地球を防衛する傭兵になりました   作:No.28

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 何? 装備は持って来れないのか!?
 ううむ、仕方あるまい。技術と記憶を持ってこれただけ、マシと考えるか。

 ! 非常警報……来たか、プライマーどもめ!
 目にものを見せてやる!!




SIDE STORY:四人目の男

 

 

 

 

 俺はガンケースに大切に保管されている猟銃を手に取り、愛用車の軽トラックに乗って市街地へと急行する。記憶の限りだと、俺の家の先にある市街地で怪物の群れが暴れ回っていた。今は8月下旬。ちょうど、プライマーどもの侵攻が始まった日だ。

 

 

 

 

 

 やがてまばらに家が見えてくると、やがてビルが視界を覆う。そこかしこから悲鳴が聞こえてきており、怪物の居場所は容易にわかった。5年前のあの時、俺は怪物を二体仕留めた。二体も、ではない。二体()()仕留められなかったのだ。

 

 以前、俺は弾をさほど持ってきていなかった。それは、まさか怪物が襲ってくるなど夢にも思っていなかったからだ。だが今は違う。怪物が来るとわかっていれば、弾を山ほど持ってきて、それを全部奴らにぶつけられる。

 

 怪物の姿を見つけ、散弾銃を引っ掴んでトラックから飛び降りる。予想通り、酸を吐かない黒いα型、いちばん弱いやつだ。

 

「喰らいやがれ、怪物!!」

 

 俺は叫んで、怪物に銃を向けて発砲した。散弾は怪物の甲殻を破り、その中身を覗かせる。怪物はまだ倒れないが、こいつには二発目がある。

 もう一度狙いをつけて発砲し、破れた甲殻の更に内側を穿てば、流石の怪物も生きてはいられず、倒れ伏す。

 すぐに次弾を装填する。記憶が間違っていなければこの街にいる怪物は6体、今一体倒したから、あと5体だ。以前EDFが到着するまでに倒せた数は2体だったせいで、市民に被害が及んだ。次は全部倒してやる!

 

 ベルトポーチには20発の散弾が入っている。前と同じようにしっかり狙って当てれば、俺なら余裕だ。

 

「いやぁぁぁっ!!」

「か、怪物だぁぁっ!」

 

「!! そっちか、怪物め!!」

 

 俺は猟銃を構えて市民の海を掻き分けて前進する。俺が守りたかった市民はあの時、もはや街に住んではいなかった。今は市民たちも無事だ。それならEDFたる俺が守らねばならない!

 

「うおおおおぉぉぉっ!!」

 

 OLらしい女性に噛み付こうとしていた怪物を発見し、散弾で牽制しつつ接近、リロードに入って撃った一発を装填する。残り19発。女性は腰が抜けているのか立てないようだ。俺にしがみついてくる。

 

「ひいっ……た、助けっ……!!」

「立て、下がっていろ!!」

 

 女性を手で後ろに庇い、散弾を放つ。あと18。拡散範囲が狭い為市民への誤射の心配は無い。それよりも今はアーマーを装着していない。噛みつかれたら終わりだ。正確に狙いを定めて、その頭部を甲殻ごと撃ち抜く。17。

 巨体が沈んでうんともすんとも言わなくなる事を確認し、俺は庇っていた女性に向き合う。

 

「無事か?」

「はっ……あ、た、助かりましたっ……!」

 

 無事なのを確認して、俺は次の目標へと移る。一刻も早く敵を倒し、市民を助けねば。残りの弾は17発。倒した敵の数は2、記憶の通りなら残り敵数は4。これなら余裕だ。

 

 建物の角を曲がれば、二体の怪物が市民を噛み、投げ出していた。あの高さから落ちれば、恐らくは助からまい。

 

「やめろっ!!」

 

 猟銃を撃って気を引き、後退しながらリロードする。

 

「弾……装填、よし!」

 

