ソルジャーアート・オンライン   作:織姫ミグル

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第8章

 

 

 

「悪いが」

 

「ここは通行止めだ」

 

 

目の前に広がる光景に、ユウキ達はわずかに目を細めた。 

 

そこにいる彼らを知る者達全員が思い出していた。この仮想空間を終わらせないようにあらゆる企業が裏から支援を行い、忘れ去られるはずだったデスゲームの象徴とも言えるあの鉄と石で作られた城をこの世界に再び結集させたわけだが、その一番の立役者と言えば誰か。 

 

答えは単純、目の前にいる剣士達だ。 

 

あの二人。

 

自分達が知る限り、この世界で最も実力のある剣士。

 

黒ずくめの装備で全身を整え、二つの剣を持てば敵なしと謳われた“黒の剣士”。

 

そして。

 

この世界ではイレギュラー的な存在で、その規格外の身体能力で仮想空間に囚われた者達を解放した“ソルジャー”。

 

キリトとクラウド。 

 

ソードアート・オンラインという命懸けのデスゲームを終わらせた、正真正銘の強者二人組が、肩を揃えて爆心地に君臨していた。

 

 

「キリト君!!」

 

「「クラウド!!」」

 

 

アスナ達の声が聞こえても二人はこちらを見ることはなかったが、その背中が語っていた。

 

────任せろ、と。

 

三◯人ほどの群れを睨みつけ、その眼光を受けた者達は背筋を凍らせた。

 

今この中で動けるのは余程の実力者で余裕を持っている者か、あるいはただ単に鈍い者くらいである。

 

 

「おいおい」

 

 

そのどちらを持ち合わせているのかは知らないが、増援部隊の先頭に立つサラマンダーのプレイヤーは利き手とは反対の手に剣を持ち、刀身を首に当てながら呆れるような目でこちらを見てくる。

 

 

「ブラッキー先生、それに何でも屋さんよぉ。幾ら何でも無謀だぜ。たった二人でこの人数を相手に出来るとか思ってるわけじゃないよな?」

 

 

二人のことを知っているような口ぶりであることから、彼らの実力についても知っているはずだ。だが流石の二人でも大人数を相手にすれば勝ち目はないと思っているのか、ため息を吐きながら顎を上げて睥睨している。

 

確かに。

 

そこらにいるNPCモンスターを相手にするのとはわけが違う。

 

コンピューターが制御するモンスターは予めプログラムされた敵であり、攻撃パターンさえ知っていれば対処ができて簡単に倒せる。でも今目の前にいるのはプレイヤー、それもかなりの手練れが揃っている。モンスター達はランダムで予めプログラムされた攻撃を繰り出してくるが、プレイヤー達にはそんな制限はなく、むしろ自由に戦って遊ぶというのがこのゲームの醍醐味だ。

 

魔法もあり、団体戦あり、全てが自由で許された仮想空間。

 

ボスに挑もうとしていることから、それなりにレベルを上げて良い装備を揃えていればあんな顔になるのも無理はない。

 

勝ち目はないと思っているリーダー格のサラマンダーはそこをどけとでも言いたげに二人に無言の圧をかけるが、クラウドは笑って答える。

 

 

「やってみないとわからないな」

 

 

明らかに余裕そうな態度にサラマンダーのプレイヤーは呆れ、後ろにいるみんなの方を向いて嘲笑を伝染させるように肩をすくめる。

 

皆が苦笑し、代表としてサラマンダーのプレイヤーが後ろにいる全員が思っていることを言う。

 

いつでも攻撃を開始できるように右手を挙げて。

 

 

「正気かよアンタ。今合図を出したらすぐに消し炭になるぜ? そうならないうちにさっさとそこを退いたほうが身のためだとおも────」

 

「御託はいい、かかってこい」

 

 

何事もいつものように答えるクラウド。

 

その態度に流石に頭にきたサラマンダーはわずかに目を鋭くさせ、

 

 

「そうかい、じゃあお望み通りに────」

 

 

上に挙げていた右手の指を、パチンと鳴らし、

 

 

「メイジ隊、焼いてやんな」

 

「「「Ek verpa einn spjót, smjúga sterkur óvinr!!!!」」」

 

 

合図が出された瞬間、魔法攻撃が得意なプレイヤーの高速詠唱によって即座に魔法が構築される。

 

異常な反応速度に一切噛まずに呪文を唱えられる滑舌といい、やはり今集まっているプレイヤー達は強者揃い。一気に押し寄せる高レベルの魔法の壁、避ける隙などありはしなかった。

 

ユウキ達も加勢に行こうとするが、咄嗟にアスナとティファがそれぞれ手を横に出して止める。 

 

二人は理解しているのだ。

 

確かに、あの大人数に二人で挑むのは無謀と言えるだろう。どんなゲームでも、チーム戦で相手の人数が少なければ勝率は下がるものだ。

 

だがしかし、それは通常のプレイヤーであればの話。

 

