魔剣異聞録~The Legendary Dark Slayer/Zero 作:月に吠えるもの
ルイズの意識は、深いまどろみの底に沈んでいた。
かつてのフォルトゥナの城主……すなわち魔剣士スパーダが使っていたという私室で床に就いているのだ。
貴族らしい大きなベッドの中でタバサと二人で一緒に入るルイズは、すやすやと寝息を立てているはずである。
フォルトゥナ一帯にスパーダが結界を張ってくれたおかげで悪魔達はしばらくの間、まともに活動することも儘ならない。故にルイズ達も安心して眠ることができるのである。
おまけに暖炉に火を入れているおかげで、部屋はとても暖かく快適だった。
ましてやベッドの中となれば尚更である。
「――ルイズ」
自分を呼ぶ声に、ルイズの意識はおぼろげながら深い闇の中から息を吹き返し始めていた。
寝る前にはスパーダが部屋の中で自分の銃の手入れをしていたはずなので、傍らにいるのは間違いない。
「起きなさい、ルイズ」
だがその声はスパーダのものではない女性の声だった。
凛としたその声は、紛れもなく姉のエレオノールのものである。
「ごめんなさい、エレオノール姉さま……わたし、まだそっちに戻れないんです……」
夢であるとルイズには分かり切っていた。まだ自分達は元の世界に戻ってはいないのだ。
きっとルイズ達の事情を知ったエレオノールら大人達が獣の首を使って呼び戻そうとしていることだろう。
起きたら早々に、向こうから呼び戻してもらう手筈になっているのである。
「……そんな手ぬるいやり方で起きる訳がないでしょう?」
別の女の冷笑が響くと共に、バチバチと弾けるような音までもが聞こえだす。
夢とはいえルイズ途端に強い不快を感じ始めていた。
不吉な音であるだけでなく、スパーダが従えているあの女悪魔・ネヴァンの声だったからだ。
「下がりなさい悪魔。妹に手を出したら、母・カリンに代わってお前を殺すわ」
「やってみなさい。あの鬼嫁よりも劣る力で、この私を殺せるかしら? 〝鋼鉄の処女〟」
(こっの……!!)
所詮、夢とはいえ聞き捨てならなかった。母を、姉を、何より家族を侮辱するなど断じて許せるものではない。
「――誰が、鬼嫁よおおおおぉぉぉぉぉっっっ!! この悪魔あああぁぁぁっ!!!」
絶叫を轟かせてルイズは飛び起きた。
枕を鷲掴みにすると、衝動に駆られるままにネヴァンの声がした方へ力一杯に投げつけだす。
どうせ夢とはいえ、不快な女悪魔は早々に夢の中から消し去りたかった。こんなものは悪夢でしかない。
「……はしたないわよ。ルイズ」
ボフッ、と力ない音がしたかと思うと姉の声は溜め息を返してくる。
「……はえ?」
ルイズは夢とは思えない現実感を意識だけでなく、体そのものが感じているのをはっきりと認識し始めていた。
寝ぼけ眼を薄っすらと開いていくと、ぼんやりとした視界の中には一人の女が仁王立ちするのが見えた。
「エ、エレオノール、姉さま?」
ゴシゴシと目を擦ると、はっきり目の前の景色が鮮明になる。
顔面が枕で遮られていたが、ポトリと落ちるとその下からは姉・エレオノールの毅然とした表情が現れていた。
「よーう。起きやがったな、娘っ子」
いるはずのない姉の存在にルイズは狼狽える中、枕元から声が上がった。
そこにはデルフのアミュレットが置かれているが、ルイズはきょろきょろと部屋の中を見回す。
無数のコウモリのような小さな闇の破片が飛び交っているここはフォルトゥナ城ではなかった。
部屋の調度品や見覚えのある風景は、まさしくトリステイン魔法学院におけるルイズの私室である。
今、自分がいるのも普段から使っているベッドに間違いない。
どうやら朝らしく、窓からは朝日が差し込んでいる。
