最近マガポケでシャンフロにハマっているので投稿です。

 ぶっちゃけ気分転換100%なので連載は許してクレメンス()

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マージで気分転換なので…


その男、晴天流の申し子

 

 

 

 

 …時は大正、所は山中、そこに在るは、一人の旅する剣士の姿…

 

 

 その剣士は左の手首に澄んだ色の腕輪を着け、左腰には蒼の中に所々白、まるで澄みきった快晴の空を彷彿とさせる80センチ程の大太刀。

 

 

 百と八十はありそうな背丈だが、それでいて若々しい。おそらくは十九、二十歳程度だろう。

 

 

 着ているのは群青色に白い鎌の刃のような模様が付いた一品。漆黒の髪を西洋で言う“オールバック”に纏めたその侍は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……腹が減ったなァ………」

 

 

 腹を空かしながら一人森を彷徨っていた。

 

 

「…やはり五日前に食ったあれ(・・)が良くなかったのだろうか………」

 

 

 そうこうしている内に、男はフラフラと足取りが悪くなっていく。ところが、彼はその直後開けた場所を視認した。

 

 

「………屋敷、か…?」

 

 

 幾日もろくに飯を食っていない体に鞭を打ち、男は屋敷の前に辿り着き―――そのまま倒れた。

 

 

「………不覚………………」

 

 

 薄れる意識。その最後に聞こえたのは、安否を問う女性の声であった。

 

 

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

 

 

 

―――――――

―――――

―――

 

 

『………陽太郎(ようたろう)、待ちなさい』

 

『…母上?』

 

『行くならこれを。我々『天津気(あまつき)家』に伝わる宝刀、『天刃(てんじん)』よ』

 

『それは我が家の宝……よろしいのですか?』

 

『我々天津気家は、元を辿れば平安は菅原道真公に繋がる一族…そして貴方はそのただ一人の嫡男。ならばこれは貴方の物。行きなさい。そして新たな世界を見て来なさい。それが…母親である私の願いです』

 

『………はい!』

 

 

 ――…ああ、そんなこともあったか………。

 

 

 母上………すみません…………

 

 

 

―――

―――――

―――――――

 

 

「………んぁ?」

 

 

 気がつくと、男――『天津気陽太郎』は木製のベッドに寝そべっていた。

 

 

「………ここは…?」

 

「あ、起きたのですね。おはようございます」

 

「!何奴!!………?『天刃』が無い!?」

 

「すみません。刀でしたら介抱の際にお預かりしていました。こちらですね?」

 

「………介抱?」

 

「申し遅れました。私はこの『蝶屋敷』の『胡蝶カナエ』と申します」

 

「…………」

 

 

 立て続けに知った事実に、陽太郎はただポカンとすることしかできなかった。

 

 

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

 

 

 

 ――ガツガツバクリ、もりもりジャクジャク。バクバクバリバリ、もぐもぐゴクン。

 

 

「……~っぶはっ!どうも、ご馳になりました!やぁ、すみません。介抱していただいた上に飯も頂けるとは。この御恩、必ずお返しします!」

 

「いいえ。と言うより、凄い食べっぷりですね」

 

「いや~、恥ずかしい話、五日ぶりの(・・・・・)まともな飯でした故。西洋で『空腹は最高の香辛料』とはよく言ったものです」

 

「………今、なんて言いました?」

 

「へ?いや、『空腹は最高の香辛料』とはよく言ったものです「いえ、そこではなく」……ああ、恥ずかしい話、五日ぶりのまともな飯でした故、の所ですか?」

 

「…はい。どうしてそんなことに?」

 

「………俺も確証があるわけではないのですが、五日前、俺はいつものように山の中を旅していました。すると突然、茂みから幾つもの古傷を負った隻眼の大熊が襲いかかってきたので取り敢えず斬り伏せ、最後の味噌を使って熊鍋にして食ったのです。が、…どうやらそれが山のヌシだったようで。以来、獣を見つけても此方を見た途端尻尾を巻いて逃げられてしまうようになったのです。野草を食おうにも薬師のような豊富な知識があるわけでもなく、仕方なくここ五日程は水しか食していなかったのですがそれも遂に限界となり、倒れた先がこの屋敷の前、といった次第です」

 

「………えぇ………………?」

 

「…そんな話はさておき、何か必要な物でもありますか?流石に刀やこの腕輪、着物は無理ですし、食い物こそありませんが、傷薬などであれば」

 

「!傷薬があるのですか!?」

 

「え、えぇ……俺は獣相手に怪我などせず、不要だったもので……」

 

「と、取り敢えず助かります!今すぐ出して貰えますか!?」

 

「はい、少しお待ちを………!」

 

 

