地球を防衛する傭兵になりました   作:No.28

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 11.進撃

 初めまして。こちらは戦略情報部分析官、少佐です。
 本日付でアウトポスト89は、他ベースの生存者及び残存戦力を集めた、主要反撃部隊として活動します。

 早速ですが、貴女にも任務を。

 市街地上空に巨大円盤が飛来しました。先日確認された、ベース210を破壊した超大型円盤と違い、攻撃能力は確認されていません。
 ベース200、213、216、228、236の上空に出現したものと同型と見て間違いないため、貴女の所属する部隊をこちらで編成、撃墜に向かわせる作戦です。貴女は尖兵としてできるだけ多くの敵を撃破してください。

 戦力の減少が確認され次第、後方に待機させる複数の混成部隊で敵を完全に撃破。このエリアの制空権を掌握します。




八話 混成部隊

 

 

 

 十日目。

 

 

 

 

 

『メインシステム起動。システム通常モードに移行します』

「最低限の整備はしたけど……まだ動けそうだね」

 

 私はACに搭乗していた。理由はもちろん、出撃命令が下ったからだ。作戦は、市街地に確認された敵円盤の全撃墜。私が反撃の要として機能すれば、それだけ味方の士気も高まるというものだ。この作戦は円盤の撃墜というシンプルな内容以上に、今後のEDFの戦況を左右する重要なターニングポイントだ。

 

『アンヴィル2-1! ……いや、今はコールサインじゃなくて別の部隊名が与えられてるんだったか』

 

 アンヴィルチームの隊長、アンヴィル1が寂しそうな声を出す。短時間とはいえ背中を預けあった仲間だ。そう思うのは当然なのかもしれない。私もそう思うが、彼に慰めの言葉を投げかけた。

 

『寂しくなるな』

「大丈夫。部隊名が変わっても、皆の仲間である事に変わりはないから」

 

 仲間の為に戦うのがEDFだ。それに、私も彼らに世話になった恩がある。部隊が変わった程度で簡単に恩を忘れるほど薄情な人間ではない。

 

『今回、俺達アンヴィルチームの仕事は住宅街で生存している民間人の保護だ。お前と同じ戦場にはいないが、ヤバい時はいつだって助けに行く事を忘れるな。今日も生きて帰れよ』

「了解。 アンヴィル1、ありがとう」

 

 お礼を言って、ACのメインシステムを巡航モードに切り替えた。このモードなら、市街地までオーバードブーストを使っていてもエネルギー切れにはほとんどなる事は無い。腕部や武装類に消費するENを全てカットし、コアに直接繋がっているオーバードブースターにその分を供給するためだ。

 パネル上部のスイッチを切り替え、腕部へのEN供給を断つ。ジェネレータ内のコンデンサには行き場をなくしたENを溜めすぎて爆発事故を起こすことのないよう、定期的な放電処理が行われる。

 

『こちら本部。今回の円盤撃墜作戦に参加する部隊は応答せよ』

『アルファチーム。フェンサー部隊だ』

『こちらブラボー。同じくフェンサー』

 

 フェンサーチームふたつが、私の足元を通ってゲート前に集まる。続いて最新の武装を施したというニクスが3機、集まってくる。

 

『こちらニクス。アーマリー隊。いつでも戦えるぞ』

『アーマリー2、ウェポンシステムをアンロック』

『アーマリー3、システム全て正常』

 

 そのニクスは他のニクスとは違い、専用の武装を装備しあらゆる戦況に対応可能なものだそうだ。ミサイルコンテナや大型の肩部砲は分かるが、両手に持つその武器は今まで見たことの無いものだった。

 レンジャーチームも接近してくる。

 

『こちらレンジャーチームイプシロン。いけるぞ!』

『同じく、チームデルタ! 作戦準備よし!』

 

 スナイパーライフルを装備したデルタ部隊と、ロケットランチャーが数名とショットガンを装備したイプシロンチームが集った。更にウイングダイバーが一部隊近づいてくる。

 

『こちらポスト89所属。ウイングダイバー、スプリガン。作戦に同行する』

 

 ウイングダイバーの中では群を抜いた戦果を誇るという噂の部隊も集まってくる。彼女たちは私のACを見て疑問をそのまま口にした。

 

『これは、新型のコンバットフレームか?』

「残念だけど違う。これはアーマード・コア。私は二日前にここに配属になった。よろしく頼む」

『なるほど……了解した』

 

 私のカメラ、つまりヘッドパーツの眼前まで飛んできたウイングダイバー、スプリガンのリーダーがカメラをノックし、私への質問に答えで返すと、彼女は少しにやりと笑って了解し、下に降りて行く。