「ゆ……夢、だったの?」
「んなわけあるめえよ。娘っ子達が寝てる間に呼び戻されたのさ」
よく見ると自分は寝間着ではなく、フォルトゥナにいた時と変わらない制服のままである。
ルイズには知る由も無いことだが、タバサと二人でベッドに入って熟睡した直後に一行は元の世界へと呼び戻されたのだ。
獣の首の一部である赤い眼からの眩い輝きが三人を包み込み、元のハルケギニアへと戻って来たのは一瞬のことだった。
呼び戻された場所は最初に獣の首に飲み込まれたこの部屋だ。寝静まった真夜中に三人を出迎えたのは、当直だったエレオノールとモデウス……そしてたまたま起きていたキュルケの三人だった。
「何よ? 朝っぱらからうるさいわね……タバサが起きちゃうじゃない……」
「キュ、キュルケ……」
ルイズが呆然としている中、部屋の扉が開けられると顔を出してきたのはそのキュルケである。
キュルケは昨晩、すやすやと眠るタバサを自分の部屋に運び、一緒に眠っていたのだ。
「あらエレオノール先生。わざわざルイズを起こしに来たんですか? せっかくだから、わたしが起こしてあげても良かったのに。ルイズがいなくて、ずっとやきもきしてたんですものね」
「ツェルプストー。茶々を入れる暇があるなら、さっさと着替えて食堂にでも行きなさい」
エレオノールはキッとキュルケを睨むが、当の本人は何故かプッと小さくほくそ笑んでいた。
「ルイズ、土産話は楽しみにしているわよ。また後でね」
軽くウィンクをしたキュルケは顔を引っ込め、そのまま扉を閉めていった。
エレオノールは髪を掻き上げ、ベッドから降りるルイズへと向き直る。
「ルイズ。あまり部屋を散らかすものじゃないわ。後でスパーダと責任をもって片付けなさい」
見ればベッドの周りには、普段のルイズの部屋には見慣れぬ品々がいくつも置かれている。
それらはフォルトゥナ城でもベッドの周りに置いていたスパーダの自称、〝土産物〟だ。
「それから朝食が終わったら、グラモンの四男達と一緒に話があります。必ず私の所へ来ること。良いわね?」
「は、はい。あの、エレオノール姉さま。スパーダは?」
肝心な自分のパートナーは一体、どこで何をやっているのか。ルイズは気になって仕方がなかった。
というか、知らない間に勝手に元の世界に戻るだなんて全く話が違うので、ルイズとしてはどうにも微妙な感じだった。
「そういやあ、娘っ子を寝かしつけてからブラッディパレスに行ったまんまだな」
エレオノールに代わってデルフが答える。
もうじきスパーダがブラッディパレスに入って八時間が経過しようとしていた。
ブラッディパレスの亜空間は現世と完全に切り離されているためか、使い魔の感覚共有の能力をもってしてもデルフには向こうの様子が判らないのだ。
◆
白く大きな満月が空高く浮かぶ夜空に円盤状の大きな浮き島がぽつんと漂っている。
もっともこの風景はブラッディパレスの亜空間が生み出した幻影に過ぎない。
その浮き島の上で、無数のオーラが激しい衝撃音を響かせながらぶつかり合っていた。
紅蓮のオーラと群青のオーラは、激しい炎のように揺らめく深紅のオーラを双方から挟撃しようとしている。
オーラの中にはそれぞれ、人の形をした異形の姿があった。
群青のオーラを纏う魔人は閻魔刀を、紅蓮のオーラを纏う魔人はリベリオンをそれぞれ手にして佇んでいる。
そして深紅のオーラを纏うスパーダは仮初めではなく、本来の悪魔の姿のままだった。
この閉鎖された亜空間の中であれば、外界に影響をもたらすことなく完全に悪魔としての力を解放し、維持することができる。
だが、その力をもってしても、相対する二人の魔人達との決着はいまだつかなかった。
