入間さんといっしょ   作:パプリオン

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第5章 さよならダンガンロンパ

 

長きにわたる才囚学園での生活は、唐突な終焉を迎えることになった。

 

学園内に散りばめられた秘密を解き明かし、現れた黒幕と対決する……なんていう展開は一切なく。

 

『BPO審議入り待ったなしの映像が流出しちゃったんだから、そりゃ打ち切りでしょ』と、モノクマから受けた説明は、たったそれだけで。

 

当然納得のいかない僕たちは揃って抗議の声を上げたが、聞く耳持たずで退学届を手渡された。

そもそも退学以前に入学したつもりはないんだけど……という呟きに対して、モノクマが「うぷぷ、キミがそう思うんならそうなのかもしれないね。キミん中ではな」と、意味深な言葉を残していたのが気になった。

 

求めていた答えは外の世界にあるかもしれないし、あるいは何もかもが分からずじまいで終わるかもしれない。

ともすれば、"全てが仮想現実の中で起きていたフィクションだった"みたいな、大どんでん返しが待ち受けている可能性だって、無くはないだろう。

 

どこまでが真実で、どこまでが嘘なのか。

それは、この学園を出てみなければ分からないことだ。

 

 

 

 

 

第5章 さよならダンガンロンパ

 

 

 

 

 

学園生活最後の日。

何もすることがなくて部屋でぼんやりしていると、勢い良く扉が開かれた。

 

「ひゃーっひゃっひゃ!今日のテメーはウルトララッキーだ。ちょうどヒマだし、オレ様が遊んでやるよ!」

 

今までずっと交流を重ねてきたから、わざわざ目視しなくともわかる。

この感じは、『僕なら絶対に誘いを断らないから強気で攻め込んでいけると考えている』時の美兎さんだ。

 

「おいおい、最終日だってのにシケたツラしてやがんな。よし、特別にオレ様の胸を見てていいぜ!ありがたすぎて泣けてくるだろ!?」

 

「うん、ありがとう。それじゃあ遠慮なく……」

 

「えっ、本当に見るの…!?

でも……たまにはこういうのも、いいかも…っ!」

 

こんなやりとりが当たり前になってしまった日常、もはや多くは語らない。

僕としてもここまで来ると、半ば開き直った状態で彼女に接することができていた。

 

さて……彼女の胸を穴が開くほど真剣に見つめ終えたところで、本題に戻るとしよう。

もっとも学園の中だから、二人で遊べる場所というのは限られてくるわけなのだが。

候補としては図書館、AVルーム、食堂、中庭、体育館あたりだろうか。

 

「せっかくだし、今日は美兎さんが行きたいところにしよう」

 

「う、うん。えっとね、それじゃあ……全部」

 

「え、全部…?」

 

話を聞けば今日は1日中一緒に居たい、二人だけの思い出を残したい、とのことで。

 

……ああもうほんっっっとにキミは可愛いなぁ!!

 

と口に出して言えば、彼女はわかりやすく頬を染めていた。

 

非現実的なことばかりでフィクションのような毎日だったけれど、彼女と育んだ絆は本物だ。

きっと"ダンガンロンパ"の世界から離れても、二人の関係性はずっと続いていくのだろう。

 

「わかったよ美兎さん。それじゃあ行こうか」

 

「ひゃっはー!そうだよな。テメーみたいな腐れマラ野郎が、オレ様の誘いを断れるはずねーよな!」

 

乱暴な言葉遣いとは裏腹に、満面の笑みで僕の手を握り駆け出していく。

手についた汗が一体どちらのものなのかは、最後までわからなかった。

 

 

 

最初に訪れたのは、寄宿舎からほど近くにある中庭だ。

思い返せば、彼女との絆が生まれたのはこの場所からだったんだよな。

 

あの時から今日まで、長いようであっという間だったと思う。

背負うべきものはたくさんあるが、美兎さんと一緒なら、きっと乗り越えていけるはずだ。

 

「なに感傷に浸ってやがんだ。浸るのは夜の泡風呂天国(ソープランド)だけにしておけよ?」

 

「いやそんな所には浸らないからね!?なにせ僕には、美兎さんがいるんだから……」

 

「あっ、えっと、う、うん……」

 

「……」

 

気まずい沈黙。

美兎さんはともかくとして、自分で言っといてあっさり照れてしまう僕も僕である。

 

この空気を打開すべく、「天気も良いし、日向ぼっこでもしようか…?」と提案してみると、彼女は水を得た魚のように反応した。

 

