穢れた血のスリザリンです...   作:sesamer

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解答編って言っときながら書いてないこと多すぎ問題と文章が気に入らなかった問題とで早めに書き上げたいのに時間が掛かってしまいました。その割には読みづらい文章かもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。



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「嫌な事件だったね……ハーマイオニーが復帰するまで数週間は保健室で寝泊まりなんだろ?」

「そうみたいだ。授業を受けられないって凄い落ち込んでたよ」

「流石ハーマイオニー」

 

 僕はクリスマス休暇の最終日、ロンとこれからのことについて話し合っていた。スリザリンの継承者がマルフォイではないことが分かり、僕達には事件の手掛かりが無くなってしまったのだ。幸い休暇中に事件の被害者が発生することはなかったが、新学期が始まればまず間違いなくスリザリンの継承者は動き出すだろう。

 

「それにしても新しい杖を買ってもらって良かったね。今までのはお兄さんからのお下がりだったんだろう?」

「そうそう!今までとは全然違う使い心地でさ、もしかしたら今までより成績が良くなるかも!そうなればハリーが3人の中で1番成績低くなってもおかしくないよな〜」

「ぐぬぬ、次の定期試験はハーマイオニーに教えてもらおう……流石に今年は中止だろうけど」

 

 ロンはこの間イレナに杖を渡したため杖を失ってしまった。だが彼からするとまともに使えない杖など役立たずも同然で手放して清々していた。ああやって怒った様子を見せていたイレナだったが、実は遠慮していたのかもしれない。

 

 むしろ秘密の部屋という騒動の間に起きた杖の盗難(譲渡だけど)事件にロンの両親は酷く彼を心配しており、連絡が届いた次の日には彼をホグワーツに迎えオリバンダーの店へと連れて行った。本当なら杖が折れたのは空飛ぶ車に乗った時で、今頃彼は大層怒られていたはずなのだが。

 

「それで、君がいない間になにか新しい手掛かりがないか探したんだけど、こんなものしかなかったよ」

「なにそれ?本?」

「T.M.リドルって人の日記なんだけど、何も書いてなくってさ」

「T.M.リドル……なんか聞き覚えがあるような」

 

 僕の知り合いにそのリドルなんとかって人はいないし、さっさとマクゴナガル教授に渡して元の持ち主に返そうとは思っていたのだが、この日記になにかとんでもない秘密が隠されてる気がして僕はこれを持ち続けていた。

 

「だけど僕の知り合いにもそんな人いないよ。流石に他寮の上級生までは知らないからその人の物なのかもしれないけど、休暇中に残った人の中にもそんな人いなかったよね?どこで見つけたの?」

「いや、普通に廊下の真ん中にあったんだ。遠目から見てもかなり目立ってたし、あれが休暇の前に落とされたっていうのは考えづらいと思う」

「うーん、それならそのリドルって生徒がいるのは違うのかな……どっかで聞いたことあるんだけどなぁ」

 

 ロンは頭を叩きながら思い出そうとする。その仕草は日記を見つけた日に見せたハーマイオニーと同じ反応で、どうやら心当たりがないのは僕だけらしい。

 

 

 

 ハーマイオニーが復帰するまでの1ヶ月間、僕らはこの日記について調べていた。その理由は他にすることがなかったからなのだが、そのお陰でこの日記には秘密の部屋に関する重要な意味があるのではないかという話になった。

 

「そうだった!この人、ホグワーツ特別功労賞を受賞した人だ。フィルチの罰則で散々磨かせられたから身に覚えがあったんだ」

「この日記、確かイレナが調べてたものだわ。あの時は深く聞かなかったけど、もしかしたらあの子は独自で秘密の部屋を調べてたのかもしれない。ほら、そのリドルって人がいた時代は以前秘密の部屋が開かれた時と一致するわ!」

「そうか、秘密の部屋を独自で調べていたイレナは、継承者とは別の襲撃者によって襲われて記憶を消されたんだ!マルフォイもイレナが襲われたのは継承者の手によるものではないと言っていたじゃないか!」

 

 僕が閃いた考えに彼らも同意したようだった。だが、その話が本当だとすると事態はより厄介になる。

 

「そうなると、継承者と襲撃者の関係はグルってことだ……!よく考えたら当たり前だ、この事態を引き起こしている犯人達が手を組まないわけがない」

「そうね、人を石に変える力を持った継承者に記憶を消す襲撃者。彼らの連携にイレナは破れたのよ」

 

 イレナがどこまで継承者達の謎に迫っていたのかは分からない。だけどその謎にこのリドルの日記は大きく関わっているはずだ!

