ウマ娘世界が地獄でも、住めば都です。   作:ジョンゲスト

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年末ですね~
ちょっと前に風邪ひいて寝込んでました~
コロナかそうじゃないかでびくびくもんです~
幸いコロナじゃなさそうでしたが~
皆さんも健康には気を付けましょ~

今回も閑話気味の短い話の詰め合わせみたいなもんですね~
続きはぼちぼち書きます~


夏近いとある一日

暑い。

まだ7月には数週間あるというのに、今日は朝から気温が上がって、教室は茹だるような暑さだ。

教室の中のクラスメイトも、下敷きを団扇代わりにパタパタと扇いでいるのが1/3くらい、根性で耐えてまじめに授業を受けているのが1/3くらい、完全にダウンして机に突っ伏したまま溶けているのが1/3くらい。

教室内の暑さに加えて、心なし、前の席のウマ娘の背から熱気が放射されているような気さえする。

 

「ここから期末試験出るからな~」

 

スポーツ生理学の教師が、汗を拭きふきガツガツとチョークを鳴らしながら板書していく。

黒板の端まで文字で埋めると、容赦なく最初の頃に書いた黒板前半分の内容を消す。

あ゛~!という悲鳴が教室のあちこちから上がるけど、完全無視でまたガツガツと新たな文字を黒板に刻んでいく。

教師の板書はかなり速くて、ノートに写すだけで精いっぱいだ。

 

隣のグランマーチャンは、暑さにやられたのか目をぐるぐるにしたまま机に突っ伏して微動だにしない。

彼女、髪の毛のボリュームがあるから暑さにやられやすいのも無理はない。

・・・まあ、彼女には普段から世話になっているからあとでノートを提供しよう。

 

超スピードで板書していく教師とそれをひたすら書き写す教室内の生徒とのスピード勝負が繰り広げられていたけれど、とりあえずその勝負には勝った。

こうやって書き写すだけでも、書いた内容はそこそこ頭に入るので、復習の手間を減らすと考えればまじめにノートに書き写すのもそう無駄にはならない。

 

授業終了後、休み時間にマーチャンにノートを貸したのだけれども・・・

 

「あの・・・ノート貸していただけたのはありがたいんですけど・・・字に個性がありすぎて読めません・・・」

 

「むぅ・・・」

 

授業終了後、貸したノートを手に悲しそうな顔のグランマーチャンから暗に字が汚くて読めないと言われて俺は憮然とするしかなかった。

 

仕方なしに、休み時間と昼休憩の余りを使って、彼女が解読できた部分の穴埋めをするつもりでノートを読み上げることにしたんだけれど・・・

普段寄り付かないクラスメイトまでもが周りに寄ってきて自分のノートの補完をし始めやがった。

なんでその集中力を授業中に発揮しないんだろうなあ・・・

 

 

午後は合同教練があったので、2~3クラス合同で1時間ほどランニングとダッシュ。

一昨日の筋肉痛がまだ残ってはいるけれど、ランニングで身体を温めれば痛みはまあ我慢できるレベルではある。

 

ダッシュは初めて参加してみたけれど、周りの連中が流して軽く走ってるように見えるのに、走り出しで置いて行かれる。

あっちの世界で中学生くらいの時に運動系の部活の連中が放課後やっていたダッシュは、ほんの2~30メートルをダッシュしてはUターンして戻ってくる、を繰り返すものだったけれど、ウマ娘は何しろ出る速度が違う。

Uターンして戻ってくるのが50メートルは先だ。

列に並んでは、指導教官が手を叩く度に先頭のウマ娘がダッシュしていくんだけれど、同時に走り出した隣のウマ娘に置いていかれてばかりでちょっと悔しい。

子供の頃、競争という競争で、何度も見せつけられた『追いつけない他人の背中』を、またここでも見せつけられて、久しぶりに頭の後ろがチリチリと焦れる感じを味わわされた。

 

ただでさえトップスピードを出そうとすると足がもつれるなんて言う状態なのに、出脚の加速まで遅いとか、ウマ娘として万全の走りができるようになったとして、本当にこのトレセン中央の学園生相手に勝負になるんだろうか。

今更ながらちょっと不安になってきた。

 