最悪、この戦いを中断することも念頭に置かなければならないと考える程である。
『Dante……Vergil…….(ダンテ……バージル……)』
フォースエッジを顔の横で構えると、二人の魔人達も同じように身構えだす。
赤と蒼、対なるコートのような外殻を纏う魔人は何の感情も無いままにスパーダを見据えていた。
いずれ出会うかもしれない双子の幻影は、このブラッディパレスを訪れた時から現れた敵である。
スパーダの記憶に刻まれた二人の魔剣士。直接見たにしろ、残留思念からにしろ、今のスパーダにとっては最適な相手であることを表している。
ある意味、魔帝ムンドゥス達以上の大敵になり得るかもしれなかった。
◆
青空の下、トリッシュとレディは港の桟橋に佇んでいた。
二日に一度の定期船がフォルトゥナとこの港を往復して戻ってくるのがちょうどこの日である。
丸一日待ちぼうけを食らってしまったので、レディとしてはそろそろ我慢も限界になりそうだった。
「やっと来た……」
うんざり気味にレディは溜め息を零す。
その定期船がちょうど今到着したばかりで、桟橋に降りてきた乗客は赤いコートを身に纏う男がたった一人だけだった。
「観光はすっかり楽しんだようね」
ギターケースを肩に担いでいるダンテに歩み寄ったレディは皮肉を込めて言い放つ。
「お前も来てたのか」
「何よその言い草は。せっかく迎えに来てやったっていうのに」
レディを見てダンテは目を丸くするが、逆にレディに額をツンと指で突かれてしまう。
「車のレンタカー代、報酬から引いとくからね」
「好きにしな」
短くそう返したダンテはレディの横を通り過ぎ、先で待つトリッシュの方へと足早に進んでいった。
「どうしたの? 30年ぶりに、あんたの父親に怒られでもした?」
追いかけてきたレディが話しかけるダンテの顔は普段からは考えられない程に神妙な面持ちだった。
「そんなんじゃねえよ。第一、俺の親父って訳じゃねえからな……」
小さく乾いた笑みを零したダンテにレディは微かに眉を顰めだす。
「伝説の魔剣士スパーダ、か……あんたのあの兄貴に似てるって聞いたけど、ちょっと見てみたかったかな」
トリッシュから色々と話は聞いていた。まさか伝説の悪魔が、違う世界の存在とはいえフォルトゥナの地を訪れていたなどレディ自身も全く予想していなかった。
ダンテの双子の兄・バージルとはダンテと初めて会った頃に一度だけ会ったことがある。三つ巴で殺し合った相手だが、その父親というものが一体どんな人物なのか……興味はあった。
「トリッシュ」
「何?」
トリッシュの前で立ち止まったダンテは彼女と視線を交わし合う。二人は共に、フォルトゥナで見せたような屈託の無さとは無縁な真剣な眼差しだった。
「もう後はないぜ。――俺も、お前もな」
元々報酬などダンテにはあまり興味はないし、レディからとなると尚更期待はしていなかった。だが何にせよ今回の仕事の報酬を受け取る資格などないと自覚していた。
「本当に向こうで何があったの? 珍しく辛気臭いわね」
具体的にフォルトゥナの地で二人が何をしていたかについて、レディは聞かされていなかった。
ただトリッシュは今と同じような眼差しを浮かべたのである。
「俺達はまだまだ、伝説には程遠いってだけさ。一から出直しだ」
ダンテは思い知らされたのだ。自分が父・スパーダにまだ遠く及ばない存在でしかなかったことを。
父のことを見知っているらしい悪魔達と相対した時、連中は自分のことを「スパーダ以上だ」等と驚嘆することが多かった。
だが、その連中が知っているであろう〝伝説〟は所詮、〝過去〟でしかない。〝
(あんたはすげえよ……本当に……)
本心からダンテは父・スパーダを称賛していた。
