かぐや様は運命を信じたい   作:ティッシュの切れ端

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会長…もとい白銀くんは決める時はバシッと決める男なんです。


白銀御行はやり直したい

 

 

 

 これは四宮かぐやが足早に去った後の事である。

 

 その場に一人残された白銀御行は呆然と彼女の後ろ姿を眺めながらこう考える。

(やっべぇぇぇぇ返事間違えたぁぁぁぁぁ)

と。

 

(やらかしたやらかしたやらかしたやべぇよ。あの子四宮つってたよな。四宮って言ったらあの四大財閥の一つ……その権力は国家に匹敵するとか云うアレだろ?不興を買って消されたりするんじゃ……ってか何やってんだよ俺!なにが「いや……いいけど……別に……」だっ!それじゃ勘違いされるだろーがぁぁぁぁ!折角友達になろうって言ってくれた女の子に恥をかかせてどうするんだよ!)

 

 そう!!白銀は別にかぐやの誘いを断ろうとした訳では無かったのだ。しかし!!思春期真っ盛りの男子が四宮かぐやという絶世の美少女から満面の笑みでお友達申請をされれば、それはもう気恥ずかしくて照れまくりなのである!!その結果……

 

 

「いや……いいけど……別に……」

 

 

 という返答が出力されるのだ!!これが多感な思春期男子の精一杯!!嬉しさがキャパオーバーして逆にツンツンしてしまう男のツンデレ状態!!

「べ、別に俺はお前に興味とかねーし?」とか

「はぁ!?全然喜んでなんかないんですけど!」

的な!!

 

 これがアニメや漫画の話であればそれはテンプレ過ぎて逆に珍しいくらいにお可愛いツンデレとなるが、リアルでそれをやると、ただただ嫌っているようにしか見えない!!

 もしも会話相手がツンデレという概念を知っていれば、

「あれ?もしかして照れてるのかな?」

 と察してくれるかも知れないが、今回の相手は四宮かぐや!!当然漫画もアニメも嗜まないし、それに纏わる様々な属性やキャラ作り、概念をそもそも知らないのである!!

 

(どうするんだよ俺……この先どうやってこの学校でやっていけば……)

「くそっ!!!!この馬鹿野郎!!!!」

 

 白銀は自分の不甲斐なさに耐えかねて、手に持っていた焼きそばパンの包装を思いっきり投げる。

 しかし包装はプラである。それほどの飛距離も出ず物理法則に従ってポトンと地面へ落ち……そしてそこに新たな人影が差した。

 白銀が顔を上げるとそこにいたのは先程やらかした相手である四宮かぐや……ではなく。

 

「おやこれはまぁ、随分と荒れているねぇ」

 

(胸に輝く純金の飾緒、つまりこの人は生徒会長……)

 

この秀知院学園高等部の現生徒会長であった。

 

 「ゴミはゴミ箱にね?それからあまり品の無い言葉は秀知院の生徒としてどうかと思うよ?」

 「あっはい。すみません」

 

という軽い注意の後に生徒会長は白銀に話をする。

 

「君は……そう、特待生枠の白銀御行くんだね?」

 

「いちお……ん゙ん゙……えぇ、はい」

 

 白銀は先程のかぐやとの会話があったからか特待生枠という言葉に軽い冷や汗をかいた。そして「一応」という言葉をすんでのところで飲み込んだ。

 

「丁度良い。君に話があるんだ」

 

 そうして白銀は生徒会室に連れていかれ、そこで生徒会に入らないか?という誘いを受けた。一日に、というか昼休み中に連続して何かしらの誘いを受けた白銀は何がどうなっているんだ?と疑問に思いながらも、かぐやのお友達申請の件もあって今度の誘いにはやや前向きに検討すると政治家みたいな返答をする。

 

「そうか、では白銀くん。明日生徒会の活動で沼の清掃があってね。ボランティアもいるにはいるんだが、人手が欲しくてさ。地味な仕事かも知れないが見学に来てみてはくれないかな?」

 

「うーん……まぁそうですね。行きます」

 

「おや、僕としては君にも断られるんじゃないかと思っていたんだが」

 

生徒会長は優雅にティーカップを傾けつつ器用に驚いた表情を作る。

 

「……他にも声をかけてるんですね」

 

 白銀はちょっぴり、実は自分は何か特別な理由があって誘われたんじゃ……と思っていたので落ち込んだ。

 

「嗚呼、今年の一年は優秀な人材が多いからね。天才ピアニストに四条家の長女。そしてなにより……」

 