多少安心材料になるものと言えば、同じように脚が細いウマ娘は総じて加速力があまりないってことだ。

俺ほどじゃないけれど、出遅れ気味のウマ娘はだいたい脚が細い。

逆に脚がムチムチでパンパンのウマ娘は、走り始めからすぐにトップスピードに達する。

側にいたローゼンドルネンに聞いてみたら、脚が太めの彼女らは短距離やマイルを得意としているそうだ。

 

「体質もあるから無理に張り合わなくていいと思うぞ。

 無駄に筋肉付けると逆に遅くなることもあるし。」

 

彼女は最初のツンケン度合いはどこへやら、最近何かと気を使ってくれる。

聞けば答えてくれるし、聞いてもいない事でもアドバイスをくれる。

出会った当時は焦って荒れていただけで根はいい奴なんだろうな。

 

彼女の言うとおり、水泳選手やマラソン選手と、短距離走やジャンプ競技に出るアスリートは筋肉のつき方が全く違う。

きっと俺のこの身体に合わせた走り方、ってのがあるんだろう。

 

合同教練の後、ちょっと休憩してから、ダートコースへ。

一応、そこで練習しているチームのトレーナーに、外周借りま~す、と声をかけてから、ムッタートレーナーに言われているトレーニングを開始する。

鈍い痛みはあるものの、走れないことはない。

とはいえ、走ってみたら結構早く限界が来た。

1セット目の終盤、土踏まずのあたりの筋が攣りそうになる。

脚首からつま先までを使っての走り方は今日のところはこれで終わりにしておこう。

後は、ひたすらランニングで流すようにゆっくり走って周回数だけを稼ぐ。

ゆっくり流すとは言っても、ヒトの感覚からすれば十分速いんだけど、この程度だと身体の負荷的にはクールダウンと大差ない。

外周を5周も回れば、10キロメートルほどになる。

2セット連続、ハーフマラソンくらいの距離を走っても1時間もかからない。

そんな速度でありながら、大して苦しくもないんだから本当にウマ娘の身体ってのは驚異的だよ。

 

 

 

 

無理はしない、ってことでトレーニングを終えて寮の部屋に帰ってみると、こちらも熱気がこもって蒸し風呂状態になっていた。

窓という窓を開けてすぐさま換気だ。

この部屋は棟の角部屋なので、壁際に一つ窓が多いのが幸いした。

窓を開けると外気がすうっと部屋を通り抜けて熱気を追い出してくれる。

 

時間を見れば、大浴場が本格的に開く時間まではまだ随分と時間がある。

中途半端に汗をかいているから部屋着に着替えると部屋着が無駄に汗臭くなるので、椅子の背もたれを抱きながら昨日拾ってきた扇風機の風に当たって湿った体操服を着たまま乾かす。

くるくると椅子を回して風に当たっていると、部屋の片隅に置いてあるビニール袋が目に入った。

歓迎会で着て、洗濯でボロボロにしてしまった衣装だ。

ヒシアマさんから、長年受け継がれて役目を果たした衣装だ、焼却炉で燃やして天に送ってやれ、と言われていたものだ。

そういえば、今日はその焼却炉に火が入っているはずの水曜日。

時間もあることだし、この衣装を供養してやることにしようか。

 

 

体操服の上にジャージの下だけを履いて、焼却炉に向かう。

バイクのキャブレターからガソリンを抜いたときに、ペットボトルに洗剤と混ぜて放置していた廃棄ガソリンを、ゴミ箱の中のちり紙なんかに染みこませて、そのままビニール袋に詰めた。

雑巾はまだ捨てるほど汚れていないのでガソリンを吸わせて捨てるにはちょっともったいない。

衣装の方は、ゴミと一緒にするのはかわいそうなので、もともと入っていたビニール袋に詰めたまま持って行く。

 

外履きに履き替えて、食堂の裏手に回ると、寮からも校舎からも離れた敷地の隅っこに高い煙突が立って、わずかに煙を吐き出していた。

 

火事にならないようにか、ぽっかりと空いた空き地の真ん中に、ぽつんと建った、小屋ほどもある、大きな鉄製の焼却炉。

不完全燃焼で煙が出ないようにだろう、ゴウゴウと空気を送り込む電動ファンの音がしている。

その横に積み上げられた、木製の粗大ごみや、段ボールに入った書類、布らしきものでパンパンに膨れたビニール袋たち。

そこで、学園の職員らしき男の人が、1メートルはありそうな長い柄のハンマーで焼却炉の入り口に入らないような大きな木製の棚なんかを、ガッツンガッツン叩き壊していた。

職員が着ている白いつなぎは見覚えがある。

歓迎会のステージを設営してくれた施設部の職員だ。

 

