特訓回!!
(遂に恐れていた事態がやってきてしまった……)
体育の授業!!
この学園に入学してから暫くの間、体育の授業の枠は健康診断や体力測定のみだった。
俺は自転車通学と様々なバイトで得た筋力と体力で乗り切っていたが……いつかはこうなる事は分かっていた。
種目はバスケ……。しかも二クラス合同……っ!!
不味い。何が不味いって?そりゃその合同相手のクラスが四宮のクラスだからだ。
アイツに相応しい男になる為に努力を始めたばかりだと言うのに、ここでボロを出してみろ。白銀御行のイメージは運動音痴で固定されてしまう……っ!!
だからこうして俺は早朝に体育館を借りて特訓をしている訳なのだが……。
バスケの初心者向け教本も図書室から借りて読み込んだし、そこに載っていた練習もやっている。
ハンドリングと言うボールを指先で繊細にコントロールする為の練習。これは一朝一夕には身につかないと書かれていたし、実際中古のボールを買って毎日家の前でもやっているのだが……中々上手くできない。
指先で軽く触れるようにボールを左右の手で往復させるのは出来る。俺はお手玉がちょっとだけ出来るからな。しかしその先が難しい。
なんだよ身体の周りを回すとか無理ゲーだろ。勢いが付きすぎるとすっ飛んで行くし、遅すぎれば指先のみで持てず落ちてしまう。
「クソっ!!また失敗だ!!」
今回も毎度の様にボールが遠心力に従ってすっ飛んで行った。俺はこの無理難題に絶望して体育館の床に手をつく。
滴る汗が、運動部たちによってよく掃除されてピカピカと光る床を濡らすのを眺めながら呟く。
「どうして俺はいつも……上手くやれないんだ」
不器用なのは分かっている。今までは周りに迷惑を掛けて、無様に失敗し続けてきたが、これからはそうも行かない。この学園では、ただの一度も失敗は許されない。四宮に相応しい男に、生徒会長になる為に。
迫る期日に反して一向に上達しないこの現状に焦りが募り、胃が痛くなってくる。
俺が一人絶望に打ちひしがれている中、体育館の扉が開いて居たことに気がつく。
(やべっ、誰か入ってきてたのか!?)
不味い不味い不味い。この練習を誰かに見られては……頼む、会長か龍珠であってくれ!それなら口止めすれば聞いてくれる筈……っ!
祈りを込めて、体育館への侵入者を探す。
俺がキョロキョロと辺りを見渡してその人物を探していると、肩を控えめに叩かれる。
「誰だっ!?」
俺は勢いよく振り向き、その目撃者を確認する。その人物は、会長では無かった。では龍珠か。それも違った。その人物は……。
「い、いえ、あのぉ〜……わたし、体育館に誰かいるなぁって思って……それで、練習してる人がいたから何でかなぁ〜って……」
その人物は、ふわふわとした喋り方と髪の毛をしていて、前髪の部分には……黒いリボン?
これどうやって着いているんだ?