 

 今回の作戦にあたって、私の武装も一新している。といっても一部はニクスの流用だが。実弾兵器であるハンドガン、小型マシンガン、及び肩部チェインガンは、薬莢の解析を行ってくれた為に比較的速やかに、アウトポスト付属の工場の一部ラインを私専用に合わせてくれ、エネルギーマシンガンとミサイルを除く全ての武装がもう一度使えるようになっている。

 問題の、エネルギーマシンガンとスモールミサイルコンテナを装備していた右腕部と右肩部だが、これにはニクス用ミサイルポッドとヘビーリボルバーカノンと呼ばれる、大型の弾頭を使用するバースト型のリボルバーカノンを装備する事で問題を解消している。

 

『よし、地上部隊は揃っているな。聞け。君達の眼前にある巨大な戦闘機械、それが君達の為に敵の数を減らす。敵の数が減った事を確認できた際、我々が合図する。合図と同時に大型円盤を攻撃。全て撃ち落とせ』

 

「こちらアーマード・コア。チーム《ラプター(猛禽類)》。私がみんなを守るから、安心して戦って」

 

『噂には聞いた事があるぜ……ベース229が壊滅した時、味方を何人も助けたらしいってな』

『俺も聞いた事がある! なんでもあのデカイのは、本部の最重要機密兵器って話だ!』

 

 下にいる兵士たちが噂をする。どこから漏れ出たのか……原因は分からないが、まあ基地へ入ってきた時に入り口からこんな大きなACが見えていれば、見たことの無い人達はそう思っても不思議はないだろう。

 

『よろしい。ラプター、円盤を破壊した際はそちらのタイミングに合わせる。後方部隊を突入させたい場合はこちらへ要請しろ。いいな』

「こちらラプター、了解」

 

 いよいよもって、この作戦の成否は私の手にかかってくる。今までは傭兵だったから、自分の命に危険が生じるような任務でない限り気楽に戦えたが、今はもう、そうでは無い。

 後ろには守るべき仲間が、その更に後ろには守るべき市民がいる。あの温かい手のお爺さんや、人情味に溢れる仲間達を殺させる訳にはいかない。

 

「ラプターは先行して敵を攻撃する。私の付近には近づかないで欲しい。歩兵は踏んでしまう可能性がある」

『イプシロンよりラプターへ、了解』

 

『こちら本部。現時点を持ってこの円盤攻撃隊をサンダーボルトと呼称する。サンダーボルト隊、円盤撃墜へ向かえ!』

 

 私はそれに頷いて答え、ACの動きでも左手のハンドガンを少し上にあげて、敬礼の意を込める。

 

「巡航型オーバードブースト起動。目標、距離16,300メートル。操縦権限をコムに移行」

『OB、起動開始』

 

 私がブースターを使って上空50メートルに飛び上がると、コアの後部がパカリと開く。実際はそんな軽々しい音ではないが。それと同時にコア後部のブースターユニットにエネルギーが充填されていき、一挙に放出される。

 

 

 

 

 ───私の機体はこの時だけ、空にひとつの光線を描く。巨体でありながら凄まじい推力を以て空を駆け巡る。私はスピードスター。兵士でありながらも、私をまだ傭兵としての存在たらしめる、この高負荷のG。これが、地下を脱して地上の土を踏んだあの時からずっと、心地良かったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『すごいスピードで飛んでいくぞ……』

『凄い、あれがアーマードコアってやつか』

『遅れるな! 俺達も続くぞ!』

 

 レンジャーとフェンサーが用意された装甲車グレイプに乗り込み、発進する。ニクスとウイングダイバーは素のスピードが歩兵を上回るため、そのまま移動することになっている。

 

『スプリガンもウイングダイバーのエースだ。今回の作戦、勝ったな』

『油断は出来ないぞ。大型円盤は上部からの攻撃に無敵って話だ。空軍が先制攻撃を仕掛けたが、無駄に終わったらしい』

『怪物を投下して逃げていった、とも聞くぜ。あのアーマードコアですら倒せなかったら、俺達で怪物をやる』

 

 兵士達の雑談は、広域無線を通じて部隊全員の耳に入っている。

 

『安心しろ。アーマリーチームがいる。あのアーマードコアを模して武装構成された、汎用型だ。ラプター程じゃないが、怪物も円盤も俺達が着いてる限り敵じゃない』

 

 アーマリーチームの武装は統一こそされているが、そのジョイントに接続されているものは、両腕部と左右肩部でバラバラだった。右肩部にはミサイルポッド、左肩部には散弾砲と呼ばれる徹甲弾を拡散発射する散弾銃を装備している。

