地球を防衛する傭兵になりました   作:No.28

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一話 序章´

 

 

 

 

「………ッ!!」

 

 痛い。頭が割れるような痛みに襲われ、視界は閃光に包まれる。今何が起きた? ……怪我はない。無くした左腕もある。

 

 そして少しずつ視界が明瞭になっていく。左眼も元に戻っているようだ。キョロキョロと周囲を見渡せば、そこはACのコクピットの中だ。離れていた期間は一年ちょっとだけだったが、それでも涙が出るほど懐かしい。

 

「コム」

「システム起動。おはようございます、ウィンディ」

 

 ああ、コムだ。帰ってきた。

 

 ……ありがとう、思わずそんな声が漏れる。コムには理解できないか。唐突に目の前の主人が突拍子もなく礼を言うなんて、コンピュータには分からないかもしれない。だけど、私はとにかく礼を言いたかった。

 

「? 発言の意図が不明です、すみません」

「ああ、いや……ごめん、なんでもないよ」

 

 謝ってから、ACのコクピットから飛び降りる。強化人間故の身体能力向上で、落下時の衝撃吸収が容易なおかげでこういう事も可能なのが、このボディーのありがたいところだ。

 

 ガレージには何十人もの整備員が慌ただしく走っている。私は彼らに挨拶しながら、見知った廊下に出る。丁度、昔の情報屋と会った。

 

「……あ? お、おお……ウィンディじゃないか。お前、珍しいな。外に出てくるなんざ」

「……別に。普通、だと思うよ」

「……なんか、雰囲気変わったな。いつの間に人見知りやめたんだ?」

「なっ……!」

「……………ん???」

 

 またこの男は失礼な事をなんの躊躇いもなく言うのだから。エド・ワイズは、私が24時間の戦争を生き延びた時の情報バイヤーだった。とにかく歯に衣着せぬ物言いが嫌で触れ合いをできるだけ絶っていたのだが……今にして思えばこの男も、少々皮肉屋な点を除けば普通のEDF隊員とさほど変わらない。

 

「……ふふっ、なんでもないよ。それより依頼、来てるんだよね?」

「え? ……おぉ…おう。なんかマジでお前、頭打ったのか? キャンセルした方が良いか?」

「それはダメ。それは受ける事にしてるの。中身は機密だから、今ここで渡してもらってもいい?」

「ああ、勿論だ。……見違えたな。昨日までのお前はとにかく人が嫌いで、機体の中に閉じこもってる、そんな印象だった。今のお前は自信に溢れてる。何かあったのか?」

 

 エドが聞く。あったにはあった。

 

「うん、色々あったよ。色々ね。これからも。じゃあもう行くね。また後でね」

「あ、おい待て。シーラには挨拶しねえのか? あいつもあいつなりに、お前のこと心配してたんだぜ」

「あー……うん、今はいいや。全部終わって、帰ってきたらするよ。また後で」

「そうか……まあいいさ。また後でな」

 

 エドと別れる。この後にやる事は決まっている。(プライマー)が何をするわかっている以上、それに適したアセンブルを行う。幸い私はACの操縦に関する才能には溢れていたから、どんな脚部でも一度触ってしまえばすぐに慣れる。一番習熟に時間を要したのはフロート型脚部だったが。

 

 ガレージに入って整備員に指示を下す。彼らは的確に動いてくれる優秀なエンジニアだ。

 

「機体を変更します。言う通りに。まず脚部ですが……」

 

 

 

 

 

 

 

 そうして完成させる新しい機体と共に、AC名もレイヴン名も改める事にする。私はこれからレイヴン名ハリケーン。AC名はストームとする。

 

 

 

 脚部は変わらず中量二脚CR-LH89Fを採用。積載量と消費ENの軽さは私の戦闘スタイルから外す事はもう難しい。

 コアには、EN弾補充機能が搭載されたイクシードオービット搭載型コアC01-GAEAを選択、豊富な弾数と弾薬の自然回復という継戦能力の高さを活かし、怪物との戦闘に備える。

 怪物が生体兵器扱いかは分からないが、念の為CR-YH85SRをヘッドジョイントに据え、作戦遂行型と名高いシリーズのヘッドパーツを搭載した。

 腕は全体的に優秀な中量級腕部A07-LEMURを選んだ。特に防御性能とAP面に優れるこの腕は、怪物やアンドロイドとの戦いで大いに役に立ってくれるだろう。

 内装に変更は無い。FCSに若干の不安は残るが、そこは腕で解決する。ロック範囲が狭まった事でより狙った敵に狙いを絞れると思えば安いものだ。私がやる戦いは一対一ではなく、多対多なのだから。