この世界を訪れた父は何百年、何千年もの時が経とうと、その心に目覚めた正義と慈しみの心も衰えさせることがなかった。
かつての所縁の地とはいえ、遠い昔に去ったはずの場所に住まう人間達のことを何より考えて行動していたのだ。
彼が最終的に成そうとしていたのは、人間達を守ること。ただそれだけだった。
対するダンテ達の目的は魔剣教団という敵を倒すことだ。守るべきはずの者達のことなど考えていなかった。それが父との決定的な差だ。
父の働きは、最近のダンテが忘れかけていた大切なものを再び心に刻みつけたのである。
(まだ当分、親父を超えられそうにないな)
ひょっとしたら超えてはいるのかもしれない。だが、それはあくまで〝戦いの実力〟という一面だけだ。
勇敢だった父・スパーダの高潔な意志を受け継ぐと決意したはずなのに、最も大事なことを失念していた。そんな心構えで父を超えたなどというのはとんだ思い上がりに過ぎない。
自分も亡きバージルも、今のままでは決して父を完全に超えることなど永遠にできはしない。
(次は勘当……か)
父は、いつか再びダンテの前に姿を現わすのかもしれない。
自分がもし、図らずともこの世界にとっての災厄になった時……それを止めるために。
一度失態を犯した以上、二度も同じことをするなら、ダンテ自身が悔い改めようがもはや許されないはずだ。
あの父にしろ、自分の父にしろ……〝ダンテ〟という一人の
(あの坊やには似合いそうだな)
ダンテは決めていた。帰ったら、レディが用意する報酬とやらでネロに一つ贈り物をしてやろうと。
自分以上に、大切なものを守るために悪魔達と戦おうとする彼になら委ねることができる。
便利屋〝Devil May Cry〟の看板を。
そして、もしもダンテ自身が世界にとっての脅威となった時には、父以外に自分を始末してもらえるように。
「ダンテ、早く行きましょう。乗って」
「パティもあんたの事務所で待ってるんだからね」
「やれやれ……またお転婆なお嬢さんの相手って訳か。こいつは泣けるぜ」
留めてあったジープに乗り込んだレディとトリッシュに手招きされて、ダンテは苦笑した。
「それ、どういう意味? あたしのこと言ってんの?」
「まあ、あなたがお転婆っていうのは当たってるかもね」
声を上げるレディにトリッシュもつられて苦笑しだす。
「気にすんなよ。ちょっとした一期一会さ」
今回の仕事で出会った二人の少女のことをダンテは思い起こす。
どちらも性格に違いはあれど、レディやベリルのように熱く正しき心を秘めた立派なデビルハンターだ。
生きる世界は違えど、父・スパーダの伝説を直接目の当たりにし、今となっては失われた魔法の力で助け合っているのは間違いない。
愛剣のリベリオンを収めたギターケースを積んだダンテは、バックシートに一人腰を下ろしだす。
「俺は寝るぜ。着いたら起こしてくれ」
「自分で起きなさい」
頭に手を回し凭れ掛かるダンテに冷たく返したレディはエンジンをかけると、ジープを走らせ始める。
目を閉じるダンテは静かに揺られる中、ふと微かな呟きを漏らしていた。
「……Goodbye, Dad.(……さよなら、父さん)」
トリッシュ達の耳に届かない囁きは、少年のような響きに満ちていた。
◆
数多の異なる世界で、一つの戦いは終わった――
だが、ダンテの心には新たなる覚悟が刻まれることとなる――
偉大なる父にして伝説の英雄、魔剣士スパーダ――
未来に託された願いと志が失われた時、彼は再びこの世に降臨するに違いない――
血を分けた我が子を、その手にかける
やがて、〝四人〟の魔剣士達の背負う〝
そう遠くない未来で――
◆はじめに
一年間、外伝にお付き合い頂きありがとうございます!