 そしてこれが今回の作戦において初めて試験運用を受ける最新型の装備にして、今回の目玉と言っても過言ではない。

 本部直属の技術研究機関から貸与された、計6基の新型兵器《X-RAYパルス放射機構砲》通称、X-RAYパルスライフル。原理としてはレーザーによって熱する事で発生する高温のプラズマを圧縮し、エックス線を伴う高出力の短射程レーザーを単発発射する、というものである。

 

 スプリガンの隊員が低空を飛行しながら話す。

 

『私達もいる。私達は怪物退治のプロよ、任せなさい』

『地上部隊、あたし達に任せて!』

『我々は独自に戦闘を行う。遊撃として機能する』

 

『スプリガンへ、了解。エースと共に戦えて心強いよ』

 

 輸送車両に揺られながら、あるいは歩きながら、あるものは飛びながら、作戦が始まるまでの僅かな間、雑談を楽しんでいる。

 

 

 

 

 …………はずだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おい、なんだ……!?』

『レーダーに多数反応あり!』

『上だ!! グレイプ1、急いで後退しろ!!』

『バックだ急げ!!』

 

 車列が後退した瞬間、グレイプ1と呼ばれた車列最前列の車両の目の前に巨大な塔が落下してくる。

 

『なんだコイツは!?』

『離れろ! あれも敵の新型兵器かもしれないぞ!』

 

 焦ってか、後退する部隊を冷静に引き止める女の声。

 

『全部隊、一定距離を維持しろ。ニクスは後方から地上部隊を援護。レンジャー部隊は広く展開し、フェンサー部隊は前衛でレンジャーを守れ』

『スプリガン、アンタ達は!』

 

 彼女達は覚悟を露わにする。

 

『我々は遊撃部隊だ。不測の事態に対応し、その上で全てを倒す。それが使命だ。 スプリガン、ウェポン・システム、アンロック!』

『イエッサー!』

 

 スプリガンが各々の武装のロックを解除するのとほぼ、それは同時だった。気付いた展開中のレンジャーの一人が叫ぶ。

 

『見ろ! 塔から敵が!!』

『う、うわぁぁあ! 撃て、撃てええぇぇ!!』

 

 塔から敵がなだれ込んできたのである。今まで確認されていた酸の怪物に加え、それの赤色種、更には全高が低い多脚タイプの新種までが押し寄せてくる。

 展開を終えた全部隊が一斉に攻撃を開始した。ロケットランチャーや散弾、高火力なスナイパーライフル、ニクスからのマルチロックミサイルなど、あらゆる武装が一斉に敵に襲いかかる。

 

『赤いヤツがいるぞ!!』

『見たことも無い新型がいる、ヤバいぞ!』

 

 粘性の糸らしき物を射出してくるものだけでなく、酸を吐かない代わりに赤い個体がいる。ロケットでもあまり怯む様子がなく、一目散に突撃してくる。ショットガンやロケットランチャーなどの火力を集中させてようやく倒せる、そんな固い敵が出てきたとあれば、焦りが場を包み始める。

 

『本部、応答願います! 本部、応答願います!! こちらサンダーボルト。 作戦エリアまで残り6キロメートルほどですが、現在、敵性勢力の塔に進路を阻まれています!!』

『何!? 円盤への攻撃を開始せねば、市民に被害が……クソッ! サンダーボルト隊は塔への攻撃を行なえ! ラプター、聞こえるか? 応答せよ!』

 

 本部の焦燥が混じった声に応答するラプター。

 

『こちらラプター。どうした?』

『後続部隊が攻撃を受けた。彼らは現在動けない。 単騎で作戦行動に当たれ!』

『ラプター了解。円盤まで残り2000メートル』

 

 ラプターからの通信が閉じ、本部が引き続きサンダーボルト隊の指揮を取り持つ。

 

『アーマリーチームは徹甲散弾の使用を許可する。敵を破壊しろ! フェンサーチームはデクスター自動散弾銃を以て敵の足止めを行なえ!』

『アーマリー1、了解!』

『アルファ了解。レンジャーの盾になれ!!』

 

 フェンサーが盾を構え、デクスターを連射し始める。敵を近づけさせれば、それへの対処で前線への火力供給が絶たれる。そうすると更に敵がなだれ込んで来、それを倒す為にまた押し寄せる敵を放置してでも防衛ラインに入り込んだ敵を倒す必要がある。そうするとまた敵がやって来て──と、それの悪循環だけは防がなくてはいけない。