 リロードを終えて散弾を甲殻に撃ち込み、破壊された胴体部に続けて射撃する。残り15発。血を吹き出し倒れるが、その影から次の一体が迫ってきていた。噛みつきの体勢に入った怪物は、俺目掛けて突進してくる。

 

「うおっ!」

 

 既のところで横に身を投げ出し、ギリギリだが回避に成功する。そのまま背中を地面に押し付けて勢いのまま立ち上がり、ポーチの中からショットシェルを取り出して装填し、銃口を怪物に向ける。市民が怪物を避けているおかげで、ここにいるのは俺と奴だけだ。

 

 立て続けに二発撃ち込み、四体目の怪物を沈黙させたそばから、五体目が逃げてきた市民を追って路上にやってきた。好都合だ。俺は素早く一発のみ装填し、一発撃ち込んで怯ませ、続けて二発装填。それも全てくれてやる。

 

 一体に三発使ってしまったが、残りの弾は10発。五体目を倒すのに12発使っている事を考えれば、ペースは上々だろう。このまま次の敵を探したいが、レーダーが無いせいで自分で探さなければならない。こればかりは不便だ。それに猟銃のみでは心許ない。軍用ショットガンなら一撃で仕留められる貫通力があるというのに、狩猟用の散弾を使っている散弾銃だから一発だけでは甲殻を破壊するに留まってしまう。

 

「きゃぁぁぁああっ!!」

「! そっちか!!」

 

 俺は二発装填し、猟銃を持ってそちらへ向かう。その目の前で一人の男が立ち止まり、聞くように話しかけてくる。

 

「…………大尉?」

「なに!? お前は……新兵の一人か!」

「そうです、元……いや、コックの! 俺です!!」

 

 なんとそいつは俺の部下のひとりだった。俺はそいつとの再会を喜びたかったが、そんな時間はない。怪物を倒さねば。

 

「お前は後でEDFに入隊しろ。俺も奴を倒したらすぐに行く。行け!」

「大尉! 後はレンジャーに任せましょう。俺たちも!」

「俺が今やらねば! 市民が被害を受ける! お前は先に行って待っていろ!!」

 

 きかん坊を引き摺るように次の怪物を倒しに行く。路地を走り抜け、次の道路に出ると、悲鳴こそ遠くから聞こえるもののこの辺り一帯は静かだった。見れば道路には無残にも食いちぎられ、あるいは叩きつけられて絶命したのであろう市民たちの躯が横たわっていた。

 

「くそ……」

 

 どこだ。報いを受けさせてやる。俺は猟銃を構えてゆっくりと前進し、周囲を警戒した。だが、俺の耳が敵の足音をようやく捉えた時には既に遅かった。

 

「なに!? ぐわぁぁっ!!」

 

 衝撃だった。こいつは俺が来ることを予測していたのか、ビル壁に立って待ち伏せしていたのだ。俺が出てくるタイミングで食いつき、俺は猟銃を手放してしまう。

 

「や……めろぉっ……!!」

 

 両手でどうにかα型の牙を押し退けようとするが、やはり体躯の差が差なだけあって、向こうの方が数段上だった。俺は徐々に押され、その牙は遂に俺の着ているジャケットに食い込もうとしていた。その時だった。

 

「大尉ッ!!」

 

 後ろから着いてきていた部下が噛みつかれている俺に気付き、叫ぶ。その瞬間注意が部下に向いたのか力が緩む。

 

「うおおぉっ!!」

 

 俺は足を浮かせて膝を曲げ、思い切り目の部分を蹴りつけて怯ませる。目は流石に甲殻で守られておらず、ブチュリと嫌な音を立てて怯ませる。その隙を突いて牙を押し退け、着地しようとするが、思わぬ痛みで受身が取れず、地面に叩きつけられる。どうやら両手に食い込んだ牙が思ったよりも深いところに刺さったらしい。

 

 ズキズキと痛む手の傷を抑えつつも、取り落とした猟銃へ向かう。俺が目の前まで迫った時、猟銃をおもむろに拾い上げて怪物へ向ける部下。

 