 

 

 

 しかしその謎に関する調査はそこで難航し立ち往生していた。イレナの時にもハーマイオニーが協力したがその時も駄目だったらしく、今ハーマイオニーは躍起になって図書室から関連する本を探していた。

 

 僕も絶対この本になにかの仕掛けがあることは確信していたが、僕とロンは本を調べるハーマイオニーとは別行動にしてリドルについて調べていた。まああのハーマイオニーにも分からないことを僕達が分かるとは思えないし……

 

 その間は継承者達の動きはさっぱりと途絶えていて、僕達は警備が厳重になったホグワーツに継承者達も苦戦しているのではないかと推測していた。ロックハートは自分が奴らを撃退したのだと周囲に吹聴していたが。

 

 

 

 その状態が1ヶ月続き、継承者達の調査とクィディッチの練習の二足の草鞋にへとへとになっていた僕はある日、いつものように朝食に大広間まで向かうと驚愕した。

 

 そこは満面ピンク色の装飾が施されており、天井からはピンクの紙吹雪が舞っていた。どうやら継承者を撃退したらしいロックハートはその被害に沈んだムードの生徒達を元気づけるために、バレンタインデーを祝うらしかった。絶対自分が楽しみたいだけだろ。

 

 隣に座る先生達は皆うんざりしていたし、スネイプに至ってはロックハートに対して殺意すら顔に浮かばせていた。今日ばかりは僕も彼と同じ気持ちだ。

 

 ロックハートはその後お手製のメッセージカードを小人達に配達させ、授業の邪魔をしては先生達をほとほと困らせていた。僕も彼らに捕まってしまってなんとか辱めから逃れようとしたのだが、彼によって鞄を引き裂かれ拘束され、その上これ以上の恥はないと思うくらいの恥ずかしい歌で祝われたのを他の人達に見られたのだった。

 

 

 

ーーー

 

 

 

 うわ、かわいそ……羞恥に顔を真っ赤にしたハリーを遠目に見ながら私はその横に散らばっていたリドルの日記を見つける。予想通り彼は一度ハリーに接触しているのだろう。恐らくうんざりするほどにハリーの話をしていたであろうジニー・ウィーズリーとは違って、私がハリーのことをトムに話したのは少しでしかなかったが、それでも彼のプライドを刺激するのには十分だったらしい。

 

 それにしてもあの日記をどうやって返してもらおうかな。流石にもう一度忍び込むのは嫌だし、そもそもあれは私の物なんだから素直に返してくれって言ってもなにも悪くないんじゃないか?

 

 ただ、同じヴォルデモートの分霊箱同士で共鳴しているハリーと日記を強引に離すのはまずいだろう。せっかくのトムの計画を邪魔するのも忍びない。

 

 それにしてもこんな緊急事態にバレンタインパーティとは呑気なものだ。こんなことしてるからダンブルドアはホグワーツ理事に全会一致で退陣要求されるんじゃなかろうか、今回はその前にケリをつけたいところだけど。

 

 追ってくる小人を隠し通路を駆使して全力で撒いて必要の部屋へと逃げ込む。今日は授業以外はここに閉じこもってるのがいいだろう。あれ?いつもと変わんねぇな……まあいい、前回の期末試験はわりと気にしてるのだ。今回誰もが心の底で事件による試験の中止を望んでいる中、私は全力で勉強する!……まさに原作知識を利用したチート!俺TUEEE!!! 

 

 実際さ、前回私はスネイプ教授から動物変身薬に関して教わってたわけで、ただでさえ量が多すぎる魔法薬学のレポートを追加でどさどさと出されてたんです。だから前回の試験の結果がよろしくなかったのもそれはスネイプ教授の所為なんですよね。「仕方なかった」ってやつだ。

 

「そもそも私は無事に期末試験を受けられるのだろうか……計画通りに進めば肉体は間違いなく無事なんだろうけど……」

 

 私は机の上に雑に置かれた元ロンの杖を見ながらそう呟いた。

 

 

 

ーーー

 

 

 

 真実を教えましょう、ハリー・ポッター。貴方を50年前のホグワーツに。

 