 

『スプリガン、ファイア!』

『オオォォォーーーッ!!』

 

 スプリガン隊が高速で敵に接近する。上空から真下へ、恐れを知らないかのように降下すると、赤色の怪物へ向けてその武器を向けた。

 パワーランス。ウイングダイバーの精鋭に支給される、至近距離限定で凄まじい貫通力、破壊力を持つ降下翼兵の憧れの対象。

 その瞬間的な火力はロケットランチャーの破壊力にも匹敵し、ダメージの及ぶ範囲が面ではなく点である事から、それ以上の攻撃力を持っている。その青い刀身の切っ先から飛び出た真紅の閃光は、赤色の怪物の甲殻を容易く破壊する。

 

『見ろ! 赤いのを一撃で仕留めてる!!』

『さすがスプリガンだ…俺達も続くぞ!』

 

『アーマリーチーム、徹甲散弾発射用意よし。スプリガン隊、射線から離れろ!!』

『スプリガン、上昇!』

 

 アーマリーチームの合図でスプリガンが一斉に上空へ退避する。それと同タイミングで横に散開したニクスが、その肩部に搭載された大型散弾砲を一斉に発射する。ニクスに搭載しなければ運用が難しいほどの兵器は、その火力と貫通力を以て射線上の敵、怪物の生体反応をレーダー上から抹消した。

 

『なんて火力だ……!』

『こいつは試作型だ、冷却と再装填まで時間がかかる。 パルスライフルに切り替えろ!』

 

 ニクスの散弾砲薬室から、凄まじい煙が吹き出している。どうやら発射すると膨大な熱量のせいで冷却しなくてはいけないらしい。大火力を吐き出したニクスが両手の武装に切り替え、()()を構えた。

 

『アーマリーチーム、X-RAYパルスライフル速射開始!』

『パルスライフル発射!』

 

 ぴしゅん、と、まるで水鉄砲から水が勢いよく飛ぶような軽快な音を立てたパルスライフル弾は、赤い怪物の甲殻を瞬く間に融解させていく。

 

『レンジャーチーム!! パルスライフルはオーバーヒートまであまり長く持たないらしい! これが終わったら前線の敵を頼む!』

『任せろ……!! 各員、リロードを挟んでおけ!! フェンサーチームはニクスがオーバーヒートした時に備えてくれ!』

『アルファ了解!』

『ブラボー、既に準備できている!!』

 

 X-RAYパルスライフルの弾丸は単発式だが、引き金を引き続ける事でヒートから復帰次第次弾を発射する事が可能であり、擬似的なフルオート射撃を行える。敵を倒し、大軍を倒す上でニクスは重要な火力拠点と言えた。

 

『X-RAYパルスライフル、オーバーヒートだ! 地上部隊、スプリガン、頼むぞ!!』

『撃てぇぇぇぇええっ!!!!』

 

 グラントM31を構えるレンジャー隊長の射撃と、彼の雄叫びが皮切りとなって、全ての隊から放たれる弾幕が敵へ強襲し、効果的なそれらは怪物の一切を寄せ付けない。スプリガンが上空から急降下し、怪物たちにとってのタンクの役割を果たしている赤色の怪物を攻撃し、絶命させていく。

 攻撃は有効なままなのだが、数は一向に減る気配はない。

 

『どうなっている? 敵が減らないぞ…!』

『隊長、塔です!! 思い出しました、あの塔はただ怪物を出すだけでなく、無限に転送させるんです! そのせいでベース209とベース228、アウトポスト39が壊滅しています!!』

『何だと…!? スナイパー、塔を撃て! 破壊しろ!』

 

 狙撃部隊デルタが塔に攻撃を加えるが、装甲が堅牢である為か破壊できる気配が一切ない。

 

『やってる! クソ、弱点はどこだ!!』

 

『こちら本部、戦略情報部が塔の破壊方法を解析した!』

『塔の上部分を撃ってください。装甲に守られておらず、また敵の転送装置でもあります。恐らく、装甲で覆ってしまうと転送が難しいのだと推測されます』

 

 それを聞いたデルタチームの一人が、塔の上方にある桃色の結晶のようなもので出来た部位を攻撃する。結晶が細かいガラス片のように削れていく。

 

『効いてるぞ! 全員、塔の上部分を撃て!!』

 

 デルタチーム全員が火力を集中させ、塔を破壊しようと上部を攻撃し続ける。

 

『こちらアルファ! 弾が切れた、リロードする!!』

『ブラボー、俺達もリロードだ!』

 

