地球を防衛する傭兵になりました   作:No.28

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五話 滅びゆく街 前編

 

 

 

 

 マルセイユ基地より帰還した全ての極東基地所属戦力は、その当初と比べて半分以下にまで数を減らしていた。死者の数に嘆く間もなく、彼らは新たな戦場へと召喚されるのだ。そこには軍曹たちや『英雄』と呼ばれる男の姿もあった。

 

「……戻ってきたか、軍曹。それにお前も。あるいはお前たちが欧州に行った所で、死ぬはずも無いか」

「グリムリーパーの手が欲しくなるほどの激戦だった。そっちも相当に忙しかったんだろう?」

 

 戻ってきた派遣部隊たちの中から軍曹を見つけたのは、グリムリーパーと呼ばれる黒いフェンサー部隊の隊長だった。数々の戦場で肩を並べたグリムリーパーと軍曹隊は戦友と言って良いほどの数を共闘している。

 だからこそ軍曹は、グリムリーパー隊の隊長の強さを知っていた。その言葉も、後に続く本筋への切り口でしかない。

 

「こちらもアンドロイド、向こうにもアンドロイドだ。余程死神と会いたいらしい」

「ハハハハ…」「ククク…」

 

 彼の部下たちが笑っていると、別のウイングダイバー隊が帰還してくる。多種多様な武装に際して市街の防衛に当たっていたらしい部隊群は、帰還者が隊長のみであったり酷い怪我を負った隊員を抱えていたりと、とにかく酷い有様だが、その中でも一際威容を持つエリート部隊、スプリガンだけは堂々と帰還してきていた。

 ……一人足りない。四人が三人になっている。

 

「よう、スプリガン。そっちも厳しそうだったらしいな」

 

 グリムリーパーの副隊長がからかいと労い半々と言ったところで声をかける。スプリガンリーダーは全員の前に立って腕を組み、ため息をつく。残った部下二人も意気消沈し、基地の地面にへたり込んだ。

 

「……部下が死んだ。私のミスだ。一人一人の力を過信していた」

「フ、お前もか。敵は強い。ついて行けないやつは死ぬ。それはお互いわかっていたはずだ」

「ああそうだ!! だが私はお前たちのような死にたがりとは違う、部下一人一人を頼り、部下にも私を頼らせた! 私の、ミスなんだ! …………いや、すまない。やめておく。仲間に言葉の矛を向けるなど」

 

 EDF最精鋭とも目される、各兵科の代表格が、戦力の磨耗にどれだけ耐えられるか。極東基地所属隊員たちはそれを気にしていた。自分たちではどうしようもない戦場でも、あいつらなら生きて帰れる。そう信じていたからだ。

 

 だが、実際はそうではなかった。

 

 グリムリーパーは3つの分隊を持つ。グリムリーパーリーダーの直接指揮する第一分隊、副隊長二人がそれぞれ従える、第二・第三分隊。グリムリーパーはその殆どを失っている。擲弾兵によって命を落としたのは第二分隊及び第三分隊とそのリーダー。第二分隊隊長は第一分隊に再編され、そしてその第一分隊すら五名中二名が戦死している。

 

 同じくスプリガンも、死者数こそ少ないが元の数も少ない部隊。元々十名ほどだった部隊が一人、また一人と減り、今や三名しか存在していない。

 

「構わん。俺たちは敵を殺すために死ぬのが仕事だ。お前たちは生きて敵を倒すのが仕事だ。軍曹、お前たちもまた、生きて戦うのが仕事だろう。 ……()()()()はどっちだ? 生きているか、死んでいるか。 一年後の未来を想像してみろ」

 

 そこでようやく俺は、みんなからの視線が俺に注がれている事に気付いた。

 

 この人が苦手だ。俺はいつも、この人にだけは色々見破られているんじゃないかと思わされる。本人にとってはきっと、そんなことは無いんだろうが。一年後の未来なんて単語、知らないと出てこない。

 

「生きている。生きて戦っている。戦争は終わらない。だけど人類も負けない。俺がいる限り」

 

 確固たる決意を持って言う。それは彼の心に深く刺さったらしい。黒いカラーリングの特注スケルトン越しでもわかるほど肩を震わせてそして短く笑った。

 

