で大きい声を張り上げる。新兵たちはおっかなびっくりで、軍人のひとりはきびきびと整列する。俺とプロフェッサーも、予め決められていたかのように空いている場所へ寄り、直立する。
「よーし。ベース251へようこそ! この基地は今、深刻な問題を抱えている」
この先の文言を俺は知っている。
「それは……人手不足だ」
その先も知っている。全て聞いたからだ。
「兵士が足りず、任務に影響が出ている。そこでいくつかの基地に要請した。精鋭を送れ、とな」
このメンツの素性も知っている。軍人、トラックの元運転手、給養員、弁護士、タクシー運転手、科学者、そして遊撃隊。俺とプロフェッサーだ。
「しかし、おかしい! 送られてきたのは貴様らだ。精鋭には見えん! それどころか、兵士ですらない!」
そして大尉は新兵たちへ近づいてくる。昨日までの仕事を言わせるのだ。この流れも、プロフェッサー共々知っている。
「貴様、昨日までの仕事を言ってみろ!」
「給養員です、サー!」
「つまり、コックだ。次!」
そして大尉はプロフェッサーへと向く。ブーニーハットを揺らしながらプロフェッサーの眼前に近づき、仕事を尋ねる。
「貴様は何をしていた?」
「技術研究部です、サー」
「科学者だ」
そして奥の新兵に聞く。
「貴様は?」
「入隊は五日前です。それ以前は、トラックの運転手を……」
「もういい!」
大尉はそのまま言葉を遮り、また前へ戻っていく。
「つまり貴様らは精鋭どころか兵士ですらない。銃を撃ったことも撃たれたことも無く、戦うどころか身を守ることすらできない。約立たずの臆病者、それが貴様らだ!」
辛辣な言葉を新兵たちに浴びせかける。思えば軍人になる前から戦果を挙げていたからかは分からないが、こうした罵声は浴びせられた事がなかったかもしれない。
「だが、贅沢を言っても始まらない。猫の手も借りたい。使えないなら、使えるようにするしかない。訓練すれば少しは使えるようになるだろう」
そうだ。訓練すれば戦えるようになる。少なくとも繰り返してきたこの間ずっと、彼らが死ぬ所を見ていない。
大尉も大尉で、激動と破滅の5年間を生き抜いてきただけはあって精強な兵士だ。怪物の一団程度なら難なく退けることも、この男なら可能だろう。
「これから貴様らを鍛え直す。徹底的にだ。わかったか!」
「サー、イエッサー!」
その言葉に全員が了解する。大尉はそのまま続ける。
「侵略者は去った。EDFが地球を、人類を救った。それがどういうことか、わかるか? 我々が必要だということだ」
コマンドシップは落ち、プライマーの主戦力は消えたが、まだ残っているものがある。プライマーの置き土産、即ち怪物だ。
「誰もが望んでいる。命を脅かされることの無い平穏な、平和な日々を。それは我々にかかっている。我々は失われていった命を、今を生きる命を背負っている。重責だぞ。地獄を見る覚悟が必要だ、わかったか!」
「サー、イエッサー!!」
大尉が返事を聞いて頷く。そして続けた。
「プライマーとの戦争が終わった3年前。文明は崩壊寸前だった。だが勝利した我々は、復興するこの世界で治安を守る。その使命を、心に刻め。いいな!!」
「サー、イエッサー!!」
街を守り、人々を守る。いつだってそうだ。
「街を守り、人々を守る。覚悟はいいか!」
「サー、イエッサー!!」
「覚悟はいいか!」
「サー、イエッサー!!」
「覚悟はいいか!!」
「サー、イエッサー!!」
「訓練を始めるぞ!」
とにかく覚悟の有無を問われ、全員が決意を固める。そして大尉から各隊員に銃が支給される。俺は自前の装備を置いてそれを受け取る。壊れかけのPA-11アサルトライフルだ。さながらブロークンモデルといったところか。
「まずは銃の撃ち方を教える。貴様らのようなクズでも、引き金ぐらいは引けるはずだ。ついてこい!」
プロフェッサーと目配せし、大尉の後ろに着く。駆け足で走ることも、この後射撃訓練があることも、全て知っている。不法侵入者、もといコロニストの残党部隊と交戦することも、何もかも。
「君は世界を救った」
プロフェッサーが言う。果たしてそうだろうか?
「俺はそうは思えない。まだ何かある」
「リングか? 確かにそうだな。だがどうにかする。なる。しなきゃいけない。私達だけが次に何が起こるかを知っているのだから」
そうだ。歴史を知るプライマーと、更に少しの歴史を知る俺たち。軍に対するは俺たち、たった2人の人間。それでも戦い続ける。俺たちが折れない限り。大尉は大尉らしく、勇敢に戦うだろう。新兵たちも大尉に守られながらも懸命に戦う。
俺たちは彼らの命を守る。
奴らは仲間達の命を奪う。
無限に続く死のイタチごっこ。制するのは俺たちだ。
新兵
新たにベース251に配属、もとい徴兵された7人の兵士。前職は様々だが、職業軍人としてのEDF隊員も少ないながら戦線に加わっており、救いの無い未来を戦い続けていく。
プロフェッサー
死亡したと思われていた先進技術研究部の主任。隠れて生存しており、かつてを共に戦った相棒と合流すべくわざと徴兵され、ベース251へ向かう。
ストーム1
新兵のひとり。コマンドシップを落とした英雄だが、当時の功績を知るものはプロフェッサー以外にはいない。