文字数にして文庫本で約2巻分の文量となりました。当初の予定ではサクッと書いて昨年の10月くらいで完結の予定だったのですが、プライベートで運転免許の取り直しなども重なったためか大幅オーバーしました……。
初めから無理な話だったというのが現実です。
今回の外伝は最初の外伝の平賀才人編を書いた時から構想していたもので、マルチバースを実現できる獣の首の設定故に書くことができました。
今回はなるべくテンポも重視していたので、以前は約一ヶ月おきだった投稿間隔を1話ごとの文量を少なくして短くできるのかも実験的に行わせてもらいました。
いつもは1話につき1万~1万5000字程度を目途に執筆していましたが、そうなると推敲にも時間がかかったり、誤字脱字が余計に多くなったりするし、さらにまとめて全て投稿すると次の投稿まで間が空いて投稿頻度が少なくなる事態にもなっていました。
今回の3000~5000字程度がバランス的にもちょうど良かったので、今後はこの文量(いつもの1万~1万5000を小分けにして)で1ヶ月で最低2回は投稿を行おうと思います。
◆シナリオ・人物について
今回のシナリオは未だゲーム本編に直接登場していないスパーダ本人が(世界は違えど)ダンテ達ともしも出会ったら……、という次回作に対する期待から生じたものです。
今外伝のコンセプトは『本編の裏の出来事=ジ・アナザーオーダー』であり、ネロの視点での本編の出来事をほとんど省いているのもテンポ重視も含めて、ネロ編の裏側で起きた出来事をメインに描いたためです。
スパーダとダンテの邂逅についても最初はニアミスさせて、二人を同時に登場させないようにすることでスムーズに進ませ、最後の最後で合流するような構成にしていました。
また、同時に少し叩かれ気味なDMC4のシナリオを掘り下げることも目標にしていました。
最新作のDMC5もそうですが、どちらも結局は馴れ合いによって丸く収めてしまっているためか、余計にバッシングを受けています。
一応、DMC4の公式小説でもこの件に関しては言及されており、ダンテ達は強者の傲慢を抱くようになったが故に自分達の仕事を疎かにすることになったと言われています。
DMC4の場合はメタ的にはネロ編→ダンテ編と二人の主人公が通しプレイで続くシナリオとゲーム構成の都合で、バイオハザード4のエイダ編やDMC2と5のような別視点からフォローするような構成ではないため、結果的にダンテらしくなくフォルトゥナの被害を助長させる展開になってしまいました。
ネロ編でダンテが魔具をすぐ回収しなかったのも結局はネロ編におけるボス悪魔と戦う展開とダンテ編におけるダンテの活躍が必要だったがために過ぎないので、そのダンテ編に相当する逆走して街に戻る展開は完全に省いて教団本部からすぐ〝神〟戦に移れる構成にさせてもらいました。
ルイズやネロ達に魔具を回収させたのもそれが理由です。
◆設定について
ただのDMC4のシナリオのトレースだけじゃ面白くないため、ダンテの対戦相手をいくつか用意させてもらいました。
デビルメイクライの派生元であるバイオハザードからのオマージュを多数用意したのは最初から決定しており、どちらも怪物を銃火器で倒すというコンセプトが合致しているためか、意外と親和性があったのです。
特にDMC5でアグナスがウロボロス社の関係者という設定が明かされたのも良い材料で、DMC2の公式小説の描写も利用してかなり脚色させてもらっています。
特にコードベロニカを意識したものが多かったです。
ちなみにアグナスやサンクトゥスがクレドとキリエの両親を謀殺したというのは完全に本作独自の脚色で、公式小説でも語られているものではありません。あのジジイならやりかねないことではありますが……。
クレドに関しては原作だとほとんど良い所が無かったので、人間態での戦闘シーンを増やしたり、本来サンクトゥスに殺されるのを先延ばしにしてもっと出番を増やさせてもらいました。
公式ではダンテは父・スパーダを超えているという設定になっていますが、本作品におけるスパーダの強さは現段階ではDMC4ダンテとほぼ互角としています。
というのも最終章でも書いていますが、公式設定の「父を超えている」という部分に以前から個人的に、
「父を超えたというのはどの部分を言うのか?」
「スパーダを知っているという悪魔達(グリフォンなど)はかつて反逆した頃のスパーダしか知らない(今現在のスパーダのことは知らない)」
「ダンテが超えているのは戦闘能力の部分だけではないのか?」
「スパーダは2000年の間に魔力自体は落ちているが、他の部分は昔のままじゃない」