 

 武装だが、こちらもまた一新してプライマーの新兵器群へ対抗する。アンドロイドに対抗する為には、エネルギーマシンガンなどよりも弾持ちが良く、貫通能力に優れる武装が欲しい。

 そのため、ミラージュ製ライフルWR01R-SHADOWを装備した。これは火力と装弾数の多さから主力となる。弾薬も単純なライフル弾である為、すぐに工場などへ持っていけば増産は容易いだろう。

 左腕には弾数に優れるパルスライフルYWH14PU-ROC4で、火力の底上げを図った。パルスライフルやレーザーライフル系の武装は、無くした弾をチャージするのに、ジェネレータから直接エネルギーを引っ張ってきて充電すれば済む話なので、エネルギーマシンガンとは勝手が違う。あちらは文字通りの産業廃棄物である。

 そして肩部武装だが、パルスライフルやライフルと同じ理由で生産しやすく、補充の必要が無い武装に絞る。まず右肩。こちらにはリニアガンCR-WB91LGLを、そして左肩にはレールガンWB14RG-LADONを搭載する。その弾頭の大きさや発射速度から、リニアガンには貫通効果が備わっていると思って良い。そのため怪物に肉薄された時は直線での退路を確保するために用いる。

 逆にレールガンはEN型弾を用い、弾速が凄まじく速い高速弾を射出する。これによって大型アンドロイドや、遠方のマザーシップの砲台などの目標へ射撃し、迎え討つ事が可能となる。そして予備に、レーザーブレードCR-WL06LB4を搭載する。リロード時間の長さがネックだが、それ以外は非常にハイレベルで纏まった逸品だ。

 

 え? ……格納型のコアじゃないから格納不可能?

 

 誰が格納するなんて言ったんですか? ブレードレンジが多少短くなってもいいから小型化。パルスライフルの銃身側面に取り付けて。いつでも起動できるように調節しておいてください。

 ああそれと、また今後もアセンブルを頼む機会があります。その時はまた頼みますね。

 

 

 

 

 

 

 

『AC1、ストーム、出撃。ハッチ開きます』

 

 格納されていた私の一番機、ストームがハッチから出る。私は既に機体に搭乗しており、いつでも操縦可能だ。

 

 依頼内容は、5年前のアレと全く変わらない。ベルザ高原へと来て欲しいという依頼だ。アライアンスから送られてくる騙しの依頼。後方から来る敵ACの砲撃によって私は死亡し、何らかの原因でベルザからEDF基地ベース229に飛ばされる。理由は不明だが……。

 

 だからとにかく、依頼に出てあの場所で殺されなきゃいけない。だが今回はオーバードブースト機構の無いコアを採用しているから、巡航オーバードブーストは使えない、陸路で向かうのも面倒くさい。じゃあどうしようか。

 

 

 

 

 

 ……レイヴン特有の、ブーストジャンプと慣性による移動を繰り返して、私はベルザ高原内部の作戦区域内に陸路で突入した。トラック運転手を使おうとも思ったが、奇襲を受けるのは間違いなく、それに巻き込まれて死亡するのは可哀想だったから、さすがにやめた。

 

「こちらハリケーン。目標地点へ到達」

『ハリケーン? ………ああ、直前にレイヴンネームの変更申請を出していたのか。困るな、許可してないうちは以前の名前で活動してくれ』

 

 アライアンス職員オペレーターが私の勝手なネーム変更を諌める。どうせそんな事どうでも良い癖に、演技が随分とうまいことだ。

 

「で、ACはどこ?」

『AC? いいや、ここでの君の任務は敵MTの──』

 

「じゃあ今飛んできたグレネードはどう説明する?」

『……!?』

 

 軽くひょいと避けて、遠くで爆発するグレネードを見ながら説明を促す。

 

「どうしたの? 答えられないの?」

『クソ…! 予期してはいたが、化け物め。予備のACを投入、生きては返すな!!』

 

 その言葉と同時に、グレネードランチャーを構える重量二脚、リニアライフルとマシンガンを持つ標準的な軽量二脚、クレストのレーザーキャノンを搭載した四脚が姿を見せる。もしあの時死んでいなければ、この三機ものACを相手することになっていたのか。とても素敵な事だ。だが。

