地球を防衛する傭兵になりました 作:No.28
はじまる。
聞いたか? ベース228で民間人を受け入れて大規模なイベントを開いてるらしい。もう3ヶ月前からそうしてるんだとよ。……知ってたか?
知ってるよ。なんでも武装の多さからEDFは国を相手に戦争でもするんじゃないかって抗議の嵐らしいな。俺も新聞で見たよ。
嫌だな、俺達は地球の平和の為だけにこうして訓練してるってのにさ。そんな疑われちまったらやる気も削がれる。
だな……。
守衛の二人が雑談をしている。私はその隣で小銃を持って森の向こうを見ていた。軟禁から六日ほど経つが、私の立場は今や客人からここの兵士だ。まさか仕事をしない訳にもいかないだろう。ACは雨ざらしでも平気なので外に置くよう頼んだので、有事の際には直ぐにACの近くに駆け寄る事も出来る。
今は、守衛のレンジャー隊員の二人に随伴するように、警備をしていた。入口に不審者が入ってこないように監視するのだ。
パイロットスーツをばっちり着込んで、ライフルを持ち、レンジャーの使うヘルメットを被せてもらっている。だがサイズ感が合わなさ過ぎてぶかぶかだ。レンジャーのハンマー1は私を見て申し訳なさそうに頭を下げた。
「いや、今はアンヴィル2-1がいるんだった。すまんな、こんな話をしちまって」
「私は大丈夫。確かに、巨大な軍事力を持つ組織は恐ろしいものだけど、それに抗議をぶつけられる程平和で、軍事組織が暴力を振るえない世界なんて滅多にないよ」
「……そうだな。ありがとうなアンヴィル2-1。俺達もいっちょ頑張ってやるか!」
レンジャーの二人、ハンマー1、2が笑う。
そう、今は平和だ。平和すぎるのだ。何が起こってもおかしくない。こちらに来て早六日となるが、何も起こらなかった。それが、私にそんな不安を抱かせた。そんな私の不安を他所に、ハンマー2は腕時計を見て笑った。
「はっ、ふう。おい見ろ。もうすぐ16時だ。ネイルチームと交代する時間だな。向こうにも無線で呼びかけよう」
ハンマー2が、別方向を警備しているハンマー3、4、5に無線通信で交代の時間が近い事を伝える。ハンマー1は私に向き直り、親指で基地の地上施設を指差し、言った。
「よし、そろそろ帰ろう。今日もなんか奢ってやるよアンヴィル2-1」
「やったー」
不安をひた隠して喜んだフリをする。いや嬉しいのだが、何か起こるという直感が私を素直にさせてくれそうになかった。
私とハンマーチームは食堂にいた。正確には今フリーの隊員の殆どが食堂に来ていた。理由は私を見るためらしい。どうしてそんなことを。
聞けば、私はこの基地で最年少な為なのか、半ばアイドルの扱いらしい。お姉さん隊員が教えてくれた。特に若い男女の隊員から人気らしいうえ、一部の隊員からはなんとファングッズまで造られているのだそう。私の愛機ゲイルウィンドもデフォルメ化?されていて可愛らしいキーホルダーになってしまっているし、ゲイルウィンドの中身であるコムも擬人化されている。
「えぇ……? なんで…?」
「言ったでしょ? 凄い人気なんだから、あなた。それにいいんじゃない? 基地内でお金の循環も起きるし、その浮いたお金で私達も近隣住民を招いたイベントを開催できる寸法ってわけ。まったく基地司令官も良く練ったものよねぇ」
「え、私から出たお金でイベント開くの?」
「らしいわよ。昨日盗み聞きしちゃった」
お姉さん隊員は笑っている。とんでもない事をしている自覚はあるのだろうか。
しかし、それにしてもアイドルとは。昔レイヴンの中でトップクラスの人気を誇る奴はいた気がするが、それにしたって私を起用するか? もっと私より綺麗で可愛い人はいるだろうに。
なんて事を考えていると、私の頼んだ料理が運ばれてきた。カレーライス、というものだ。カレールー、というカレーの素を具材と一緒に鍋に放り込んで煮込むと、美味しいカレーができあがるんだそうだ。調理過程を見せてもらったが私には到底真似できそうにない。
しかしとてつもなく美味しいので、私のお気に入りだ。
「きゃーっ!可愛い!!」