「あの~、すみません。

 焼却炉でこれ、燃やしてもらってもいいでしょうか。」

 

声をかけると、施設部の職員はハンマーを振るう手を止めてこちらを見た。

 

「おう、燃えるゴミならそこに置いていきな。

 って、美浦寮の歓迎会の主役だった嬢ちゃんか。」

 

つなぎの胸元を大きく開けて、顔から滴り落ちる汗をタオルで拭く顔には見覚えがある。

ステージ設営で指揮を執っていた施設部のオヤジさんだ。

現場の統括してるような立場の人がなんでこんなところでハンマー振るっているんだろう?

 

「先日は会場の設営手伝っていただいてありがとうございました。

 実は、あの時着ていた衣装をダメにしてしまいまして。

 長年がんばってきてくれた衣装だというので、できればこの手で火にくべてやりたいのですが、よろしいですか?」

 

「そりゃ構わねぇよ。

 俺達に見られたくない物直接燃やしに来る奴も珍しくないしな。

 今投入口開けてやるが、火傷に注意しろよ?」

 

オヤジさんが耐火煉瓦の貼られた分厚い投入口の扉を開き、オレンジ色に燃え盛る焼却炉の内部が姿を現す。

 

そこに、まずはガソリンを含ませたゴミの入った袋を投げ入れる。

一瞬にして火力が上がり、煙突の先端から炎を噴いて、それは燃え尽きた。

火力は十分すぎるほどだ。

 

続いて、ボロボロになってしまった衣装を袋から取り出して、両手でそっと炉の中に落とし込む。

特に思い入れがあるわけでもなく、たまたま選ばれて着る羽目になった、というだけの衣装だけれど、何らかの縁があって俺が着ることになったのだろう。

ダメにしてしまったのも俺だけれど、声に出さないよう一応『ありがとう』と口だけ動かして齢を経た衣装に礼を述べておく。

長い年月を経ていたであろう化繊のそれは、ラメの破片をパチパチとはじけさせながら、炎の中に溶けるようにその形を無くした。

 

「ありがとうございました。」

 

「もういいのか?」

 

「ええ。

 しかし、すごい量のゴミですね。

 これ全部燃やすんですか?」

 

「ああ。

 ゴミの処分も金がかかるんでな。

 燃やせるもんは燃やして経費削減だ。

 まぁ、やたらと外に出せないゴミなんかもあるしな。」

 

ゴミの焼却が当たり前のように行われているってことは、俺のいた世界ほど、まだゴミ処理に関しては規制が厳しくないのかな。

あっちの世界じゃ若い頃、ダイオキシンだなんだで環境関連で大騒ぎして、あっという間に焚火がタブーになってしまった。

小学生の頃は、焼却炉当番なんて奪い合いになるほど楽しい当番の一つだったけれど、大人になってふと気が付くと学校という学校から焼却炉が消えていたっけ。

・・・しかし、外に出せないゴミか。

そこに、段ボール一杯の書類の束らしきものがあるし・・・

 

「外に出せないゴミって、機密とかですか?」

 

「そんなんじゃねぇよ。

 まだ嬢ちゃんにはピンとこねぇかもしれねぇが、トレセン学園にゃ、アイドル級のウマ娘も在籍してるだろ?

 そのアイドル様が使ってたものなんかはゴミでもやたらと外部に出せねぇんだ。

 最近は警備も厳しいから敷地内に入ってくる不届き者はまずいないんだが、俺が若い頃は結構いたんだぜ、寮のゴミを漁ろうとする輩が。」

 

「・・・ああ、居場所が割れてますもんねえ、レースに出てるウマ娘って。」

 

URA主催のレースに出るウマ娘って、ほぼ全員トレセン学園の寮生だもんな。

世界的な有名人なら、店で使われたストローやら抜け毛なんかがオークションに出されてとんでもない値段で落札されたりする。

・・・我らがルドルフ会長クラスなら、鼻をかんだちり紙なんかを盗みに、ゴミを漁る輩がいないとも限らないな。

 

「お嬢ちゃんだって他人事じゃねぇんだぞ?