 

「……ふふ」

『? ……敵AC、攻撃してきません』

『こちらバーチャスファイター、意図が不明だ。何が起きている?』

『わ、わからん。後詰の戦力を連れてきているのか?』

 

 焦ったような言葉が面白い。けど、それだけだ。全ての敵が倒れたこの世界で活動したって、もう何も面白味はない。それよりもやる事が残っているからだ。

 どうせなら、と意向返しに彼らが私を殺そうとしていた理由を言い当てる。といってもどうせたかが知れているというものだ。

 

「当ててあげるよ、どうして私を狙ったか。大方、あなた達が世界を掌握するためには私のような者が邪魔になるからでしょう? 単騎で百倍以上もの敵を相手に張り合える、そんな戦力である私が。

 

 ん〜、ちょっと違うかな? ……正確にはその不穏分子となりうる、レイヴンとなる存在全てが。でしょ?」

 

『………ッ!! 貴様……どこまで知っている!』

「全部憶測。まあ、そこの人達は知らなかったようだけど」

 

 明らかに目の前のレイヴン達に動揺が走っている。もちろん自分たちも後で排除される予定だなどとは思っていなかったのだろう。いの一番に立ち直った一人が高く飛び上がり、私の近くに着地する。軽量二脚の機体だ。そのまま旋回してAC2機の正面を見据える。

 

『何をするつもりだ、バーチャスファイター!』

「騙し討ちは主義じゃない。それを思い出した」

 

 二人のレイヴンが、私達に銃を向ける。

 

『畜生、裏切ったな!』

『こちらデモニュクス、両方排除する!』

『構わん。後続も来ている、叩き潰せ!』

 

「あなたの事は聞いた事がある。後で決闘と洒落こもう」

「いいよ。それと、私は話に聞くほど高潔な人間じゃない。ただあの時、最後の一人(ラストレイヴン)であろうとしただけ。 ……覚悟はいい?」

「いいぞ!」

 

 私の右腕ライフルが、バーチャスファイターの左腕リニアライフルが、それぞれの見つめる敵の方を向く。5年ぶりの対AC戦闘だ、腕が鳴る。飛び上がりながらダブルトリガーと呼ばれる集中攻撃で、両手の武器から放たれるパルス弾とライフル弾が、重量二脚に直撃する。

 

 重量二脚はバズーカを私に向かって撃ち込むが、そんな弾速の遅い武器では当たらない。重量過多を常にブースターで補っている私は、いわばハンデを課してやっているようなものだ。バズーカ程度当てられなくては、一線を退いたジャック・Oにすら劣るぞ。

 

『なぜ当たらない!』

「弱いから」

 

 それは自分への戒めでもある。強ければ勝ち残れる。私は弱かったから負けた。次は負けない。

 その場で跳躍して飛び上がり、レールガンをチャージする。可哀想だが、彼は弱かった。だから負ける。

 

『なっ……ば、馬鹿なっ!』

「まあ、終わりだよね」

 

 そのまま放たれたレールガンは凄まじい弾速を伴ってACの防御スクリーンをコクピットごと貫き、沈黙させる。向こうの四脚も、バーチャスファイターに追い詰められて苦し紛れにレーザーキャノンを撃つが、焦りがあったのか発射直前に飛び上がってしまい、ロックが切れて明後日の方向に飛んでいく。

 

『ま、待て! 降参だ!!』

「……ああ言っているが、どうする?」

「んー……逃がしちゃっていいよ。どうせ長く持たないし」

 

『ひぃっ………!』

 

 四脚は逃げていく。大方複数人で依頼を受けて、他者が囮をしている間に威力の高い一撃を撃ち込んで敵を無力化。軽い労力で無理なく成り上がってきたタイプだ。

 

 四脚の撤退と入れ違いになるように、五機の巨大兵器が姿を見せた。その全てが見た事のある同一機体だった。

 

「馬鹿な、レビヤタンが五機……奴ら戦争でもおっぱじめるつもりなのか」

「そうだと思うよ」

 

 新たな戦力がさらに向かってくる。高級MTが15機。クレスト製標準MT20機、戦闘機編隊6、ヘリ7。まだまだ来る。

 

「どこまでこんな……世界を滅ぼすつもりか…」

「いいや、滅ぼすんじゃない。元鞘に戻ろうとしている。レイヤード時代に」

「……正気か? なぜ地下に潜る。 まさか、2年前の再現のために自らが管理者となるつもりか?」

 