その女の子は見ているこっちが癒される程、お淑やかで清楚な雰囲気で……しかしそれに反した凶悪な胸……。自然と目が吸い寄せられる。
ま、まあとりあえず、総合的には何とも優しそうな。そう、可愛い女の子であった。
まあそれは置いておいて。ともかく彼女にはここで見たことについて黙って居てもらわなければ……。
龍珠のアドバイスを思い出せ。威圧感を出すんだ。自信のある態度で、ふてぶてしい面構えをするんだ。
「先ず済まないがここで練習してた事は秘密にしてくれ……ああ、それで練習の意味か?今度体育の授業でバスケをやるからな。ここを借りて練習していたんだ」
「まぁそりゃ……良いですけど……それににしても、あぁ〜!そうなんですねぇ〜じゃあわたしたち同級生だぁ!」
「どう言う事だ?何故それだけで俺が一年生と分かる」
「だってぇ〜体育でバスケをやるのは一年生だけですもん」
そうなのか。知らなかった……。
ずっとぽわぽわと話す彼女を見ていると、何だか冷静になってきて、先程までイライラとしていた自分が恥ずかしくなってくる。
「じゃあそれで練習してたんですねぇ〜あっ!わたし邪魔しないので見ていても良いですかぁ?」
「え?いやいや……見てても楽しく何かないだろ?」
何故か彼女は俺の練習を見学しようとしてくる。そんな事をして一体何の特になるんだか。
「ん〜。何と言いますか、頑張ってる人の姿を見るのって良いじゃないですかぁ。わたし、そう言うのカッコいいなって思うんです」
「…………そうか。見ていても良いが、危ないから少し離れていてくれよ」
「はぁ〜〜い」
もう気にするのは辞めだ。時間が勿体無い。気を取り直した俺は次にシュートの練習をする事にした。
スリーポイントラインに移動すると、右手でドリブルをしながらゴールへ向かって走り込む。
そしてある程度近づいたらボールを両手で掴むと同時に二歩踏み込み、跳ぶ。
……ボールがすっぽ抜けてしまった。
「い、いや。今のは偶々なんだ」
「は、はぁ……そうなんですね」
気を取り直してもう一度、先ほどと同じようにドリブルを……
……ボールが足に当たり変な方向に飛んでいった。
「こ、こんなことも偶にはあるよな」
「………………………………」
流石に言い訳が苦しくなってきた……。次こそ!
今度はドリブルに意識を集中しながら進む。しっかりとボールを見れば足に当たる事はないだろう。
感覚でそろそろ跳ばなければと思い、両手でボールをしっかりと抱え、力強く二歩踏み込み跳躍。
空中で右手のみにボールを移し、左手は軽く支えるだけにしてゴールへ放つ。
……ガツンと勢い良くリングに当たったボールが俺の顔面を強打する。
「うごぉぉぉぉいってぇぇぇぇ!!」
「なんで……そうなるの……?」
「はっ!?」
恐る恐る彼女の様子を伺うと……、そこには俺の事をまるで産業廃棄物でも見るかの様な目でコチラを見下ろす彼女。
「ただドリブルしてあの四角い枠の角に当てるだけじゃないですか……。そもそも……外れたにしてもそんな死んだアルパカみたいになる人そうそういませんよ……?」
彼女はやれやれと首を振る。簡単に言ってくれているが、レイアップはバスケの基本にして奥義。あの桜木花道だって習得には苦戦した技だ。そんなほいほい出来るわけが……。
「見ててくださいね」
そう言って彼女はボールを持ち、とたとたとドリブルをしながらボールを軽く放る。
ボールはほんの短時間の飛翔の後にバックボードに当たると、斜めに跳ね返り、見事ネットを揺らす。
「ほら?簡単でしょ」
「す、すげぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「ドヤさぁ」
余りにも洗練された庶民シュートを見た俺は感動のままに彼女に詰め寄る。
「君、名前は!?俺は生徒会庶務で一年の白銀御行だ!!」
「わたしは一年の藤原千花です。どうですか?御行くん、わたしに教わればバスケも直ぐに上手くなっちゃいますよぉ?」
「頼む藤原!!俺は何としても次の体育で活躍しなければならないんだ!!」