 記憶の中へと入って行ったポッターを見ながら僕は自分の宿敵がまともに話が通じる奴で心底安心した。これだよこれ!あんなインペリオキチガイと馬鹿げた会話を繰り広げるなんかより、こっちの方がよっぽど僕らしい。

 

 ポッターに秘密の部屋の情報を教えて彼の行動を誘導し、最終的にはポッターの肉体を使って分霊としてではなく本物のヴォルデモート卿として復活する。その為にルシウスと取引をしてこのホグワーツに潜り込むのが僕の計画だ。

 

 ルシウスの選んだ生贄は想像していたよりかなりのキチ……癖の強い奴だったが、本人の闇への憧れを刺激して僕は予定より早く力を得ることができた。あとはルシウスがホグワーツからダンブルドアを退場させれば、頼れる者がいなくなった愚かなポッターは秘密の部屋へと突入するだろう。後は赤子の手を捻るようなものだ。

 

 偽の真実を掴まされたポッターは恐らくルビウスから情報を得てやがて秘密の部屋に辿り着く。クモの天敵で人を石に変える力を持つだけでも勘の良い者ならバジリスクを連想する。更に、奴は僕と同じように蛇語が分かる。余程の馬鹿でない限り怪物の正体にも気がつくだろう。

 

 だがその正体に辿り着いてもポッターには弱点をつくことですらできない。バジリスクの天敵である雄鶏は既に排除し、残った教師陣も残った生徒を守る為に人数を割いている。仮に残った少数がポッターについたところでバジリスクの相手にはならない。

 

 再び到来する闇の時代に心を躍らせながら僕はポッターにルビウスがホグワーツを追放されるまでの記憶を見せた。

 

 

 

ーーー

 

 

 

 最後の襲撃から約3ヶ月が過ぎ、周囲はこの騒動のことを半ば過ぎ去ったもののように扱い始めていたが、分かる人からすればこれが嵐の前の凪であることは明らかだろう。

 

 私はその中でも特に精力的に動いていたハリーに話し掛ける。彼はハグリッドの家を遠目から観察しており、リドルの記憶は既に見た後であることが分かった。

 

「ハリー、リドルの日記を知りませんか?」

「うわっ!なんだ、イレナか……びっくりした」

「いえ、ハグリッドを調べるということは秘密の部屋について教えてもらったのでしょう?」

「ああ、ってことはイレナもやっぱりそうだったの?」

 

 予想していたかのようにハリーが聞いてくる。確かにハリー達視点の私の動きは秘密の部屋を調べているように見えるな。実際その予想は当たらずとも遠からずなので私は曖昧に頷く。

 

「ええ、私もその日記を通して大まかな事件を知ることができました。ただ、最近は別方面を調べていたのですが」

「そういえば記憶は戻ったの?継承者とは別の襲撃者にやられたんでしょ?」

「???」

 

 ハリーからの問いかけに私は困惑を浮かべる。記憶喪失に関してハリー達にバレているのはまあ分かる。だが別の襲撃者とはいったいなんだ?それに私がやられたことになっている?

 

 取り敢えず話を合わせながら考える。もしかして背中の傷のことだろうか?確かに騒動の後に傷と記憶のことが露見したら私が部屋の被害者だと思われるのは自然だ。だからといって別の襲撃者となってるのはなんでだ?まあ実際この騒動の犯人はリドルとバジリスクの1組だが……

 

「はい、記憶は戻りました。ただ襲撃者については直接見てないので心当たりがありません」

「そっか、中々進展しないなぁ」

「そうですねぇ、私の方も調べてみるので日記の方を返してもらえませんか?もう日記は必要ありませんよね?」

「ああ、うん。そうなんだけど……」

 

 ハリーの歯切れの悪い返答に私はどうしたものかと考える。同じ分霊箱の彼からすればこの日記はもう1人の自分とも言えるほどの親近感を感じているはずだ。無理に返すのを強要して怪しまれるのも嫌だし、今返されても困るのはこちらも同じだ。気が向いたら返してもらうことにするか。

 

「今すぐと言いませんから、今週中には返してくださいね」

「……うん、分かった。」

 

 彼と別れて必要の部屋に戻る。いよいよ作戦は最終段階に移り私の行動は全て終了するが、トムは私の罠を見破るのだろうか。いや、この罠は彼のような偉大な魔法使いであるほど分からないだろう。強者に弱者の考えることは分からないのだ。

 

