地球を防衛する傭兵になりました 作:No.28
無茶だ、成功するはずがない。
それでもやらねばならない。
行くぞ! リングを破壊する!!
「新入り、危険だ!」
大尉の言葉を無視して、俺とプロフェッサーはリングの真下へと向かいつつあった。リングを破壊することで事故を再現し、記憶を持って過去に戻る。死ねば記憶はリセットされ、そして続かず、終わりに飲み込まれる。俺とプロフェッサーが過去、歴史改変船がリングを通って過去改変を行った時に危惧していた事。それが、自分たちの意思で干渉できない過去改変への懸念だった。
だが俺たちは運命か必然か、それによって生かされた。なら、俺たちは戦う。リングを壊し、事故を起こす。
二人で日にちを確認する。先程リングに接近した時、座標があまりにも違い過ぎたことを認識した。位置がおかしいのなら日にちはどうだ?
「……いや、やはり今日で間違いない。旅が始まった日だ。今日で正解なんだ、やはり。リングに近づこう」
月日も曜日も間違いはなかった。あれがズレているのは座標だけなのか。だとすれば、事故は起こせるかもしれない。リングの内側が怪しく輝き、中から無数のアンドロイドが飛び降りてくる。
「アンドロイドだ!」
「機械人間が降りてきたぞ!!」
「大型アンドロイドまでいやがる。守りが固いぞ、まずは大型アンドロイドの排除を優先しろ! 」
アンドロイドの中には大型の個体も混じっている。膨れた瓢箪のような歪な形をしている大型は、バルカン砲や粒子グレネードのような強力な武装を持ち、歩兵部隊を容易く鎮圧せしめる火力を持っている。
だが反面、装甲が剥がれたあとは簡単に怯むため、爆発力のあるロケットランチャーか、一撃の強力なショットガンで倒すべき相手だ。とにかくショットガンを使おう。並の相手は一撃、強力な個体もすぐに沈黙させられる。
スローターE22GAの子弾がフルチョークバレルによって大きく絞られ、眼前の的に纏まって着弾する。マガジンチューブから次弾を装填し撃ち出せば、その都度敵が倒れる。遅れて大尉たちも戦闘に参加し、アンドロイドを近づけないとばかりに弾幕を張って怯ませ続けている。装甲の剥がれた相手にはかんしゃく玉がよく効く。3号弾が着弾したと同時にそこかしこで大小様々な爆発が起き、気持ちの悪い緑の鮮血が散らばる。
大型アンドロイドを難なく倒せば、アンドロイドの数も気付けばかなり減っている。かなりの数を倒していたようだ。レーダーにも近辺の敵反応は見られない。プロフェッサーは無事、大尉たちの部隊も特に損害はないようだ。続けて前進する。
「リングが光ってる。何をするつもりなんだ!?」
「見ろ、船が消えたぞ!!」
彼らはそうだ。この時間軸にしか存在しないたった一人の自分という枠組み。そのたった一人の彼らが今見ている光景は、俺たちは過去何度も見た。歴史を変える一手を、過去に遡って打てる。後出しジャンケンや、出す手札の見えているポーカー。手探りで抵抗手段を模索し続ける人類と違い、奴らは常に最善手を打てるのだ。
…………アーマード・コアの存在。それがあれば戦いの流れを変えられる。なら、今この段階で変えてしまってもいいのではないか?