今目の前にいるのは誰か。

 

答えは目と鼻の先にある。

 

 

「恐れを呑み込め」

 

 

クラウドは一切余裕の笑みを崩すことはなく、その魔法全てを呑み込むようにアポカリプスを抜刀術のように構えると、

 

轟!! と音を立てて風の流れが渦を巻く。 

 

その光景に目の前にいる増援部隊の顔色が一瞬で変わった。今さら気づいた所でもう遅い。すでにクラウドの大技は発動している。まるで全てを巻き取るような巨大な大気の渦が、殺到する魔法を呑み込むように天に向かって伸びている。

 

地面の砂が舞い上がり、直径五メートルに及ぶ巨大な破壊の渦が容易く押し寄せる全ての魔法を掻き消す。

 

激しい捻りによって生み出された強い渦動により、風は全てを斬り裂く刃となる。

 

 

画竜点睛。

 

 

周囲を囲まれた時、そして相手の攻撃を相殺するにはうってつけのクラウドの大技。

 

風の塊に呑み込まれた魔法は全て消え、見ていた者達の武器を持つ手が震えている。

 

通常のプレイヤーではまず再現不可能なオリジナルのソードスキル。それを持っているクラウドの規格外さを実感した途端、勝機がないのは一体どちらなのかと皆が息を呑む。

 

 

「相変わらず規格外だな、クラウド」

 

 

その中で、あまり驚いていないキリト。

 

彼の圧倒的な力は何度も目にしているし、その力によってこちらは数え切れないくらい助けられたし、そりゃ一緒にいれば嫌でも慣れる。

 

ティファやアスナもわかっていたように笑っている。

 

クラウドがこの場に来てくれただけで、全てがなんとかなると思える圧倒的な信頼感。

 

それでも、ユウキだけはまだ呆然としていた。

 

何度も彼の戦闘を見て、なんなら何回も戦って、その凄さを誰よりも知っているはずなのに、ユウキは改めてクラウドとの実力差を思い知らされる。だがその顔は絶望には染まっておらず、むしろいつかそんな彼に追いついてみせるという強い意志を見せつけるような笑みを浮かべる。

 

 

「う、嘘だろ········!?」

 

「な、なんだよ、今の!?」

 

「竜巻を、発生させる、ソードスキル? そんなのアリか!?」

 

 

大手ギルドのメンバーでも、今の技は知らなかったらしい。クラウドの大技を見た者達は皆口を揃えて『ありえない』と呻いている。

 

 

「········ッ!!」

 

 

とはいえ、だ。

 

大手ギルドの攻略組である以上はいつまでも驚いてはいられない。リーダー格である長髪のサラマンダーは陣形を整えるように仲間達に指示し、盾を持ったプレイヤー達が前に出て、その後ろに剣や槍を持った者達がいつでも攻撃できるように腰を落とし、そしてそんな彼らは支援するように一番後ろにいる後衛部隊が魔法を詠唱し始める。

 

完璧な陣形。

 

正面からではまず突破できない。

 

あらゆる状況でも対処可能な陣形を取って待ち構えるが、クラウドは未だに表情を変えない。

 

むしろ。

 

クラウドはいつまで任せるつもりだとでも言いたげに後ろを振り向き、その視線を受けてキリトが左手を背中に回すと、何もなかった場所に『剣』が現れる。

 

以前、地下世界のヨツンヘイムと呼ばれる空中迷宮最深部で手に入れた伝説級武器(レジェンダリーウェポン)、聖剣エクスキャリバー。クラウドから譲り受け、それを上手く使いこなせるくらいにまでスキルを上げたキリトならば、その剣の力を充分に発揮できる。

 

武器の性能差でもわかるように、あの力を使われたらあちらも只では済まない。そのことを悟ったのか、皆が動揺を隠せずに思わず一歩後退してしまう。

 

 

「ひ、怯むんじゃねぇ! 相手はたった二人だぞ!!」

 

 

この期に及んでまだ自分達の力不足さを理解していないのか、それともリーダーとしての意地か。

 

サラマンダーの一声で皆が首を振って正気を取り戻し、クラウドとキリトを睨みつける。

 

 

「三分間時間を稼ぐ! アスナ達はその間にボス部屋へ急げ!!」

 

 

キリトが後ろを見ずにそう叫ぶ。

 

敵を迎え撃つという彼の言葉に、アスナは静かにうんと返事をする。

 

ユウキとティファも、この場を食い止めてくれる彼らを信じて頷く。

 

しかしスリーピング・ナイツのメンバーはまだ彼らの実力を信じ切れていないのか、不安そうな目で見ている。キリトの言った三分という時間は、現実に置き換えるとあっという間に感じるだろうが、こういう戦いの場では長く感じてしまう。

 

あの規格外の技を見てしまった後でも、本当にそんな時間を稼げるのか未だに信用できていない。

 

だから。

 