 傍から見りゃ、中途でトレセン中央に入って来たなんてウマ娘は金の卵だ。

 有名にならないうちならガードも緩いってんで狙われるかもしれねぇぞ?」

 

「そんなこともあるんですか・・・

 気を付けます。」

 

実態はまともに走れもしない不出来なウマ娘なんだけどな。

俺の尻尾の抜け毛とかを未来の重賞勝ちウマの尻尾の毛!とか言って悦に入る奴がいるんだろうか。

中身がおっさんと知って卒倒する姿を見て見たい気もするけれど・・・いや、知らずにペロペロとかされているのも気持ち悪いな、無しだ無し。

 

しかし、そう考えると、この捨てられた家具なんかも、実は卒業したすごい先輩のものだったりするのだろうか。

 

じっと積まれたゴミの山を見ていたら、何か気になるものでもあると思われたらしい。

 

「なんか欲しいものでもあるのか?

 ここにあるのは職員寮から出たものばかりだから、学生寮で使えるようなものはあまりないと思うが、欲しいものがあるなら持って行ってもいいぞ?」

 

持って行ってもいい、と言われれば、一応品定めはする。

・・・とはいえ、言われたように、木製の大型家具とか私物がほとんどない俺には使い道がないんだよな。

整理棚とかあっても入れるものが何もない。

 

そんな木製家具の中に、玄関なんかに置く木製のコートハンガーがあって、一本棒が折れているだけだったのでこれなら!と思ったら、なんか違う。

コートハンガーにしては支柱がやたら太いなと思ったら・・・

中国拳法の修行に使う木人だこれ。

職員寮の中で木人相手に拳法の修行をして、その木人の腕をへし折る職員か。

ウマ娘と戦うことでも想定しているんだろうか?

 

木製家具の類にはめぼしいものがなかったので、他を見回すと、ちょっと気になるものがあった。

大きな透明ビニール袋に詰め込まれた、均一な色合いの布の塊。

深緑色で、フェイクファーか何かに見える。

 

一抱えくらいあるそれを持ち上げてひっくり返したりして見ていたら、それが何なのかオヤジさんが教えてくれた。

 

「それ、職員寮の応接室にある長椅子のカバーだそうだ。

 同じカバーがもう生産されてなくてな、総入れ替えするんでお役御免になったらしい。」

 

「袋を開けてみてもいいですか?」

 

「いいぜ。」

 

許可を貰って袋を開けてみると、ちょっと埃っぽいにおいがする。

1センチくらいの化繊の毛が生えたよく伸びる生地の、俺の身長よりも長いシートカバーだ。

毛が禿げているわけでもなく、穴もない。

ただ、シートカバーを絞るゴム部分の縫い目がほつれて、ところどころ中のゴムひもが見えていた。

張りが悪くなって皺でも寄るようになったんだろうな。

 

これだけ大きい生地なら適当にちょん切って冬場の枕カバーとかにすれば、ふわふわで温かそうだ。

ひざ掛け代わりにしてもいいかもしれない。

掘り出しものって言うのは、だいたい季節外れに出てくる。

きっとこれもそう言うものの一つなんだろう。

 

「これ貰っていきます。」

 

「おう。

 燃やすよりは嬢ちゃんが使ってくれた方がそいつも喜ぶだろう。

 一応、注意はしとくが、ゴミ捨て場で拾ったもんは学園外に出すなよ?

 問題になるからな?」

 

「その辺は心得てますよ。」

 

シートカバーを袋に詰め直して、オヤジさんに礼を言ってからサンタクロースよろしく袋を背中に担いで寮に帰る。

焼却炉にものを燃やしに行ったのに、行きよりも帰りの方が荷物が大きくなるとはね。

 

 

まだほとんどの寮生がトレーニング中なのをいいことに、空いている大浴場の洗濯機で拾ってきたシートカバーを洗濯しておく。

埃っぽかったし、捨てられてからどれだけ経っているかもわからないし。

放置期間によってはダニとか湧いていてもおかしくない。

家事室の洗濯機で洗う方がいいのだろうけれど、大きすぎて干す場所がない。

となると乾燥機能付きの大浴場の洗濯機しか洗濯はできないわけで。

洗濯タグには乾燥温度指定も手洗い指定もないから洗濯ネットに入れておけば洗えるはず。

一応、毛が抜けまくると困るので裏返しにはしておくけれど。

 