 フェンサーチームがリロードの体勢に入り、シールドを前に押し出して展開し、敵の攻撃へ対して構える。

 

『隊長、プラズマコアがっ!?』

『オーバーヒートか……お前は徒歩で下がれ。容量が限界のものはレンジャーチームより後方に待機せよ』

『隊長は!?』

『私はまだ余裕がある。行け!』

 

 攻撃を続けていたスプリガン隊の隊員も、隊長及び副隊長を除き全員が離脱する。苦し紛れにマグ・ブラスターのカートリッジ内に残るビームを全て撃ち切り、走って撤退する。

 

『隊長、我々もそろそろ……くっ!?』

『お前も下がるんだ。私だけで赤色を撃破する』

 

 副隊長がウイングに被弾したのを見逃さず、隊長が撤退指示を下す。そのまま降下してパワーランスの一撃を赤色の怪物に叩きつけ、流れるように二体目、三体目の敵を破壊する。

 

『凄いぞ、あれがエース部隊のリーダーか…!』

『彼女達の頑張りを無駄にするな!! デルタはアンカーを破壊! 俺達とイプシロンで敵を抑える! ニクス、オーバーヒートはどうなっている!!』

『十秒待て! 無理に撃つと銃身が破損する!!』

 

 デクスター自動散弾銃のリロードが完了したフェンサーが、怪物の群れに向かって撃ち続ける。そのうち肉薄してきた一匹の糸発射型が、フェンサーに糸を吐きかける。

 

『うわぁっ!? い、糸に絡まった、助けてくれ!!』

『アーマーが融解してるぞ!! 動きを拘束するだけじゃない、糸で獲物を溶かそうとしてやがる!!』

『盾を構え続けろ! レンジャーがこれにやられれば一撃であの世行きだろうが、フェンサーなら多少は耐える!!』

 

 フェンサー隊が更に前進し、盾を構え、さながら古代ギリシアのファランクスを維持するかのような隊形で敵ににじり寄りつつ、攻撃を続ける。

 レンジャー隊イプシロンがそれに随伴し、フェンサーを襲う敵を排除する。デルタチームは逆にニクスへ随伴しながら、プラズマコアがオーバーヒートしたスプリガン隊の隊員を庇うように立ち、塔を攻撃する人員とフェンサー隊やイプシロンに接近する敵を叩く人員に分かれ、撃ち始める。

 

『こちらラプター。円盤には攻撃が通用しない。下方部に赤いものが見えたが……接近するには怪物の存在が厄介だ。怪物を足止めするため、増援を要請したい』

『本部よりラプター。増援を出す事は難しい。サンダーボルト隊へ空対地攻撃機を向かわせた。サンダーボルト隊の到着まで粘れ!』

『ラプター了解。 ……くっ! 離れろ!』

 

 サンダーボルト隊が一丸となって敵の群れへ攻撃していく。段々と勢いが弱まってきており、フェンサー隊に敵が肉薄する事態が増えてくる。

 

『クソォ、これ以上は……!! ニクス、急げ!!』

『散弾砲発射可能、しゃがめ!!』

 

 足元にいたレンジャー、スプリガン隊以外の全ての隊員が姿勢を下げ、まだ戦闘を継続しているスプリガンリーダーは上空へ退避する。

 

『徹甲散弾、次弾発射!!』

『発射!』

『発射!!』

 

 二度目の散弾砲が放たれ、その全てが効果的に敵を貫通し、薙ぎ払う。

 

『オーバーヒートだ! 各員パルスライフルに切り替えろ、独自に敵を削れ!!』

『了解! X-RAYパルスライフル、ファイア!!』

 

 フェンサー隊、イプシロンチームが立ち上がり、攻撃を続行する。しかし敵の勢いは増し続け、フェンサーが押され始めた。

 

『近いぞ、撃て!!』

『来るな! ヤツを倒せ!!』

『フェンサー、イプシロン、後退、後退しろ!!』

 

『こちらスプリガンリーダー、コアが限界を迎える。少し下がらせてもらうぞ』

 

 パルスライフルの掃射、スナイパーライフルの攻撃、ショットガンの直射、そのどれも敵の数を減らしはするが、勢いを削ぐに至らない。スプリガン隊が完全離脱してしまうと、その兆候は顕著に現れてきた。

 

『うわぁぁぁああっ!?』

『アルファ3がっ! そいつを下ろしやがれ!』

 

 フェンサー隊の隊員が赤色の怪物に噛みつかれたのだ。噛みつかれた隊員は振り回され、銃を向けて撃つことが叶わない様子で、それを仲間が助けようと撃つ。

 