「そういえばイレナ、日記はどこで手に入れたの?」

「あー、実は私も拾ったんですよね」

「(その割には堂々とした態度だったな……)」

 

 

 

 必要の部屋で憂いの篩に見られてはいけない記憶を入れる。最初にトムに接触する時には念には念を入れて記憶の大部分を預けたが、今回はトムが操ろうが全て無駄だから原作知識だけでいいだろう。

 

 その後ロンの杖を持って鏡の前に立ち、深呼吸を繰り返して覚悟を決めて鏡に向かって呪文を唱える。その呪文は闇の帝王直々に教わった許されざる呪文。掛けられた者の行動を自在に操り、その手段も直接操作するのではなく、本人の行動や思考パターンを維持して意思だけを操作する為に被害者の判別がつかない究極の犯罪魔法。

 

「インペリオ-服従せよ-!」

 

 操作系は早い者勝ちってね!

 

 

 

ーーー

 

 

 

 今年度もいよいよ終わりを迎え寮対抗のクィディッチ大会が盛り上がる中、私は今年になってからは半ば日常的になってきた石化解除薬の調合を研究室で勤しむ。スプラウト先生のおかげでマンドレイクの入手には目処が立ち、ここから先は私が責任を果たす番なのだが、その途中でとんでもない迷惑が舞い込んで来た。

 

「スネイプ教授」

「なんだねミス・アーシュ、この状況に1人で出歩くとは貴様の能天気さに呆れるな」

 

 思わずついてでた私の悪態を聞いていないかのように無視したアーシュは胸に抱えた本を見せながら話す。おかしかったのはその態度だけではなく話す内容もだった。

 

「秘密の部屋の怪物はバジリスクで継承者の正体はこのトム・リドルの日記です。これはトム・リドルの記憶が封じられておりこれによって私は操られ、バジリスクを使って生徒達を石にしました」

「貴様……いったい何を……?」

 

 元々怪しさと胡散臭さの塊だった少女は能面のような表情で抑揚の無い声で私に報告するように話す。その様子は明らかに異常で、その内容と相まって私はこの状況を校長閣下に報告せねばならないことを確信して小さく舌打ちをした。

 

 

 

「そうか、トム・リドルとな……」

「は、その者の記憶が封じられた日記がこれであると」

 

 我らが校長閣下は珍しく焦った様子だった。私はアーシュの状態を鑑みて彼女を校長室の前に待機させて自分で報告したのだが……

 

「アーシュと2人きりで会話させてくれんかの?」

「本気ですか?彼女は明らかに普通の状態ではない。今すぐ医務室に連れていくべきです」

「セブルス、君の心配も分かる。だが今は一刻も早くこの事態を解決する必要があるのじゃ」

「……分かりました」

 

 ダンブルドアの目が本気であることを確認した私は彼女を校長室に招き、自分は出て行く。私は自分の研究室に戻りながら彼女に感じた既視感をようやく思い出した。

 

 あれは強力な服従の呪文を掛けられた状態に似ている。

 

 

 

ーーー

 

 

 

「それで私は自らに服従の呪文を掛け平常時には普段通りの行動を、体を支配しようとする力を感じたら先生達に報告するようにしました」

「……服従の呪文とな」

 

 考えもしなかったものだ。普通服従の呪文に対する防御手段といえば強い心で支配に抗うか、閉心術の要領で心を隠すことで支配から逃れる方法の2つだ。これらは闇祓いなら殆どが習得しており、例え生徒の中で服従の呪文に抵抗できる者がいても闇祓いの才能があるという話で終わる。

 

 だがイレナ・アーシュの所業はそのレベルの話ではない。数々の校則と法律を平然と無視し、堂々と許されざる呪文を使用したと公言し、その上で我々ホグワーツの教師陣が何百年掛けても終ぞ辿り着けなかった秘密の部屋を暴き、たった1人でヴォルデモートの悪事を止めたのだ。

 

 わしとしては功罪が大きすぎて彼女を怒ればいいのか褒めればいいのか未だに分かってないが、そのどちらにも今の彼女は何も反応を返さないだろう。今の彼女は自身の服従の呪文によって精神が危険に晒されており、呪文の解呪をしようにもかなりの時間を要するだろう。

 

 それに今のわしに残された時間は少ない。先程ホグワーツ理事からわしの校長職に対する解職の勧告が届いたのだ。恐らく解職が実現することはないだろうとはいえ、学校にバジリスクが潜んでいる状況でわしが離れるのはまずい。万が一にでも生徒達の中に死者が出てもしたらわしの責任だけで済む話ではなくなる。

