かぐや様は運命を信じたい   作:ティッシュの切れ端

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後編です。
特殊タグ楽しい。


二人の関係について②

 

 

「ここが生徒会室だよ。俺達が最後かな」

 

 絡んできた三人組を無事保健室へと運び終えた俺たちは生徒会室の扉を開ける。

 

「やあ、白銀くん。おや、それに君は……ふむ、ボランティアに来てくれたのかい?助かるよ」

 

 中に入ると、そこそこの人達が思い思いに談笑している中、俺たちに気がついた生徒会長がこちらにやってきて声をかける。しかし、生徒会の中にいるはずの人物が見当たらなかった俺は質問する。

 

「すみません。少し遅くなってしまいました。それで、あの、会長。四宮は来てないんですか?彼女も今日の見学に来ないかと誘ったのですが……」

 

「おや、僕は見ていないね。しかし……そうだったのかい?白銀くんも中々やるねぇ。この僕の誘いには全く首を縦に振ってくれなかったというのに。やはり君は生徒会に相応しい人材だよ」

 

 俺が生徒会長と四宮について話をしていると、生徒会室の扉がぎぃっと開き、新たな人物が入ってくる。

 

 皆が会話を一度やめ、その新たな人物……四宮かぐやへと視線をやる。

 

「失礼します。一年の四宮です。本日は生徒会の皆様のご活動を見学させて頂きに参りました」

 

 俺と早坂さん、そして生徒会長以外の皆がポカンと口を開ける。

 

「……私が参加してはなにか不都合でも?いけませんね。この秀知院の代表たる生徒会役員の皆々様方がまさか、まともに挨拶すらできないというのですか?そもそも、この私が態々見学に出向いてやったというのですから感謝の一つくらいしたらどうなのかしらね……」

 

 誰も反応しないことにイラついたのか四宮の機嫌が急降下し始めているのが口調に出まくっている。

 おい、誰か話しかけろよ……いや、友達なんだし俺が行くべきか?けどなぁ……なんかこっちを一切視界に入れてないみたいだし……。

 しかし神は俺を見捨てていなかった。あのみるからに機嫌の悪そうな四宮に声をかける勇者が現れた。その勇者の名は早坂愛。君の犠牲は忘れない。

 

「あっ!四宮さ〜ん!白銀くんが四宮さんのことずぅっと探してたみたいだよ!ほらほら、こっちこっち!はい!挨拶して?」

 

「は、はぁ!?ちょ、やめっ、待ちなさいっ」

 

 どうやら彼女は勇者ではなく悪魔だったようだ。俺は怒れる龍の生贄に選ばれてしまった。

 やばい、ここで下手なことを言ってみろ、骨すら残らんかもしれん。

 

 

 

──

 

 

 

 それから、生徒会長が空気を変えるように清掃をする沼に移動しようと提案し、俺は移動しながら少し後ろを歩く四宮と会話を続ける。

 

「はあ、白銀さん。私は友人相手に骨にするだなんてそんな酷いことはしませんよ。全く、もう……」

 

 なっ……考えが読まれていたのか!?不味い……。

 

「何が不味いのですか?いいですか白銀さん、貴方は少々考えていることが顔に出やすいみたいですよ。これでは、私でなくとも何を考えてるか読み取るのも簡単です」

 

「あ、ああ。そう……かな。あまり自覚がないのだが……えっと、それで。四宮はどこでなにしてたんだ?」

 

 そう、俺はそこが気になっていた。放課後になってから、あの三人組に絡まれ、早坂さんと保健室を往復し、それなりの時間がかかっていたのだから、その間に生徒会室に到着しないということは何かしら予定があったということだ。

 

「え、ええ。まあ。少々用事があったのですが、心配ありませんよ。大したことではありませんでしたから」

 

「そうか……。いや何、今日突然見学に誘ってしまったものだから、そちらも何か予定があったのではないかと思ってな」

 

「……はい、そうですね。予定はありました。しかしそれは白銀さん。貴方とお話ししたいというものでしたから。これは実質元からあった予定のようなものなんです。ですからあまり気にやまないでください。だって私達、友達なんですから」

 