クラウドは敢えてスリーピング・ナイツのみんなにではなく、キリトの言ったことを撤回するように、

 

 

「三分もいらない」

 

 

直後だった。

 

クラウドはすでに敵軍に向けて駆け出していた。

 

音速の三倍の速度で突っ込んでいくクラウドは、轟音と閃光を撒き散らして敵の陣営を崩す。増援部隊の彼らには死に至るようなダメージが入らない軌道を選んだのだろうが、猛烈なスピードで突進した影響によって撒き散らされる衝撃波だけで何人かがひっくり返っている。 

 

灰色の粉塵が舞う。 

 

それが晴れてしまう前に、クラウドは地面に倒れていたプレイヤーの腹に剣を突き刺して戦場から強制退場にしつつ、どんどん敵を斬り倒していく。

 

 

「クラウド!!」 

 

 

ユウキは叫ぶが、地面に倒れていたプレイヤー達が武器を持って再起し、彼を取り囲むようにして立ち上がったためクラウドの姿を見ることはできなかった。

 

一方で。

 

攻略という場では“通常レベルの戦力”が集まっただけのプレイヤーに対して絶大な力を誇るクラウドは、剣戟飛び交う戦場からユウキへこう声をかける。

 

 

「早く行かないと追加料金が発生するぞ」

 

「!!」

 

「俺は安くないからな。今ならボスを倒した際の報酬の一割ほどで良いが、このままそこでぼーっと突っ立っているんだったらどんどん値上げしていく。それが嫌ならさっさとボスを倒しに行くんだな」 

 

 

ユウキは叫び返しそうとしたが、ガキン!!という剣戟が連続で鳴り響く音がそれを遮る。

 

それで。

 

彼女はそんなクラウドらしい言葉で背中を押してくれる声に、最大限の笑みを浮かべて、

 

 

「わかったよクラウド!! 無事に勝てたらクラウドには報酬を山分けするよ!! だから絶対にやられないでね!!」 

 

 

そう言ってアスナとティファの手を引っ張って、ユウキ達はボス部屋へと続く道を走り出す。

 

 

「········」

 

 

ティファはユウキに手を引かれながら、自分達の代わりに増援部隊を食い止めてくれるクラウドの方を向いて何かを呟く。

 

約束通り。

 

ピンチの時になったら助けに来てくれる彼の姿。

 

それを見て、ティファは笑みを浮かべ、静かにこう呟く。

 

 

「ありがとう········クラウド」

 

 

 

<><><><><>

 

 

 

ボス部屋の扉からゴォンという鐘っぽい音が鳴り響いて、クラウドはふっと鼻で笑った。 

 

全く、今日は出血大サービスもいい所だ。

 

それでも、悪い気はしなかった。 

 

この世界に囚われた際に自分を導いてくれたあのユウキが、ティファとアスナの力を借りてまで叶えたい夢があるというのだ。

 

夢なんてものは大体が最後は幻想で終わってしまう。

 

それは、憧れたソルジャーになれなかったクラウドが一番わかっている。

 

しかし彼女は諦めずに挑んでいった。

 

ならば他の誰にも邪魔はさせない。

 

お金をたんまり稼ぎたいとか、この世界で唯一無二のレアアイテムを手に入れたいだとか、そんな幼稚な理由でボスに挑むのではなく。みんなで力を合わせてボスに勝ち、この世界に自分達が活躍した証を残したいという、まさに純粋にこの世界を生きている彼女らしい願い。

 

そう思うと、若干ながら羨ましいと思った。

 

かつて、親友が残していったあの言葉。

 

────夢を抱き締めろ。

 

夢を持てばなんでもできる、そう思えるのは子供の時だけ。大人になってしまえば夢を持つのが難しくなる。現実は甘くなく、理不尽という壁にぶち当たって全てが否定される世の中で、しかしユウキは仲間達と共に願いを叶えるために勇敢に挑んでいった。

 

たかがゲームと呆れるものもいるだろう。

 

だがそれは彼女達にとっては大きなもの、誰にも価値を決められない唯一無二の存在。

 

金なんかで買える代物ではないことは明らかだ。

 

現実を見せられて絶望した自分とは違い、たとえ無謀だとわかっていてもユウキは立ち向かっていったのだ。

 

ならば、

 

 

「邪魔はさせない」

 

 

複数の矛先がクラウドに向けられる。 

 

それら全て斬り伏せるという意思を見せるように、クラウドは大剣を上に掲げ、その刀身を額に当て、力強く握り締める。

 

 

「夢を抱き締めろ。そしてどんな時でも、ソルジャーの誇りは────手放すな!!」 

 

 

返す剣で、クラウドの大剣による斬撃が乱射された。 

 

彼のサポートをするようにキリトも動き出す。軍の後ろからは見慣れた武将をモチーフにした装備を身に纏った男が駆けつけてくるが、正直もう援護は必要ない。

 

負ける気はしなかった。

 