 

「さて、わしとしてはまだまだ君達と話したいことがたくさんあるのじゃが、残念ながら状況がそれを許してくれぬ」

「や、やめろ!この老いぼれが!」

 

 わしは組分け帽子からゴドリックの剣を取り出して日記へと向かう。日記から在りし日のトムの幻影が現れてわしの邪魔をしようとするが、わしは右手の杖でそれを拘束して左手に剣を構える。

 

「き、貴様はこの女を信用する気か!?この女はとんだ狸だ!今に後悔するぞ!」

「生徒を信用するかどうか決めるのは君ではなく、わしだよ」

「馬鹿め!僕を生んだその選択を貴様はもう一度繰り返すのだ!」

 

 奴の言葉に足を止める。それは確かに今もわしの心の奥底で思っていることだ。闇の帝王の悪事を自身を犠牲に更なる闇で暴いたその姿は、目の前の悪に堕ちた青年を彷彿とさせる。だが少なくとも今だけは、わしにはイレナ・アーシュは善の存在であると断言できた。

 

「彼女は最後の最後でわしらに全てを話して頼ってきた。その一点だけでわしは彼女のことを信用しておるよ。君との最大の違いでもある」

 

 例え彼女がわし達を利用しているのだとしても、彼女の行動は独りよがりなものではない。彼女が誰かを必要としている限り、その者が彼女を善の道へと連れて行くだろう。それが希望的観測を含んでいると理解しつつも、わしはそう思わずにはいられなかった。

 

 

 

ーーー

 

 

 

 今頃ハリー達は終業のパーティの中だろうが寮杯の行方はどうなったんだろうか。去年は騒動を解決したハリー達が何百点も稼いで優勝したグリフィンドールだったが、今回は私も相当頑張ったからダンブルドアもスリザリンに何百点か与えてくれるのではないだろうか。

 

 あー、だけど私のやったことが他の生徒にバレたらヤバいなんてもんじゃないよなぁ。それに本人が現在も治療中なのに祝うのもおかしいだろう。私は病院の窓から外を見ながら考えていた。

 

 あの後インペリオの逆噴射で酷いことになった(ダンブルドア談)私は聖マンゴ魔法疾患傷害病院に一時入院していた。今は快方に向かいつつあるが、今でも命令されると咄嗟に体が反応してしまうので来年度の授業開始までに間に合うかどうかだろう。

 

 秘密の部屋事件はハリーを率いたダンブルドア校長がバジリスクを軽々と処分したらしい。彼は秘密の部屋を開けてバジリスクを呼ぶためにハリーを危険に巻き込んでしまったことを気にしていたが、去年も危ない目に遭わせた奴がいったいどの口で言うんだというツッコミは心の中だけで留めておいた。何故か校長先生はしょんぼりとしていたけど。

 

 入院している間もダンブルドア校長は時々現れて私に色んなことを教えてくれた。どうやら私のやったことは当たり前だが口外無用になり、アズカバン行き確定の許されざる呪文の使用も彼からご容赦を頂いたのである。

 

 そういうわけでリハビリの間は暇を潰すのに忙しかった私だったが、今年度も終わり夏休み休暇に入ると珍しくこんな場所で数少ない知り合いと出会ったのであった。

 

 

 

「あれ?ネビルじゃん、久しぶりです」

「あっ!イレナじゃないか!噂は本当だったのか!」

「噂?」

 

 いったいどんな噂が広がってるのか戦々恐々としながら私はネビルに入院していた間のホグワーツの様子を聞いた。

 

「ダンブルドア校長が秘密の部屋の犯人を捕まえたって宣言したんだけど、その協力者にハリーとイレナが挙がって皆ビックリしてたんだよ!」

「特にイレナは治療中でその後は暫く帰ってこないって言われたし、ハリーはダンブルドア校長の背中に隠れていただけって言ってたから、君が継承者と戦ったんだって皆噂してるよ!」

「いや、下手に真実を語ってるせいでめっちゃややこしい事態になってるじゃないですか……」

 

 確かに口外できないのは私の行動だけで、他の事柄に関してはむしろ危険が去ったことをアピールするため積極的に発表するべきだろう。だからといって私の行動だけ不明なままじゃ噂が噂を呼ぶじゃないか!