「ダンテが父を実力自体は超えていても、まだ及ばない部分もあるのではないか」
という疑問や解釈があるためです。
特に人生経験やキャリアについてはスパーダの方が圧倒的に多く、そこばかりはどうあってもダンテでも覆すことができない事実もあります。美味しんぼの海原雄山と山岡史郎のようなものを考えると判りやすいです。
なので、DMC4のダンテ(とトリッシュ)が驕りによって生じたミスをスパーダがフォローするという形で、まだダンテは父に及ばない部分があるという表現をさせてもらいました。
反対にダンテが完全に父を凌駕している部分として銃の取り扱いの差を描写しています。
◆カット・変更されたシーンについて
本外伝は予め細かくプロットや各シーンの箱書きまで作って執筆を進めてきましたが、尺の都合などで当初の予定から変更されたり、やむを得ずカットせざるを得ない展開も多々ありました。
以下がカット・変更された展開です。
・シルフィードが冒険に参加する
前のあとがきでも書きましたが、元々タバサの使い魔のシルフィードも冒険に同行する予定でした。
最初に作ったプロットはクライマックスの〝神〟との戦いからで、〝神〟の周りを飛び回るシルフィードにダンテが飛び乗ったり、指笛で呼び寄せたり、ドラゴンに乗れたダンテが年甲斐もなく喜んだりする場面を予定しており、シルフィードはダンテとの掛け合いで「竜使いが荒いのね」という台詞を言わせるつもりでした。
が、シルフィードが冒険に参加すると人数が多くなってクライマックスまでの物語のテンポを著しく損ねてしまうため、シルフィードは不参加となりました。
ダンテとの掛け合いはデルフに行わせることになり、「不良中年」→「中年じゃねえ」という場面が生まれました。
・スパーダの偽名
偽名として用いた〝D〟ですが、最初はスパーダの名前の頭文字の〝S〟を採用する予定でした。
しかし、いざ色々な言語に変えて名乗らせたりすると語呂が悪すぎたために已む無く変更することになり、吸血鬼ハンターDの主人公を参考にして〝名無しの悪魔=Devil〟で、〝
偶然ですが、この変更により〝D〟というスペルには一文字だけで様々な意味を持つという場面が生まれることになりました。
ちなみに〝D-BOY〟はダンテ役の森川氏が由来の声優ネタなのですが、これも完全に偶然ながら〝D〟と関連付けることができたものです。双子の兄弟や家族が殺し合うというのが、これまた偶然にもデビルメイクライと一致していました。
・アグナスの刺客
ダンテの対戦相手となったアグナスの刺客ですが、当初はバイオハザード4のヴェルデューゴがオマージュとなるような敵を登場させる予定でした。別行動のトリッシュもこいつに襲われる予定だったのですが、最終的にはタイラントをオマージュにしたパワー型の敵になりました。
最初にローブを身に纏っていたのは初期構想での名残りとなっています。
このタイラントのオマージュはコードベロニカまでのものをミックスさせたものをイメージしており、最初はネメシスのように触手も使わせる案もありましたが、これは没になりました。
・ネロとルイズ達が教団本部の奥で実験体と遭遇
40章で教団本部の奥に進んだネロとルイズ達は、そこでアグナスの人造悪魔の実験体と戦うシーンを予定していました。
登場するのはDMC2のサヴェッジゴーレムの亜種という設定で、バイオ4オマージュでリヘナラドールみたいな再生能力を持つ悪魔が出てくる予定でしたが、尺が長くなるのでこのシーンはカットしました。
・ギルガメスのロケットパンチが致命傷
〝神〟に捕まったネロがギルガメスのロケットパンチを発射して〝神〟に阻まれる展開がありますが、当初の予定ではこの一撃がスパーダとダンテが〝神〟の片腕を破壊する伏線になるはずでした。
ネロはギルガメスの使い方をよく知らないので、ありったけのパワーと衝撃が受け止められた〝神〟の手に蓄積されて、そこを基点にダンテ達がそこのこの全力で手を破壊するという展開になるはずでした。
ダンテがキレて魔人化して〝神〟をスパーダとの同時攻撃で破壊する展開に変更になったため、当初の展開はカットされました。
・タバサとルイズの風魔法
崩壊する教団本部からの脱出シーンは当初、そのまま脱出はできずダンテもルイズ達も海の底に沈んでしまい、そこでタバサとルイズが風魔法で包み込んで海中を進み、陸に上がって命辛々脱出するという展開の予定でした。
テンポが悪くなるため、パンドラを変形させたヘリコプターによる脱出シーンに変更しました。
・ダンテのジェットスキーにルイズ達が相乗り