「可愛い女の子なのにカレーが好きっていう男の子みたいなギャップ、堪らないぜ…!」
「俺、今から売店行ってくる!アクリルキーホルダーまだ残ってるはずだよな!?」
「レンジャーチーム、出動しろ!今ならまだ残ってる!」
「………えー……凄いなんかもう…なに?」
「だから、それ程人気なのよ。さ、食べましょ」
私とハンマーチームの座っているテーブル座席に、お姉さん隊員ともう一人のウイングダイバー隊員が座り、料理を手に取って食べる。
私もスプーンを握ってカレーを食べた。こんな料理、私がいたあの世界では拝む事なんかなかった。料理は発展してきたそうだったが、レイヴンや中流階級の会社員のような一定の生活水準ラインの民間人はこんな料理食べられなかった。
食材等が貴重という理由もあるが、そもそも農作物や肉類を使用した料理は栽培、繁殖が著しく難しいという理由もある。初めて匂いを嗅いだ時なんか、あまりにも良い匂いすぎて料理が来るまでお腹の音は鳴りっぱなし、涎に至っては頻繁に啜らないと口から垂れてきそうな程だった。
私は恵まれている。そう思った。
死んだはずなのに、こうしてここにいて、こうして美味しいご飯を食べていられている。私は天国に行ったんじゃないかとさえ思ったが、何度寝て起きても同じ光景、そして美味しい食事を摂れるので現実だということにした。
「んーっ……あぁ、美味しい……」
咀嚼したお米とルー、じゃがいもと牛肉を飲み込む。中辛という、中程の辛さなので、舌に程よい刺激を残してくれるのも新鮮だ。水を含んで一気に飲み干すと、思わず息を吐いてしまう。自分でも顔が綻んでいるのがわかった。
食堂の向こう側できゃあきゃあ言っているのが見えるが、気にしない気にしない。今はご飯の時間だから。
ハンマーチームの面々も、ステーキやポテトサラダのような栄養のありそうな料理を黙々と口に運んでいる。食べながら「うん、美味い」とか「最高だな、ここの料理は」とか「アンヴィル2-1は可愛いなぁ」とか……おい待て。
とにかく、こうしてみんなで食卓を囲んでご飯を食べている。隣のテーブルにどこかのチームが座ってきた。振り返ってみると、いちばん最初に世話になったアンヴィルチームだった。その内の一人は私に向かってサムズアップしている。
「あっ、アンヴィル1!」
「よ、アンヴィル2-1。ここでの生活は慣れたか?」
「うん、みんな良くしてくれるし、料理も美味しいから」
「はははっ、料理か! 確かにそいつは大切だな」
事情を知ってくれているアンヴィル1は、笑った後に神妙な顔つきをした。食料状態が深刻だった私の世界の事を想像したのだろう。厳つい顔の割に繊細で優しい人だった。
「ごちそうさまでした」
手を合わせて完食のサインを出す。食器を持って食堂受付の隣にある返却口に食器を下げた。お姉さん隊員やハンマーチームも大体同じ時間に食べ終わったらしく、ぽつぽつと食器を下げる隊員がいた。
お姉さん隊員が私に近寄ってくる。
「ね、この後暇かしら? ちょっと話したいことがあって」
「え?うん、大丈夫」
「よかった、じゃ、行きましょうか……の前に、ファンサービスしてあげたら?」
「……え? …………ひぇっ」
ふと見ると、着席している隊員の殆どがこちらを見ている。ここまで熱狂的だと少し怖い。
遠慮がちに手を振ってやる。
「おおおぉぉーーーっ!!!」
「ウオオォォォーー!!」
「イヤッホーーーッ!!」
狂喜乱舞している。コワイ。
お姉さん隊員に連れられて、私は食堂を後にした。
夕方の基地地上施設B棟。B棟は、食堂や寮のあるA棟とは違いレーダー施設や通信塔、アンテナ等の軍事施設としての側面を持つ施設だ。
その裏手に、私とお姉さん隊員の二人だけが立っていた。時間帯もあって中々近寄る人がいない場所らしい。隠れて話をするなら、ここだと彼女は言っていた。
「それで、何かあったの? わざわざここまで呼ぶなんて」
「あのね、私あなたのいた世界の全てが気になってて。だってあなた、お風呂借りた時とは想像できないほどいい笑顔よ。私もそれなりに生きてきたからわかるけど、前にいた世界は相当酷いものだったのかなって」