 四宮が急に立ち止まった気配がして振り返り、そこにあった彼女の控えめな笑みを見ると、やっぱコイツくそ美人だなとあらためてそう実感させられる。

 

 

 

──

 

 

 

 沼に到着した一行は沼の清掃を開始する。

 血溜まり沼とかいう物騒な名前がついているだけあり、滅茶苦茶に汚く澱んだ沼であった。いや、沼というよりむしろドブだまりと言ったほうが近いかもしれんな。

 

「うっわ汚な……。ってか四宮、見ているだけとはいえお前こういうの平気なのか?言っちゃ何だが、お嬢様の四宮にはキツイんじゃ……」

 

「え、ええ……そうですね。正直この鼻が曲がりそうな臭いには辟易してます。ですが見学すると言ってしまったからには、安易に反故にする訳にもいきませんから……」

 

 そう言う彼女は相当辛いのだろう、口元を抑えては時折えずいている。

 

「あんまりにもダメそうなら言ってくれよ」

 

「ええ……ありがとうございます……」

 

 四宮から離れて俺はまた清掃に戻る。うわ、何でこんなに空き缶が浮いてんだよ。さっきも絡まれたし案外この学園治安悪い?

 俺がこの学園の風紀について考察しているとき、それは起こった。

 

「きゃぁ!コウモリの死骸が浮いてる!」

 

「ちょっ、おさないで!!」

 

 どぼん、と一人の女子生徒が沼に落ちてしまった。

水深が結構あるのか、それともパニックになっているのか、とにかくあれは溺れている。早く助けないと不味いことになる……けど。

 

「これ、捕まって!」

 

一人の男子生徒がそう言って網を差し出すが明らかに長さが足りておらず、彼女はゴボゴボともがいたままだ。

 

「ちょっと、誰かたすけなよ……」

「でも、病気とか大丈夫かな……」

 

 ……俺は泳げない。ここで俺が助けに行ったところで要救助者が二人に増えるだけだ……。くそ、誰か……。

 俺が思考を回して状況の打開を待っていると四宮の声が聞こえる。

 

「白銀さん、このロープを私の腰に巻いてください。私が彼女を掴んだら反対側を持って引っ張ってください」

 

「四宮!?成程そうか、ロープを使って引っ張れば溺れる心配もないのか!いや待て、だが何も四宮がやらなくても……」

 

「じゃあ一体誰がやると……」

 

 俺は四宮からロープを引ったくると、腰にしっかりと巻き付け、反対側を彼女に渡すと水面に向かって走る。これだけ助走をつければ溺れている彼女のそばまで行けるだろう。

 

ドボン!!

 

 桟橋の部分から踏み込み飛翔する。一瞬の浮遊間の後、俺の体は勢いよく水面に叩きつけられ……

 

「ごぼっ、く、くる……し」

 

 息ができず溺れそうになり、無事要救助者をもう一人増やしかけていた。しかし気合いで何とか目を開き、溺れた女子生徒の体を抱き寄せる。

 

「早く引き上げるんだ!!」

 

 生徒会長の指示で四宮と近くにいた他数人がロープを引っ張る。体か引っ張られ、陸に近づいているその間も俺は息ができずもがいていた。

 

「大丈夫か!?手を掴んでくれ!!」

 

 俺は生徒会長に引き上げられ、地面にうずくまりながら酸素を求めて口をパクパクと動かす。

 今のはかなりやばかった。正直視界が霞んできた時はマジで死ぬかと思った。

 

「白銀くん!意識はあるかね?あるなら何か返答をしてくれ!」

 

「ゲホ、う……彼女は……」

 

「よかった、大丈夫なようだね。嗚呼。彼女は君のおかげで無事だ。安心したまえ。しかし……これは念のために保健室に行ったほうがよさそうだね……誰か、彼に付き添ってくれないか」

 

 生徒会長がそう言いながら肩を貸してくれる。

 

「では私が」

 

「ゴホっ、し、四宮……いいのか?」

 

「貴方は喋らなくていいですから、黙って私に捕まっていてください」

 

 

 

──

 

 

 

 四宮に連れられて保健室へと辿り着き中に入る。

 

 そういえばあの三人組はもう起きたのだろうか。保健室には三人組も養護教諭も居ないようだった。

 濡れた制服のままベッドに座る訳にもいかず、髪から水を滴らせていると、ガラガラと扉が開く。

 

