地球を防衛する傭兵になりました 作:No.28
2022年、9月29日
EDFヨーロッパ支部方面ベースマルセイユ
特筆事項:本作戦にて運用するコアドニクスの記録
作戦を説明する。依頼主は、EDF欧州方面本部。目標は、三ヶ月前に怪物からの攻撃を受けて失われたベースマルセイユの奪還だ。音声データを再生するぞ。
───の奪還である。マルセイユ基地はその設備の豊富さ、規模の大きさからも、敵の初動攻撃で陥落するにはあまりにも惜しい拠点だった。我々はこのエリアを奪還し、戦力を結集させることで、プライマーへ対する一大反攻作戦の要としたい。
この作戦の重要性は分かって貰えただろうか。あとは君に任せる。それと、プロフェッサーが機体のデータを欲しがっている。戦闘行動の一切を録画し、後日提出。それらを守ってくれるなら、あとはやりたいようにやってくれ。任せたぞ。
──だと。この依頼は受諾するよな?
………仲間の仇を取る。負けられない。
作戦エリアに到着する。視界が開けた。森林地帯を抜けて道路に抜け、そのままブースターで移動していると、街が見えてくる。
今は秋だ。木々が枯れ木の葉は落ち、外気温と変わらず過ごしやすいはずのコクピットは、心做しか冷えている気がする。それは死んでいった部隊の仲間たちの亡霊が、私の背中に宿っているからだ。
『フォーゲル、聞こえるか』
「こちらフォーゲル、聞こえるわ、どうぞ」
私は復讐の為に舞い戻ってきたのだ。
『よし。今回の作戦は、マルセイユ基地を防御しているエイリアン部隊の排除だ。マルセイユ基地は地下施設が無い代わりに地上設備が多く整っており、プライマーの初動侵攻を食い止めていた、仏国最大のEDF拠点……いや、すまん。知っている事だったな』
「いいから続きを」
『………わかった。 マルセイユ基地に確認されているエイリアンは36体。中にはα型やβ型といった怪物も確認されている。単機を投入するにはちと多すぎるが……聞いているか?』
やっと巡ってきた復讐の機会だ。この好機を逃す事はできない。私は自分の搭乗する試作試験型コアドニクス『フォーゲル』の最終確認を行う。
標準的な二脚型、出力強化アンプリファイア搭載レーザーライフル、40ミリグレネードマシンガン、ショルダーキャノン、スプレッドミサイル。中距離での戦闘に特化しつつ、近距離でも迎撃可能な機体に仕上がっている。
『聞いているか、応答せよ』
「……聞いてる。いいから続きを話して」
私が突き放すように言うのを、オペレータは気に食わないようだ。それがなんだというのか。
『なあ、フォーゲル……おい、ラナ。お前はもうひとりじゃないんだぞ。仲間もいるだろ』
「アイツらを仲間になんて認めない。私の仲間はマルセイユで死んだの」
結局マルセイユで生き残った同期はこの男だけだった。腐れ縁だったが、私はこの男が嫌いだ。共に戦ったマルセイユの仲間を、ただ死んだ……それだけで切り捨てて他の基地に移ったから。私はそれが許せなくて、ここに固執していた。いつか一人でだって取り返してみせる。みんなの仇を取る。それだけを考えて。
『ラナ、いい加減にしろよお前。アイツら、お前が単独で出るって聞いて心配していたんだぞ』
「もういいでしょ。通信回線封鎖、前進して敵を攻撃。ラナ機フォーゲル、16:32状況開始」
無線通信を一方的に遮断してしまい、3キロメートル先に見えるマルセイユ基地の敵部隊に接近、攻撃を開始する。
まずはスプレッドミサイルの有効射程内に敵を収め、そこから110mm滑腔砲で攻撃する。徹甲弾を高初速で打ち出すショルダーキャノンなら、先制攻撃には最適だ。
その後は訓練通り、ミサイルで中距離戦を展開。近づいた敵にはレーザーライフルを撃ち込み、更に近づいた敵には40ミリグレネードマシンガンが火を噴く。榴弾を連続射出するこれは怪物退治には最適な武器だ。前回のβ型駆除作戦で前もって体験済みだった。
私たち、選ばれた3人のコアドニクス・テスターには、それぞれ鳥の名を模した開発コードに因んだコールサインを与えられている。
重量二脚型は、アホウドリから『アルバトロス』。
逆関節型は、鷹から『ファルケ』。