広大な才囚学園を一望できる場所で。

僕は美兎さんと隣り合わせに座り、今までのことや、これからのことについて話し合った。

 

「色々と引っかかることはあるけど……明日には外の世界に行けるって聞いて、本当に良かったよ」

 

「ああ。外に出たら、とびっきりの発明品を作って世界を救ってやらなきゃな!ったく、大天才のオレ様に課せられた使命っつーのはデカすぎるぜ!」

 

「……うん、そうだね」

 

普段の言動からは想像もつかないことだけど、美兎さんはいつだって誰かのために発明をしている。

自分の発明品で人が喜ぶ顔を見たいって。前に話したときは言っていた。

そんな優しい一面を持ち合わせているところが、僕にとっては大きなギャップであり、とても魅力的に映ったんだよな。

 

「……で、とっとと、子供をつくろうな!」

 

「うん、そうだね……えっ」

 

ちょっと待ってくれ、いつの間にそんな突拍子のない話題に変わって…!?

 

 

 

次に訪れたのは、学園内にある食堂。

最近はこの場所に全員集まって朝ごはんを食べる……という習慣はすっかりなくなってしまったけど、それでも僕たちの"日常"を維持するための大事なスペースであることには変わりない。

 

「何か料理でも作ろうか?」

 

僕がうっかりそんなことを口走ると、美兎さんは待ってましたとばかりに目を輝かせていて。

 

「欲しがりだなぁ終一は。だったらこのオレ様が、特製のデザートを振舞ってやるか!」

 

一瞬喜びかけたがちょっと待て。

何だかこれはデジャヴ感があるぞ。

デザート……アップルパイ……髪の毛入り……うっ頭が!

 

「あ、あのさ、気持ちはとても嬉しいんだけど……やっぱり髪の毛は物理的に食べれないかなって」

 

「おいおい。この天才発明家であるオレ様が、同じ失敗を繰り返すとでも思ってんのか?()()()()()()食べられなかったのに同じものを作るのは、ナンセンスってやつだ。そうだろ?」

 

ああ良かった、どうやら僕の早とちりだったみたいだ。

髪の毛の部分が肝心だったという言葉に引っかからなかったわけではないが、ひとまずあの時の二の舞を演じることはなさそうで、ほっと一息──

 

「つーわけで……今回作るのは、オレ様の血液入りチョコだ!」

 

──つこうとしていた自分をぶん殴ってやりたい!!!!

 

そうだった。よくよく考えてみれば、美兎さんがこの程度で収まるはずなかったんだ。

彼女の内に秘めたる爆発力というものを、僕は侮っていた。

 

"特製チョコ"に関しては、そもそも件のアップルパイを作った時に他の候補として挙げられていたのだから、こうなることを想定できなかったのは、ひとえに僕が彼女のことを過小評価していたからに他ならない。

 

要するに、僕もまだまだ甘かったということだ。チョコだけにね。

 

……………………うん。

 

1人で勝手にうすら寒くなっている僕──最原終一のことはさておき。

 

美兎さんの方は実に手際よく調理を進めていた。

最後に赤い液体を混入させたという事実から目を背ければ、その姿は超高校級の料理人と称しても差し支えのないものだった。

 

彼女自身の発明品であるという『絶対に痛くない!血液採取キット』を経由して垂らされた血液は、あっという間にチョコレートと混じり、消えていく。

 

この学園に来る以前の僕であれば、血が入ったチョコなんて正気の沙汰じゃないと思っていただろうけど……慣れというのは恐ろしいもので、僕はこの特殊な状況を完全に受け入れてしまっている。

というか、美兎さんの血液入りチョコってそれはもはやご褒美以外の何物でもないだろう。今はそんな心境だ。

 

「よし、オレ様の成分がたっぷり入ったチョコレートの完成だっ!息もできねーほどに泣いて喜びやがれこのド変態がっ!」

 

またそんなこと言って、僕が本当にむせび泣き始めたら絶対困惑するだろうに……

 

何はともあれ、大好きな彼女から受け取ったチョコレートだ。

普通よりほんの少しだけ重い愛が含まれているけど、僕にとってはそれすらも嬉しい要素になりえてしまうから、盤石の体制と言えるだろう。

 

受け取ったチョコレートをいざ口に運んでみえると、程よい甘さとほろ苦さが広がっていく。

 