『ぐぁぁぁああっ!!』

『ぎゃぁぁ!!』

 

 それに気を取られたブラボーの隊員が横から迫ってくる糸型に攻撃され、糸でシールドとアーマーが溶かされる。

 

『戦線が崩壊し始めてる……!! スプリガン、まだか!!』

『翼がイカれた、攻撃不能!!』

『コア、リチャージまであと20秒!!』

 

 スプリガンの隊員が焦ったように叫ぶ傍ら、イプシロン隊の一人、イプシロン4がフェンサーを助けようと前進し、射撃する。パワードスケルトンが過剰な熱量のせいで、まるで加熱したフライパンのように熱い。だが、それを気にも留めず銃を担ぎ、倒れそうなフェンサーを抱え込んでどうにか両手で持ち上げた。

 肉の焼ける音がする。

 

『やめろ……放熱でスケルトンが熱を帯びてるんだ。 お前、火傷したいのか!?』

『俺が火傷するぐらいなんだ、仲間を見捨てないのがEDFだ!! 立て、生きて帰るぞ!!』

 

 痛みを隠しながらスケルトンを支え続ける。

 

 フェンサーはスケルトンに過剰なダメージが及ぶと、外殻を内部からの熱によって加熱し、金属片や弾丸を可能な限り弾くための機構が搭載されている。

 同時にスケルトン内の人員に対しては熱が及ばないよう、ラジエータ及び、スケルトンの至る所に存在する無数の冷却口から供給される冷却水がスケルトン内を巡り、冷却されるのである。

 だからこそ、イプシロン4のやっている事は自傷行為にも似て、危険な行為だった。だが、そのおかげで倒れそうだったフェンサーは早期に復帰できた。

 

『イプシロン4、感謝する……この怪物どもめ、仲間を危険な目に合わせたこと、後悔させてやる!!』

『ぐっ……大丈夫だ、俺はまだやれるぞ!!』

 

 イプシロン4もそれに続き、立ち上がる。しかし直ぐに跪いてしまい、武器を持つことが出来ない。痛みが邪魔をしてしまうのだ。

 

『イプシロン4、大丈夫か……っ!? うわぁぁぁ!!』

『隊長! うっ、うわぁぁああ!?』

 

 仲間が噛まれて、あるいは糸に蝕まれていく。ショットガンを手に取るが、立ち上がれない。人間は痛みに弱い、気が昂って忘れていたとでも言うのか。イプシロン4が自分の無力さに嘆いた時、その()()は起きた。

 

『《こちら戦闘爆撃機カムイ《スカイルンバ1》。ピンポイント爆撃を開始する。さて、ウチの愉快なバカ共をいたぶってくれたのはこいつか?》』

 

 爆撃機、スカイルンバ1から放たれた10個もの280キログラム爆弾が飛来し、塔の前方に布陣していた怪物の群れを一挙に薙ぎ払ったのである。

 

『うお、おおっ………オオーッ!!』

 

 戦場のあちこちから喜びの声が上がる。

 

『こちらスカイルンバ1、間に合ったようだな。……おおっと? どうやらまだ、ボムベイの中に残飯があるらしい。本部?』

『構わん。奴らは大層腹が空いているようだ。残飯だろうと遠慮なく喰わせてやれ!』

 

 了解(ウィルコ)。笑いながら言ったスカイルンバ1が去っていく。

 

『こちらスカイルンバ1。反転し、塔に攻撃を仕掛ける。地上部隊はレーザーマーカーでポイントを指定してくれ』

 

 スカイルンバ1はそう言うと、速度を上げて直進後、機体を反転させる。デルタチームの隊長が塔の上部、転送装置部分にポインターを当てると、スカイルンバ1は真っ直ぐ塔に向かって直進する。

 

『スカイルンバ1、ターゲット了解。残飯処理を開始する』

 

 高速で飛翔し、ボムベイに残っている280kg爆弾の全てを直撃させる。途中でスピードを極端に落としながら急降下することで、連続射出される爆弾を一点に命中させる危険なテクニックだ。

 塔が直撃を受けた事で、塔の上部にいた怪物の諸共弾け飛び、凄まじい爆炎を挙げる。着実にダメージを与えていたものの決定打が足りず、弾数に余裕が無くなってきていたタイミングでと塔破壊である。士気は高まり、残った怪物を殲滅しようと、すべての部隊が前進して敵を攻撃する。

 

『報いを受けろ!!』

『俺達EDFに勝てるものかよ、怪物風情が!!』

 

 スカイルンバ1が去っていき、エリアを完全に制圧した。

 それと同時に、通信が入る。

 