そして私は、ドードーから『ヴァルクフォーゲル』。
長いので省略して『フォーゲル』として再登録してもらってはいるが。この3機の中でも私のフォーゲルは特に射撃戦闘に特化している。
敵をロックオンする。いよいよ奴らに復讐の鉄槌を下す時が来た。コンピュータに搭載されたAIが敵のデータを照合する。
『敵、エイリアン・タイプコロニスト。侵略生物α型。侵略生物β型。総数約180』
淡々と話してはいるが、大まかな数がわかるのは助かる。どれだけ殺せば終わるかが明確になるからだ。
曲射弾道で1100メートル先のコロニスト部隊へ攻撃を仕掛ける。砲撃は予測通り精確に群れを貫徹するように着弾し、2体のコロニストが吹き飛ぶ。襲撃に気付いたコロニストの狙撃部隊がプラズマキャノンを撃ってくるが遅い上に威力も大したものではない。簡単に避けて、二射目を撃ち出す。弾速の違いが如実に現れ、110ミリ徹甲弾が更に1体のコロニスト・スナイパーを排除した。私の存在を察知した怪物がこちらに迫ってくる。
本来この機体は中量型の二脚であるため、重い武装を載せすぎると安全率の問題で移動速度が低下してしまう。これはプロフェッサーが言っていた『母体』となる機体にも同じ事が言えるらしいのだが……。
とにかく、そういった重量の問題を解消する方法がある。
『レフト・ショルダーユニット、パージ』
重々しい音を立てて接合部が取り外され、ショルダーキャノンが地面へと落ちる。その瞬間機体は従来の軽快さを取り戻した。
「16:35、交戦開始」
フィードバックの為に記録を残しつつ、ミサイルを構えてロックオンと同時に発射する。一基のミサイルが分裂して4基に分裂、そのひとつが接近していたコロニストに直撃、大きく怯ませ、残った3基も立て続けに命中し沈黙する。
コロニストの相手は限界だ。怪物への迎撃に移る。
「α型接近。40mmGM使用開始」
マシンガンを横に薙ぎ払う。着弾点が大きく爆発し、着弾点半径11メートル内にいたα型は容赦なく吹き飛ぶ。火力の高さだけでなく、継戦能力が高いのもこの武装の特長だ。反面弾薬の重量から初速は遅いうえ、弾薬の大きさから再装填に時間がかかり、結果秒間4発しか発射できないなどの難点を抱えるが、それでも威力の高さだけで期待以上の性能だった。
爆発は容赦なくα型を焼き尽くしていく。
「ッ……ハハハッ!!」
笑みが溢れ、自分でも珍しいと思うほどの高笑いが出てくる。目の前の敵が炎に塗れて消えていく。手足がちぎれ飛んでいくのが爽快だ。ウイングダイバー時代では味わえなかった、この大群を一瞬で壊滅させる圧倒的な暴力を行使する快感。
「もっとぉ……燃えろぉっ!!」
飛び上がってブースターを起動し続け、熱量限界でブースター熱が切れるまで飛翔し、撃ち続ける。後続のα型はほぼ全滅し、コロニストがこちらの有効射程を見計らいながら一進一退を続けている。次に来るのはβ型だ。
酸を含んだ糸を何本も射出して攻撃する難敵だが、この程度なら問題ない。退却しながら冷静にレーザーライフルでβ型を焼き落としていく。まるでハエ取りのようだ。レーザーだけでなく、私に近付けばグレネードの雨がお前達を待っている。
ブースターが熱量負荷限界に達し、冷却の為数秒ブースターが使えなくなる。落下中に放つグレネードマシンガンに装填されたカートリッジの重みが、殺意の塊にも等しい40mm炸裂弾となって戦場を突き抜け、着弾点のβ型を焼く。
「死ね、死ねっ! 部下の仇だ!」
奴らを見る度に思い出す。怪物に囲まれて死んでいった部下たちの、悲痛な表情を。あと数センチで手が届いたのに、彼女はプラズマコアのオーバーヒートで離脱できず、怪物の海に飲まれた。
別の部下は敵弾の直撃を受けてウイングが折れ、残った仲間を逃がすために飛べない体で囮になった。
最も心の置けない仲の腹心は、目の前の敵から私を庇い、消し飛んだ。皆私が守れなかったから死んだのだ。プライマー、こいつらが攻めてさえ来なければ。
こいつらがあの時私の所属していたマルセイユ基地を襲った1000体の怪物であるという確証は無い。エイリアンの大部隊ならともかく、ただの怪物の群れの同行をいちいちチェックする余裕など、スカウトチームには無い。