 2年前。檻からの解放。レイヴンは地上へと飛び立ち、空へと墜ちていった。初めて人を殺した当時を思い出す。

 

 お世話になった先輩レイヴン(ゲド)や、同期の親友(アップルボーイ)、鎬を削り合った良きライバル(エヴァンジェ)に、友として共闘した腐れ縁(ジャック・O)、そして最後に相応しい者を決める為共に戦った好敵手(ジナイーダ)

 

 彼らの頑張りを無に返してまで、クレスト・ミラージュ・キサラギらアライアンスは、かつてのレイヤードに閉じこもり、緩やかな破滅を迎えようとしている。

 

「だけどもう、どうでもいい」

「…え?」

 

 私の言葉に、バーチャスファイターは振り向く。

 

「バーチャスファイター。名前は?」

「レイヴンネームか? ……アグレッサーだ。それが?」

「アグレッサー。良いね。私と一緒に来る覚悟はある?」

 

 アグレッサーは少し惑うが、すぐに意志を固める。

 

「……当然だ。あなたと共に行けるなら、何処へでも」

「良い答えだね」

 

 私は抵抗を辞める。アグレッサーは尚も武器を下ろそうとしないが、私の態度に少しどうすべきか迷い、同じように武器を下ろした。

 

「……何を?」

「私たちがこれから行くのは、もうひとつの世界。こんな薄暗く汚い世界よりも綺麗で、そして滅びゆく世界。あなたも共に来てほしい」

「……戦いを辞めることで、新たな場所であなたと会えるのなら。一度きりとはいえ、共に戦えて光栄だ」

 

「一度きりじゃないよ。これから何度も繰り返す事になる。その一度きりをね」

『撃てェッ!!』

『敵は抵抗をやめた! 撃ち込め!!』

 

 眩い閃光が視界を包む。始まる。

 

「……何度も? うッ───」

「行こう、一緒に───」

 

 凄まじい光が眼前に迫ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 う、うぅん………。

 

 私は、どうなったんだろう……?

 

 目を覚ます。森の中、コクピットに映るサブカメラ越しの森林を見て、私は確信へ至った。

 

「そうか、成功したんだ!!」

「……な、なんだ……一体何が。ここはどこだ……?」

 

 ACの起動を終えて周囲を見渡せば、少し離れた位置にアグレッサーのACバーチャスファイターが膝を着いて倒れかけている。私が近くに寄ればそれに気付いたのか、自主的にACを起動する。

 ここでひとつ分かったことがある。私達の世界からこの地球にやってくる時に使った弾薬や負った損傷がどうなるか。

 

 私が初めてこの世界に来たあの時、グレネードランチャーに攻撃されて一撃で機体が使い物にならなくなった。もしその状態で転送されるのであれば、機体は壊れていてしかるべきだろう。

 それなのに機体は一切の損傷なく、私と一緒に転送されてきた。つまり、私の仮説はこうだ。

 

 機体ごと身体が転送される時、それらは直前の姿で保存され、そして何が起ころうが保存された状態まで巻き戻ってこの世界に送られる。

 恐らくその保存というもののタイミングが、AC用ガレージを出る直前までなのだろう。

 

「説明を願う、あー………呼び方は変えた方が?」

「うん、もうラストレイヴンじゃないしね。ハリケーンと呼んで、アグレッサー」

「了解、ハリケーン。で、今はどういう状況なんだ?」

 

 アグレッサーは初めてここに来たからわからないだろう。私も原理は分からないが、という前提を踏まえた上で説明する。

 

「ここは、私がさっき言っていた滅びゆく世界。私が騙しの依頼を受けてベルザ高原に来て、そして死ぬと、私はこの世界で目覚めることになっている……らしい。前回、つまり5年前が初めてだったから、まだわからないけど、概ね間違っては無いと思う」

「5年前? い、いやいや待ってくれ。じゃあなんだ、俺たちは過去に来ているとでも言うのか? 前回って事は一度来た事があるってのはわかる。だが、時間を飛び越すなんてのは聞いていないぞ」

 

 通信越しにアグレッサーが困惑する。何も事情を知らないのに唐突に《過去に来た》みたいな物言いをされると誰だって惑わされるだろう。私も多分そうなる。

 