幸か不幸か、血液の味ははっきりとは感じられなかった。

わずかに鉄の味が感じられるような気はするけど……まぁ、決して大量の血を混ぜたわけじゃないから、こんなものだろう。

 

「ど、ど、どう、かな。アタシの味、する…?」

 

「う、うん。ほのかに香る、って感じかな……」

 

互いにド変態じみた行っているという自覚があるためか、それ以上話は広がりそうになかった。

 

 

 

お腹を満たしたところで次に向かったのは、地下1階のAVルーム。

少し休憩しがてら、何か映像でも見ようという流れになったので、僕は手品のドキュメンタリーDVDを手に取った。

 

「な、何が手品だよ…!そ、そんなの、ちっともワクワクなんかしねーぞ。ど、どうせ気になるタネなんかが、丁寧に明かされたりするだけだろ?」

 

と、ワクワクを隠しきれずに言う美兎さん。

夢野さんのマジカルショーを誰よりも見たがっていた彼女なら、絶対に食いついてくれると思った。

 

「ねぇ、焦らさないで、早く見せてよぉ。アタシ、胸のドキドキが止まらなくって……もう我慢できないの…っ!」

 

何やらいかがわしい雰囲気になっているのではないかと錯覚しかけた僕は、きっと悪くない。

その後は、手品のトリックを映した動画と、それに喜ぶ美兎さんを眺めながら、幸せな時間を過ごした……

 

「あっという間に終わっちゃったね。続編もあるみたいだけど、こっちも見る?」

 

「えっと、それも良いんだけど……他にもまだ、終一と行きたいところ……あるから」

 

「っ…!」

 

おいおいキミはこの腐った現代に舞い降りた天使か何かなのか。と思わずそんな感想を漏らしそうになるほどの可愛いらしさを覚えつつ、僕はギリギリのところで平静を保っている。

我ながら大した精神力だ。

 

しかし、これまでのデートで自分の中のテンションはかなり高まっており。

次に向かったスポットでは、その事が高じて考えなしにあんなことを言ってしまったのだ。

 

 

 

「それじゃあえっちな漫画でも探そうか」

 

……あっ間違えた!

漫画だけでよかったのに余計な形容詞を付け足してしまった!!

 

AVルームから廊下を挟んだ場所にある図書室。

そこで開口一番に失言を漏らしてしまえば、どう言い訳しようとも後の祭りで。

 

「さすが非モテの皮被りだな!頭ん中は常にそういうネタでいっぱいか!?

むっつりスケベのドM野郎が、ついに本性を現したっつー訳だ!どーせエロ漫画に出てくる女をオレ様に見立てて、1人でナニするつもりだったんだろ!そーなんだろ!?」

 

ぐっ……美兎さんめ、ここぞとばかりに無茶苦茶な罵倒をしてきて…!

けれど今回のそれは完全に僕の失言がきっかけだから、ツッコミで正当性を主張することはできない…!

 

「よし、それじゃあむっつり変態の終一に免じて、エロ漫画を探してやっか!こんだけ沢山の本が山積みになってんだ。一冊ぐらいあるに違いねーぜ!」

 

そして、なんだかんだ言っても一緒に探そうとしてくれる美兎さんに心温かいものを感じつつ、図書室でのひとときを過ごす。

 

「そういや、オレ様の性の目覚めは漫画だったんだ。家族と入った中華屋で、適当な漫画雑誌を取ってだな……」

 

思わず男子校と錯覚するようなノリの会話だけど、僕が知らなかったような部分を教えてくれることが、嬉しかった。これからもたくさん彼女のことを知っていきたいと、素直にそう思った。

 

「確かにああいうところって、意外にアダルトな漫画があったりするもんね」

 

「だよな!どうせオメーも、ガキの頃は家族に隠れてコソコソシコシコと励んでたんだろ?いかにもむっつりな終一らしいやり口だぜ!」

 

「ししししてないよそんなことは!週刊誌にひとつはあるえっちな漫画に興奮してたとかそんなことは決してないからね!……あ、しまった!」

 

「ひゃっひゃっひゃ!語るに落ちたな童貞野郎!ま、オメーの異常すぎる性欲なんざ最初から分かりきってたことだ。だからそんなに落ち込まなくてもいいぜ!」

 

だから、僕も自分を偽ることはしない。

どれだけ恥ずかしい話をしようとも、あるいはずっと隠してきた部分をさらけ出そうとも……美兎さんなら、きっと受け入れてくれるはずだから。

 

その後、何故か歯止めが利かなくなった僕たちは、お互いに性癖を暴露しあうという盛大な自爆行為を行い、図書室で休憩するどころではなくなってしまった。

 

だけど……こういうことをするのも悪くないと、そう思える自分がいる。相手が美兎さんであれば、なおさらのこと。

 

本当に、少し前の自分だったら考えられないようなことだ。

 

 

 

図書室での性癖暴露大会が終わったところで、僕は最後のデートスポット(?)である体育館に行くことを提案した。

しかし、彼女の顔色は優れぬままで。

 

「うーん、なんつーか気分じゃねーな。体育館に行ったところで、球を穴の中に入れるスポーツしかねえだろ?