そう言って俺は頭を下げてて誠心誠意お願いする。すると彼女……藤原千花はにんまりと笑って頷く。
「は〜い!じゃあ早速、御行くん。ジャンプする時にちゃんとゴールを見ていますか?」
「何を当たり前の事を……ゴールを見なければ狙ってシュート出来ないだろ」
「うんうんそうですよねぇ〜!じゃあほら、やって見せて下さい」
はぁ……。本当にこれで上手くなれるのか?俺はこの藤原千花という少女に弟子入りしたのを早速後悔しかけていた。
何度も繰り返した一連の流れを教本通りに行い、そしてシュートを放つ。
……ボールはゴールを飛び越え、バックボードすら飛び越え、二階にまで飛んでいった。
「な?ゴールを見ていてもこうなるんだ」
何故そんな事も分からないのかと呆れながら彼女に目線をやると……藤原は何やら震えている。
「見てない!!ゴールを見るどころか目すら開いてない!!なんで!?」
「いやいや……ちゃんと開いてただろう?」
ぷんすかと擬音が見えるくらいに憤慨している藤原は手に持っていたスマホをコチラに寄越してくる。
そこには今さっきのシュートを録画した動画が写っており、それを最初からスローで再生する。
「ほら開いてない!!」
「うわホントだ!?」
動画の中での俺は、ドリブルしている時点まではボールとゴールを交互に見ているのだが……ジャンプした瞬間に目を思いっきり閉じていた。そしてあらぬ方向にすっ飛ぶボール。動画はそこで終わっていた。
「まずは目を開けてジャンプする練習からですねぇ」
「……頼む」
まさか俺にこんな弱点が有ったとは……。もしかして今までずっと、ジャンプする時は目を閉じていたのか?それじゃあどれだけやってもシュートが決まらない訳だ。
「わたしは厳しいですからねっ!途中で音を上げるなんて許しませんよっ!」
こうして、俺と藤原の特訓は始まった。
彼女は額に丸っこく可愛い字で『おに』と書かれた鉢巻を着け、毎朝早くに体育館で俺の練習に付き合ってくれた。
―
特訓は過酷を極めた。
「ドリブルする時にボールを見ない!!常にゴールとコートに意識を向けてください!!」
「いやボールを見ないとドリブル出来ないだろ!?」
「ちゃんと指先でボールが跳ね返る感覚を掴んでください!!試合中は他のプレイヤーもいるんですっ!!相手にぶつかったらファールですよ!?」
「そんな無茶な……」
──
特訓は続く。
「シュートはボードにある四角の角を狙うんです!!直接リングに放つのは御行くんにはまだ早いです!!」
「いやそんなピンポイントで角を狙える訳ないだろ」
「アバウトにで良いんですよ!!それから思いっきりぶつけないでくださいよ!?そんなの入るわけないんですから!!」
「分かってるって、置きに行く、だろ?」
「それが出来てないから言ってるんですぅ!!」
──
そして……
「やった!!入ったぞ!!」
「はいっ!!おめでとうございます!!」
「じゃあ次はジャンプシュートを教えてくれ」
「んんんんんんん!?」
──
特訓はまだまだまだ続く。
「もう良いんじゃ無いですか?中学時代に覚醒する前の幻のシックスマン並みには上手くなったじゃないですかぁ」
「いやまだだ……。まだ俺はやれる……っ」
確かに各種シュートをそこそこ入れられる様にはなった。ドリブルだって滅多に足に当たったりはしないし、ちゃんと前を向いたまま走れる様にもなった。
……でもまだだ。
「どうしてそこまで頑張れるんです?苦手な事が有るのは恥ずかしい事じゃ無いと思いますけど……」
「俺は……何でも出来る白銀御行。頭が良くてスポーツ万能。そんな男だ」
「んん?いえ、学力は知りませんけど御行くんはこのザマですからスポーツは出来ないんじゃ……」
おっと……心は硝子だぞ藤原……。普通に失礼な事を言ってくれるじゃないか。だが、確かにその通り。今の俺は何にも出来ない落ちこぼれの白銀御行だ。
けれどいつかは……
「いつかなるんだ……俺は、理想の自分に。その為の努力はこんなもんじゃ足りないんだよ。だからもう一度だ、藤原。どうせやるなら……活躍したい。それじゃ駄目か?」