「つまりあの時あの時間、あの依頼を受けて死ねば、私達はここに来れる。最後にガレージを出た時、そのままの機体で。なぜ機体ごと来れるのかはわからない。でも、ここで私は戦わないといけない。貴方にも、付き合って貰いたかった」

 

 アグレッサーは息を吐いて、少し間を開けてから続ける。

 

「……わかった、わかったよ。突拍子もない話だが、現にこうして知らない場所にいる。それに、あなたに協力すると決めたからな」

 

 そう言うとアグレッサーのAC、バーチャスファイターが立ち上がる。60メートル左後方にいたようだ。そちらの方に向けば彼の機体は私を向いており、行動からも言動からも読み取れるとおり、その意志を固めたようだ。

 

 なら早速やる事がある。彼にも付き合ってもらおう。

 

『生体兵器の反応を確認。敵数60』

「生体? ……AMIDAかっ!」

 

 やっぱりそういう認識なんだなぁ。私も同じことを思ってきたのかと思うと、やはり生物の兵器イコールAMIDAという公式が出来上がっているのはキサラギ社の悪いところだ。

 

「聞いて。ここにはアライアンスも何も無い。クレストもミラージュも、キサラギだって。ここにあるのは我々だけ。そして守るべき人々と、倒すべき敵」

「人々を守る、か。面白い」

 

 私の言葉に焚き付けられたらしい。流石は高潔な(バーチャス)戦士(ファイター)だ。彼の軽量二脚と私の中量二脚があれば、更にマザーシップを撃墜し、プライマーを追い払ってやれるはずだ。

 α型の怪物がやってくる。ライフル弾を使うのはもったいない。こいつには充填が早めで補充が必要ない武器、つまりパルスライフルとレーザーブレードだけで戦おう。

 逆にバーチャスファイターの武装はマシンガンにリニアライフルと、全て実弾系である為あまり怪物の相手はさせたくない。実弾兵器はその場その場の補充が利かず、格納兵装にもよるが撃ち切ると戦闘能力がなくなってしまう。ちょうど補充の利くEN兵器を持っていなかった一度目の私のように。

 

「敵は強酸を放射して攻撃してくる。動き回っていれば当たらないから。ここは私がやるから見てて」

「わかった。見せてくれ」

 

 見本を見せよう。飛び上がって大きく後退し、近付いてきている個体から順にパルスライフルで焼いていく。やはりAC規格の武装なほぼ一撃で間違いない。エネルギーマシンガンで一撃なら、パルスライフルが一撃じゃない道理はないだろう。

 

 そのまま群れの戦闘を薙ぎ払えば、肩部レールガンを構え、チャージしたEN弾を群れの中心に放つ。穿たれた群れの中央が激しく爆発し、衝撃波が周囲の敵を巻き込む。レールガンは性質上爆発は起きないはずだが、ハンドレールガンの開発以前に作られたこのLADONは何故か小規模の爆発を起こす。AC同士の戦闘では巻き込む範囲などは計算に入れるまでもなかったが、対歩兵では十分に致死範囲の広い武器でもある。それは、怪物が相手でも同じだ。

 

 多数を巻き込んだことで散り散りになった怪物がバラバラに襲いかかってくる。それを迎撃するため、イクシードオービットを起動しつつ地面にゆっくり下りて、そのまま後退しながらパルスライフルで引き撃つ。

 急降下して着地すると、衝撃吸収の為に膝を曲げなければならず、そうすると大きな隙を晒してしまいかねない。それをしないためのホバリングだった。

 

 やがて最後の一体を倒せば、レーダーには何も映らなくなる。過去よりもずっと手馴れた方法で倒したからか、数が少なかったからか。それは分からないが、思っていたよりもずっと簡単に殲滅できた。

 

「AMIDAではなかった。ハリケーン、奴は一体?」

「侵略生物α。主にα型って呼ばれていて、強酸性の体液を撃ち出して攻撃。卵生で個体数も多く、プライマーの主力なんだと思う。 ……あ、プライマーっていうのはこれから私達が戦う敵ね」

「α型に、プライマー……。ふむ、覚えた」

 

 木々の裏に隠れていたアグレッサーが出てくる。敵の名前も教えたことだし、とりあえず最寄りの基地に行こう。確かベース229だったはず。

 

 ……懐かしいなぁ。お世話になったアンヴィルチームにまた会えるとは思っていなかった。アンドロイドに機体を破壊されてから、もう連絡のひとつも取れなかったから。

 どれ、久々に顔を見せよっかな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そ、そこの所属不明機2機は、速やかに武装解除! 貴機の所属を言え!!』