「……勝て。あるいは殺し尽くせ。俺がお前に求めるのはそれだけだ」

「頼むぜレンジャー。俺も仕事をするからお前は敵を倒せよ」

 

 グリムリーパーの三人は去っていく。次の戦場に行くのだろうか。スプリガンも、全員立ち上がって基地へと戻っていく。隊長だけが振り向き、俺に言う。

 

「あなたは強い。次の戦場でも共に戦いたいものだ」

 

 向き直って基地に入り、そして辺りが一瞬静かになると、軍曹が後ろから肩をトントンと叩く。バックパックに手を伸ばした軍曹は、そこから150ミリリットルのカップ酒を二本取り出し、片方を俺に押し付けてニヤリと口角を上げた。

 後ろを見ると同じようにカップ酒を持ち寄った軍曹のチームメンバー三人が俺の事を囲んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 カップ酒を受け取ると、俺は資材が足りず放棄されて隊員たちの居住スペースとなっている第六格納庫の端で酒盛りを始めた。と言っても度数が強いだけで量が少ないため、酔うにも酔えない。それでも雰囲気はあった。

 

「最近はお前が活躍しているおかげで助けられている命も多い。本当に感謝している」

「まあ、大将は俺たちの稼ぎ頭だからな! だもんで俺たちは誰一人欠けてないと来た! 俺は大将の背中がいちばん安全だと踏んでるぜ」

「俺もそう思う。なにせ、出会う敵みんな倒して回るような戦いぶりなんだ」

 

 俺はちびちびカップ酒を飲みながら、つまみに持って帰ってきたチップスをパーティー開きして、男五人で分け合う。

 

「俺は最近不眠症なんだ」

 

 一人が言った。眠れていないのはストレスのみが原因ではなく、単純に昼夜問わず呼び出される激務だからという理由もある。みんなそうだ。EDFに安息は無い。プライマーを撃滅するその時まで、あるいは────。

 

 みんなそれを考えないようにしている。そうしたら楽になる、だなんて誰も考えたくないのだ。あまりにも魅力的なあの世からの提案は今、各々がプライマーへの復讐心や人類を守る使命感によって足蹴にされている。

 

「ドローンのせいで仲間を失った。アンドロイドのせいで故郷を失った。次は何を失うんだ?」

 

 五人で酒盛りをしていた後ろから、聞きつけてきた一人のレンジャーが来て、俺の隣に座り込む。

 

「家族を亡くした。妻と息子だ。仲間も、家もだ。希望なんてない」

 

 彼の言葉を俺は聞いているしかできない。これが、俺の守る事が出来なかったものの声なのだ。

 

「仲間は足りない、弾も無い。食料も尽きかけ、民間人は死に、敵は増える一方だ。守るための戦いが、生きるための戦いになっちまった」

 

 気付けば俺は、そのレンジャーと二人きりになっていた。軍曹たちの姿は無い。周囲は暗く、寝息も聞こえない。

 

「俺は守れたのか? お前は? 守れたのか、ストーム1?」

「………!?」

 

 このレンジャーは何故か、誰も知るはずのない俺の部隊名を呼ぶ。その後ろから何人もの人々が現れる。見覚えのある姿だ。みんな俺の目の前で……。

 

「俺は五人兄弟だった。今は一人っ子だ」

「基地には……あそこには、仲間がいた」

「援軍は来ない、もうおしまいだ」

「お前たちは意地を見せた。地球人のな」

 

 知るはずのないその言葉を話す彼らは、更に言葉を投げかけ続ける。ただ話すだけでなく、そこにいるはずのない何かに銃を撃ち続ける者もいた。

 

「遮蔽物が無い、撃たれ放題だ!」

「今から……俺たちはレンジャーだ!」

「黄色いランプが光ってる、なんだこれ?」

「マザーシップの砲撃で、部隊は壊滅!」

 

 そうだ。みんな死んでいった者だ。

 

「ストーム1! 俺がお前の盾だ!」

「ストーム1! 貴方は希望をくれた!」

「ストーム1! お前に賭ける!」

 

 棒立ちでその光景を見ていた俺の背後から通り過ぎていくように、三つの部隊が武器を構え、前へ走り出し、消えていく。

 一人は機関銃とも見紛うほどの弾幕に消え、一人は凄まじい質量を伴う近接攻撃で消え。軍曹はあの時、呼び寄せられた隕石から俺を庇うために俺の胸を強く押し出して……。

 