……球を穴の中に入れるスポーツしかねえだろ!?」

 

それはひょっとして、バスケットボールのことを言っているのだろうか。

というか何で2回言ったんだ?そんなに大事なことだったのか…?

 

「確かにそうだね。もし突き指とかしたら、発明品に影響が出て世界的な損失になっちゃうだろうし。なにより僕自身が、美兎さんに下手な怪我をして欲しくないから」

 

「はうっ…!ふ、不意打ちで照れるようなこと言うんじゃねーよ!

そうやって気にかけてくれるのは、すっごく嬉しいけど……」

 

結局彼女の真意はわからずじまいだったが、雰囲気は悪くなるどころかむしろ苑逆となったので、よしとしよう。

 

で、だ。

彼女曰く他にもう1ヵ所回りたい場所があるとのことらしく、手を引かれるまま美兎さんについていくことになった。

 

校舎を出て左手側に沿った道を進んでいくと、ところどころに草葉が生い茂る施設が見えてくる。

この場所って……確か、プールだよな?

 

「いひ、いひひひひ……ここでならくんずほぐれつの過ちが起きても、事故で済まされるっつーわけだ。ラッキースケベなTo LOVEる展開が待ち遠しいぜぇ…!」

 

さっきから不穏なことしか呟かない美兎さんに身の危険を覚えつつ、しかしこの場で立ち去るという選択肢は存在しないので、最後まで付き合うことにする。

……決して何か過ちが起こることを期待しているわけではない。決して。

 

更衣室で着替えてから室内プール場に入ると、50mのコースにはきちんと水が張られていた。

これなら美兎さんと一緒に泳ぐこともできるだろう。早く着替えて来ないかな。

 

「待たせたな!どうせオレ様の水着姿を想像しながら、一人寂しくシコシコとやってたんだろうが……」

 

そんなことを考えていると、背後から不意に声がかかる。

僕は反射的に彼女の方へ振り返り……そのまま閉口した。

 

「どうよ終一、オレ様の水着を見た感想は!美しすぎてブルっちまうだろ!?いや、オメーの場合はビンビンになるの間違いだったな!」

 

白とピンクの配色を組み合わせたフリル付きのデザインは、大人っぽさというよりは可愛らしさが前面に押し出されており。

彼女が持つ女性としての魅力を、さらに大きなものへと昇華させていた。

 

「ひゃっひゃっひゃ、衝撃のあまり言葉も出ねーってか!渚のビーナスを前にすりゃそうなるよな!」

 

僕はてっきりヒョウ柄ビキニとかそういった変化球で来ると思いこんでいたから、完全に虚を突かれた形になってしまったである。

 

「な、なんだよぉ、何か言ってよぉ……もしかしてコレ、そんなに似合ってないの?

せっかく終一に喜んで貰えると思ったのにぃ……」

 

「あ……ゴメン。正直言って、完全に見惚れてた」

 

「…!そ、そうか。ま、まぁオメーみてぇに四六時中エロい妄想ばっかしてる変態にとっちゃ、最高のシチュエーションだよな!」

 

後になって思い返すと結構酷いことを言われていた気がするが、この時の僕はそんなことなど全く意に介さず、ただ美兎さんを賞賛したいという気持ちでいっぱいだった。

 

「うん。何というか、神秘的なものを見ている気分だ」

 

「し、神秘的?そこまで言われると、ちょっと恥ずかしいんだけど……」

 

「でもほら、美兎さんはいつもヴィーナスボディを自称しているよね?今の水着姿は、まさしくそれを体現しているというか……あ、もちろん普段の制服姿も魅力的だから、全然そこは自信を持ってくれていいんだけど。って、美兎さんの場合はその魅力をちゃんと自覚してるからわざわざ言うまでもないよね。それから一応言っておくけど、僕がキミに惚れた理由はそれだけじゃない。内面も含めて全部好きだって思ってる。例えばね──」