 

 私はネビルにだけでも伝えられることを話そうと、彼を連れてベンチに座るのだった。

 

 

 

「実は私はあの事件の実行犯とも言える立場だったんです」

「何だって!?」

「あの事件は日記っていう闇の魔法道具が全ての元凶で、それは50年前にも秘密の部屋を開いた犯人の記憶が封印されてたんだ。私はそれに操られて犯行予告や襲撃をしていたってワケです」

「だけど、ダンブルドアは君のおかげで事件は解決したって……」

 

 何言ってんだあの人!単純な被害者にしとけば分かりやすい話になってたじゃないか!

 

「まあ私もただ操られてただけではありませんでしたからね。操られた振りをしながらダンブルドア校長に全てを話したんですよ」

「校長先生に!?」

「ですので、私がやったことはそんな大したことでもないわけで……」

「いや、それはもっと凄いことだと思うよ」

 

 ネビルは僕を真正面から僕に向き合った。去年も同じだったけど彼はしばしばこのように、普段の情けない姿から想像もできない姿を見せるから非常に心臓に悪いことこの上ない。

 

「だって君は悪いことしてたって自覚があったんでしょ?その行動が操られてたとしても校長先生に正直に言えるなんて僕には絶対できないもん」

「ああ、確かに先生には伝えづらいかもしれませんね」

 

 まあ実際には勇気とはかけ離れた状況だったんだけども、それを言えないのが実にもどかしい!

 

「まあ正直そこまで気に病んでたわけでもないですよ。奇跡的にですが死人も出なかったし」

「死人って……そんな戦時中でもないんだから」

「え?」

「え?」

 

 ああ、確かに今はヴォルデモートは死んだことになってるから私のような認識は他人からするとおかしいのか。まあでもハリー達も概ね似たような感じだろうし別にいいだろう。

 

「ですがこの2年間ホグワーツは脅威に晒され続けましたし、来年もどうなるか分かりませんよ?もしかしたら戦争だって起こるかもしれない」

「ひぇっ、そんな怖いこと言わないでよ……」

「まあなんとかなりますよ。いや、この場合はなんとかしたいって言った方がいいのかも……」

「???」

 

 不思議そうに首を傾ける少年を見ながら来年のことを考える。来年こそは平穏な日常を過ごしたいが、かの英雄ハリー・ポッターがいる時点でそれは難しいのだろう。騒動に巻き込まれても上手く立ち回りたいものだ。

 

 

 

「そういえば、魔法薬学の時に見えたあの背中の傷は継承者につけられたものじゃないの?」

「ああ……あれは気にしないで下さい……後生ですので」

 

 今年1番のヘマはアレだろうな……私はネビルから目を逸らしながら深い溜息を吐いたのだった。

 

 

 




こっから先は裏事情というか、作者の脳内設定なので読み飛ばして下さい...

服従の呪文にこのように使う人間は恐らくイレナが最初で最後だと思います。理由としてはやってることが高度すぎる癖に問題多すぎて普通に努力してレジスト出来るようになった方が遥かに効率的だからです。
問題としてはたくさん考えられますがまず許されざる呪文を使っている倫理的な問題。まあこれはイレナの中では些細なものだとして、他に大きなものが2つあります。
まず服従の呪文で対象をコントロールするための呪文への造詣の深さがあります。これはトムくんのおかげでクリアしましたが、例え彼でも命令に条件を付けて多彩に動かすという発想はできないと思います。これはプログラムに慣れ親しんでいる現代人だからできる発想ですし、普通なら命令を掛け直すだけで済みますからね。
もう一つは他人に掛ける呪文を自分に掛ける魔法のコントロール力です。これは一朝一夕で身につくものではないため、原作のロックハートのようにロンの杖を借りて呪文を唱えたわけですね。長期入院コースですが。
これらの問題を踏まえて何故イレナがこの方法を取ったのかについては計画のついでで服従の呪文を覚えられることなどがありますが、1番は服従の呪文を掛けられても抵抗している様子を見せずに自分が意図した行動をしたいからです。聡明な読者方ならこの後の彼女の計画も察するかもしれません。

というわけでとりあえず短編としてはこれで一区切りです。秘密の部屋の後は早急なイレナの命の危機はないので傍観という選択肢もありますからね。気が向いたら書くと思います。
ただ、50年前に転生したイレナとトムくんとの友情ルートの短編だけおまけで書くかも...
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