「ストーム1。俺は守れなかった。今のお前も守れていない。人類の人口はどうなった。お前を信じた友はどうなった。お前の結末は?」

 

 目の前に立つレンジャーを睨みつける。正論を投げつけられ、怒りに任せて顔を殴ろうとした。オリーブドラブのアーマーカラーに、赤いストール。破損した装甲は旧式の装甲板に張り替えられていて、見るも痛々しい。そしてその姿に俺は見覚えがあった。

 

「俺は、守れなかった。仲間を死なせ、行き場のない希望をどうすることもできず。いたずらに時間逆行を繰り返す。民間人時代から戦争に加わり、そして敗北し、決死の覚悟でリングを落とす。一歩でも進展したか? していないだろう。もう五回も繰り返した」

 

「俺は違う! 六回目は上手くいってる!!」

 

 そう思い込んでいるだけだ。目の前の()が言う言葉に、俺はたじろぐ。

 

「五年間という短い時の中を駆けずり回って得たのは? 五回分の敗北と五回分の戦友の死、五回分の失意だけだ」

 

 俺は悪夢を見ているのか?

 俺は守れなかった人々に苛まれ続けているのか?

 俺が戦うために命を落とした人々の血の溶岩が、咄嗟にライフルを構えた俺の足を引っ張っていく。ダメだ、まだそっちには行けない。俺は生きて戦い続けないといけない。

 

 これ以上浸かる訳にいかなくて、目の前に手を伸ばす。その手を、下から伸ばしてきた手が掴む。ハッと振り返る。軍曹だった。

 

「ストーム1。よく頑張ったな。お前の頑張りのおかげで今の地球は平和なんだ、少しは休め」

 

 やめろ……。 軍曹はそんな事を言わない。やめろ!

 

 やめてくれ!!

 

 その手は、言葉は、あまりにも暖かすぎる……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、大将!? 倒れちまいやがった、どうなってんだ?」

「待ってください! ……酷い熱だ、すぐに医療班を!」

「なんてこった、待ってろ! すぐに呼んでくる!」

 

 部下たちが必死の処置をする。しかし彼は酷く呻くばかりで、返事をする事もできないほどに体調が悪化しているようだった。

 

「どうなっている……やはり、連日の戦闘が祟ったのか」

「軍曹……彼は俺たちの数百人以上の働きをする。多分、相応のコストを支払っているんだろう。でなきゃ、こうしてツケが回ってくる理由が思い浮かばない」

 

 部下の一人が三人の衛生兵と一人の軍医を連れてくる。軍医は早速彼を診るが、しばらく容態を確かめて首を横に振る。その意味がわからない俺ではないが、同時にそれを受け入れられるほど出来た人間でもなかった。

 

「……ダメなのか、どうしても?」

「余程無理をしていたんだろう。後でウイルス性のものじゃないか検査はしてみるが……気を抜いた途端にこれだ、恐らく精神的なものから来る……」

「…クソッ」

 

 気付かないうちに頼ってしまっていたのか、俺は。守ってやるなどとのたまっていたあの頃が今は遠く感じる。無意識で頼ってしまっているほど切迫した戦況、それが自分の知らない間に強い負担になっていたのか。

 俺は軍人失格だ。今は同じ軍人とはいえ、元民間人を頼ってしまうなど。本来は俺が守る立場だったというのに。

 

「……軍曹?」

「あ……いや、すまん。問題ない」

「顔が怖いですよ、軍曹。軍曹も少し休んでください」

 

 俺はそれを拒否したが、部下二人に半ば抑えられる形で、医務室に連れていかれるあいつに付き添うことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 軍医の検査結果では、やはり精神の消耗から来る高熱だという話だった。解熱剤と数日分の経口補水液を処方され、しばらくの間隣にいてやれという話だった。

 俺は戦場にいるべき人間だ、それはこいつの家族の役目じゃないか、そう言いかけてやめた。こいつも家族をなくしたのかもと思うと、言うのがはばかられたからだ。

 

「……新入り」

「…………………」

 

 返事は無い。小程度の発汗と苦しそうに歪ませる表情さえなければ、ただ寝ているだけの人に過ぎない。こいつがこうなってしまったのは俺のせいという後ろめたさもあって、俺はこいつの傍から離れられなかった。