「あぁ………確かに、向こうはいい世界とは言えなかったよ。毎日のように鳴り響く銃声、何度も届く殺しや防衛の依頼、戦う度に荒れていく土壌。 ……控えめに言うけど、クソ以下だったよ」
「……」
お姉さん隊員は何も言わない。
「でもね、私はあの世界が好き。確かに普通の人が生きる上で言えば、あれほど厳しい世界はないよ。でも私にはそれが普通だったし、死ぬまで私は特別でいられた。邪魔をする奴はみんなこの手で捩じ伏せたし、何度も変わるオペレーターだって愛想良くしてくれた。戦争にだって従軍したし、それの悉くを生き残ってきた。信用の置けるパートナーだって……死んじゃったけどね、
「いや、あの世界が好きな訳じゃないかな。私が好きなのはね、戦う事なの。平和って良いよね。戦わなくて済むから。私も楽だと思う。でもそれ以上に、身体が戦いを、戦争の火を求めてるんだ。その最前線で捨て駒のように戦うからこそ、私は私が特別でいられるっていう実感を得られる」
「………それでも」
「……それでも、アンヴィル2-1。私はこの世界を守りたいの。戦いのない世界を。あなたの為とは言えない。これは私個人のお願いだから。力を貸してほしいの。……えーっと、レイヴン」
「………なんか久しぶりに呼ばれた。その呼び方」
「嫌だった?」
「ううん、むしろ凄く落ち着いた。 ………わかったよ、私は平和の為に戦う。そういう依頼だよね」
私がそう言うと、お姉さん隊員はにこりと微笑んでくれた。
「ありがとう」
明日からはやる事が増える。早めに寝よう。お姉さん隊員と別れて客間に戻り、私はその日、久しぶりにぐっすりと眠れた。
七日目。
私は早朝からアンヴィルチームとメンテナンス作業員、メカニック等を引き連れて森の開けたエリアに来ていた。私はACに搭乗している。メカニックとメンテナンス作業員は合計7名ほどで、それぞれメンテナンス作業員にはニクスとACの整備を、メカニックには私とニクスの
実戦的な模擬戦闘である。
「ルールは単純。手持ちの武装でどちらかの陣営を壊滅させれば勝ち。弾は出ないようにしてもらったから、敵機体をロックオンして引き金を引く。引き金を引くと、本来銃弾が飛び出す銃口から、レーザー照射を行える。
合計5秒間被弾状態になったその時点で、その機体は動かなくなる。私はアンヴィルチーム五機全てを撃破するか、降伏させる。アンヴィルチームは私を撃破する。これが勝利条件ね」
なるほど……。と、アンヴィルチームの面々が納得している。チームリーダーのアンヴィル1は、私に疑問をぶつける。
「そちらの敗北に降伏は含まれないのか?」
「良い質問だね。答えは単純、私は死兵だから。文字通り命を投げ捨てて、死ぬつもりで突撃してくる兵士」
「了解した。 ……しかし、何故そんな真似を?」
私は笑いながら答えた。
「当然。だって私は傭兵だから」
もうそろそろ模擬戦闘訓練開始時刻の12:30になる。私は基地を攻撃する傭兵、アンヴィルチームは基地を守る防衛部隊という設定だ。事前に基地司令官からは許可を取っているので、アンヴィルチームと私以外は、離れの森林の奥部で待機してもらっている。デモンストレーションも兼ねているので、私の機体とアンヴィルチーム全員のHEADパーツ側面にカメラを接着、無線で映像を共有している。
『あー、あー。聞こえているか、アンヴィル2-1』
「聞こえてますよ」
オペレータ役を務める情報管制官がこちらに問いかけ、私は答える。オペレータ役は、この基地で航空管制官としてのキャリアが最も長い隊員に頼んでいる。ACも扱い的には航空機と似ている。生産に高い費用がかかることや、一機の作戦に管制官、つまりオペレータが配備されるからというのもある。
『作戦、及び周囲の地形を簡潔に説明する。作戦は、全ての敵機体の撃破。あるいは、敵部隊の戦意を削ぎ、拘束する事。
