コロシアイ学園生活の果て、江ノ島盾子は苗木誠に敗れて命を落とす。
 江ノ島を待ち受けていたのは全く先のない絶望……のはずだった。
 しかし、死後江ノ島を待ち受けていたのは第2の生、それも自分が生まれ育ったのとは別の世界の学園生活だった。
 江ノ島は歓喜する。

 超分析力を持ってすら計り知れなかった未知との遭遇に。

 そして決意する。

 この世界で未知の絶望をひろめてみせると。


 よう実とダンガンロンパのクロス作品です。
 1話だけ書きましたがいまのところ続きを書く予定は全くありません。

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ようこそ実力至上主義の学園

「希望は、前に進むんだ!!!!」

 

 江ノ島盾子は敗北した。

 非力なくせに絶望的なまでに希望を信じて諦めない平凡を自称する少年に。

 長い時間をかけた計画だった。

 計画のためにそれなりの苦労もしてきたし、成就の末には世界中を完全に絶望に染め上げられるという絶望的な期待もあった。

 だが、そんな計画はあっけなく、自称前向きだけが取り柄の少年に妨害された。

 

 霧切響子は少年をこう評した。

 

―――『超高校級の希望』

 

 『希望』。

 『絶望』の対極にある、江ノ島にとって忌々しくて煩わしい絶望的な概念だ。

 そんな概念を象徴するような少年は、まさしく江ノ島にとって天敵だ。

 江ノ島はその少年が絶望的なまでに忌々しくて、絶望的なまでに煩わしくて、絶望的なまでに憎らしくて、絶望的なまでに愛しかった。

 

 超高校級の分析能力。

 江ノ島の有する才能だ。

 江ノ島はこの才能を有するがために、常に退屈を身に感じ、何事にもすぐに飽きてしまっていた。

 そんな彼女に退屈を忘れさせてくれるのが絶望だった。

 

 何より忘れがたいのは最愛の恋人を失ったとき。

 あの時の絶望は非常に甘美だった。

 

――――もっと深い絶望を!

 

――――もっとたくさんの絶望を!

 

 その思いに駆られて立てた計画だった。

 だが、そんな計画も唯一予測不能の才能をもった少年に打ち破られ、いまこうして自らに対してお仕置きを与える結果になってしまった。

 この状況を江ノ島循子は…………

 

――――ああ! なんて絶望的なの!

 

 絶望的に享受していた。

 

 目前に迫る『死』という一生に一度しか味わえない絶対的な絶望。

 あるいは………恋人を失ったときよりも深い絶望を味わえるかもしれない。

 そんな絶望的な期待を抱きながら、次から次へと多様なお仕置きをその身に受ける。

 

 そうして、ようやく終わりが近づく。

 背後に迫る死の重低音。否、ベルトコンベアに乗っている自分が近づいているのだから、迫るというより歩み寄っているのか。

 

 ガシャン

 

 ガシャン

 

 確実に近づく『死』の瞬間。

 

――――いったいどんな絶望を味わえるのだろう。

 

 想像に胸をときめかせ………

 

――――気づいてしまう

 

 『死』という絶望の終着点。

 その瞬間に味わえるだろう絶望の深み。

 奇しくも、今際の際にして江ノ島は絶望に飽きてしまう。超高校級の分析能力によって『死』の底を分析しきってしまう。

 これならまだ、恋人を失ったときやあの少年に計画を打ち破られたときの方が絶望的だった。

 

 つい先ほどまで浮かべていた笑みは消え失せ、無表情へと変化する。

 

 その瞬間、頭上から押し寄せる鉄鋼に江ノ島盾子は押しつぶされた。

 

 

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「は?」

 

 江ノ島盾子は目の前の光景に困惑する。

 つい先ほど、自分は肉体を押しつぶされ、『死』という先のない絶望によって終わりを迎えたはずだった。

 けれど、こうして意識を保っている。

 

 幽霊になったわけではない。

 自分は確かに生きている。息を吸い、息を吐く。鼓動が全身に血を送り出し、確かな体温を作り出している。

 江ノ島盾子は生きていた。

 

 『死』を持ってすら終わりを迎えられないのか。

 

 この未知の状況に江ノ島盾子は歓喜する。

 

――――ああ! なんて絶望的!!

