エスメラルダにとって忘れられない記憶。ママが作ったポポノタンのシチュー、パパがくれたアイルーのぬいぐるみ、そして全てを奪った轟竜の咆哮……。
「パパ……ママ……」
村の建物は尽く破壊されていて、近くには人も倒れている。そんなのお構い無しと、轟竜は暴れている。立ち尽くすエスメラルダの横を、大きな影が通る。巨獣、ガムートだ。
雪降る大地で吼える轟竜。そしてそれに立ち向かう巨獣。二匹の激しい争いをエスメラルダは黙って見ていた。やがて、轟竜の爪が巨獣を裂き、それが致命傷となって巨獣は息絶えた。
「ガムート……」
少女の目に映るのは、こちらを見据える轟竜。慈悲なき竜の爪牙が少女に迫る。そしてその牙で、少女の体を……
*
「……!」
エスメラルダの視界に映るのは真っ暗な部屋。僅かに月明かりが差しているが、それ以外に明かりは無い。
「ゆめ……」
さっきまでの光景が夢だった事を悟り、大きな溜息をついた。夢ではあったが、あんなのを再び見る事になるとは思わなかった。
(……寝て忘れるの)
再びベッドに横になり、目を瞑る。
「……」
(うぅ……こわいの……)
心臓の音がうるさいくらいに聞こえる。それに、額を汗が伝うのがわかる。眠ればまた同じ夢を見てしまうような気がして、怖かった。
「……」
エスメラルダはベッドから下りると、部屋を出ていった。アイルーのぬいぐるみを抱きしめながら、廊下を歩く。今の時間帯ならマリィもリュウガも眠っている。だから二人には何も言わずに、玄関に向かった。そして靴を履き、ゆっくりと玄関の扉を開けた。
*
外は心地良い風が吹いていた。草が風に撫でられてザワザワと鳴いている。空には満点の星空と、綺麗な三日月が浮かんでいた。
エスメラルダは迷うこと無く厩舎に向かい、中に入った。マリィのオトモンのリオレウスと、リュウガのオトモンの黒炎王リオレウスは既に眠っていた。だが、ガムートだけはまだ起きていた。厩舎の窓から外を眺めているようだ。
「ガムート……」
エスメラルダが呟くと、ガムートはエスメラルダの方を向いた。そしてエスメラルダに目線を合わせるかのように、体を低くした。
「一緒に寝ても……いい?」
「……パウゥ」
ガムートは静かに鳴いた。エスメラルダはガムートに近付くと、鼻の傍で腰を下ろした。ガムートはエスメラルダを守るように、鼻で包み込む。
「あのね……今日、怖い夢を見たの」
「……」
「パパもママも……ガムートも。みんないなくなっちゃう夢……」
「……」
「とっても……こわかったの……」
エスメラルダの声が震える。視界も涙でボヤけてきた。そんなエスメラルダの様子を見たガムートは、鼻を器用に動かしてエスメラルダの頭を撫でた。
「ガムート……?」
「パウ……」
「……ありがとう」
エスメラルダも、ガムートの鼻に手を添えた。
「やっぱり、ガムートは温かいの」
鼻に包まれながら、エスメラルダは目を閉じる。ガムートも黙って、エスメラルダが眠りにつくまで見守っていた。
「おやすみ、ガムート」
「パオォ……」
エスメラルダはガムートの温もりに包まれながら眠りについた。
*
「ガムート、世界ってものすごく広いんだよ」
エスメラルダとガムートは丘の上に立っていた。ラクアの街並みが小さく見える。
「あいつが教えてくれたの」
「でね、あいつと約束したの。『お前に負けないくらいいっぱいいろんなものを見る』って」
「だからね、この広くて自由な世界をもっと見て回りたいの」
ガムートの脚に手を添えながら、エスメラルダは言った。
「ガムート……一緒に行こ!」
「パオォォォン!」
温もりに包まれながら見た夢は、希望に満ちたものだった。
エスメラルダちゃんに全てを持っていかれた元リーダーです。復帰した時のガチャで出て以来、ずーっと愛用してきました。超ライトユーザーな私が唯一完凸させたキャラでもありますね。
あの娘はどんな人生を歩むんでしょうね。世界を見て回る旅に出るのか、ラクアのライダーとしてマリィ達と過ごすのか。何にせよ、幸せな未来が待っているといいな、なんて思ってます。またいつか……ST3とかで会えたらないいな……。