ソルジャーとしての誇りと夢を受け継いだクラウドに、敗北という二文字などありはしない。

 

 

 

<><><><><>

 

 

 

ボス部屋と外へと繋がる扉が閉じられると、クラウド達の声も聞こえなくなった。

 

フロアボスに挑むには、中にいる挑戦者が負けるか戦闘が終了するまでは誰も介入できない。これでもう、誰にも邪魔はされないということだ。

 

挑戦者を迎えるように、かがり火が連鎖的に発生していく。円形となった部屋の周囲にある全てに炎が灯った際、ボスとの戦闘は行われる。あと五◯秒前後、その間にみんなが万全の状態で挑めるようにアスナが指示する。

 

 

「HPとMPが足りてない人はポーションで回復しておいてね。特にティファさんはさっきたった一人であの人数を相手に戦ってたんだから、念の為回復しておいてください!!」

 

「うん、わかった!」

 

 

アスナの指示に素直に従い、ダメージは一切受けてなくても全快にしておくように赤い液体が詰まった小瓶を口に当てて飲み干す。

 

アスナとティファがいつも通りの中、スリーピング・ナイツのみんなはどこか申し訳ないような表情となっている。

 

やはり、先のことが気になって仕方がないのだろう。

 

 

「みんな」

 

 

そんな落ち込んだ様子を見せているみんなに、ギルドリーダーであるユウキが励ますように言う。

 

 

「クラウド達はボク達のために戦ってくれたんだ。なら、いつまでも落ち込んだような顔していないで戦いに備えよう!!」

 

「で、ですけど───」

 

「大丈夫だよシウネー。さっきのクラウド見たでしょ? ボクが必死になって編み出したOSSをも防いで勝ってみせたからわかるんだ、あれだけの人数を相手にしても、クラウドなら絶対に負けないって!!」

 

 

クラウドと二度も戦い、そして敗北したユウキ。

 

絶対無敵の剣、空前絶後の剣で“絶剣”とまで呼ばれるほどの強さを持ったユウキでさえも勝てなかった最強の“ソルジャー”。その力を目の当たりにして、まだ彼を信用できないと言う愚か者はこの場にはいない。なんなら、もし負けてセーブポイントに戻されて、ダメ元でここにまた戻ってきても、クラウド達が変わらない様子で佇んでいる姿が容易に想像できる。

 

皆の心に闘気が灯ると同時に、ボス部屋の最後のかがり火の炎が勢いよく燃え上がった。

 

 

「これが正真正銘のラストチャンスだよみんな! クラウド達が外で戦ってくれている間に、ボク達も頑張ってボスに勝とう!! それで、黒鉄宮にある『剣士の碑』にみんなの名を残してみせよう!!」

 

 

何も難しいことはない。

 

皆で力を合わせてボスに勝てばいいだけ。

 

相手はボスとはいえ、たった一体だ。クラウド達の方が今多くの強者達と対峙している。レベルの差で語られたらボスの方が圧倒的に強いだろうが、人数で言えばこちらの方が多い。

 

自分達にはあって、ボスにはないもの。

 

絆だ。

 

信頼し合える仲間がいる、背中を任せられる仲間がいる、隣に立って一緒に戦ってくれる仲間がいる。

 

だから負けない。

 

空間に四角いポリゴンがいくつも増殖していき、次第にそれは人型へと変貌していく。ボスのお出ましだ。四本の腕に掴まれているその武器が、挑戦者達の馬鹿げた夢を粉々に打ち砕くと言わんばかりに無数の破片を振りまいて、その鬼神のような姿をこの世界に顕現させる。

 

胸を張ってこの世界に名を残すために、少女達は自分達の武器を力強く握り締める。

 

 

「さぁ········もう一回勝負だよ!! 今度こそ勝ってみせる!!」

 

 

ユウキの掛け声に皆が応える。

 

証明してみせろ闘う者達よ。

 

自分達がこの世界に名を残すに値する者であるということを。

 

 

 

<><><><><>

 

 

 

再びフロアボスエリアに足を踏み込んだ時、ユウキ達の想像とは違いそこは静まりかえっていた。

 

別に本当に静かなわけではない。

 

自分達の心が異様に落ち着いていたのだ。

 

一度敗北した相手を前にしても、一切怯えることはなく、むしろ平常心を保てていることの方が恐ろしく感じる。彼女達はそれに気付いていないが、無自覚でもその気分を味わうのは心地が良かった。

 

これまでに経験したことのない、高揚感。

 

何故そんな感情が湧き出てくるのか、それは背中を押してくれた者がいたからだ。

 

クラウドのあの戦いを見たら、自分達も暴れたくなるのは当然のこと。特撮ヒーローのアクション映像でカッコよく敵を圧倒している姿を見たら、その影響で自分の体も同じように戦ってみたいという欲求が生まれる現象が起きる。

 

一度目の戦いによって消費し、今現在残されているポーションはわずか三本。

 