『こちらラプター。敵の弱点が判明した。円盤は装甲下部が開いた際、転送装置を起動するようだ。転送装置には装甲が無い。これを攻撃し、既に6機破壊している。残りも私が片付けられそうだ』

 

 先行しているラプターが敵をほぼ殲滅しているらしい。幸いな事に戦力はAC一機で事足りたようだ。

 

『ラプターへ了解。こちらは負傷者が多い為、無事な者以外は退却する。すまない』

『構わない。ニクスの新型武装は使えた?』

『ああ、敵をマグマみたいに溶かしていった。火力だけならACレベルで強力そうだ』

 

 ラプターはそれを聞いて安堵し、敵への再攻撃を開始すると伝えて無線を切る。

 奇襲を受けたにも関わらず、死亡者が出なかったのは幸運だった。フェンサー隊の盾としての役割、スプリガン隊という主要火力、ニクス隊の爆発力、レンジャー隊の総合火力、そのどれが欠けても大きな犠牲が出ていただろう。

 それを生き延びたのは、他ならぬ勇敢なEDF隊員の証明であり、彼らはまたひとつ場数を乗り越え強くなった、優秀な兵士となったのである。

 負傷者をグレイプに載せている作業中に、再度通信が開かれる。相手はラプターのようだ。本部が応答する。

 

『こちらラプター。このエリアに飛翔していた全ての円盤を破壊した。怪物も全て倒している。作戦は完了した、帰還する』

『こちら本部。ラプターへ了解した。全員よく生き残ってくれた。帰還しろ』

 

 戦いを終えた開放感、達成感、そして死と隣り合わせだった緊迫感と高揚感は、彼らが基地に辿り着いて数時間たってなおも続いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『少佐。この成果をどう捉える』

 

 

 

 

 

『興味深い、と言うべきでしょう。ラプターが単独で6機もの円盤を破壊したこと。そして、サンダーボルト隊がビークルと歩兵の共同戦線によって杭を破壊、死亡者を出さず生還したこと。どちらも検討するべき情報です』

 

 

 

 

『なるほど。 この戦果、結果的な生存には爆撃機カムイの存在も大きいと思うが、それはどう考えている?』

 

 

 

 

『無論、カムイが間に合わなければサンダーボルト隊の損失は結果として大きくなっていたでしょう。今後、混成部隊の検討及び空軍所属期の陸軍転属についても考慮する必要がありそうです』

 

 

 

 

『であれば、手は早い方がいい。私が根回ししておく。各戦局分析官に掛け合ってくれ』

 

 

 

 

『協力、感謝します』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻。

 

 

 

 

「民間人、無茶だ!!」

「円盤の下に行くな、死ぬ気か!」

 

 一人の男が、ロケットランチャーを片手に円盤の真下へ走り込む。そこで停止した民間人と呼ばれた彼は、円盤にロケットランチャーを向けてじっと静止する。

 

「いや、待て……。民間人はドローンへの対処を知っていた……。今回のは、真下へ行く事が対処の方法なのか?」

「だとしてもあそこは危ねぇ! 怪物が降ってくんだぞ!? 民間人のやつ、死ぬ気だぜ!!」

「いいや、あいつは死ぬ気はない。俺達も円盤の下へ向かうぞ!!」

「軍曹、無茶です!」

 

 円盤の真下で待機する民間人の近くへ走る軍曹と、それに続くように部下達が接近した。それと同時に円盤の下部装甲が開く。

 

「ほら見ろ、開いた! 怪物が降ってくるぞ!!」

「民間人が攻撃してる、俺達も続くぞ!!」

 

 民間人に続き、軍曹達がアサルトライフルを上空に向け、円盤の中を目掛けて攻撃する。軍曹は円盤のその中身に気付いたようで、集中的に火力を向けている。

 そうすると、民間人のロケット弾の着弾と同時に円盤が大きな爆発を起こし、地面へ向かって降下……いや、墜落していく。

 

「おい、真上に落ちてくる!」

「退避だ、民間人、着いてこい!!」

『こちらスカウト! 円盤が火を噴きました! 墜落していきますっ!!』

 

 スカウトが遠方から円盤を偵察していたらしい。山間部で大きな爆煙を挙げた円盤は地面へ墜落し、一際巨大な、周囲が一瞬輝く程の大爆発を起こして粉々に砕けた。無事に退避していた4人は、民間人を囲んで喜びの声を上げる。

 

「す………すげぇ、すげぇぞ、民間人!!」

「まさか、装甲内部が弱点とはな!」

「凄すぎます! ですが、どうして……」

 