俺は後ろに振り返り、大尉たちに言う。こんなこと、本当ならするべきじゃない。何が理由で事故が起こらなくなるか分からないからだ。だが今の俺は、何か衝動に突き動かされていた。プロフェッサーもまた同じように立ち止まるが、俺の意図までは汲み取れなかった。
「……聞いてくれ。俺たち……俺とプロフェッサーは、あのリングの役割を知っている」
「役割を知っている? それは……いや、待て。お前今、プロフェッサーと言ったか? こいつがか?」
大尉がプロフェッサーを見る。プロフェッサーは眼鏡をかけ直して頷く。
「……そうだ。私がプロフェッサーだ、大尉」
「そうか……聞いた事があると思っていた。あいつもプロフェッサーと、そう言っていた。お前が、あいつの待っていたプロフェッサーだったのか」
あいつ。それは多分、徴兵された隊員達を集めたあの時、ベース251で話した最後まで勇敢だった少女の事だろう。プロフェッサーもその
「あいつ……それはもしかして、あの子か? マザーシップを単機で撃墜した……」
「! そうだ! ……そうか、お前が…………。 あいつはお前を待つ為に、懸命に戦い、生き延びようとした。せめて祈ってやれ。この戦いが終わったらな」
「………ああ、そうするつもりだ」
この3年間、ずっと少女は姿を見せていないという。戦闘に巻き込まれて跡形もなく消えてしまったというのが全員の見解らしい。
接近するタイプ3ドローンを撃墜しつつ思考する。
生きていればどこかのタイミングで会う機会もあったろう。プライマー襲来から2年間、活躍は聞いても戦場を共にすることはなかった。七機目を撃ち落とす。
リングの防衛戦力は、4回目の時に比べると多少強くなってはいるが、所詮付け焼刃程度に過ぎない。以前は100匹程の怪物やタイプ2ドローンがいた程度だったことを考えると、主力が置き換わったぐらいの変化しかない。
「狙撃用の、あるいは遠距離用の武器はあるか?」
「グラントM40。射程よし、威力よし、精度よしだ。技研には頭が上がらないよ」
「使いこなせるからこその武器だ。 遣い手が居なければ武器は武器としての意味を成さない」
遠距離用の武器が必要な理由は、リング自体の大きさにある。弱点はリング下部にあるが、その下部にさえ、PA-11のような旧式アサルトライフルは疎か、上位グレードモデルであるTストークアサルトライフルシリーズすら届かない。狙撃兵か対戦車猟兵だけが必然的にリングへの攻撃を行えるという事だ。それに備えて俺はライフルを捨て、ロケットランチャーを取った。
前回はスナイパーライフル、その前はセミオートライフルを使った。射程が長くなければリングへの攻撃は事実上不可能に等しかった。
「タイプ3ドローンの全滅を確認!」
「あいつは凄いぞ!」
全てのタイプ3ドローンを破壊した事で、リングを守る戦力は無くなった。あとはリング下部の制御装置を破壊するだけだ。
話を戻そう。
「あのリングの役割。それは時間の移動だとプロフェッサーは考えている。突拍子もない話かもしれないが、俺とプロフェッサーはあのリングを過去4回に渡って壊してきた。そして《事故》を起こし、過去へ戻って戦局を変えてきた。
……今のところその全てが失敗に終わっているがな。信じなくてもいい。ただ、もし賭けてみようと思えるのなら。俺たちに付かず離れずでいてくれ……」
そしていよいよリングの真下に到達する。赤く光るパーツが目前に迫り、プロフェッサーの語気が荒ぶる。
「戻ってきたぞ、ここが始まりだ! リング下部に、赤く光る制御装置がある。破壊してくれ!」
「わかった」
ロケットランチャーを構えた。
煩い。私は今眠ってるんだ。邪魔をしないで。
……いや、でも。私はどうして眠っているんだろう。起きなくていいのかな。そんなわけは無い。何かはわからないが、起きてやる事がある。
パチリと目が開く。
そうだ。アンドロイドとの交戦で私は左肩から先を失ったんだった。幸いそれ以外は無事みたいだけど、なんでか機械としての私が機能を停止するよう判断したらしい。
おかげで隊長ともハリケーンチームのみんなとも連絡が取れないし。あ、端末が無い。乱戦時に無くしちゃったのかな。あれがないとほかの味方と連絡が取れない……って。