バイオ4のオマージュとして、ダンテが教団本部の跡地からフォルトゥナの街へ直行する際にパンドラをジェットスキーに変形させて海を渡るというシーンが予定されていました。
このジェットスキーにルイズとタバサも相乗りしてはしゃいだり、上空の〝神〟の元へ上がるためにヘリコプターに変形させるつもりでしたが、教団本部から脱出時にヘリコプターに乗っていたため、ジェットスキーにする意味が無くなったため、カットされました。
・リベリオンと閻魔刀の融合
〝神〟との戦いではスパーダはリベリオンと閻魔刀を融合させて、長大な刀身を持つ刀を手にして〝神〟と戦う予定でした。
アグナスから取り返して閻魔刀が二つになったため、それを活かした戦闘にするためにこの展開はカットされました。
ちなみにこの閻魔刀とリベリオンの融合というアイデアは、以後の展開でもしかしたら使うかもしれません。
・〝神〟の攻撃を閻魔刀の次元斬が跳ね返す
〝神〟のファイナルフラッシュは当初、スパーダが閻魔刀で斬り裂いた巨大な次元の穴に逃がし、さらに空間を歪ませて別の次元の穴から〝神〟に跳ね返すというような展開を予定していました。
ダンテの見せ場とのバランスも考慮した結果、その展開は取り止め、公式小説でもあったダンテのドレッドノートに加え、ロイヤルブロックでルイズ達を守るという形に変更されました。
ちなみに実際のゲーム中でもファイナルフラッシュはロイヤルブロックで防御可能です。
・クレドの最期
改心したクレドは当初、〝神〟がフォルトゥナの街を攻撃してきたのを庇って命を落とす予定でした。
〝神〟はファイナルフラッシュか、広範囲系の攻撃で街を囮にしてダンテ達も一網打尽にする所を、割り込んできたクレドが全力で盾になり、そのまま塵も残さず消え去ってしまうという予定で、キリエは街を守ったのがクレドだと悟るという展開になるはずでした。
が、アンジェロクレドの能力はそこまで強くなく、〝神〟の攻撃から街を守り切るほど受け止めるのは不可能であったためにアンジェロ軍団と戦う展開に変更になり、当初の予定になかったネロ達との別れが追加されました。
・ダンテとスパーダの手合わせ
エピローグのダンテとタバサの決闘や最終章のブラッディパレスは元々、最後にスパーダがダンテの退屈を取り払うために一騎打ちを行う予定だったものが変更になったものです。
冗長になるのと何より後々、いずれ出るであろう最新作のゲーム本編で戦うことになるかもしれないので本人同士の戦いは取り止めることにしました。
この展開では当初、スパーダが閻魔刀かフォースエッジでダンテの胸を突き刺して、「その痛みを忘れるな」というような戒めの言葉を告げさせるつもりでした。
・スパーダからの選別
スパーダがダンテに一杯奢るシーンでは、当初ストロベリーサンデーではなく酒を酌み交わす場面になっており、スパーダは去り際に自分のワインをダンテに残していくという展開が予定されていました。
酒ではなくストロベリーサンデーを奢るのに変わったのでカットしました。
◆次回以降について
一年も外伝が続いてしまいましたが、これでようやく本伝の方に戻れます。(汗)
次回からは原作6・16・17巻がモチーフの新章「魔剣士スパーダ追放編(仮)」で再開致します。
外伝における出来事は本伝の方にも反映されるので、スパーダの持ち帰り品も活躍する機会がいずれ訪れる予定です。
書き溜めやnote等の雑用の関係で当分は間が空いてしまいますが、今後とも当作品をよろしくお願いします。
作品の良かったところはどこですか?
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登場人物
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世界観
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読みやすさ
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話の展開
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戦闘シーン
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主人公の描写・設定
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悪魔の描写
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脚色したオリジナル描写・設定