 

 超高校級の分析能力をもってしても予測できなかった事態。

 『死』を迎えた先に『死』のない事態。

 これは江ノ島にとって未知だった。

 

 江ノ島は現状を分析する。

 そして、更なる未知を発見する。

 

 分析して判明したのはこの世界の不可解についてだ。

 なぜなら、この世界は江ノ島のいた世界とは全くの別。異世界だったのだから。

 自分のいた世界の現在はもちろん、過去や未来といった延長線上の世界でもない。

 江ノ島はさらに分析する。

 

 高度育成高等学校。

 目の前の高校に目を見やる。

 続々と校門をくぐる少年少女。彼らと自分が同じ制服を着ているからして、江ノ島は自分もここに通うのだと推察する。

 

「うぷぷぷぷ」

 

 軽快でコミカルな笑い声が漏れる。

 

 こうして江ノ島は高度育成学校へと一歩踏み出した。

 

 

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 1-D。

 

 それが江ノ島に割り振られた教室だった。

 

「私、佐藤摩耶。あなたは?」

 

 となりの席に座った女から話しかけられたので、とりあえず適当に会話している。すると、いつの間にやら1人、2人と人が集まりそれなりのグループができていた。

 

「おまえたち、席につけ」

 

 始業を告げるチャイムと同時に、スーツを着たおばさんが教室へと入ってきた。

 集まりは一旦解散し、各々各自の席に着く。

 

「えー新入生諸君。私はDクラスを担当することになった茶柱紗枝だ」

 

 そしておばさんは絶望的につまらない説明を始める。

 学校の特殊なルールだとか、外部とは連絡が取れないだとか、ポイントやら進学や就職なんてものは江ノ島にとって絶望的にどうでもよかった。

 それでも、周囲の浮かれ具合に来月に訪れるだろう絶望にちょっとだけ期待する。

 

「皆、少し話を聞いて貰ってもいいかな?」

 

 おばさんが教室から出て行って10万の話にみんな浮足立ち始める中、好青年といった雰囲気の男子がスッと手をあげて注目を集める。

 

「僕らは今日から同じクラスで過ごすことになる。

だから今から自発的に自己紹介を行って、一日も早く皆が友達になれたらと思うんだ。

入学式まで時間もあるし、どうかな?」

 

 そんな絶望的につまらない意見を唱えると、それに周囲は賛同する。

 

「僕の名前は平田洋介。

 中学では普通に洋介って呼ばれることが多かったから、気軽に下の名前で呼んでほしい。

 趣味はスポーツ全般だけど、特にサッカーが好きで、この学校でもサッカーをするつもりなんだ。よろしく」

 

「私は櫛田桔梗と言います。

 中学からの友達は1人もこの学校に進学していないので1人ぼっちです。

 だから早く顔と名前をおぼえて、友達になりたいって思ってます。

 私の最初の目標として、ここにいる全員と仲良くなりたいです。

 みんなの自己紹介が終わったら、是非私と連絡先を交換してください」

 

「俺らはガキかよ。自己紹介なんて必要ねえよ、やりたい奴だけでやれ」

 

 江ノ島は無難に自己紹介を終えて、一人ひとりを分析する。

 

 分析を続ける江ノ島は、次第に口元が弧を描くのを抑えきれなくなる。

 江ノ島は気づいたのだ。この教室には、磨けば光る絶望の原石たちが集まっていることに。

 なかでも、と江ノ島は絶望的な期待ができる生徒へと目を向ける。

 

「えー……えっと、綾小路清隆です。

 その、えー……得意なことは特にありませんが、皆と仲良くなれるよう頑張りますので、えー、よろしくお願いします」

 

 微妙な空気が流れる前に、江ノ島はフォローを入れてやる。

 

「ナニその自己紹介! チョーウケるんだけど!」

 

 江ノ島のフォローをきっかけに、誰からも注目もされない、記憶にも残らない自己紹介は皆に覚えられるものへと昇華した。

 意図に気付いたのか、自己紹介を滑らせた男子生徒、綾小路清隆は江ノ島の方へほんの少しだけ輝いた瞳を向けてくる。それに江ノ島は笑顔を見せて手を振って応える。

 

 江ノ島は内心で確信する。

 

(見つけた!)

 

 この全くの未知の世界。

 この世界で新しい、より多くの、より深い絶望を生み出すための鍵。

 そんな存在を見つけたと歓喜する。

 江ノ島盾子の超分析力は、綾小路清隆の抱える深い絶望も、彼の持ちうる絶望を生み出せる多大な力も直観的に見抜いていた。

 彼を堕として来る未来に想いをはせる。

 

「うぷぷぷぷ」

 

 軽快でコミカルな笑い声が漏れる。

 それは、聞く者によれば邪悪でおぞましい絶望の象徴だった。

 

 