「なるほどな……奴らも、本来怪物を投下するための輸送機だ。まさか投下ポイントの真下に位置して攻撃してくるとは、夢にも思っていなかったんだろう」

 

 円盤が消えた空を見ながら軍曹が呟く。民間人が隣に立って、同じように空を見つめる。部下達も同じように空を見上げるが、その姿勢は多様だった。しゃがみ込んだ者、立ったままの者、アスファルトに座り込んだ者。

 

「綺麗な空だ。俺達はこの綺麗な空、地球を守らなければならない。……民間人、俺達はお前を必要としている」

 

「軍は歓迎するだろうぜ」

「ここを抜けたら、伍長の所に行くといい。手続きしてくれるはずだ」

「もし入ってきたら欠員の枠に後輩が来るっていうのに、まるで先輩面ができないな」

 

 冗談交じりで話し、笑う。民間人が一際大きく頷くのを、軍曹は喜んだ。

 

「フッ……よし! 今日からお前は俺達の部隊に所属する、いいな!」

「やったぜ、これで百人力だ!!」

「頼もしい仲間が増えたな」

 

 全員でガッツポーズを取る。ライフルや拳を天に掲げるように。地球を守るという決意の表れであるかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 








 戦闘爆撃機カムイ

 コールサイン、スカイルンバ1。ボムベイの容量は決して多くないが、装填機構の簡略化および飛翔速度の強化により、要請を受けてから戦場まで短時間で到達可能であり、素早い火力展開が可能である。基本カムイの所属は空軍であり、戦場への火力支援は要請コードを知るエアレイダーしか要請できないのだが、このスカイルンバ1、及び姉妹機であるスカイタンゴ1、スカイサルサ1の3機はEDF関東方面陸軍試験部隊の所属である。
 理由としては、現在空軍ではなく陸軍に爆撃機を所属させた際に、如何に効率的な連携攻撃が行えるかの基礎実験中であるため。
 そのため本部の指示があれば、エアレイダー無しで速やかな火力支援が可能であり、これが結果的に、サンダーボルト隊全員の命を救う事となった。



 サンダーボルト隊

 第12突撃歩兵小隊、第2狙撃歩兵小隊、第3・第6装甲歩兵小隊、試験運用型コンバットフレーム・テストチーム、輸送専用グレイプ12両、特殊作戦降下翼兵隊・スプリガンの、計6部隊+グレイプ12両で構成された攻撃部隊。
 近距離、及び遠距離での効果的な攻撃能力を重視し本部とアウトポスト89基地司令の判断で結成された攻撃隊である彼らは、円盤へ対する部隊としては非常に効率的であった。
 しかし、母船から射出されている塔、通称転送装置に運悪く遭遇してしまい、予想外の防戦を強いられてしまう。しかし近距離での高い火力、装甲歩兵二個小隊の奮迅により、少ない負傷者数での撃退に成功する。
 現在、戦略情報部によって、複数の歩兵部隊と少数のビークル隊による混成攻撃部隊の実験的な運用を立案中。その判断に、彼らサンダーボルト隊の功績は大きい。



 ラプター

 アンヴィル隊の指揮下を外れ、その高い戦闘能力を活かす為に遊撃兵として新たに任命された、アーマード・コア隊。隊とはいうものの単機であり、ラプターの役割はピンポイントでの目標攻撃から敵部隊の掃討など、多岐に渡る。
 ラプターは猛禽類を意味し、制動性の高さ・瞬間的な火力の充実さを活かした遊撃兵に相応しいコールサインであるとして、本部が直接命名する。
 たった一機で作戦行動に従事するのは危険はないか、という議論が分析官及び本部の間で交わされていたが、防衛対象と攻撃対象を速やかに行き来できるほどの機動力と、単機で敵の一団を撃破できるほどの継戦能力・火力を高水準で両立できているのはラプターを除き他には無いとの判断で、単独作戦部隊として任命された。



 アーマード・コア

 ベース229に新型兵器が移送されてきた、という噂から始まり、結果的に情報分析官や戦線の兵士らに広く知れ渡ることとなった、アウトポスト89所属機動装甲部隊の主戦力。出自が兵士達に知らされておらず、その正体は、未来から来た人類側の最終兵器、敵性勢力側だったが裏切ってこちらに付いた人型機械生命体、あるいは総司令部が極秘裏に開発していた最新兵器ではないか、という噂ばかりが広まり、不確かなもの。
 いずれにせよ人類種の希望であるとして、本部はその扱いを中尉クラス、いわゆる前線部隊司令官にまで引き上げるべきか否かを検討している。


 
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