周辺の地形について説明しよう。基地の周囲は大きくわけて二つだ。ひとつは、君のいる森林部。伏兵を隠すなら、ここだろう。木々の高さもニクスを隠すにはちょうど良く、またニクスは草場にロックシステムを阻害されない。
もうひとつは、山間部だ。基地を挟んで反対側にあるそこは、ある程度は木々で覆われて隠れていながらも、基地全体を見渡せる程の視界の良さを持っている。狙撃手が構えるならここだ。
尚、こちらからは基地の様子をモニタリングしている。防衛している敵兵器は三機。事前情報では五機編成なので、二機が付近に潜伏している可能性が高い。奇襲に警戒してくれ』
「了解」
腕時計を見る。12:29:56。
『よし、作戦開始時刻だ。ミッションスタート。敵ニクスを全て破壊。その後、このエリアに帰還せよ』
「ゲイルウィンド、作戦開始」
『《メインシステム、模擬戦闘モードに移行します》』
オーバードブースターを起動し、超高出力の熱量が後方の草木を薙ぎ倒す。その推力が前方に向き、私の機体は高速で空を駆けた。一度上空に飛行し、基地の位置を把握する。北東1,300メートル。同じようにニクスがこちらを見つけたらしく、レーダー照射を受けている。向こうは恐らくミサイルロックを行っている段階だろう。
ニクスの姿をサブカメラに納める。コムが解析を始めてくれている間にすぐさま下に降り、着地寸前にブースターを吹かして硬直を緩和する。そのままもう一度オーバードブーストし、木を薙ぎ払って突進する。
基地の500メートル程手前で一度止まり、レーダーを確認した。敵機の反応はない。
この周辺の木々は背丈が高い。ACでは隠れられないが、ニクス程の大きさの機動兵器が身を隠すには充分な高さを持っている。ACに膝をつかせて、現在位置を眩ませた。
敵の出方を伺っていると、コムから報告があった。
『ストーム、基地内のニクスの解析が完了しました。武装は30mm機関砲及びマルチロック式ハイ・スピード・ミサイルです。遠距離での戦闘は危険です。近距離での、速度を活かした撹乱攻撃が有効でしょう』
「OK、ありがとね」
コムに礼を言って、しゃがんだ状態からもう一度だけ、オーバードブーストを起動した。コア後部ががしゃんと開き、付近の空気を吸い込むようにエネルギーが凝縮されていく。ブースター内部に溜まったエネルギーは後方へと放たれ、その推力を持って私は基地の内部に突入した。
『……! 来たぞ、敵だ! 各員応戦しろ!』
アンヴィル1の指示で、基地防衛に当たっているアンヴィル2とアンヴィル5。彼等と同じようにアンヴィル1が跳躍やブースターによるホバリングを活用しながら、私を攻撃する。
………1。
一秒間ロックオンされ、レーザーの照射を受けた。すぐさまニクスの後方に飛んで素早く振り返り、マシンガンのロックを行って引き金を引いた。三秒稼ぎ、すぐに建物の影に隠れる。一応建物は傷付けないよう言われているので、屋上に着地したりはしない。あくまで遮蔽物に用いるだけだ。
ニクス一機が空を飛んでこちらに詰め寄り、もう二機は建物の側面と側面とで挟み合うようにこちらを捕捉しようとしている。
こういう時は、側面を取ろうとしてくる相手のさらに裏を取るのがセオリーというものだ。コアを斜めに傾けて、オーバードブーストを吹かす。
銃口を既に
「………捉えた」
『凄まじい、なんて早さだ──』
先程から捕捉を続けていたアンヴィル2の機体は膝を着いてダウンする。マシンガンを五秒間受けた、という事で彼は撃破された。
続けて振り返り、マシンガンをパージして本来の速度を取り戻しながら、チェインガンを構える。小さくブーストジャンプと着地を繰り返す移動法と、ブーストダッシュによる高速移動を繰り返し*1ながら、敵の射線に入らぬようこちらの機体の銃口を向け続ける。
アンヴィル5のニクスが跳躍し、ブーストして高く飛ぶが、ACのサイディングは何度も訓練している。そう簡単には抜け出させない。
『…だ、ダメだっ!操縦不能!』
アンヴィル5のニクスが空中で静止し、ブースターが途切れて地面に着地、膝を折って動かなくなる。
………2。