 そう言って陽太郎は腕輪に触れる。と、腕輪は不思議な紋様を走らせて光を放ち――次の瞬間、ゴトゴトンと硝子の瓶が畳に落ちる音がした。そこに転がっていたのは、幾本もの透き通った黄緑の液体が入った小瓶の山だった。

 

 

「………ど、どういうことですか!?」

 

「…我が刀、『天刃』とこの腕輪は自分の家に古くから伝わる家宝でして。この腕輪を使えば様々な道具が出し入れできるのです。加えて半刻に一個、一日に二十四個だけ、様々な道具を吐き出すのです。これはその中でも比較的出やすい低級の傷薬なのですよ。低級と言えど、普通の薬と違って飲むか傷口にかけるだけで効能が出ます。にしても、何があったのですか?」

 

「………実は最近、『上弦』とおぼしき鬼による怪我人が多く、傷薬が足りなかったんです」

 

「『上弦』………?」

 

 

 カナエの説明によると、彼女ら蝶屋敷の女性たちは『鬼殺隊』なる非公認の部隊に身を置いており、それの最終目的は人々を脅かす鬼の首魁、『鬼舞辻無惨』なる者の討伐であり、上弦とは無惨ら鬼の中でもかなり強い部類に入るそうだ。その上弦とおぼしき鬼による被害が最近多く、幾人もの隊員たちが傷を負う、もしくは殺されているのだが、そのせいでちょうど傷薬を切らしていたらしい。

 

 

「…なるほど。そんなことが…ちなみに、それは一匹だけですか?」

 

「そうだと思いますけど…」

 

「なら話が早い。早速御恩を返せそうだ」

 

「………え?」

 

「要はその上弦とやらをたたっ斬れば良いのでしょう?簡単だ」

 

「いやあの」

 

「さてと、一狩り行きますか…………ッ!!」

 

 

 陽太郎は刀を掴み、よっこらせと立ち上がる。そして縁側の方へ歩いていき――次の瞬間、目にも止まらぬ速さで壁の瓦に足を乗せ、それを踏み台に山の中へ消えていった。

 

 

「………………………」

 

「姉さん!こんなとこにいた……どうしたの?」

 

「…しのぶ、さっき屋敷の前でみつけた剣士さん覚えてるわよね?」

 

「?ええ…それがどうかした?ってかこの大量の薬?はどうしたの?」

 

「その剣士さんが置いてったんだけど………鬼は太陽の光が苦手だから基本夜しか鬼は出ないって言おうとしたけど、言う前に行っちゃって……」

 

「………はあぁ?」

 

 

 

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

 

 

 

八時間後…………

 

 

「………いないな」

 

 

 あれから八時間ぶっ通しで上弦の鬼を探しているが、全く見つからない。蝶屋敷の方角こそ覚えているが、そう簡単には見つからないようだ。

 

 

「………さて、どうしたもの………!!」

 

 

 その時、陽太郎の耳は刀と何かがぶつかり合う音を聞いた。そして考えるより早くそちらへ走る。そこて陽太郎が見たものは―――

 

 

「………ようやく当たりが出たか」

 

 

 幾人もの隊員の屍、そして満身創痍のカナエ、そして――雪のように白い肌、目に『上弦』と書かれ、血を被ったような頭髪、中国風の服、緑の束毛が付いた黄金色の鉄扇――先程のカナエの話にあった風貌と瓜二つの鬼――『上弦の弍』の鬼、『童磨』がそこにいた。

 

 

「…………陽太郎、さ、ん………?」

 

「………誰だい君は?」

 

「おおこれは申し遅れた。俺はそこの御仁………カナエ殿に一飯の御恩がある、しがない一剣士。名を…『天津気陽太郎』と申す。すまんが相手は俺にして貰おう。どのみちカナエ殿は…失礼な話、満身創痍。だが言っておく。俺の前で、恩人たる彼女を喰おうと言うのなら…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天神、菅原道真公に代わって天誅を下す!!

 

「………へぇ、それは恐ろしいッ!!『血鬼術:寒烈の白姫』!!」

 

 

 そう言って童磨が鉄扇を振るうと、周囲に無表情な氷製の二人の巫女が現れ、息を吸う。そして放たれたのは極寒の冷風。それは嵐となって陽太郎に襲いかかり――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『晴天流』“断風(タチカゼ)”」

 

 

 ――刹那、極寒の嵐は斬られた(・・・・)

 

 

 

「………………は?」

 

「………!!」

 

 

 童磨はその整った顔をまぬけな形に変える。信じられないものを見たかのように。否、事実信じられないことが起きたのだ。カナエですら、傷による幻覚ではないかと目を瞬き続けている。

 

 

「我が晴天流、『断風』…その一閃は風を断ち、嵐を微塵とする。そんなそよ風は俺には届かん」

 