だから回復はヒーラー役を受け持っているアスナとシウネーに頼るしかない。

 

今のところは順調。

 

一回目と同じところからちょっと超えた先のラインまで持ち堪え、戦闘を続けられている状況だ。

 

 

「はあっ!」 

 

 

ユウキは距離を取りながらもボスの角度から、体の向きを推測し走り出す。真正面に立つのは危険性が高すぎる。そう考えて目指したのはボスの左斜めうしろ。ここならば標的にされる危険性も低く、また全体の状況も見て取れるはずだ。 

 

そうしてユウキは再び巨人の前に姿を現した。 

 

まったく歯が立たず、敗北を味わうことしかできなかった前回の結末を思い出す。今度こそボスに勝ってみせると、ユウキの中では緊張と気合いとが微妙な均衡をとったまま高ぶりつつあった。

 

 

ゴオオオォォォォァァァァァァァァァッ!!!!!

 

 

ユウキ達が害をなす者だと覚えているのか、巨人は前回より好戦的だった。周囲を圧倒するように咆吼を上げ、首を巡らせる。続いて、四本の腕のうち、鎖を持つ腕を軽く振った。それだけで、ボスの周辺に強い風が巻き起こる。ユウキは相手の動きに注意を払いながらも、頭で思い描いた通りの場所にたどりつく。

 

まだ巨人は大胆に動かない。

 

二つの頭を動かし、狙いを定めようとしているようだった。 

 

死角はない。

 

だが負けるわけにはいかない。

 

前衛も後衛の面々も、勝利のために限界を超えて戦ってくれているのだ。二つの頭がそれぞれ別方向を向いて策を考えていると言うのならば、その隙を与えないくらいに攻撃を続ければいい。巨人の二つの口から時折放たれる毒属性の広範囲ブレス、そして二本の鉄鎖で周囲を狂ったように薙ぎ払う全方位攻撃によって地面が抉れ、視界が一瞬で奪われる。

 

全体回復を余儀なくされる攻撃。

 

しかし。

 

それはもう、一度見た攻撃だ。

 

だから。

 

本物の怪物達と対峙してきた彼女だけは対処できた。

 

 

「やあッ!!」

 

 

爆風の中、黒の妖精のティファが殺気に満ちた眼を光らせ現れる。

 

人知を超えた剛力。重機の如き勢いで、ティファはあらゆる攻撃を掻い潜ってボスの元へと駆け付けた。普通のプレイヤーにはできない芸当。彼女は現実世界で、人間ではない本物のモンスターと戦い、その拳で何度も倒してきた経験がある。

 

巨人の喉元を目視した次の瞬間には、その剛腕を振り下ろす。石畳の地面がビスケットのように砕け散る。攻撃が当たらなかったのは、あまりの威力に巨人はその一撃を飛び退いて避けたからだ。避けるまでもない攻撃であったはずだ、しかしティファの持つ破壊力を察してつい逃げてしまった。

 

何故避けたのか、それはティファどころか誰もわかっていない。

 

今わかっているのは、このボスの最大の特徴、それはタフすぎるということだけだ。

 

ティファが攻撃を終えると、入れ替わるようにユウキが次の攻撃を加える。

 

 

「ハアァァァァアアアアアアアアッッッ!!!」

 

 

ティファが引き退ると同時に、ユウキは巨人の体を挟んだ向こう側で斬りかかった。

 

ガキン!! と。やはり前回と同じく弾かれる。

 

一瞬で構えを変え、まっすぐに構えたマクアフィテルを今度は突き出した。斬れないならば突く。そう発想を転換したのだろう。それでも巨人の鋼のように硬い肉体は火花を散らしマクアフィテルの切っ先を弾き返した。

 

ユウキの向こうで、ノリは棍、タルケンが槍を抜き放ち、巨人に斬りかかる。だが、鋭い踏み込みと同時に斬りつけた左右の武器は、硬い音を立てただけで強靭な巨人の鎧に弾かれてしまった。

 

手応えはある。

 

だがそれは微々たるもの。

 

どの攻撃も絶対にクリーンヒットしているはずなのだが、塵も積もれば山となるのはいつになるかというくらいにしかダメージが入らない。

 

つまりは一桁程度しか入らない。

 

ボスということはHPの数値は異常に高く設定されているだろうから、時間をかけて結構削ったと言っても、このままのペースではこちらの体力と回復アイテムを消費していく一方で、倒す前に先にアイテムが尽き、回復の手段がなくなってしまい、最後には『敗北』という嫌な二文字が現実味を帯びていく。 

 

 

「ッ!!」

 

 

ユウキは諦めずに攻撃を続ける。その斬撃による火花が虚しく宙に漂い消えた。ティファはその煙を突っ切るようにして巨人に肉薄し、さらに拳で叩きつける。だがやはりその攻撃は通らなかった。

 

 

