幼馴染はどうやら転生しても続くらしい 作:ぶり大根(元・孤高の牛)
「マルさん、デートしましょう。今から」
「マル、デートに行かない?もちろん今からよ」
「い、今から!?良いけどきゅ、急だね……」
8月、夏真っ盛り。
アルの奥さんであるマリエさんや元公国のお姫様のラウダやヘルトルーデさんの護衛という名目で留学先にいる僕達親衛隊騎士だけど、割と行動は自由に出来ていた。
何人かが当番でヘルトルーデさんとラウダを見ていれば他の騎士達は非番になるからね、そんな訳で今日は非番だったんだけど……ラウダと、僕の専属メイドであるステフからデートのお誘いを受けた。
そもそも2人の気持ちには気が付いている、いや最近までは女性経験皆無で全く気が付かなかったけどここ最近はリオンの周りにいる女の子が積極的にアピールしていたのもあって2人もこうしてアピールしてきているんだ。
それがあればさすがにそっちと行動を比較して気が付くに決まっているさ、さすがの僕でもね。
という事で今日は明確にデートにお誘いを受けた。
留学してきてからは初めてじゃないかな、何せ6月まではリオンやアルと一緒にフェーヴェル家と戦って、7月は学院に出席出来なかった分の授業を補習で受けていたからそんな暇も無かったし。
びっくりはしたけど、僕としても大切な2人で恋心を……抱いているんだと思う、そんな人達にこうやって言われて嬉しくない訳が無い。
「だって今思いついた事ですから」
「アタシも今思いついた事だし」
「仲良いね2人とも」
「何となく考えてる事が分かると言いますか」
「目を見ればラウダの考えそうな事は大体分かるのよ」
「それはもう仲が良いってレベル飛び越えてるんじゃ……?」
しかしこの2人本当に仲が良い。
裏に黒幕がいる状態で王国に敵対していた事や、僕のネズミくんを褒めてくれたりという共通点こそあるけど、元々接点は全く無かったんだけどね。留学の少し前からよく話すようになって、今では凄く仲の良い2人になっている。
……でもここまでとは思わなかったけどね?
何となくとか目を見ただけで考えてることが分かるって、それは仲良しってレベル飛び越えて以心伝心なんじゃないかな。
「とにかくもうアタシ達は準備出来てるから」
「なので後はマルさん待ちです」
「行く前提だったんだ!?」
「でも今日のマルは非番だし断らないでしょ、現にOKしてくれたし」
「それに私の護衛にもなるので断る理由は無いはずです。非番の日のルーチンワークも把握していますから」
「いつの間に僕の行動把握されてるの!?」
「そりゃアタシが共有してるからね」
「はい、ステフには助かってますよ」
「そして原因ステフだったの!?いや大丈夫ではあるけどさ!?」
もうツッコミが追い付かない。まず既に終わってる準備に始まりラウダに把握されてるルーチンワーク、そしてルーチンワークを共有していたステフ……もう団結力が凄まじい。一緒に話すようになって4ヶ月と少しくらいだというのにとんでもないスピードに、女性のいざと言う時の結束力の高さを見せつけられた気分になる。
「大丈夫だと思ったから言ったのよ。それじゃ待ってるから準備済ませて来なさい。細かい身だしなみはやってあげるから」
「私は気長に待ってるので」
「え、う、うん!そ、速攻で着替えてくるから!」
なんにせよデートするなら僕も頑張って格好付けないと。
最近はこれでも五位上男爵位と親衛隊騎士ということで多少は見た目に気を使っているし、大丈夫……た、多分、うん、何とかなるはず。
よし、気合い入れよう。
ちなみにこの後「服のチョイスは悪くないけど焦りすぎじゃないの?」としっかりステフに身だしなみを整え直されてトホホとしたのは秘密である。
「いや〜演劇って僕あまり見る機会無かったけど楽しかったよ。ありがとうステフ、ラウダ」
「ふふん、そうでしょ?ここの演劇は何見ても面白いからオススメなのよ。まあそのせいで何を見せるべきか迷ったからセレクトはラウダに任せたけどね」
「私のチョイスで良かったのか分かりませんが、楽しんでもらえたのなら良かったです」
「また見に行こうね、2人とも」
「もちろんよ」
「はい、また3人で見に行きましょうね」
デートの最初に行ったのは演劇だった。僕は演劇は全く詳しくないから2人にお任せで見たけれど存外にめちゃくちゃ楽しかった。王道の冒険譚というストーリーも良かったのかもしれない、勇者が魔王を打ち倒す物語はやっぱり僕みたいな男には憧れてしまうものだった。
どことなく勇者の性格が容赦なかったり口が悪かったり、それでいてとても仲間想いだったりとアルっぽかったのも面白かった要因かもね。
こういうストーリーならまたいつでも3人で見に行きたいと思わせられるし、僕の為に選んでくれた話だと思うと嬉しかった。
よし、次は僕が何か提案してみよう。
「2人は……その、屋台とかって行った事ある?」
「屋台ねえ、マリエが良く話しているのは聞いてるから内容は知ってるけど、マルの従者になってからは外出どころじゃなかったからどんなものかまでは見た事無いわね」
「私は見た事はありますが、勝手が分からなくて……」
「そ、それじゃあ行ってみない?この近くにあるんだよ」