俺の想いが通じたのか、彼女は目を見開き口に手を当てる。
「ううん……わたし、酷いこと言っちゃいましたね。ああ〜!!もう!!分かりましたよええっ!!ここまで来たなら最後まで付き合ってあげます!!こんなに面倒見がいいのわたしだけですからねっ!!ほんっと感謝して下さいよ!?」
頭を掻きむしり甲高い声で騒ぎながらも、どうやらまだ彼女は付き合ってくれるらしい。自分でも面倒くさくて、頑固な奴だとは思う。だからこそ、この少女の面倒見の良さは規格外だなと、そう思った。
「じゃあ今度はダブルクラッチだな!!」
──
そして遂に迎えた体育の授業の日。
俺がコート側で軽くストレッチをして身体を温めていると、クラスの男子の一人が声を掛けてきた。
「よお混院。うちのクラスが負けたらお前のせいだからな。何だって試合の選手に立候補したんだか……」
今朝のクラスルームの時、授業の初めに男子で一試合だけデモンストレーションを行うからと、そのチーム編成の立候補者を募っていた。バスケの経験者であろう四人が手を挙げている中で一人、混院である俺が手を挙げたのが気に食わなかった様だ。
……いや、バスケの経験を聞かれてちょっと苦手と言ったのが悪かったのか……?だが実際、時間が足りなかったからまだまだだと思っているしな……。
「確かにバスケはちょっと苦手だが、問題ない。負けたら全て俺の責任にして貰って構わん。だが勝てたなら……それは俺のお陰かもな」
強気に、傲慢に、俺は出来る奴なんだと言い張る。
(龍珠……これで良いんだよな?普通に睨まれてるんだが……本当に大丈夫だよな!?)
「ふん、まあいい。おい、混院……いや、白銀。俺たちには壁がある。だがチームメイトになったんだ。試合中くらいはお互い変な駆け引きは無しだ。いいな」
「あぁ……勿論だ」
「司令塔は俺だからゲームも俺が作る。その中でお前にもチャンスがあればボールを回すぞ。いいか?そんだけ大見得切ったんだ。外したら後でブッ飛ばすからな」
ああ、見てろよお前ら。そして四宮。俺と藤原の特訓の成果を見せ付けてやる。
文武両道何でも出来る白銀御行を。その第一歩を。
──
今日は待ちに待った白銀さんのクラスとの合同授業の日。私達女子は二階のギャラリーにて試合観戦の為に待機していた。
「あ、見てくださいかぐやさん!試合始まりますよ」
隣の藤原さんがコートを指差して叫ぶ。その指にはここ数日間ずっと絆創膏が貼られている。日に日に増えていくそれに、何をして怪我をしたのか聞いてたのだが……しかし幾ら訊いてもはぐらかされるからもう聞くのは辞めたのだけれど……
「ええ、そのようね……っ!?」
コートに出てきた男子達の中に、白銀さんの姿を見つけた。
(何故彼が?もしかして昔バスケをやっていらしたのかしら)
衝撃を受ける私を余所に、試合は始まる。
ジャンプボールでクラスの男子がボールを弾き、チームメイトに渡すが……。
素早く回り込んだ白銀さんはその手からボールを弾くと、一直線に敵陣へと切り込んで行く。彼が放ったシュートはバックボードに優しく当たると、そのままネットを揺らす。
「きゃぁ〜!かぐやさん!今の見ました!?」
「え、えぇ」
その後も私達のチームは必死に反撃を行うも、その悉くが防がれ、逆に彼のシュートを止められる者は誰も居らず……。
一人、二人とフェイントを混ぜながらもあっという間に抜き去る姿はとても……輝いて見える。
パスを受け取ると内に切り込むと見せかけて、素早くバックステップ。そのまま三点シュート。
綺麗なバックスピンの掛かったそれは、美しい放物線を描き……ネットに一切触れる事なく入る。
「やば〜」「ちょ〜かっこいい!!」
「え!?アレ誰!?」「結構イケメンじゃない!?」
照れ臭そうに微笑みながらチームメイトと拳を合わせている彼に、クラスの女子達からの歓声が上がる。
(まあ、かっこいいのは認めますけど……でも貴女達には譲りませんからねっ!!)