「やほやほ〜。教室から白銀くんのジャージ取ってきたよ。そのままじゃ風邪ひいちゃうでしょ、ほら、タオルも持ってきたから使って!」

 

「早坂さん、有難うね」

 

「ううん!じゃあ私はもう帰るから!後は四宮さんにまかせるね!ばいば〜い!」

 

 早坂さんは四宮にウインクを一つして、颯爽と帰っていった。

 

「さて、それで白銀さん。まだ動くのは辛いでしょうから私が着替えを手伝って上げます。ほら、上着を脱いで」

 

 四宮が爆弾発言をし始める。というか既に俺の上着を脱がしていて、さらにはワイシャツにまで手を伸ばしてくる。

 

「いやいやちょちょ!?大丈夫だから!!着替えるから少し出てってくれ!!」

 

「あら、そうですか……?」

 

 ワイシャツのボタンが二つ程外れた状態で、俺は四宮を保健室から追い出す。確かに助けようとして溺れたのはかなり恥ずかしかったが、そのうえ四宮に着替えの面倒を見られてしまうと、それは最早恥ずかしさを通り越して男としての尊厳の危機だ。

 

 俺は手早く早坂さんが持ってきてくれたタオルで身体を拭いてジャージに着替え、四宮を中に呼び戻す。

 

 …………気、気まずい。

 

四宮がちらちらとこちらを窺っているが、俺としてはあんな風にいきなり飛び込んだ挙句溺れかけたこと、そしてそれを四宮にばっちりと見られていたことに死にたくなってる。気の利いた言葉で場の空気を和ませるなんて出来ない。

 俺がまだほんのり湿っている髪を掻き乱していると、四宮が咳払いをする。

 

「んんっ。一先ず、ご無事なようで安心致しました」

 

「あ、ああ。すまんな、心配かけたみたいで」

 

「えぇ。全くですよ。泳げないのでしたら無理に飛び込まずとも、私に任せればよかったでしょう?私、白銀さんが飛び込んでから気が気で無かったのですよ?本当、もう……心配掛けさせないでくださいよ」

 

 そう言う四宮は本気で俺の事を心配してくれているのが伝わってきて、友人としての格がどうだとかウジウジ考えていた自分が情けなく思えてきた。

 

 俺は誰かが動く事を待つばかりで、自分から動けなかった。四宮がロープを使う事を思い付かなければ、ただあの女子が溺れるのを見ているだけだった。

 

 ……こんなんじゃ駄目だ。四宮は友達なら対等であるべきと言っていた。だが客観的に見て今の俺は四宮の友人として相応しくないし、俺自身の意見としてもやはりそうだ。だから俺は……。

 

「決めた」

 

「何をお決めになったのですか?」

 

「四宮、俺は……誰から見てもお前に相応しい男になる。さっきみたいな事があっても、スマートに解決できるような頼れる男に」

 

 そう、現状の俺が四宮に相応しくないというのは分かっている。なら認めさせれば良いのだ。誰の目から見ても四宮かぐやの友人として相応しいと。

 

「し、白銀さん……?」

 

「必ずなってみせる。だから四宮にはそれまで待っていてほしいんだ。俺自身が胸を張って四宮の友達であると言える自分になるまで。俺はお前に甘えたくない。だって友達は対等……だから」

 

「それは……ですが……」

 

 この学園で初めて出来た友人と距離をおく事は寂しいが、俺はこのままじゃ、なんだかズルズルと相互に甘えっきりになってしまい二人ともが駄目になる確信があった。

 

「身勝手な話だと思う。だけど、今は自分に納得が出来ないんだ。なあ四宮。嘘と仮面の話を覚えているか?」

 

「……えぇ、勿論です。白銀さんが言うには、なりたい自分、TPOに合わせて人は態度を変える……でしたね」

 

「ああそうだ。俺は、なりたい自分が出来た。だが、そこに至る道の過程で、四宮と友達のままではお前に甘えてしまうことがあるだろう。だから四宮。すまん。今の俺のままでは、四宮の友達ではいられない」

 