『人型だってのに、どう飛んでやがるんだ!!』

『どこかの国の新兵器なのか、あれは……?』

 

 ……だよね。覚えてるわけないよね。あの場(リング撃墜現場)にいなかったもんね。

 

「私は職業軍人では無い。ただの傭兵だ。そちらに攻撃する意思はない。そちらも武装を解除されたし」

『信じるな、攻撃されるぞ!』

『いや………。 全員、ニクスを降りろ!』

『隊長ッ!』

 

 下で色々やり取りが続いている。5年前に聞いたことのある会話だ。

 

『……了解。これでいいですか?』

『ああ、すまん。 傭兵、こちらは武装解除した。そちらも降りてきてくれないか?』

「わかった。アグレッサー、行こう」

「了解」

 

 コクピットが顕になり、私はそこから飛び降りる。アンヴィルチームの面々がこれに驚くのもいつも通りだ。

 

『馬鹿な、あの高さから飛び降りたぞ!』

『無傷……どうなってやがる』

 

 私は強化人間などというレベルではないぐらいに肉体が機械になっているので、身体能力の強化もまた、普通の人間と比べて著しい。一方アグレッサーは普通の人間のようなので、機体側面に備え付けられた梯子を使ってゆっくり降りている。私たち二人が地面に着いたと同時に、兵士が十人、ライフルを構えながら私を取り囲む。

 

 ……アレ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この少女と青年は一体なんなんだ。あのロボットは一体どこの国の兵器なんだ。そもそも、EDFという全世界に広がる軍事組織があるにもかかわらず傭兵をやっているなどという自己紹介。事実上、正体を明かしていないようなものだ。

 アンヴィルチームをまとめあげてもう二年になるが、紛争などはずっと発生していない。ココ最近はテロも無く、平和だった。たまに抗議してくる市民団体が押し寄せてくることはあるが、のらりくらり対応すれば躱せはしていた。

 

 だが、これは異常だ。傭兵ではなく特殊部隊、それも恐らく、単騎でEDF基地を壊滅させて有り余る戦闘能力を有していると思われる。それが2機も。何を考えているのか読めなかった。

 

「隊長、投降した二名の所属不明機はどうしますか?」

「……触れるな。有用かもしれんし、有害かもしれん。とにかく話をつけてくる。応接室に案内しておいてくれ。私もすぐ行く」

 

 了解と言ってアンヴィル3が部屋に二人を連れていく。私も行くか、対談と行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………だよなぁ。じゃあ話題を変えよう。あのロボットは……どこの国が作った? 戦闘ロボットの開発は、EDF主導のもと行われなければならない。それを反故にする国があるとなれば、相当な国際問題に発展する可能性だってある」

「国はありません。私たちは……信じられないかもしれませんが、別の世界から来ました。人類を守るために」

「人類を?」

 

 話し合いは、その根元を掴むことができなかった。曰く国に所属していなければ、別の世界から来たと。挙句には人類を守ると来た。心意気はEDFだが、連絡も無しに基地に押し掛けてくれば普通は武装した兵士を出動させてまで拘束したくもなる。

 そこは私の一存でどうにか有耶無耶に出来たが、基地司令との連絡で、あの機体……アーマード・コアとかいうものの詳細を把握せよと言われている。それとなく聞いてみれば、聞き出せるだろうか?

 いや、無理だろうな……。 突拍子も無いことを言って惑わせてくるのだから、そんな事を言う訳が───

 

「良いですよ。むしろその為にこちらに来た迄あります」

「え?」

 

 思わず聞き返す。急に素直になられると、なんだろうか。困る。いや助かるのは助かるが、誤魔化すラインと正直に話すラインがわからない。

 

「というか、待ってくれ。人類を守ると言っていたな。教えてくれ、何が人を襲う?」

「これも信じないかもしれませんが……。 4000年ほど前の話です。EDF設立のきっかけとなった出来事がありました」

 

 彼女は、ここにいる誰も……多分、司令官クラスでなくては知らないのであろう話をし始めた。突然始まった妄言にも近いそれは、しかし妙な信憑性を帯びていた。

 

「金のUFOが地球に墜落して、そこから神が現れた。情報部をやっていたっていう脱走兵から聞いたんだ。卵型の船が見つかれば、人類は勝てるって。でも勝てなかった。その子も私も、アンドロイドにやられてね」