「前と同じ。二人とも、かなり攻撃を与えているはずなのに········いや待って」

 

 

二人がいくら攻撃しても巨人は怯むことなくその場に立っている。

 

攻撃を受け切る自信があるのだろうか、避けることなんて一切しない───と考えた時にアスナは隣にいるシウネーに叫ぶ。

 

 

「シウネー!」

 

「はいっ!」

 

 

戦い続けてからもう何分経ったかわからないが、これだけやっても決定打となりそうなダメージは与えられていない。肉体のどの部位でも同じような反応しか見せない。

 

戦闘開始の時は余裕を持っていた巨人でも、流石にダメージを削られたらいつまでも平然としているわけにもいかず、全員を倒すために暴走と言っても良いくらいの暴れっぷりで皆を翻弄している。だから体力が少ないのは間違いない。

 

 

「ちょっと思いついたことあるの。三◯秒だけヒール任せていい?」

 

「はい、大丈夫です。私はまだマナに余裕ありますから」 

 

 

何かを思いついたのか、アスナの願いに頷くシウネーを見てから彼女は右手の杖を上に掲げる。

 

詠唱の際に噛まないように充分に息を吸い、滑舌良く呪文を唱える。魔法が組み立てられ、アスナの前にいくつもの氷が発生し、それらを一箇所に集め、合計で四本の氷柱を発動。冷たい槍が完成し、アスナは視界に発生したスナイパーのスコープのようなものを覗き、腕の力加減を微妙に調整して照準に狙いを定める。

 

ここまでやっても良いダメージが入らない。しかし、アスナはここでようやく気付いたのだ。

 

見落としていた、ボスのある行動。

 

それはティファが攻撃した時、あの鉄壁とも言える防御力を備えたボスが珍しく回避していた。

 

あの時にティファが“狙った箇所”、そこを見抜き、腕をまっすぐ振り下ろす。

 

一度引き金が引かれると、発動していた魔法は全て撃ち出されるのだ。それらが次々と狙い通り巨人の喉元にある“宝石”付近に命中し、余波を撒き散らす。

 

 

ゴオオオォォォォァァァァァァァァァッ!!???

 

 

巨人はまさか後衛でヒーラー役として皆を支えている者が攻撃してくるなんて思っていなかったろう。防御姿勢を取る暇もなく、ティファがあの時狙った箇所に命中した途端に異様に苦しみ出し、今まで以上の手応えをアスナは感じた。

 

 

「やっぱり········そうだったんだ」 

 

 

これで証明された。

 

アスナが一体何に気付いたのかわかっていないシウネーは首を傾げている。

 

確証を得たアスナは自信を持って説明する。

 

 

「あの時気になってたんです。あんなに硬い防御力があって今まで防御姿勢の一つも取らなかったのに、なんでティファさんの攻撃を避けたのか、それはあの首元の宝石にウィークポイントが設定されてるからなんだわ。ちょっとの攻撃でも入ったら怯むくらいに弱い部位で、そこにティファさんみたいに破壊力のある一撃が入ったら一溜まりもないだろうし、だから仕方なく避けた。つまり───」

 

 

そこまで言ってシウネーは理解した。

 

今までまともなダメージが入らなかった分、あそこに良い一撃が入れば一気にHPを削られる。今まで戦った分、そこに一撃でも与えたらそれで決着がつく。

 

 

「じゃあ、あそこを攻めれば倒せるということですか!?」

 

「うん·······けど、ちょっと場所が高すぎる、かな」 

 

 

攻略の糸口が見えても、問題はそんな単純ではない。

 

巨人の身長はおよそ四メートルで、首元の宝石はそれよりも低い位置になるが、そこを狙おうにも、タルケンの長槍でもぎりぎり届かない場所にある。これがなんの制限もない地上でなら背中の翅を広げて飛び攻撃を使えるが、ダンジョンという特殊な場では使用不可となる。

 

当然だ。

 

そんなもの使われたら空を飛べないボスはタコ殴りにされる。全方向へと動ける空の上ならば敵の攻撃を容易く回避でき、しかも突進して通過の際にダメージを与えたり、攻撃が届かない空中から魔法を落とされ続けたらそれで終わる。とある日本の有名な戦艦が航空機に負けたのはそれが原因で、それをここでもやられたらゲームバランスが崩壊する。

 

プレイヤー達には空を飛べないようにされているので、あそこを攻撃するには魔法か、もしくは投擲武器で与えるかだ。

 

しかし、魔法を使おうにも皆体力を失っているし、使うには呪文を唱えないといけないのでその隙に攻撃されたらおしまいだ。

 

だからと言って武器を投げたりしたらそのプレイヤーは攻撃手段を失い、そこを狙われたら何もかも終わる。

 

 

「·······一か八か、ね」 

 

 

しかし、せっかく見つけた弱点だ。

 

それを利用しない手はない。

 