 

 日替わりで部下たちが見舞いに来てくれるが、付きっきりなのは俺だけだった。今あいつらは別のレンジャーチームの指揮下に入って派兵されているらしい。俺が出撃しようとしても、医師に止められればそうせざるを得なかった。

 部下を失う怖さと、こいつを失う怖さ。天秤にはかけられなかった。かけてしまえばきっと、俺は自分の価値を知ることになる。

 

 今日ほど自分を女々しいと思ったことはない。

 真の意味で信頼している部下や戦友を失うかもしれないのに、何も出来ないのがこんなに恐ろしいとは。

 

 

 

 

 

 

 

 

「新入り……」

「う、ぐ…………す……ま……」

 

 悪夢を見ているのだろうか。俺は濡れ布巾を定期的に取り替えてやる事しかできない。流石に催した時はどうにか起き上がってくれるが、それだけだ。用を足し終えたら、そのまま身体の気だるさを隠さず医療ベッドの上に寝転び、そのまま眠る。

 

 新入り、お前は夢の中でも戦っているのか。そこに俺はいるか?

 

 語りかけても返事は無い。労いの言葉をかけてやりたくとも、起きた時は辛そうにしていて無理で、寝ている時はそもそも途中で途切れる一方通行になってしまう。

 俺は戦士だ。戦場で戦うべきなんだ。それなのに今やっていることはまるで兄弟だ。弟の世話を焼き、看病して……。

 そこまで考えて思いとどまった。俺はこいつの兄になる資格は無い。弟に頼り切りの兄弟なんて、きっと望んでいないし、俺も望まない。こいつにとって頼れる人間でありたい。

 だが、そんな人間には、まだなれていない。

 

 新入り。お前は夢の中で何をしているんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

「……すま、ない……すまな……い……」

 

 その日は誰も来なかった。悪夢も酷いものを見ているのか、ひたすら謝り続けている。俺には解熱剤を飲ませて頭を冷やさせてやる事しかできなかった。精神の消耗から来る高熱。あの軍医はそう言っていたが、最初にそう聞いた時はさほど大したことは無いと思っていた。前に戻ってその自分を殴り飛ばしたかった。

 

 苦しいか。辛いか。すまん。死ぬな。

 

 俺が絞り出せる言葉なんて、それぐらいだ。今日、新入りの自室の整理をしていたとき、よく話していたゲーム機というのを見つけた。もう何年も遊んでいるらしい物言いをしながら紹介してくれたものだが、発売日はわずか一年前、プライマーが襲来してきて一年後ぐらいの時期に出てきたものだ。それを新入りは、遊ぶ度に懐かしい顔をしながらプレイしていたのを、輸送車両の中で見ていた。

 

 ふと興味が湧いて、手に取る。こういう携帯ゲーム機はバッテリーの容量が少ないと聞いたが、少し遊んでみるぐらいならば、許してくれるだろうか。

 

 ……ん、少し、いや、だいぶ難しいな。

 

 これが狙撃兵で、これが整備兵。これが戦車……なるほど。

 

 こうか。 いや、違うな。これか?

 

 ふむ、こう動かせばいいのか? ……ほう。

 

 

 

 ……クリアー、か? かなり苦戦したが、御せない相手ではなかったか。 ……何、ステージ2だと?

 

 むむ……更に難易度が高くなるのか。面白い。

 

 ただのゲームと思って侮っていたが……敵もなかなかやる。

 

 敵のファイターを倒したいな……陸戦狙撃兵をここに……。

 

 歩兵を配置して巨大生物を待ち伏せして……なに!?