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 ボクの名前は苗木誠。

 外見は、ご覧のとおり、どうしようもない平均的な普通の高校生……

 中身の方も同じ……

 性格にも特技にも成績にも、これといった特徴はない。

 特別な趣味があるわけでもなければ、ミュータントでもないしスタンドを出せるわけでもない……

 ボクの好きなアイドルや、好きなマンガ、好きな音楽、好きな映画を知りたければ……ランキング1位をみれば一発だ。その1位になるヤツが、大抵そうだから。

 “王道”という言葉すら裸足で逃げ出す、まさに、普通の中の普通……

 それがボクだ。

 最初に、自己紹介というオーソドックスなところから始めたのも、そのいい例だと思う……

 まぁ、強いて言うなら、唯一のとりえは……

 人よりちょっと前向きな事くらい……かな。

 

 そんなボクは今日からこの学校に入学する。

 東京都高度育成高等学校。

 日本政府が創り上げた未来を支えていく若者の育成を目的とした学校だ。

 進学率、就職率100パーセントらしくて、国主導の徹底した指導のおかげで希望する未来に全力で応えてくれるそうだ。

 

(ボクみたいな普通のヤツが、こんな凄い高校でやっていけるのか?)

 

 フルフルと頭を振って、そんな後ろ向きの考えをやめることにする。

 

(前向きなのが、ボクの唯一のとりえじゃないか)

 

 気持ちを入れ替えて、一歩踏み出す。

 

――――新しい学園生活が始まる。

 

 そんな希望に満ちた一歩と………なるはずだった。

 

 

******************

 

 

「1-C……ここか……」

 

 教室についてネームプレートを確認して、自分の席を探す。

 席について座ってみると、ボク以外の人も教室に集まってき始めていた。

 隣の席に誰か座ったみたいだから、さっそく話しかけてみようかな。

 

「ボクの名前は苗木誠、よろしく。

 キミの名前は?」

 

 そう話しかけたのは、薄い水色のショートヘアの女の子だった。

 

「………伊吹澪」

 

 隣の席の女の子の名前はどうやら伊吹さんというらしい。

 仲良くなれるといいな。

 そう思って積極的に話かけることにする。

 

「よろしくね、伊吹さん」

 

 

******************

 

 

「諸君、おはよう。

 私が君達Cクラスの担任の坂上数馬だ。担当科目は数学を教えている」

 

 坂上先生はそのあと、この学校について色々説明してくれた。

 なかでも10万も貰えるなんて聞いたときは驚いたな…。

 みんなも嬉しそうだったし、ボクも何に使おうか楽しみだったりする。

 ただ、家族と全く連絡できないのはちょっとつらいな……。

 それでも、折角なら3年間で成長した姿を見せて家族を驚かせたいと前向きに思う。

 もしかしたら、高校3年間で背が伸びて、馬鹿にしていたこまるを見返せるかもしれない。

 

 一つ気になったのは、説明が終わった坂上先生に、龍園君っていう人が質問していたことかな。「毎月10万もらえるのか?」ってどういう意味だろう?

 伊吹さんにも聞いてみたけど、「さぁ?」と特に気になってはいない様子だった。いや、どちらかというと気にしても仕方ない、って感じだったかな?

 

 なんにしても……今日からボクは、この学校で過ごしていくんだ。

 

 伊吹さんとも連絡先を交換できたし、その後、石崎君や小宮君、近藤君とも連絡先を交換することができた。

 みんな良い人そうだったし、ボクでもうまくやっていけそうだ。

 

 明日からは、もっといろんな人と仲良くなれたらいいな……

 

 これから始まる高校生活に『希望』を抱きながら、ボクの高校生活1日目は終わりを迎えた。

 





 どうしても書きたくなったので息抜きとして1話だけ書き上げました。
 連載作品の更新を期待していただいている方には申し訳なく思います。

 ただ、二次創作のクロスオーバーの設定を腐らせておくのも流用もできないしもったいないと思って投稿させていただきました。
 皆さんには、今後の展開を想像して楽しんでいただけたらなと思います。

 ちなみに自分が想定しているのは、最終的に江ノ島によってラスボスと化したDクラスに苗木君と龍園君率いるCクラスの面々を中心に立ち向かっていく王道物語です。恐怖を覚えて折れかける龍園君を苗木君が鼓舞して奮い立たせるシーンが見てみたい!
 最終決戦は江ノ島&江ノ島に篭絡された綾小路VS苗木君&ドラゴンボーイになってほしいと思います。
 もしも書くなら、Dクラスメンバーの絶望化描写にも力をいれたいところ。最初のターゲットは須藤かな?

 そんなわけで、書きたいだけ書いて続きを全く書く気がない無責任な真似を許してもらえると幸いです。
 この作品をきっかけに、他2作の連載作品にも興味を持っていただけると嬉しいです。
 では、この作品を読んでいただいてありがとうございました!


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