飛行不可エリアでもジャンプはできる。それを少しでも滞空時間を延ばそうと思ったら、ソードスキルを発動し、連撃技を繰り出してダメージを与えるしかない。無論、ソードスキルは使った後に硬直時間というシステムがあり、発動し終えた途端に地面に落下し、トドメを刺せなかったらそこを狙い撃ちにされてしまう危険性がある。

 

たとえそこで死亡しても魔法を唱えれば蘇生できるが、死者蘇生という魔法は複雑であり、たったそれだけでゲームのバランスが崩壊する代物だ。蘇生を何度もされたらいつまでも決着がつかないので、成功率は低く設定され、そして死者蘇生の呪文もまた複雑な文章で長いために回復する暇もなく、最悪の場合一つのことがきっかけで連鎖崩壊してパーティー全滅だって有り得る。 

 

でも、このまま戦っていたらそれこそ全滅するリスクが高まる。

 

そうなる前に短期決戦を狙ったほうが効率が良い。

 

 

「私、ユウキ達に作戦を伝えてくる。ヒール役を引き続きお願い!!」

 

「はい! 任せてください!」 

 

 

回復はシウネーがたった一人で担当。その負荷は想像以上のものになるだろうからアスナはポーチに残っている全てのポーションを取り出し、シウネーに渡して前線へと躍り出る。一五メートルもあったのにその距離を素早く縮めていく。

 

前衛で戦っているユウキ達。

 

それを一撃で葬り去ろうと巨人が両手の槌を振り下ろす。全員が上手く回避し、攻撃は虚しく地面を抉り取るだけで終わったが、その余波は凄まじく、近づいてくるアスナの頬に砂が飛んでくるほどだ。

 

目に入ったら何も見えなくなって、そこを突かれたらやられるとしても構わず走り、ユウキのすぐ後ろにまでやってくるとアスナは声をかける。

 

 

「ユウキ!!」

 

「アスナ!? どうしたの!?」 

 

 

後衛を務めていたアスナが前にやって来て、流石に驚きを隠せないユウキ。

 

攻撃を一時中断し、その間ティファ達がボスに攻撃して彼女達の作戦会議の邪魔をさせないように奮闘する。

 

アスナ達はティファに心の中で感謝しながら、

 

 

「聞いて、アイツには弱点があるの。二本の首の付け根中央の宝石部分、あそこを狙えば大ダメージを与えられるはずだわ」

 

「弱点!?」 

 

「ティファさんが一度そこを攻撃しようとした時、アイツは珍しく回避行動を取っていた。だから今あそこに一撃を入れたらそれで勝てる!!」

 

 

その説明を聞いてユウキは再び敵の方へ振り向くと、巨人の弱点だと思われる宝石が埋め込まれている箇所を見つめる。

 

場所が悪く、ユウキでもあそこには到達できそうになかった。

 

 

「······高すぎる。いくらボクでもジャンプしたってあそこまでは届かないよ!!」

 

 

やはり難しいか。

 

ユウキの言葉にアスナはやはり地道に削るしかないのか、と考えた時、

 

 

「それなら任せて二人とも」

 

 

前からティファの声が飛んでくる。

 

一度体勢を立て直すために一歩退がってきていて、彼女達の作戦を聞いていたようだ。

 

ティファは頭だけを動かしてユウキ達の方を振り向き、

 

 

「タイミングは合わせるから、準備できたら私に向かってジャンプして。天に届くんじゃないかってくらいにまで蹴り上げてみせるから!!」 

 

 

比喩的表現でも、彼女が言うと本当に天に召されるのではないかと思ってしまう。

 

つまり、彼女ならばあれくらいの高さどうってことない。彼女の脚力ならば、ユウキをあそこまで届けられる。

 

ティファの提案にユウキ達はすぐに頷いた。 

 

 

「それじゃあお願いしますティファさん!!」

 

「頼りにしてるよティファ!!」

 

「うん! 任せて!!」

 

 

作戦会議終了。

 

再び巨人への攻撃を開始した。

 

 

ゴオオオォォォォァァァァァァァァァッ!!???

 

 

巨人は全方向に鉄鎖を振り回し、みんなまとめて倒そうとしてくるが、それを止めてくれるスリーピング・ナイツ。リーダーが上手く攻撃を繋げられるように、みんなが必死にサポートしてくれている。

 

ならば。

 

その期待に応えるのが、リーダーとしての務めだ。

 

ユウキは腰を落とし、ティファのいる場所へと向かう準備を整える。

 

 

「今よユウキ!!」

 

「うん!!」 

 

 

アスナの完璧な合図に従い、勇気はティファへと突っ込んでいく。

 

ティファもタイミングに合わせるようにユウキの方に振り向き、姿勢を低くして足に力を込める。それを見たユウキは気合充分とでも言うように笑い、ティファはその笑みを信じ、低くした体勢からバク宙をするように回転し、そこに伸ばされた綺麗な細い脚に少女の足が一瞬降り立つ。

 