アンヴィル5の撃破を確認している間に、もう一秒稼がれたようだ。すぐさま隊長機の方に向き、パージしたエネルギーマシンガンのサブに持つ、小型マシンガンを隊長機に向け、先程行ったサテライトを繰り返す。
………3。
被弾状態が収まらない。まさか、下げさせているだろう二機が狙撃しているのか。
マシンガンを下ろし、背を向けてオーバードブーストを起動し、急いで森林に隠れる。離れながらレーダーを注視すると、離れの山間部に二機の反応が伺えた。
なるほど、狙撃機か。隊長機を建物越しに牽制しつつ、オーバードブースターを起動して山間部に向かう。飛翔中の隙は、木々を無理やり薙ぎ倒して隙間に隠れながら進む事で、多少の時間を稼ぐ。
『しまった、狙撃部隊が見つかったのか!』
隊長機が急いで追いかけようとするが、高い推力を持つ移動方法を持たないため、私のゲイルウィンドに追いつけていない。そのまま山間部に到達する。
二つの低山を臨むそのエリアに、二機は居た。
『チィッ……見つかったか』
『アンヴィル3来るぞ!迎撃!!』
アンヴィル3と4の組み合わせがこちらを迎え撃つ。肩部にマウントされた
それを、上空への跳躍で回避しながら、アンヴィル4とアンヴィル3が並ぶようになる位置に着地し、短距離オーバードブーストを行う。
「(二機で応戦している…誤射は避けたいところだろうし、盾にさせてもらおうかな)」
一瞬で距離を詰めながら、レーザーブレードによる斬撃をアンヴィル4に浴びせかける。その間、アンヴィル3は敵機がアンヴィル4を盾にしているせいで迂回して射撃する他なく、攻撃態勢に移る前には既に撃破扱いになっていた。
無論、レーザーブレードの出力は全くなく、代わりに短射程でレーザー照射範囲が無効化される様に調節されている。
アンヴィル4が沈黙してからすぐにターゲットを切り替え、サテライトによって射線をずらし、そのままチェインガンを構えてアンヴィル3にレーザー照射をヒットさせる。
『これが、AC………』
アンヴィル3も沈黙したことを確認し、六連小型ミサイルを起動して、ロックオンする。ターゲットは、もちろんアンヴィル1。隊長機だ。
『この距離からロックオンが可能だと!』
隊長機はすぐに建物に身を隠そうとしたが、間に合わずにACからの六連射を受けて沈黙した。
「こちらゲイルウィンド。ターゲット沈黙、帰投します」
『…り、了解。帰還せよ』
声が若干引いてたような気もするが、気にしない。
私の勝利だから。
帰還し、作戦終了を告げてすぐに、隊員達を収容しておくトレーラーの中から何十人もの隊員が出てきた。お姉さん隊員やハンマーチームの姿もある。
「凄いな、あれがAC……アーマード・コアってやつか?」
「いや、あんなのは初めてだよ! まるでSFXの世界に入り込んだようだった!」
「あれと戦うかもしれないなんて、恐ろしくて敵わないぜ……。 もし新しいレイヴンが来たら、頼むぜ!」
「うん、任せて」
私が返事をすると、隊員達が沸き上がる。未だに慣れないが、何だかこれでも良いという気になってきた。私が苦笑いを浮かべていると、模擬戦を終えたアンヴィルチームが基地からやってきた。
「いや、まさかここまでとはな………。 恐れ入ったよアンヴィル2-1。君は凄いんだな」
アンヴィル1が、ヘルメットを脱いでACを見ながら驚嘆の声を漏らした。アンヴィルチームは、他のEDFベース間との模擬戦闘訓練において、上位の成績を収める程の優秀な部隊なのだったそうだ。
確かに戦闘中は一切の焦りや混乱が見られなかったように思う。特にACに有効な、囮という戦法を躊躇なく採用するのも、部隊としての高い練度あってのものなんだろうか。
「ううん、むしろ五機相手にここまで苦戦させられるとは思わなかった。もしよかったら、今後もこうして模擬戦がしたい」
「構わんよ、俺は。皆はどうだ?」
アンヴィル1の問いに、全員が頷いてくれた。またやろう、私はそう思った。戦っていれば腕は鈍らない。最適な練習相手を見つけられたというものだ。
結局、もう一度模擬戦をする事は叶わなかった。