「四宮かぐや……」

 

 白銀の口からその名前がするりと出てくる。まあついさっき自己紹介をされたのだから当然なのだが。

 

 あれ程に強烈な邂逅は白銀の人生一五年の中で奇天烈な存在ランキングトップに堂々ランクインするに相応しいものであった。当然白銀の思考回路は先程から七割程が四宮かぐやについてで埋まっている。

 

「そう、四宮財閥のご令嬢。通称……氷のかぐや姫」

 

「氷の……かぐや姫……?」

 

 かぐやの異名を聞いた白銀は思わずオウム返ししてしまう。

 

「君も見ただろう?入学式の新入生代表挨拶」

 

「いえ、そりゃまあ見ましたけど……」

 

 生徒会長は白銀がかぐやを直接見たことがないのかと考えているようだが……それは違う。

 

 白銀がひっかかったのはそこではなく……。

 

(氷?アレが……?どちらかと言うと御伽噺から飛び出した我儘姫の方がしっくりくるんだよなぁ……)

 

 かぐやは白銀と会話している際、本人は少しお口が緩んでいると思っていたが実際にはそれはもうでろんでろんに弛んでいたのだ!!

 口元はニヤけまくり、目は爛々と輝き、生き生きと白銀をイジり倒していた!!

 

 たった一回の会話で白銀が得たかぐやのイメージは……冷たく孤高で儚い美しき姫というよりかは寧ろ、そのあり方は傲慢で高飛車なシンデレラの姉の方と言った感じであり、決してディ○ニー映画のプリンセスと言った印象では無かったのである。

 

「彼女にも何度か声をかけてみたのだが……あえなくフラれてしまってね」

 

「はぁ……そうなんですか」

 

「まあでも、君が前向きに考えてくれるなら収穫はあったかな。僕は君をかなり評価しているんだよ」

 

 生徒会長は机に乗せている腕を組むとこちらを覗き込むように身を乗り出した。

 

「君は外部入学生だろう?僕らは正直、外の世界……つまりは世間についてあまり詳しくないんだ。だから君のような人材が生徒会に入ってくれる事で、この秀知院に新しい風を運んできてくれる……僕はそう期待しているんだ」

 

 思っていたよりかなりの高評価を受けているようで白銀はなんだか気恥ずかしくなり、そしてそれが別に自分でなくても外部生である特待生なら誰でもいいと言っているも同然な事に気がつきまた落ち込んだ。

 

 

 

──

 

 

 

 次の日の朝。白銀は三軒茶屋からせっせとママチャリを漕いで登校し、少し汗に滲んだシャツが体に張り付く不快感に身を震わせながら駐輪場へと向かっていた。

 

「あれって……」「えっ誰か待っているのかな……」

「……か……やしゃま……今日もお美しぃ……」

「エリ……しっかり……しなさ……」

「……ぐや様……マジで……やる……もり?……マジカ」

 

「……ん?」

 

 ふと見ると、駐輪場の辺りがざわざわと騒がしい。人だかりは皆一点を見つめているようだ。人混みをかき分けながら自転車と共に進むと、駐輪場の隅っこで腕時計を眺めている少女が立っていた。

 その少女は烏の濡羽の如き髪をしており、瞳はルビーのように紅く、そしてその凛とした佇まいは彼女が只者ではない事を確信させるような……

 

「おはよう御座います。白銀さん」

 

…………そう、つまりは四宮かぐやである。

 

「げっ……四宮かぐや……」

 

「げっ……とはなんですか。まったくこの不調法者」

 

 どうやらかぐやは朝っぱらからフルスロットルのご様子である。白銀は頬が引き攣るような感覚を覚えながら、しかしここはかなりの生徒から注目を浴びている状況で、その上自分は生徒会にスカウトを受けている身。ここで問題を起こせば具体的にどうなるかは分からずとも不味い事になる事は分かっていた。故に穏当に、爽やかに対応することを決めた。

 

「ぇと……あーいや、なんでもないよ。四宮さん。待っていてくれたんだね。驚いたよ」

 

(決まった。圭ちゃんが読んでいた少女漫画にはこんな感じの爽やかイケメン系のキャラが沢山いたからな。これは上手くいったんじゃないか?)

 

 白銀のイケメン像はだいぶ範囲が狭かった。そしてそれに対する四宮かぐやの反応は……!!