 四宮は俯いたまま、動かない。

嫌われたかもしれない。失望されたかもしれない。

 だが、俺がお前の友として相応しくなったとき。必ず迎えに行く。そして、もう一度。

その時、俺達は本当の友を得るだろう。

 

「約束するよ、四宮。俺がお前に相応しい人間であると、この学園の誰もが確信した時。改めて四宮を迎えに行くから」

 

「わたし、あなたを信じていいの?ほんとうにわたしをむかえにきてくれる?いつかわたしを……たすけてくれる?」

 

「ああ。必ず」

 

 俺は四宮の言葉に強く頷く。

 そしてそれを聞いた四宮は深呼吸をしてから顔を上げ、こちらを睨み付ける。その身に纏う雰囲気は俺に取っては初めて見るもので、これこそ彼女が氷のかぐや姫と呼ばれる理由なんだろう。

 

「私、嘘と裏切りが嫌いなの。だから貴方のことを半分だけ……信じます。貴方を信じたい私と、信じられない私。その妥協点です」

 

「すまん……いや、ありがとう」

 

「私はもう帰ります。お友達でないのなら、貴方を看病してあげる必要、ありませんよね。さようなら」

 

 そう言って、彼女は立ち上がる。

 俺はその姿を見送り、決意を固めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──

 

 

 

うぅぅはやさかぁぁぁぁどこぉぉぉ?

「ここにいますよ、かぐや様」

 

 わたし、かなしいわ。

 かれとおともだちじゃなくなっちゃった。

 わたしはあしたからどうすればいいの?

 

「存外あの男も面倒臭い性格をしているようですね。頑固と言うか……不器用と言うか……かぐや様も変な男に惹かれてしまいましたね」

 

 はやさかのおはなしはむずかしい。

 いつもよくわかんない。

 でもたぶん、わたしをしんぱいしてる。

 

「あぁ、お労しやかぐや様。でも、面倒なのはかぐや様も同じですから、むしろお似合いなのでは?」

おにあい?ほんとう?

 

 うれしい。かれとおにあいだって。

 

じゃあけっこんする!

 

「はいはい。そうですね。さあかぐや様。絵本を読んで差し上げますから、ベッドにお入りになってください」

 

おうじさまとけっこんするやつ!

 

「ええ、ロマンチックで乙女心に響くお話に致しましょうか」

 

 

 

──

 

 

 

もっかいよんで!!

「ええ、勿論です」

 

 

 

──

 

 

 

はやさかぁぁぁもっかいぃぃ

「喜んで」

 

 

 

──

 

 

 

もっかい

「はい。畏まりました」

 

 

 

──

 

 

 

このおうじさまあんまりかっこよくないよぉぉぉはやさかぁ

「では私が考えた白銀の王子様と入れ替えましょう」

 

 

 

──

 

 

 

おひめさまはくろいかみなの?

「ええ、長くて、綺麗な黒髪ですよ。ほら、丁度かぐや様のような髪でございます」

 

 

 

──

 

 

 

どうしていつもふたりはしあわせにくらしておわるの?

「最後は必ず幸せが訪れる。そういう運命なのです」

 

 

 

──

 

 

 

じゃあわたしも、いつかしあわせになれる?

「ええ。必ず。この命に代えても、貴女を幸せにしてみせます」

 

 

 

──

 

 

 

ううぅねむくなっちゃった

「はい、ではお休みなさいませ」

 

 

 

──

 

 

 

 あの子があんなに弱っているのを見るのは久しぶりだ。いや、もしかしたら昔より酷いかも。

 でも、まだ手遅れじゃない。前に進もうとするこの子の意志はまだ折れていない。

 だから私は動かない。

 彼をどうこうするのはきっと、この子が悲しむだろうから。

 モーニングルーティンも明日くらいは放棄しよう。全てはこの愛おしい妹分の為に。

 

 

(白銀御行……。この子を悲しませたんだから、絶対に幸せにして貰いますからね!!)

 

 

 

──

 

 

 

 






ちゃうんや……私はかぐや様を悲しませたかったわけじゃ……。
でも気がついたらこうなってたんや……。


 余白減らしてみました。こっちの方が読みやすいかも?
 あとフォント読み辛かったらすみません!!でもこれ楽しい!!やめられん!!
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