 ダァン、ダァンと、連続して二発が怪物に撃ち込まれ、怪物は沈黙する。部下に助けられる形となった。

 

「大尉は無茶をしすぎです。少しは俺たちを頼って下さい」

「ふん、生意気な口を聞いたな? ……助かったぞ」

 

 俺は部下に肩を貸して貰い、路地を抜ける。市民たちはほとんど逃げ切れたらしい。犠牲を抑えることはできなかったが……それでも多くを、俺は救えたはずだ。

 

「大尉……まさか出会えるとは思っていませんでした。5年前のあの時、勇敢な民間人のおかげで沢山の命が救われたと、救助に来たレンジャー隊員に聞きました。貴方だったんですね」

「フン、当然の事だ。俺は大尉だぞ」

「ハハッ、なにを言うんです、大尉。俺たちはまだ民間人ですよ」

「ふっ………それもそうだな」

 

 笑いながら路地を抜けた俺たちは、EDF基地のある通りを歩く。だが、そこで俺は気付いた。太陽が俺たちの影を写すはずなのに、その更に後ろを巨大な影が覆っている。

 気付いて咄嗟に二人で振り返った時には、既に奴の体勢が噛み付こうとするそれに移っていた。

 

「伏せろ!」

 

 俺は迷わず部下を押していた。

 

「大尉ーーーッ!!」

 

 部下の叫びが聞こえてくる。次はお前が大尉になる番だ。

 

 そんなことを考えながら、妙にスローモーションになった世界を見ているように、視界がゆっくりと進行していく。戦いの日々、移ろう歴史、家族との思い出。これが走馬灯というやつか?

 

「伏せろッ!」

 

 その一言に俺はハッと気付けられ、頭を下げる。そのまま頭上を素早い何かが通っていき、破裂音と共に怪物は沈黙した。

 怪物の方を見れば既に事切れており、その傷口は爆発したかのように激しく裂傷を負っている。銃声のした方を見ると、赤と黒のアーマーを着た兵士達が、ショットガンスローターE20を構えて通信していた。

 

「こちらシータ5。怪物は衝撃に弱い模様。……立てるか?」

「……助かった」

 

 手を貸してもらって立ち上がる。傷に気付いた隊員……シータ5が、手を消毒して包帯を巻いてくれた。

 

「驚いたよ。ただの民間人が、街に入り込んだ怪物を駆除して回っている! ……なんて通報があった時は」

「当然の責務だ。俺は大尉だぞ」

「大尉? ……ああ、もしかして元国軍の方ですか?」

「いいや、俺は…………いや、なんでもない。それよりも、俺もEDFに入隊したい。伍長はどこにいる?」

 

「大尉! 無事ですか!?」

 

 部下が走り寄ってくる。どうにか無事だったか。それを聞いたシータ5は更に混乱する。

 

「?? ……大尉? やはり国軍……いや、なんでもいいか。EDFに入隊するには試験を受けて貰いますが、構いませんか?」

「無論だ。お前も来るよな?」

「はい、大尉」

 

 傷がついたジャケットを脱ぎ捨て、ブラウンのワイシャツになる。腕を捲り、傷を見る。深く刺さっていた傷だが、怪我の容態自体は思ったより酷いわけではないらしい。グレイプ輸送車両に乗り込んだ俺たちは、猟銃を忘れてきた事を思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あの二人。なんて成績の良さだ」

「体力もあれば動きも良い。動く的にも正確に命中させるし、訓練成績の上位を占めている。新兵には思えない。特にあの《大尉》と呼ばれていた訓練生はな」

 

 俺達は書類上の訓練成績を眺めていた。213訓練兵694番と、695番。特に大尉と呼ばれていた方は、群を抜いて成績が良い。入隊前は複数の怪物を倒していたと考えると、その身体能力の高さは逸材と言っても良い。

 