 

 増援部隊まであるのか? 一筋縄じゃ行かないか…。

 

 

 

 

 

 気が付けば日が暮れていた。夢中になって遊んでいた戦略シミュレーション、とやらも、もうバッテリーが切れかかっている。苦笑いが漏れた。俺とした事が、ゲームに熱中する事になるとは思ってもいなかった。

 

 だが、一つ気にかかる事があった。このシミュレーションゲームは新入りの持ち物だが、プレーヤーの名前が既に決定されているのだ。軍隊と軍隊が戦うのだが、味方側の将軍の名前が《ストームチーム》となっている。

 シナリオを少し読んでも見たが、将軍がストームチームと名付けられている描写は一切なかった。命名法則的には、EDFの陸戦部隊のようにも思えるが、ストームという隊名は知らない。

 

 その答えを俺は、見つけることが出来ずにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう。大将はどうだ?」

「ん? ……変わらずだ。ずっと寝ている」

 

 見舞いに来た部下が、新入りを軽くつつく。何かしら反応のありそうなものだが、苦しんでいる以外は変わらずだった、

 

 

「治んねーのか?」

「治るとは言っていた。最もいつになるかは分からないらしいが」

「そうかよ……。早く起きろよ。いつ死ぬのかヒヤヒヤもんだぜ、俺たちは」

 

 新入りの頬をぺちぺちと軽く叩いて、替えの経口補水液を置いて部下は部屋を出た。新入りが倒れてからもう三日が経とうとしている。目を覚ます気配は無い。生死の狭間という訳では無いらしいが、付きっきりで様子を見てやっていると、俺にはどうしてもそうは思えなかった。

 

 まるで悪夢という地獄の中で、自分の敵の全てと戦っているかのような苦しい顔をする。敵対者を皆殺しにするまで起き上がらないとでも言うような苦悶の表情は、いつも崩れることがない。

 

 お前は今、どんな夢を見ている?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まただ。何度繰り返そうが、みんな死ぬ。ストームチームも、レンジャーチームも、フェンサーやウイングダイバー、スカウトチームだって。

 どれだけ良い戦果を挙げようが、俺のそれはみんなの犠牲という非情なチケットの上に成り立っていたものだった。

 

『ストーム1。 生き延びたければ離れるな』

『ストーム1。 これで最後か。生きて帰るぞ』

『ストーム1。 後を託す……』

『ストーム1! お前がやるんだ!』

 

『ストーム1! お前に賭ける!』

 

 軍曹は最後まで俺が理由で死ぬ。どうしても助けられなかった。その罪の意識ばかりが俺の胸を突き刺してくる。もう一人の俺にその罪を責められ、どうしようもなく脱力してしまう。

 

『やれ、ストーム1!』

『終わらせてください、この悲劇を!』

『ストーム1!』

 

 生き延びた世界に、希望は残らなかった。本部も、軍曹も、グリムリーパーも、スプリガンも。誰一人、何一つ。

 

 だが、いたずらにこの命を断つことは許されない。繰り返す先にまだ、俺の目指す未来が───。

 

「まだそんな夢を? 幾度繰り返そうが、お前が守るべき人々を、仲間を、失うという事実は覆ることはないんだ」

 

「……黙れっ! 例えそうでも、勝ち続けるんだ! 愚直に戦う、俺にはそれしかない!!」

「哀れだな。その先にあるのが破滅だとしても?」

 

「……だとしてもだ!!」

 

 心の底からその絞り出した俺は、目の前に立つボロボロの装備を纏うレンジャーを見据える。そうしてわかった。

 

 ──こいつら、未来の俺自身の姿だ。これまでやり直してきた俺の意識の集合体なんだ。

 

「……なら、やり直し続けろ。かつての頃からな。そしてやれる事をやるといい。自分が成すべきこと、その答えが、自ずと見えてくるだろう」

「なに……」

 

 そう言うと、俺は姿を変えた。以前勤めていた職場の、民間警備会社の懐かしい防刃ベストとヘルメットを装備した俺の昔の格好に。

 

「お前は戦うことしか出来ない馬鹿だが、敵との戦い方を知っている。次はお前がやってみろ」

「お前は……俺じゃないのか?」

 

「俺は……いや、()()は、確かにオレさ。ずっと頑張って戦ってきたお前自身だ」

 

 そう言うと、警備員の姿の俺は、兵士の姿へと戻った。兵士の姿のそいつは、俺の肩を軽く叩き、笑う。足元が炎の揺らいでいる。

 

「人類を救ってみせろ、俺」

 

 そう言って()は消えた。

 

 

 

 ……意識が覚醒する。

 

 きっと、上手くやってみせるよ。

 

 

 

 

 けれど、勝利への道はまだまだ遠そうだ。

 

 それでも掴まなくてはならない。もう一人の俺が言ったように、人々を救えるのは、俺たちしかいないんだから。

 

 

 

 

 

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