その勢いのまま、ユウキは文字通り高く飛び上がった。

 

一気に巨人の背を越えるユウキに、ティファは叫ぶ。

 

 

「頑張ってユウキ!!」

 

「任せて!! “()()()()”!!」 

 

「······え?」

 

 

聞き間違いだろうか。

 

いつもとは違う呼び方をされたティファは一瞬思考が停止するが、その時にはもうユウキの体は一気に巨人の首元の宝石へと到達し、トドメの一撃を放つための大技を繰り出していた。

 

 

「ヤアァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!」 

 

 

もう出し惜しみはしない、正真正銘のラストチャンス。

 

巨人の二つの頭を斬り分けるように、ユウキの凄まじい剣撃が目にも止まらぬ速さで解き放たれる。

 

いくつもの閃光が迸り、圧倒的な量の火花が散っていく。ソードスキルというのはゲームシステム上、発動してしまえばそれが終わるまで位置を固定される。飛行不可という設定でも、ソードスキルが終わるまでは落下することはなく。ユウキは巨人の眼前に張り付いて何連撃もの突きを繰り出す。

 

右方向、左方向からそれぞれ五連撃を放ち、合計一◯発もの攻撃が弱点の部位に叩き込まれる。

 

巨人は断末魔を上げようとするが、その前にもう一撃加えられ、弱点の宝石が割られてユウキは威力を殺せないまま突っ込んでいく。

 

ユウキが苦労して編み出し、絶剣という二つ名が付けられるきっかけとなった、十一連撃のオリジナル・ソードスキル。

 

それを叩き込まれたボスの巨人は理解するよりも先にガラス片と化す。

 

悲鳴を叫ぶ機会を失ってそのまま木っ端微塵となる大技。

 

それによってボスは一瞬で消え去ったわけだが、現実への適応が追いつかずに皆が黙ってしまっている。ソードスキルによる硬直は発動した本人にのみにしか適用されないのだが、その影響がどういうわけか全員にまで及んだのだろうかと錯覚するほどの状況。

 

静寂を打ち破ったのは、皆の前にメニューウィンドウディスプレイが表示された時だった。

 

報酬金にレベル経験値の数値が書かれたものを見た瞬間、緊張の糸が切れるように、

 

 

「お、終わった············」 

 

 

勝てたんだという実感が一気に押し寄せてきたアスナは掠れるような笑い声をあげ、思わず地面にぺたんと尻餅をついて座り込んだ。

 

今回の作戦を考え、そして上手く攻略できるように的確に指示した彼女こそ一番の功労者と言っても良い。 

 

無事にやり切ったことで力が抜け、ふぅとため息を漏らすアスナ。そんな彼女の元にティファがやってきて肩に手を置き、お疲れ様というような優しい笑顔を浮かべてくる。

 

 

「やったね、アスナ」

 

「はい············」

 

 

アスナは顔を上げ、ティファに笑いかける。

 

感極まったように笑い合う二人の元に、

 

 

「アスナァァァアアアアッ!! ティファァァァアアアッ!!」

 

 

ものすごい勢いで走り寄ってきて、屈んでいる二人に真正面から飛びついた。

 

小柄なインプの少女でも、あれだけの威力の突きを放ったのだからその衝撃は凄まじかった。

 

 

「「うわっ!!」」

 

 

二人はユウキの飛び込みに対応できず、そのまま一緒に後ろへと倒れ込んだ。二人の目の鼻の先にいるユウキは歓喜のあまり大声で叫ぶ。

 

 

「やった勝った!! 勝ったよ! アスナ! ティファ!!」

 

「うん、やったね!!」

 

「もう、ユウキったらはしゃぎすぎ!!」

 

 

三人は笑い合い、そのまま地面に大の字で倒れ込む。

 

皆も疲れがどっと押し寄せてきて地面に座り込んでいる。それでも勝てたことがすごく嬉しいのか、体力が残り僅かであってもVサインを作って喜びを共有する。

 

そんな時。

 

ガゴン! と。

 

ボス部屋に入ってくる時と同じような鐘の音みたいに重い音が鳴り響く。

 

おそらくはボス戦が終了したことで新たな挑戦者がやって来たのだろうと思ったが、違った。扉の先にいたのは、自分達の背中を押してくれた最高の剣士達。

 

キリトとクラウド。 

 

あれだけの人数を相手にしていたのに、二人の顔には疲れ一つない様子だった。その後ろには何故かクラインもおり、しかし二人の背中に遮られているからかピョンピョンと飛んでいる。

 

クラウドとキリトは特に何も言わず、ただ手を出して親指を立てる。

 

 

「えへへ············!!」

 

「「············ふふっ!」」 

 

 

祝福してくれるクラウド達に、ユウキ達も同じようにサムズアップを見せつける。

 

これで証明されたのだ。

 

彼女達がこの世界に名を残すに値する勇敢な剣士達であるということが。

 

 

 

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