 

 

「……………………はぁ?脳に花湧いてるのかしら」

 

 

 

──

 

 

 

 昼休みになった白銀はほぼ駆け足で生徒会室に向かっていた。今日半日、白銀はクラスメイトから向けられる好奇の視線に耐えて耐え抜き、しかしあまりの居た堪れなさにどこかへと逃げ出したかったのだ。そしてその時に思い出したのが生徒会長の言葉。

 

「ここは僕の方針でいつでも鍵を開けているのさ。生徒会が生徒の相談をいつでも受けられるように……ね」

 

 今の白銀は校内に居場所があまり無かった。唯一たった一人で落ち着けていた校舎裏の場所は……しかし昨日二人に声をかけられた場所であるが故に、実はそんなに秘密のスポットって訳でも無かったんだな……と選択肢から外れたのだった。

 そうなると後はもう生徒会長の言葉を信じてあの生徒会室という駆け込み寺へと逃げるしかなかった。

 

「本当に開いてた……よかった……失礼します」

 

「おや、白銀くん。清掃活動は放課後だよ」

 

 扉を開いて中に入り込んだ白銀に声をかけてくる生徒会長。彼は書類と睨めっこをしながらも器用に箸を使い弁当を食べている。

 

「行儀が悪いのは見逃して欲しいな。生徒会長ってのは結構大変な役職でね。こうして少しでも仕事をこなさないと溜まる一方なんだ」

 

「あっいえ、俺がお邪魔してる立場ですし別に……」

 

「そうかい?で、白銀くんがここに来たのはやっぱり朝のアレ……かな?」

 

 やはり生徒会長もあの騒動の事は聞いていたようだ。いや、もしかしたら白銀が気付いてなかっただけであの場にいたのかも知れない。

 

「いやぁ驚いたよ。まさか君が氷のかぐや姫とお知り合いだったなんて。言ってくれてもよかったんじゃないかな?」

 

 白銀を見てそう云う生徒会長はケラケラと笑っているようで、その実目だけが笑っていない。唐突に噴き出た威圧感に白銀は怯みながら答える。

 

「いやなんと言うべきか……昨日生徒会長に声掛けられる前に彼女が話しかけてきたんですよ」

 

「へぇー……それはそれは……凄く興味深いね」

 

 いつの間にか生徒会長は書類との睨めっこをやめ、弁当を食べる手も止めて白銀に集中していた。

 

「氷のかぐや姫って異名は伊達じゃなくてね、彼女はただ一人の友人を除いて誰とも関わりを持とうとしないってのはこの学園じゃ有名な話なのさ」

 

「えっ……そうなんですか?」

 

「僕としては逆に君は彼女をどう思ったのかこそ知りたいね」

 

 生徒会長は来客用であろう昨日も使ったティーセットで紅茶を淹れると長椅子に腰掛ける。完全に今から長話をする雰囲気だ。

 

「ティーバッグでもいいかな?」

 

「あっはい……いただきます」

 

 

 

──

 

 

 

「それで、どうしたって君はあの氷のかぐや姫に声をかけられたのかな?」

 

「それは……」

 

 温かい紅茶を飲み一息ついたところで生徒会長が切り出す。その自然な流れにつられて白銀はことのあらましを伝えようとする。

 

「それは?」

 

「え──ーっと……」

 

伝えようと……

 

「何か言いにくいことがあるのかい?」

 

「あっ……その……特に何も……」

 

伝え……

 

「ではほら、語りたまえ」

 

「あはは……何と言ったらいいのか迷ってしまって」

 

伝え……ない!!

 

(あっぶねぇ!!そういえば四宮さんにあの場で呟いてた独り言について他言するなって言われてたわ!!うっかり喋っちまう所だった!!ってかこの生徒会長サラッと誘導してたよな!?怖っ!?)

 

一向に話し始めたがらない白銀の様子を暫く観察していた生徒会長はふぅ、と息を吐くとそのままカップで唇を濡らす。

 

「ふむ……その様子だと何か口止めされているようだね。しかし僕にはその内容までは解らない……。そして君もそれを話すつもりは無い。そうだね?」

 

「……すいません。でも!」

 

 急に声を荒げて立ち上がった白銀に生徒会長は驚いた顔をする。それは昨日見せた作った顔ではなく……本心からの驚きのようであった。

 

「俺は……自分の勝手な都合で誰かを傷付けることは出来ませんし、約束を破るような不誠実も……やはり出来ないです。したくない」

 

「もしそれで白銀くん。君が不都合を被るとしてもかい?」

 

 生徒会長は興味深そうに白銀の表情を観察する。

 

「当たり前ですよ」

 