 

 陽太郎の目は蝶屋敷の頃とは一転、冷徹な……まさしく“剣豪”の眼光を宿していた。童磨はそれに一瞬びくりと跳ね上がるも、すぐに取り直す。

 

 

「………ただのまぐれだろう!『血鬼術――』」

 

「みすみすさせぬわ!!」

 

「なっ!!!?」

 

 

 陽太郎はその靴で地面を勢いよく踏み締め……一瞬で童磨との距離を詰めた。そして刀を鯉口から覗かせ……

 

 

「『晴天流』“三連(未練)断風(タチカゼ)”!!」

 

 

 ――一振りで三閃(・・)。その断撃は先ほど生み出した氷の巫女二人を真っ二つに袈裟斬りにし、鉄扇を握る童磨の右腕を斬り飛ばした。

 

 

「~~~ぐあああぁぁ!!!??」

 

 

 童磨は右腕を抑える。が、その頭にはまだ余裕があった。

 

 

「(馬鹿め!我らには日輪刀でなければ傷など傷ではない!)」

 

 

 鬼の特徴。その代表格と言ってもいいのは日輪刀でも頭を斬らねばどれだけ斬ろうと再生する点だ。そして童磨は本能で陽太郎の刀は日輪刀ではないと悟った。つまり、腕が無くなろうが意味はない。そうたかをくくっていた。

 

 

 が、それは大きな誤算であった。

 

 

「…?…!な、何故だ!何故!!?」

 

「………腕が、再生してない………!?」

 

 

 カナエもそう呟いた。が、カナエも陽太郎が寝ていた時にその刀を見たが日輪刀ではなかった。

 

 

 では何故童磨の腕は治らないのか、その理由は本人の口から語られた。

 

 

「この刀は俺の家に千年以上継がれし宝刀…その銘を『天刃』。京都は北野天満宮に奉納されし菅原道真公の愛刀、『鬼切丸"髭切"』と対を為す刀だ。道真公は平安の時代、その圧倒的な智力で右大臣にまで上り詰めたが、当時の藤原氏は時平の妬みを買い、冤罪で太宰府の地へ追いやられ、大好きだった梅の花と一人の子を残して此の世を去った。そしてその魂は天神と成り、自身を貶めた愚者への怒りを、ある時は雷、ある時は嵐、ある時は疫病へと変えて屠った。そして人々は道真を天神と崇め、太宰府と京、その後各地に天満宮を造り、その怒りを鎮めた……そして道真公が遺したその子こそ、我が遠い先祖だ。そしてこの刀は道真公が使っていたもう一振りの愛刀にして、道真公の――天神の力をその刀身に宿している。貴様ごとき、一鬼風情が、天神の化身とも言える刀を持ち、天をも操る我が一族のみが扱える剣術『晴天流』を超えれると思ったか?自惚れるな」

 

 

「…………ふ………ふざけるなあぁぁぁ!!!!

『血鬼術:霧氷・睡蓮菩薩』!!」

 

 

 童磨は左手で鉄扇を拾って振るい、大きな氷の仏像を生み出す。が、彼最大の血鬼術も、天神の化身の前には無意味だった。

 

 

「『晴天流』“火砕龍(カサイリュウ)”!」

 

 

 天刃を地面に突き立てると突然地割れが生じ、その罅から大きな炎の龍が現れた。その龍はまるで生きているように仏像を頭から呑み込み――蒸発させた。が、龍は尚も止まることなく空に昇り、黒い雲を形成した。そして――

 

 

「『晴天流』“灰吹雪(ハイフブキ)”ッ!」

 

 

 ――幾本もの灰の槍が童磨の下半身を貫いた。

 

 

「が………ッ…………!?」

 

「さらば!!」

 

 

 そして陽太郎が童磨の頸を斬ろうとした時…

 

 

――べべんっ!

「…なっ!!?」

 

 

 唐突な琵琶の音色が響いた途端、童磨の姿はかき消えていた。

 

 

「………カナエ殿!大丈夫ですか!?」

 

 

 すぐに陽太郎はカナエに駆け寄り、慌てて腕輪から薬を出して振りかける。薬はすぐにカナエに浸透し、傷を治していった。

 

 

「………ありがとうございました、天月さん」

 

「構いません。あの一飯の御恩を忘れるほど俺は愚かではありませんので」

 

「………天津気さん」

 

「はい?」

 

 

 カナエの問いかけに陽太郎は答えると、カナエは続けて口を開いた。

 

 

「『鬼殺隊』に入りませんか?」

 

 

 この日を境に、鬼と人、決して相容れない者たちの争いは大きく加速していく―――。




連載しないと思うからゴメンね(・ωく)


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