 

 彼女はまるで、地球に襲来してきた未知の脅威と戦ってきたかのように話していた。普通なら妄想・妄言だと言って切り捨て、釈放するのだが、彼女は違う。まだ高校生ぐらいの年齢だというのに、その目は慈愛と、そして復讐の炎に呑まれている。

 

「私は勝てなかった。だから新しい人を連れてきた。彼が、私に協力してくれる。そして私たちは、人類を守るために貴方達と一緒に戦う」

「……言いたいことはわかった。だが君たちが言う事が妄想であると切り捨てる事もできる。証拠はあるのか?」

 

 自分でとても嫌らしいことを言っている自覚はある。だが、それを示せるのなら私たちは信じざるを得ない。敵の存在を、そして彼女たちが味方であるという事を。

 

「……あります。着いてきてください」

 

 …………行くしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『隊長、本当に基地の警備を放り出してまで十機もニクスを出す必要があるんですか?』

『俺もそう思う。隊長は急ぎすぎている。何を焦っているんだ』

 

 焦っているのは私では無い。彼女だ。どうやら彼女の取り巻きは状況の整理が出来ていないのか黙ったままで、彼女だけがこれから何が起きるかを見聞きして、あるいは実際に経験しているのだろう。

 

『いいから黙って彼女についていけ。全機、あのアーマード・コアを護衛せよ。何が起きるか分からない』

『……臆病なのは隊長だ。テロどころか抗議だってずっと起きてない。今更何があるっていうんだ』

 

 森に入りながら、部下が毒づく。分かっている。自分がいかに間抜けな事をしているか。だが。十年間EDFに勤務してきた勘としか言いようがないが、彼女は何かを知っている。

 

 ……そしてその答えは、早くも提示された。

 

『な、何だこの化け物は……!?』

『死んでいるのか? バルーン……とかじゃないよな』

『まだ血が出ている。……お前が?』

「そう。私がやった」

 

 アーマード・コアの少女が言う。化け物の傷は、どちらかと言うと銃創ではなく、超高熱の何かで焼き切ったようなものだった。多分、その武装のどれかが熱を放つ兵器なのだろう。

 

『こんな化け物が……一体、どこに……』

「こいつは侵略生物α。プライマーの尖兵」

『アルファに、プライマー? それが敵の名か?』

「理解が早くて助かる」

 

 いよいよもって、こいつは大変な事になりそうだ。

 

 

 






 アンヴィルチーム´
 かつてウィンディが所属していたチーム。今回はウィンディが混乱せずに情報を渡しているため、比較的早い段階で怪物の存在を認識できている。






 AC、バーチャスファイター

 頭部:YH08-MANTIS 高性能レーダー頭部
 コア:CR-C75U2 格納機能有
 腕部:A05-LANGUR 軽量、ブレード適性高
 脚部:CR-LH99XS 防御力と積載に特化

 FCS:CR-F73H 横に長い近接戦闘型
 ブースタ:CR-B83TP 高性能、高消費
 ジェネレータ:G02-MAGNOLIA バランスタイプ
 ラジエータ:ANANDA 軽量だが高消費

 右腕武器:CR-WR69M クレスト製高火力マシンガン
 左腕武器:CR-WH05RLA 三発毎に再装填、リニア
 右腕格納:WR12PU-ROC2 速射特化パルスライフル
 左腕格納:CR-WL79LB2 高威力高熱量ブレード

 機体速度もそこそこに、火力を確保した軽量二脚。どちらかというとEN兵器を多く装備する相手との射撃戦闘を想定した機体であり、マシンガンとリニアライフルによる同時攻撃は、例えタンク型ACであっても無視できない痛手を与えられる。
 反面継戦能力は最低クラスで、特にブースタが大食いの為長時間の飛行は難しい。ただしラジエータの性能のおかげで熱暴走には陥りにくくもある。一長一短で、弱点が浮き彫りながら性能は総じて高め。
 また、肩部武装を搭載していない。レーダーやミサイルのような補助兵装を搭載せず、頭部レーダーと必然的に短くなる戦闘時間で勝負するためである。



 アグレッサー
 ラストレイヴンが生まれた3日後、生き残った最後のレイヴンに憧れて自身もレイヴンとなった。卑怯な事が嫌いで、騙し討ちだと知った時、その相手が自分の尊敬していた人であると知った時に、彼は密かに裏切りを決意した。

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