 

大浴場が開くまでの時間は、おとなしく今日の座学の復習をすることにした。

試験範囲だって言うのだから復習しておいて損はない。

と言っても、読めないと言われた速記もどきのミミズののたくったような文字を、次のページに読めるくらいの字で書き写すだけだけど。

一旦暗記してからノートをめくって書き込まなければならないので、意識しなくてもそこそこ記憶に残る。

赤点を取っても合格点を取れるまで延々同じ試験が繰り返されるだけらしいから、追試で不合格なら落第、なんてことがない分、気楽でいい。

 

・・・しかし、ほとんどヒトと同じ身体の構造なのに、筋肉とか腱とか骨の呼び方がヒトのそれじゃないのはいまだに違和感があるな。

なまじ雑学知識の中に半端にそれらの名称があるものだから、とっさの時に混同してしまうのが厄介だ。

その混同を少しでもなくすためにも、読んで、覚えて、書いて、を繰り返す。

今日の授業分を書き写し終わるころ、隣の部屋のドアが開閉する音が聞こえてきた。

 

 

お隣さん二人と、恒例のお風呂。

洗濯機に入れたまま放置していたシートカバーは、大浴場のラッシュで一回洗濯機が埋まったのか、洗濯機の上のかごに出されていた。

洗い上がったシートカバーを回収して、体操服を脱いでいく。

 

「今日のベノちゃん、気合入ったパンツ履いてる!」

 

「あ、ほんとだ~!セクシ~!」

 

レース飾り盛り盛りの黒いショーツを履いていたのを見つかって、ゲムパちゃんとアップルサンデーさんに囃し立てられた。

なんでこんなものを履いていたかって言えば、単純に朝お尻に薬を塗っていたら、白っぽいショーツだと薬の染みが目立ったからだ。

同じ女性のウマ娘しかいないとはいえ、ショーツに濡れたような染みを見つけられるのはバツが悪い。

何より、なんでそんな薬を塗る羽目になっているのか説明したくない。

で、薬が染みても目立たなそうな濃い色のショーツって言ったら、たづなさんと服を買いに行った時におしゃれ着と合わせて着るために買った飾りの多いこれしかなかった、ただそれだけのことだ。

 

「ベノちゃん、その場でセクシーポーズ!」

 

「セクシーポーズって言われてもそんなの知らないよ。」

 

「足を肩幅くらいに開いて、両手で後ろ髪を掻き上げて・・・そうそう、そこで振り向きながらスマイル!」

 

「こ、こう?」

 

二人の言葉に乗せられて、その通りにしてみるも、指示を出したアップルサンデーさんは微妙な顔をしていた。

 

スッと背後にゲムパちゃんが立って、俺の胸を両手のひらでたゆんたゆんと持ち上げる。

 

「セクシーポーズを決めるには圧倒的なボリューム不足だねぇ。」

 

おっぱいの大きさに関してはこの身体を設計したという三女神のゴドに言ってくれ。

少なくとも俺の趣味で決まったわけじゃない。

 

「胸を強調するならこう~」

 

アップルサンデーさんが、フラミンゴのように片足を曲げて持ち上げ、ロッカーの角に手をかけてぶら下がるように背を逸らした。

ちょうどおっぱいの頂点が身体の一番高い部分になるように身体が弧を描く。

 

・・・見事なセクシーポーズだった。

 

ボリューム・・・ボリュームか。

これが女子同士の間のおっぱいマウント・・・

でかい方がえらいのは男も女も変わらないということか。

 

「ま、そのうち大きくなるよ。」

 

アップルサンデーさんが何の気なしに言うけれど・・・

 

「先日、トレーナーがお前もうすぐ本格化始まるぞ、って。」

 

本格化が始まると身体能力は大きく上がるけど、身体の成長は本格化前にほぼ終了するらしい。

つまり現時点の大きさから大きく変わることはない。

 

しばらくの沈黙ののち、

 

「・・・大丈夫。

 ちっぱいにも需要はあるから。」

 

ゲムパちゃんになんだかよくわからない慰められ方をした。

 

なんで黒下着履いてただけでおっぱいマウントとられて慰められてるんだろう俺・・・

 

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