 

このあとも美兎さんの頭から煙が出るまで滅茶苦茶フォローした。

 

言いたいことを大体言えてスッキリした僕は、その後賢者の如き心持ちで美兎さんと

プールから上がって外に出ると、辺りはすでに夕暮れ時を迎えていた。

 

「てっきり更衣室で一発ぶっ抜いてくると思ったが、ちゃんと我慢してきたみてーだな。ま、賢者タイムになったらおっ勃つモンが萎えちまうからな!」

 

まったく美兎さんは……男性の構造というものを、よく理解してらっしゃる。

 

 

 

 

 

美兎さんとのデートの終着点は、『超高校級の発明家の研究教室』だった。

 

彼女と仲良くなって以降、数多くの発明品を見せて貰うために訪れたこの場所とも、明日にはお別れを告げることになる。

 

フィクションみたいに滅茶苦茶な学園生活だったけど、ここで得たものや失ったものはどれも本物だった。

 

これから先、どんな未来が待ち受けているのか想像もつかないけれど……美兎さんといっしょなら、きっと大丈夫だ。

 

「そうだよね?美兎さん」

 

「あったりめーだ!オメーとは今日1日、色々なとこに行ってデートしたけどよ。全然、まだまだ物足りねー!

外の世界に出てからも、行きてー場所が山ほどあるからな!……だから、ずっと一緒だよ?」

 

「もちろん。美兎さんから貰った"デートする権利"は、これからも使い続けるよ」

 

「う、うん……なんか今の終一、すっごく変態っぽいね」

 

へ、変態だって!?まさか美兎さんにそんなことを言われるなんて心外な!!

 

……そう反論しようとしたけど、寸でのところで思いとどまった。

 

美兎さんから貰った"デートする権利"とは、すなわち彼女から貰った黒い勝負下着。

それを片手に「使い続ける」と言ってしまったのは、他ならぬ最原終一。

 

この状況、冷静に考えてみれば美兎さんの言うとおりじゃないか…!

 

 

 

もう何度目かわからない、お互いが顔を真っ赤にした状況で。

 

僕は意を決して、彼女のことを優しく抱きしめる。

 

美兎さんの温もりが直に感じられて、緊張はピークに達していた。

 

「これから先……何があっても、僕はキミを守る。大好きな美兎さんのことを、守り抜いてみせる。

だから、僕と一緒に、新しい一歩を踏み出してください…!」

 

「終一……ひゃーっひゃっひゃっ!まさかオメーから、そんなくっせぇくっせぇくっせぇ台詞を聞けるなんてなぁ!

オレ様の天才的な発明品、『いつでもどこでも盗聴器』が早速役に立ったぜ!」

 

な、なんだって!?

 

「ちょっと待っ…!消して!一世一代の告白したはいいけどなんか猛烈に恥ずかしい感情しか湧いてこないから今すぐ消して!」

 

「はぁ?何言ってんだ、消すワケねーだろ!

こいつはな、オメーが年取って死ぬまでとっとくんだよ!

そんでもって、葬式の時になったらリピート再生で流してやるぜ!オレ様ツエエエエ!!」

 

クソッ、何てことだ!

美兎さんは死の際まで僕を困らせる気なのか…!

 

 

 

……あれ?でもちょっと待てよ。

 

 

 

それってつまり、裏を返せば僕のことを看取ってくれるって意味で……

 

 

 

死ぬまで一緒にいてくれるって、コト…!?

 

 

 

「ありがとう美兎さん!その気持ちすごく嬉しいよ!だからこれからも末長くよろしくね!!」

 

「ひぃっ…!今の言葉で喜んじまうとか、どんだけマゾなんだよぉ……でも、たまにはドSになって、責めてくれてもいいからね…?」

 

少しばかり解釈の不一致があったようだが、その点は追々解決していけばいい。

これまでと違って、僕たちには無限の時間があるのだから。

 

 

 

僕と美兎さんの先に在るのは、未だ見ぬ外の世界の光景。

 

 

 

僕たちにとって、未だ見ぬ外の世界がどれほど恐ろしいものなのか、想像もつかない。

 

 

 

だけど……僕はもう、一人なんかじゃない。

 

 

 

僕には美兎さんがいて、美兎さんには僕がいるのだから。

 

 

 

こうして、僕達の才囚学園での日々は……終わりを告げた。

 

 

 

END

 

 

 

 

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