私がそう思って臍を曲げていると、ふとコチラに気が付いた彼が手を振ってくる。
(今の私に手を振って……!!)
「今こっち見たわ!!」「彼が私に手を振ってくれたわ!!」「いやアンタじゃなくて私よ!!」
「やばい、惚れそう……」
(違います!!絶対に私です!!)
いけない。彼の魅力が他の人達にもバレてしまう。まあ、こんな有象無象に好かれた所で彼も迷惑だろうから、余り心配する必要は無いだろうけれど……。
あゝ。それにしても……。
「「はぁ……カッコいい」」
……はい?
「あの……藤原さん?」
「あれ……かぐやさん?」
……ちょっと、嘘でしょう?
「藤原さんまさか貴女……」
「いやかぐやさんこそ……もしかして」
こ、これ……。少女漫画で見た事ある奴!!親友と同じ人を好きになっちゃって、喧嘩になる奴!!
そ、そんな事が実際に起こり得るなんて……そんな……そんな……。
(さようなら藤原さん……。絶交よ)
あゝ、何て事だ。でも仕方ない。だって先に好きになったのは私。確か少女漫画によると、先に好きになった方が……負け……ヒロイン……!?
そ、そんな…… け、消さなきゃ……。
彼に群がるこの蛆虫を……早く処分しなきゃ……。
「藤原さん?一体誰がかっこいいと?」
「い、いやぁ〜あはは。その、御行くんが……」
(へぇ、そう。御行くん……ね。私だって名前で読んでないのに!!何なのこの女!!卑しい、卑しいにも程があるわ!!そんな会ったことも無い男をいきなり名前呼びだなんて!!)
「しかし藤原さん貴女、彼とは話した事もないのでしょう?実際は最低な男だった。そんな可能性もあるのではなくて?」
「話したことは……あるにはあるんですが……」
あるの!?一体いつ!?この泥棒猫!!
「でもでもっ!かぐやさんが思ってるような事じゃないんです!ただ、これはそう!駄目な息子が立派に成長した姿に感動してる的な!!」
「……そうなの?」
「本当ですって!ぜんっぜん恋愛対象とかには見てないというかっ!寧ろもう見れなくなっちゃったなぁというかっ!」
「……ならいいの」
……それなら安心。もう少しでたった一人の親友を喪う所だった。良かった、勘違いだったみたい。
もし違っていたら……
(命拾いしたわね……藤原さん)
「でも……なるほどなぁ!かぐやさんの好きな人って……むふふ」
「ちょっ!?ち、違います!あの人の事じゃありません!」
動揺が出過ぎていたのか、藤原さんに見抜かれかけている。不味い、バレたらこれをネタに半年は弄られるだろう。
「へぇ〜違うんですかぁ?じゃあじゃあ、わたしが付き合っても良いですよねっ!?」
「は?殺すわよこの薄汚い雌豚が」
「いきなり怖っ!?え、えぇ……かぐやさんの口からそんな言葉が……」
やっぱりさっきのは嘘だったのか。
殺す。コロス。赦さない。生きて帰れると思うなよこの駄肉の塊、男を誘惑して寄生する下品な売女め。
「な、なーんちゃって……あの……じょ、冗談なんですけど……あはは」
「そうやって私をだまくらかそうったって無駄よ。もう決めたんだから……お前を殺す」
「ちょちょちょ!!それは冗談じゃすまない奴!!信じてくださいよぉ〜!!」
赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない!!