私が見た光景は筆舌に尽くし難い絶望感を醸していた。赤く汚染された空、そして遠くに見える円状の巨大飛行物体。そして何よりも、守りたくても守れなかった、破壊され尽くした町。ベース248で一度死んだ後、何があったのか。
その意味を理解するのにさほど時間は要さなかった。人類は負けたのだ。アンドロイドの投下による初動の防衛戦に失敗した各地のEDFは壊滅。組織的な抵抗を続けられる部隊は無く、近隣に残っていた部隊も、私たち特殊遊撃隊ハリケーンチームが指揮を執るベース251残存部隊だけだった。
「行かないと」
傍らに落ちていた大口径狙撃銃ライサンダーを手に、私はあの円へと歩き出した。銃声が聞こえる。誰かが戦っている。行かなきゃ。私が守らなきゃ、彼らを。
グラントM40の弾を撃ち切り、リロードしていた時のことだった。突然制御装置に一発の弾丸が直撃する。ここの誰も狙撃銃なんて持っていない。制御装置の下を見る。
俺は驚いたと言わざるを得ない。
隻腕の人間が、自分よりも身長があり、とにかく反動と威力が馬鹿げている事で名高いライサンダーを片手で持ち上げ、あろう事か反動を押し殺すことの出来ない真上に撃ち上げている。
隻腕は俺たちを見つけて駆け寄る。近付いてきてようやく分かったのだが、よく見ると隻腕の少女は腹部や足にも大きな傷が見られ、特に痛々しい左眼の欠損だ。顔の左側が殆ど焼け焦げていて、あまりに酷い傷であるにも関わらず、少女は嬉しそうな顔でこちらを見ている。
……いや、正確には俺の後ろに立っているプロフェッサーと大尉に対してだった。
「プロフェッサー! それに隊長!!」
「おっ……お、お前……っ!!」
「私の目が信じられない、まさか本当に無事だったのか!」
再会を喜ぶ三人。この反応からするに、大尉の言うところでいうあいつ、プロフェッサーの言うACを駆る少女、それがこの子であるようだった。
「その怪我、お前は……そうか、お前もアンドロイドだったな。正確にはサイボーグか」
「た、大尉ッ! この少女は人間なんですか!?」
「馬鹿野郎、コイツは中尉なんだぞ! もっと敬え、俺の大切な部下だ!!」
「えっ!? し、失礼いたしました……?」
「やめてよ隊長、私はただの兵士に過ぎない。それに、あなたの方こそ。大尉になれたんだね!」
「うむ。まあ戦況は奮わないが。だが安心しろ。リングを落とす、その時が来た」
雑談に花を咲かせる中尉と大尉。元々同じ部隊の仲間だったらしい。
「あー、話しているところ悪いが、時間が無い。リングを破壊する。怖い奴、現実を受け入れたくない奴はここから逃げろ。多分離れれば間に合う。過去を変える覚悟がある奴は残れ。俺と共に……ストームチームとして、戦ってくれ」
大尉が俺の言葉に驚愕する。
「ストームチーム……!? ではまさか、あなたがあの!」
「隠していて悪かった。本当は正体を隠して俺たちだけで過去に飛ぶつもりだった。だが、彼女の事を思い出して気が変わったんだ。次なら勝てるのではないか? とな。大尉。来るか?」
「はっ! 光栄であります!!」
中尉もプロフェッサーも、大尉の部下たちも覚悟を決めたように頷く。きっとこれから飛ぶ時間はみんなバラバラだ。どの時間の自分として目覚めるかはわからない。でも、ただ1つわかることがある。
次の俺は、負けない。
俺たちがいる。
ストームチームがいる。
ライサンダーとグラントM40の弾頭が直撃し、リングは火を噴き傾く。大尉が焦ったように見上げる。
「なんだ!?」
「動くな、共に来るならな」
「よかった、成功だ。やったぞ!」
最後の懸念であった、座標のズレによる条件の不一致によって事故が起こらない可能性があるという不安が解消された。プロフェッサーが光を放つリングの制御装置を見上げる。俺たち全員がリングを見上げていた。
「いいぞ、始まる!!」
「これが……歴史の転換点になるのね」
「ああ。 ……これから死ぬ程苦しい目に会う。覚悟はいいか?」
「「サー、イエッサー!!」」
……いい返事だ。
俺は笑って、光に飲み込まれるみんなを一瞥した。
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はじまる。
歴史を動かす時が来た。