「うおおおぉぉぉぉぉっ!!」
けれど、私は目の前の怪物を駆除する事で頭がいっぱいだった。その他の事はどうでも良い。この機体が続く限り怪物を倒す。それだけだった。
実のところ、コンバットフレーム・コアドニクスの操縦に慣れるまでさほど時間はかからなかった。ウイングダイバーは通常、脳波コントロールによってプラズマ出力を調節し飛行・離着陸を行なっているが、コアドニクスはそれが手動になっただけの話なのだ。
レーザーライフルを迫り来るβ型のうちの一体に向け、チャージしない状態での超高熱エネルギー弾を直撃させる。レーザー兵器は元ウイングダイバーでも扱いやすいよう、チャージ方式になっている。
それぞれ単発射撃で連続しての攻撃が可能なアサルトチャージ、回転率よりも威力や射程を重視しているハーフチャージ、そして絶大な威力・射程を引き換えにリロード時間やオーバーヒートのクールダウンに時間を取られるフルチャージ(スナイプチャージとも)の三つに分かれる。
今さっきやってみせたのが、アサルトチャージによる攻撃。怪物程度ならこのぐらいの出力の弾でも余裕で落ちる。コロニストもハーフチャージで二発耐えられず、フルチャージなら一撃で死ぬ。
定期的にENカートリッジ内の清掃・交換を行わねばならない弱点はあるが、それを差し引いても弾薬はレーザーに限って言えば実質無限と言っても良く、エネルギーを使ったレーザーライフルは次世代の主力武器を担うかもしれない……らしい。
「遅い!」
β型に混じるように突撃してくる、ラプチャーガンを持ったコロニストからの散弾を避け、近くの敵をグレネードで吹き飛ばしつつレーザーをチャージし、フルチャージのスナイプレーザーでその頭を胴体から切り離す。
「あと203……」
HUDに表示されている40mmグレネードマシンガンのカートリッジ内弾薬の残りが、使いすぎて少なくなってきていることを示していた。約半分になっている。
「敵数は?」
『敵数、残りおよそ85』
このペースならやれる。怪物にはグレネードを、コロニストにはレーザーとミサイルを。的確に武装を選んでいけば、弾を全て使い切る事無く終えられるだろう。
「弱い弱い。弱すぎる」
3ヶ月前は怪物と戦うなんて想定していなかっただからあんなに深刻な被害を出した。叶わないのだろうが、もしやり直せるのなら、怪物の襲来を前もって知っていれたのなら。
……いや、それでも私は戦うだろう。復讐のためよりも、市民のために。だからこそ、あの時みんなを守れなかった私の実力不足だということが浮き彫りになって私を責め立てる。
『敵性反応減少により、正確な数値を測定可能です。敵数、残り61』
「16:41、現在はこちらが優勢」
作戦開始からまだ数十分も経っていない。このプロフェッサーから貸与された機体は思った以上の傑作だ。ニクスよりも武装が豊富で、タイタン重戦車レベルの装甲、ヘリ以上の機動性。どのビークルをも凌駕して有り余る。もしプライマーが出てきていなければ、これが対人・対戦車に使われていたのかと思うと、今という現状の異質さがよくわかる。
迫り来るコロニストを射殺し、次の敵を撃つ。敵は予測射撃をしようとしない為、動いてさえいれば敵の攻撃は一切当たらない。楽な仕事だが、復讐相手としては張り合いがない。単騎で敵の大部隊を撃滅せしめるのだから、コアドニクスがどれだけ前倒しで開発された兵器なのか察しがつくというものだ。
『敵数、残り26』
敵部隊の数が少なくなりつつある。もはや消化試合と何ら変わりない。立ち止まっていても装甲で弾丸を弾くのだから、これ以上戦っても何を得られるわけでもない。数はさらに減っていく。
『敵数、残り11』
怪物は全滅し、残った敵はコロニストだけだ。後退し、先程パージしたショルダーキャノンをもう一度取り付ける。ジョイント部分にアームが備わっているため、一度取り外しても再度装着が可能であるとの説明を聞いた時、使い捨てた武器をもう一度拾うのか? とその機能の存在には懐疑的だった。
だから今はわかる。パージ機能、ピックアップ機能無くして、この機体は立ち行かない。
『敵数、3』