生まれた事を後悔させてからじっくりと殺してやる……ふふ、貴女は元とは言え私の親友だったのだから……最後にはちゃーんと、救いをあげる。そう、死という救済をね。
「本当に揶揄っただけなんですぅ〜!!かぐやさんが変に照れて誤魔化すからじゃないですかぁ〜!!好きじゃないならそんな反応しないですよね!?本当は好きなんでしょ!?」
………………
「…………うん」
「はぁ〜死ぬかと思いましたよぉ〜。全く、かぐやさんも素直じゃないですねぇ。そんなに嫉妬するくらいならハッキリと言えばいいんですよ。あの人は私のだから取らないでーって」
そんなこと私が言うわけ無いだろうに。やっぱりこの子、脳に花湧いてるとしか思えない。
でも、そうか。バレてしまったか……。
(はぁ、これで半年は弄られるの確定ね……)
「い、いい?藤原さん……。私はただ、あくまでも一般論で、スポーツが得意な男性は魅力的ねと言う意味で言ったのでしゅ!」
「あ、噛んだ」
「…………もうおうち帰りたい」
最悪だ。折角彼のかっこいい所を見れて良い気分だったと言うのに……何でこんな事に……。
「ほ、ほらかぐやさん!また御行くんがシュート決めましたよ!今のは忘れてこっち見ましょう?ね!?」
「……そうですね」
―
試合は圧倒的大差で俺達の勝ちだった。
他の四人は流石に経験者なだけあって、かなり上手かった。だが俺もそれに引けを取らない……いや、もしかするとそれよりだったかも知れない。
(どうだ見たか!これが次期生徒会長となる男、この白銀御行の実力だ!)
人生で一番と言って良い程の達成感と、優越感に浸っていると、試合前俺に声を掛けてきたクラスメイト……豊崎がこちらに拳を突き出す。
俺はそれに答えて軽く拳をぶつけながら言う。
「お前も中々上手かったな、豊崎」
「白銀お前……ちょっと苦手とか嘘じゃねぇかよ……」
「ははは。俺の中ではあの程度得意に入らんのさ」
「マジかよ半端ねぇ……だが、これで勝った気になるなよ。俺は勉強でもこの学園トップクラスだ。中間で目に物見せてやるからな」
そう言い捨てると豊崎は他のクラスメイトの所へと行ってしまう。
……これで本当に良いんだよな?と、龍珠のアドバイスを完遂出来たと思いながらも、あんなに不遜な受け答えで嫌な奴だと思われないかと心配になってしまう。
(だが……まあ)
これでようやく一歩前進だ。俺と四宮のクラスの奴らは、俺がスポーツの出来る男だと認識しただろう。
龍珠、そして藤原。二人の女子の手助けを受けながらではあったが、やり通せた。四宮の横に立てる男になる。その目標は不可能なんかじゃないと、証明できた。ならばこのままやり遂げるだけだ。
次の中間試験……。そこで更に俺は上を目指す。
目指すはトップ十入りだ。この学園の並み居る天才共の仲間入りをしてやる。
だがその前に先ずは……。
(後で藤原にお礼、言わなくちゃな)
──
体育の授業が終わった後、わたしは一人、化粧室に逃げ込んだ。
あのトキメキは……違うんです。そう、ちょっとした憧れというか、尊敬というか。そんな感情なんです。
ねぇ、知ってますか?わたしはかぐやさんが一番なんです。本当に大好きなんです。かぐやさんは冗談だと思っているみたいですけど……。貴女の為になら命を捧げることすら厭わないんですよ?
わたしは貴女に幸せになって欲しい。笑っていて欲しい。もうあんな、世界に絶望した眼をしないで欲しい。
全く……かぐやさんも早とちりしちゃうんですから。
あんな……出来の悪い赤ちゃんみたいな人……産業廃棄物みたいにダメダメな人、好きになるわけないじゃないですか。
でも……かぐやさんは彼のそういう所、知らないんですよね……えへへ、ごめんね、かぐやさん。
秘密にして欲しいってお願いされちゃったから。だってかぐやさん、告げ口は嫌いですもんね?
願わくば……いつかかぐやさんが彼のそう言うところも受け入れてくれますように。
貴女の恋が実る事を……隣で応援していますよ。
──
思うがままに書いていたら大変な事になりかけたので軌道修正しました。
ちなみにその件とは全然関係ないのですが、私は眞紀ちゃんの泣いている顔が好きです。