「……だが、規則は規則だ。規定通り6ヶ月の訓練期間を経て、正式にEDF陸戦歩兵部隊に所属させる。大尉呼ばわりの方は、最初から軍曹……いや、特務曹長でも良いかもしれないな」

「教官としてか? 確かに同期の中じゃリーダーシップもあったが……それほどか?」

「いや……それもあるが、それ以上に気迫を感じる。長年戦ってきたような……」

 

 ……訓練成績は、主に五段階で評価される。射撃能力、体力、判断力、集中力、そしてリーダーシップ。これらが高ければ高いほど、兵士として優秀な証なのだが……。

 

 一部、あるいは複数で五段階を取る優秀な兵の候補はちらほらと居るのだが、四つ以上か、あるいは五つ全てで五段階を獲得している兵士は二人だけだった。

 例の二人組だ。民間人とは思えない。何を経験すれば、あそこまで的確に、かつ正確に物事を判断し、確固たる決断のもと動けるというのか。それはまるでそれ以上に厳しい何かを耐えてきたように。

 

「こいつはハイスクールの体育大会じゃあないんだぞ」

「さぁな……。 思ったよりも修羅場を抜けてきたのかもな」

 

「どうでしょうね」

「! シータ5か。お前もどう思う?」

 

 部屋に入ってきた赤いヘルメットのレンジャー。シータ5を見て、意見を求めた。的確な判断能力と計算能力、そして観察眼を見出されエリート部隊シータチームに入ったシータ5であれば、彼等の優秀さの秘密が分かるだろうか?

 だが、その答えは分かり切っていた。わからないからこそ、彼も半ばふざけての答えを出す。

 

「もしかしたら彼等は、転生してきたのかもしれませんよ?」

「転生? あの、あれか。テレビで流行ってるやつ」

「情報が古いぜ。現代知識を持った人間が中世にタイムリープして、現代の知識で技術を発展させたりするやつだろ?」

 

「はい。まあ、とは言っても彼ら、大尉・部下、或いは新兵と呼び合っていましたし、同じ世界……それも戦争中の世界からやってきたのかも」

 

 それなら……と一瞬思うが、そもそも転生というのが馬鹿な話だ。そんなもの有り得るわけが無い。

 

「バカ言うな。突拍子も無い」

「納得できそうなのが怖いところだな」

 

 確かに……と、否定はできない。もしそうならあの能力の高さにも頷けるからだった。シータ5は踵を返して後ろ手に手を振る。

 

「じゃ、ボクは仕事があるので。また」

「ああ。気を付けろよ」

 

 シータ5が部屋を出る。

 

「……とりあえず、前線に配属するか?」

「だな。隊長として着任させよう」

 

 大尉の居場所は決まった。最前線しかない。彼もそれを望んでいるはずだ。部下の方はどうだか知らないが……。

 

 

 

 






 大尉(民間人)
 猟師。猟銃で武装し、市街に入り込んだ怪物五体を撃破。負傷するものの軽微であり、一週間後に痛みを残しながらも復帰。EDF隊員として前線配属となった。その実力はベテランのEDF隊員にも劣らない。顎髭がチャームポイント。

 元コックの部下(民間人)
 色々居たうちのコック。避難中に怪物と遭遇。逃げた先で大尉と出会い、彼の危機を助ける。大尉の強烈なしごきをタイムリープ前に受けており、更にそのまま絶望的な戦況を生き抜いた為か、特に鍛えられている。オールバックが特徴的。


 シータ5
 ベース213所属の特殊作戦部隊シータチームの隊員。全員がそれぞれの技術に精通する中、シータ5はその観察眼や判断能力の高さを買われ入隊。敵の弱点を的確に見抜き、α型への対処方法の有用性を確立させた。
 元ネタは『ま〜るい地球が四角くなった!?デジボク地球防衛軍 EARTH DEFENSE FORCE: WORLD BROTHER』陸戦兵 3α(シータ5)。
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