レーザーで引き撃ちしながらキャノンを装着し終えた時には、既に敵はコロニストの砲兵だけになっていた。こうなれば、奴らに勝ちの目は無い。元々無いようなものだが、それ故に奴らから恐怖のような感情が読み取れないのが勿体ない。
一発、二発。、FCSの補助で的確にセカンドロックを終えたキャノンの砲弾は、コロニストなどあっという間に貫く。最後の一匹が苦し紛れにプラズマキャノンを撃ち出してきたが、それの回避など意識せずとも避けられる。そのままスプレッドミサイルを射出し、最後の一体を倒し終えると、録画映像に入るように報告する。
「現在時刻16:43。全ての敵を撃破。状況終了」
これでフォーゲルとしての私の仕事は終わりだ。あとは、EDF所属降下翼兵部隊サーベルリーダーとしての仕事だけだ。
「これだけか……」
仲間の遺品をかき集めていた私は、だが成果はほぼ無しに等しかった。ドッグタグが2、3枚に酸で融解してグズグズに溶けた銃が数丁。空のマガジンが無数に転がっている。
……あの時失った仲間の形見。それを集めていた。少なくない人命がここで散っていったのを鮮明に覚えている。私や一部の幸運な生存者は、戦火を逃れ遠方の基地へ逃げ、あるいは仇を取るため最前線の基地へ赴いた。私は、後者だった。
『隊長、みんな死にました……もう撤退しましょう!』
『ダメだ! ここで退いたら避難中の民間人が襲われる! 少尉どのは何をしているの!?』
『少尉は今避難民を連れていますが、消息不明です。連絡も取れません……』
あの時の戦況は、最悪と言ってよかった。無尽蔵にやってくる怪物に対し、私たちは全力の防戦を強いられた。民間人が基地見学に来ていたタイミングだったのも、それに拍車をかけていた。
『クッ……! まだ逃げるわけには! フライト!!』
プラズマコアに無理を言わせて突撃し、敵の目の前に立ちはだかるように着地して、マグブラスターによる攻撃を続けていた。最後の一人になってしまった私の部下は、一人で逃げなかった。
『……! 隊長、危ない!』
『うっ! ……!!』
私を押し退けるように私の体を手で押し出して、一歩前に彼女が立った。爆発とも思えるほどの濃密な弾幕が、私のいた場所へ……つまり彼女が今立っている場所に襲いかかった。
『……ッ!?』
私は即座に飛ぼうとして足を浮かせてジャンプし、そして転んだ。何が起きたのかもわからなかった。ブラスターを撃とうとして弾切れしている事に気付き、リロードする。だが一瞬で終えるはずのリロードが終わらない。
そこでようやく、私は気付いた。チャージング警告音。プラズマコアのエネルギー残量は既になく、飛行する為のエネルギーもリロードする為のエネルギーも底を尽きた。
攻撃手段を失い、飛ぶ事も出来ない。無力だった。
『撃て、撃てェッ!!』
『そこのウイングダイバー! 這ってでもこっちに来い!!』
呼び声に意識を割かれ、そっちを向けば、戦列を組んだレンジャーとタンク、コンバットフレームの陸上混成部隊が私の少し後ろで敵を押し返そうと射撃を続けている。
『おい、早く来い! ネレイドが無誘導爆弾を投下する、巻き添えを喰いたいのか!?』
私はそれで我に返り、マグブラスターを前に思い切り投げてから急いで立ち上がり、腕を振って思い切り走った。ウイングダイバーの常として基礎体力訓練は本当に基礎しかやらないため、直ぐに息切れが私を襲った。それでも走り続けた。途中に落ちたマグブラスターを拾い上げ、そして私を援護してくれていたレンジャーに縋り付くように崩れ折れると、そのレンジャーは私に肩を貸してくれた。彼も同じく、一個小隊の隊長だった。
『よく耐えた! 遅くなって済まない。避難させよう』
『ま、まて……私はまだ……』
そしてブラスターを構えようとするが、コアのエネルギーが回復したのを確認した後に飛ぼうとして、私は平衡感覚を失い、焦りながらブースターを切る。
嫌な感じがして後ろを向くと、その
『そんな……』
『ようやく気付いたか? ………それじゃもう飛べない事ぐらい、レンジャーの俺にだってわかる。既に負傷兵や戦闘能力を失った部隊が後方で集まっている。お前は彼らをまとめてやってくれ。頼む』