「君が庇っている四宮かぐやが正直……良い人とは言い難く、性格に難が有ると知っても?」

 

「っ!!馬鹿にすんな!!」

 

 白銀は自分が過剰に反応し過ぎている事や、生徒会長に対する礼を忘れている事にも気がついていて……そして敢えて無視した。

 

「確かにあいつはちょっと……いやかなり口が悪いしこっちをあからさまに見下してくるし毒舌だしなんか怖いしあと口が悪いけど…………」

 

「けど?」

 

「それでも!!学園の代表者である生徒会長の貴方が生徒をそんな風に言うなんて!!それに、貴方は四宮かぐやの何を知っているんですか!!」

 

 白銀のヒートアップは止まるところを知らず、もはやその声は生徒会室どころか廊下にまで響き渡る声量に突入している。

 

 しかしその怒気を一身に向けられている生徒会長は飄々としており、寧ろどこか楽しそうですらあった。

 

「そういう君こそ四宮かぐやの何を知っているんだろうねぇ」

 

「それは!!…………それは………………」

 

「ククッ……フハハ……ハーッハッハッハ!!」

 

 まるで悪役のような笑い声を出した生徒会長は……まあ今の台詞はまさに悪役のそれそのものであったのだが……その笑い声と共に彼の醸し出していた突き刺すような威圧感が消え失せ、またミステリアスなそれに戻った。

 

「アハハハハッ……いやー白銀くん。ごめんね?少し君を試していたんだが……フッ……いやはや。……君は結構な……フフッ……熱血少年だな……」

「…………へ?」

 

「クククッ……いやっ……ククッ……なにっ……」

 

 未だに笑いのツボから抜け出せないのか時々吹き出している生徒会長は立ち上がり深呼吸をしてから言葉を続ける。

 

「ふぅ。……良いかい白銀くん。この学園の生徒はそれこそ名だたる名家富豪の子息ばかりだ。彼らが生徒会に持ち込む相談事は、時にこの秀知院全体を巻き込む厄介事なこともある。この学園の持つ特別性。莫大な予算やコネ……解るかい?彼らの弱みや秘密を知る僕ら生徒会役員はその権限を悪用すれば相当なコトが出来てしまう」

 

「……成程」

 

「ふむ……。頭の回転も速いようだね。そうだ。つまり我々生徒会役員には口の堅さや誠実さ、言ってしまえば義理堅さが求められる。役員としての能力とは別に、ね」

 

 コツコツと音を立てて生徒会室を歩き回り、順序立てて説明する様はまさに探偵といったようで、生徒会長のミステリアスな雰囲気も相まってまるで推理小説の中に入り込んでしまったかのような感覚を白銀に抱かせた。

 

「実は昨日君に声をかける前にかぐやくんが君と話をしているのは遠目で見ていたのさ」

 

「んなっ!?」 

 

「ああ、安心したまえ。別に会話の内容は聞いていないよ。ただ、それで丁度いいと思ったわけだね」

 

「……俺の人間性を試すのに、ですか」

 

 白銀は肩の力が抜けて、ドッと疲れた気がした。いや、実際にさっきの大声で相当なカロリーを消費したのだから実際に疲れているのだろう。

 

「そう。そして君は合格も合格。素晴らしい人間性を見せてくれた。正直今すぐにでも生徒会に入ってほしいくらいなんだが……そこは君の自由意志に任せると決めたからね。返事を聞くのは放課後の活動を見てもらってからにしようかな」

 

 生徒会長はケラケラと笑いながら荷物を纏める。

 

「さて、僕はもう教室に戻らせてもらうよ。白銀くんも午後の授業に遅刻しないようにしてくれよ?」

 そう言って生徒会長はご機嫌なままに生徒会室を出て行った。

 

 一人生徒会室に残された白銀は持参してきた弁当を取り出すと、黙々と昼飯を食べ始め、ふと呟く。 

 

「学校……やっぱ入るとこ間違えたかも……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──

  

 

 

 生徒会室に白銀を残し廊下に出た生徒会長は、開いた扉の反対側に人の気配を感じ目線だけをやる。

 隠れきれずにはみ出している艶やかな漆黒を見つけると、彼はまた先程のようにケラケラと笑いながら教室へと歩いていった。

 

 

 

──

 

 

 






前生徒会長のキャラも口調もわかんないっピ。
会長…もとい白銀くんのキャラと口調もやっぱわかんないッピ。

まあでも彼の軸というか、本質はずっと同じだと思うんですよね。
そこがブレないように気をつけたいですね。
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