「へぇ、良いわね。最近は少し庶民の味覚にも慣れてきて興味が出てきたところなのよね」
「マルさんが紹介してくれるものでしたら信頼してます、楽しみです」
「2人ともありがとう。それじゃあ行こっか」
提案が受け入れられてホッと一安心。
僕の領地やアルの領地では屋台料理が一般的で、良くお互いが遊びに来た時は領地視察と言いながら屋台巡りを楽しんだものだった。
そういう思い出深い楽しみがあるから、自分の好きな人達とこうして巡れるのはとても嬉しい気持ちになる。
「あ、最初はここにしよう」
「これはどういう食べ物なのですか?」
「これは焼き鳥って言うんだ。焼いた鶏肉に味付けをして串に刺して食べ歩きも出来るようにしてあるんだ。高級感のある味付けじゃないけど、ジャンキーな味わいがとても美味しいんだ」
「へえ、面白そうね」
「2人ともどの味にする?僕はタレと塩どっちも食べるけど」
「それでは私も両方いただきます」
「そうね、どっちの方が好きか分からないしアタシもそれで良いわ」
そう言えば僕もアルも屋台料理だと焼き鳥が一番好きだったなあと思い返す、最初と〆にいつも焼き鳥を食べていた。
アルなんてマリエさんを連れ回している時もずっと焼き鳥ばかり食べていたものだからマリエさんも焼き鳥が大好きになったんだっけ、夫婦揃って仲良しで見ていて微笑ましい。
「おじさん、タレと塩3本ずつでお願いします」
「あいよー!君達見ない顔だけど、噂の留学生かい?」
「そうです。屋台料理、好きなので」
「そうかいそうかいそりゃ嬉しいねえ。はいよ、3本ずつね」
「ありがとうございます」
「デート、頑張りなよ」
「……は、はい!」
屋台のおじさんにニヤリと微笑まれて2人の元に戻る。やっぱりデートだって周りから見てもバレバレなんだろうなあ……2人と比べられても問題無いくらいの男にならないとな。
「うん、美味しい」
「これは……どちらも美味しいです!」
「ふんふん、案外悪くないわね。鶏肉も柔らかいし小さいから女性でも食べやすいのも好印象ね」
とりあえずラウダもステフも気に入ってくれたみたいで良かった、自分の好きな物を好きになってくれるとやっぱり嬉しい気持ちになる。
この調子でドンドン頑張ろう。
「次はたこ焼きを食べない?こっちはタコ……って言う海産物が入った食べ物なんだ」
「海産物はあまり食べる機会が無かったので興味があります」
「まあアタシも魚とかは別に苦手じゃないし」
そう言えばこの街にはたこ焼きがあるらしい。
サンドゥバル領やアルのディーンハイツ領でもあるにはあったけどあまり見掛けなかったレベル、それがアルゼルではポピュラーな食べ物みたい、せっかく食べられるチャンスがあるなら2人にも食べてもらいたいし行かない手は無いよね。
と、歩いていると見知った顔を2人見掛けた。
「お、マルじゃん」
「アル!アルもデートしてるの?」
「まあな、ようやくの夏休みだから満喫しないと。学生として過ごせる期間なんて来年度で最後だし」
「そうだねぇ」
アルとマリエさんだった。
ステフとラウダはマリエさんだと分かると同時に話しかけに行った、とても素早かったから声を掛ける間も無かったけど仲良しならまあいいか。
「つーか『も』って事はマルもちゃんと意識してデートしてんだな」
「ま、まあね……さすがに意識しない訳にはいかないし、自分の中の気持ちとしては……そうだから」
「おうおう良いじゃねえか、どっちもマルと相性良いだろうって思ってるから応援してるぜ」
「そ、そうかな……そうだと良いな……」
「どっちもべったりじゃん、もっと自信持てって。それに技術も王国に認められてるし、マルは自分が思ってるより凄いんだぞ?」
アルにはやっぱりと言うべきか激励を受けた。
いつだってちょっと弱腰になってると僕のことを褒めてくれてちょっと強引に背中を押してくれる、そして肩を組んで一緒にいてくれる。
僕がこうして男爵位になれたのも、宮廷貴族になれたのも、親衛隊騎士になれたのも、自分だけじゃ出来なかった。
ここまでしてもらったんだから、ここからは自分で立ち上がらないとね。ステフとラウダに相応しい男になるんだ。
「うん。僕頑張るよ、立派な男になって、貴族になって、2人に見合うように」
「その調子だ、挙式にゃ呼べよ?」
「もちろんだよ」
グータッチを交わす、思えばアルは人生初の友達だった。
人付き合いが苦手な僕は一族の中以外では臆病だったから。そんな僕の手を引いてくれた親友の為にももっともっと頑張りたい、そういう決意もあったのは……秘密だ。
「ちなみにそこのたこ焼き屋、マジで美味かったぞ。あとユリウスが働いてる」
「あの人も頑張ってるんだなあ」
最後に面白い情報を置いてアルはマリエさんを呼んで去っていった、まだ屋台を見て回るらしい。
「さて、たこ焼きを食べたらまだまだ回るわよ。デートは始まったばっかりなんだから」
「そうですわ、この屋台を全部回るつもりで行きましょう」
「うん、どれだけ回れるか分からないけど頑張るよ」
真夏のデートは、まだまだ始まったばかりだ。
決意を胸に、僕達も屋台を見て回るのだった。
【調査その3】独自解釈で話を進めていく展開が将来的にあるけど大丈夫そう?
-
大丈夫だ、問題無い
-
無理
-
アルマリでイチャイチャしろ