私はへたり込みそうになるのを耐えながら歩く。後方で装甲兵員輸送車両グレイプが複数台待機している。中は悲惨だった。私と同じようにウイングが折れた者がいれば、負った傷に呻く者もおり、キャノンごと腕を失ったフェンサーもいる。
『……負傷者か?』
『いや、私はウイングを失っただけだ。他は?』
『みんなこの有様だ。増援が来てくれなかったらやられてた。感謝しないと、な……』
その光景を目に焼き付けて忘れなかった。結局、混成部隊もほぼ殲滅され、散り散りに別のベースに合流したそうだが……。
その遺品達が、こうしてここに転がっていた。
『……い、おい! 応答しろ、どうなった!?』
……オペレータの存在をすっかり忘れていた。通信を回復させたのだろう。こちらから切っていたのに、どういう裏技を使ったというのか。嫌々応答する。
「作戦は完了している。機体の調子も良好よ」
『そうか、まったく……急に切断されたから、シグナルが途絶したかと思ったぞ。10分間以上も焦らせやがって、無事でよかった』
作戦完了した旨を告げるや否や、怒ったり安堵したりと忙しい男だった。とにかく、私は生きて敵を殲滅せしめた。この機体のおかげだ。
『……その様子じゃ、まだ満足してないらしいな?』
「当たり前でしょ。ここには一個大隊の家族がいたの。同じ、いや10倍は殺さないと気が済まない。……いや、やっぱり奴らを地球から根絶するまでは」
『俺も同じ気持ちだ。聞いてくれ、欧州作戦司令本部から緊急の依頼だ。ベースマルセイユに移動する部隊の護衛任務が入っている。できる限り迂回はするそうだが、どの移動ポイントを経由しても敵と接触する恐れがある。補充後、すぐに作戦に従事する事になるが、もちろんやるな?』
「当たり前よ。いい仕事持ってくるじゃない」
次の任務は味方の護衛。とは名ばかりの、事実上の移動ルート上の敵の殲滅。いいお題目を貰ったものだ。
『最寄りの補充ポイントはベースF6だ。すぐに向かえるな?』
「了解。こちら《フォーゲル》。ベースF6、応答せよ」
一拍置いて、ベースF6管制官が応答する。
『こちらベースF6。フォーゲル、補充か?』
「ええ。緊急修理は必要ないから、武装のリロードをお願い。ありったけね」
『OK、準備しておく。フォーゲルにご馳走を用意しておいてやるから早めに来てくれ。待ってるぞ』
通信が切れたあと、もう一度オペレータから通信が掛かってくる。
『やるんだろ、ラナ』
「ええ、もちろん。それと私は准尉なのよ、丁寧な言葉を使いなさい」
『へいへい、わかりましたよマダム。これでいいですか?』
この男のふざけた冗談に、笑みをこぼす。戦いの前に心を和らげるには充分だった。
『じゃあ准尉、用意はいいか?』
「OKよ。出発する」
F6までしばらくかかる。休みはいらない、持ちうる時間の全てをプライマーの殲滅に当ててやろう。
フォーゲル
正式機体名《ヴァルクフォーゲル》
パイロットはラナ准尉。
欧州方面に派遣されたコアドニクスのうちの一機。機体性能は普遍的なものだが、それはあくまでもコアドニクス内で比べたものであって、世界中に普及しているコンバットフレーム・ニクスB型とは比べ物にならない。
主武装たる40ミリグレネードマシンガンは別名、ヒートマシンガンとも呼称されるが呼ぶ者は少ない。榴弾を低初速で撃ち出すグレネードマシンガンは、爆発が広範囲に及び、特に怪物に対して有効であると目される。
ショルダーキャノンは、肩武装版のスナイパーライフルとも呼べる代物で、狙撃能力だけではなく、貫通による敵の掃討性能も高い水準を満たす。
スプレッドミサイルは弾頭が分解され、内部に仕込まれた四発のミサイルが敵を攻撃するというものである。指向性を持っており、爆発の際にはエンジン部より後方の味方を巻き込まない。
レーザーライフルには三段階のチャージレベルがあり、連射タイプの《アサルトチャージ》、中距離射撃タイプの《ハーフチャージ》、狙撃タイプの《フルチャージ》がある。運用に癖はあるが、使いこなせれば強力無比な武装となる。
マルセイユ基地
制圧に成功。部隊を派遣し、再度EDF側の攻撃拠点として活動予定である。