脳筋ネタキャラ女騎士(防御力9999)!   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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43 新メンバー

「グリモワール魔導王国。実に良い選択だと思うよ、小さなレディ」

 

 バロンは訳知り顔でうんうんと頷きながら、俺達の方に歩いてくる。

 が、突如その額に、ポーションの空き瓶が直撃した。

 

「へぶっ!?」

「ノックしてから入ってきなさい!」

 

 空き瓶を投げたのはミーシャだった。

 今の俺達は、(ユリア)が傷心中の二人を抱きしめてるという体勢だ。

 家族水入らずならぬ、仲間水入らず状態。

 しかも、抱擁シーンを見られるのは地味に恥ずかしい。

 ミーシャの怒りは当然と言えた。

 

「気配りが甘いのよ、エセ紳士!」

「エ、エセ紳士……!?」

 

 あ、結構ダメージ入ってる。

 ガーン! って擬音が聞こえてきそうな顔だ。

 しかし、すぐに心に鞭を打ったかのように、ぷるぷると震えながら動き出し、

 

「す、すまなかった。やり直させてもらおう」

 

 そんなことを言って、回れ右。

 一度部屋の外に出て、コンコンとノックしてくる。

 ……これなんて茶番?

 

「……入ってくれ」

「失礼する。話は聞かせてもらった! グリモワール魔導王国。実に良い選択だと思うよ、小さなレディ」

 

 なんとも力が抜けるような気持ちで、抱擁モードを解除しつつ入室の許可を出せば、バロンはさっきと微塵も変わらないテンションで入ってきて、一言一句違わない言葉を吐き出した。

 ねぇ、ホントに、これなんて茶番?

 

「メサイヤ神聖国は現在混乱中だ。私は当時南部にいたので又聞きになるが、なんでも少し前に魔王軍八凶星の一角『変容星』との戦いがあったらしい。その後処理も終わらぬうちに、今回の玄無襲来だ」

 

 バロンは何事もなかったかのように続きを話し始める。

 この流れで、サラッとすげぇ重要そうな話をしないでほしい。

 頭に入ってきてくれない。

 

「玄無の被害は大きかった。最終的にはアリシア殿や『聖騎士』殿を動員した大軍勢で迎え撃ち、どうにか撃退はできたが、討伐は成らず。……そして、今回の戦いで西部国境地帯は壊滅的な打撃を受けた」

 

 しかも、そのままの流れでシリアスに移行。

 待って待って、ついていけねぇから。

 

「西部を統べるウェストポーチ辺境伯も死亡。彼の派閥も重要人物の多くが死亡。皮肉なことに、西部の腐敗は災害によって洗い流された。……多くの罪無き人々の命と共に」

 

 バロンが固く拳を握りしめる。

 その悔しそうな顔を……ミーシャ達と同じ顔を見て、ようやく俺の認識がシリアスに追いついた。

 

「今回の件で、私は強く思ったよ。あれを許してはならない。四大魔獣、八凶星、そして全ての黒幕である魔王。奴らは必ず討伐しなければならない」

「……そうだな」

 

 俺は、俺達は心から強く頷いた。

 今までは内なるユリアにせっつかれる形で、あんまり積極的な戦意も敵意も持ってなかった俺だが、今は違う。

 あの光景を見せつけられて、皆の辛そうな顔を見て、俺自身にも確かな戦う意思が生まれた。

 

「特に最優先は四大魔獣だ。知っての通り、奴らは魔王城を守る鉄壁の結界の要。奴らを討伐しない限り、我々は魔王の根城に踏み入ることすらできない」

「……ああ」

 

 魔王城の結界。

 人類の総力を上げても傷一つつけられなかったというチートバリア。

 かつて、一度だけ魔王城の喉元まで迫れた時に、人類を絶望のドン底に叩き落とした悪魔の仕掛けだ。

 その時の戦いで誰かが必死に結界を解析して、その解除方法を見つけ出した。

 それこそが四大魔獣全ての討伐。

 つまり、魔王軍との戦いに勝ちたいのなら、俺達の私怨を差し引いても奴らを全滅させることは絶対条件なのだ。

 

「奴らと戦うには、最低でも大軍勢が必要。……だが、それではダメなのだろう。

 この数百年、大軍勢を用いた戦いで奴らを撃退した回数は数知れないが、討伐できたことは一度もない。

 小回りの効かない大軍では、逃げる相手を追い切れない」

 

 ……それはあるだろうな。

 四大魔獣の中で一番トロいだろう玄無でも、一歩一歩の歩幅が尋常じゃないから、実は移動速度は意外と速い。

 それを連携を第一に考えなきゃいけない大軍で追いかけるのはキツい。

 

「ゆえに、必要なのだ。大軍で削った後、弱った奴らを追いかけ、トドメを刺せる『英雄』が。

 そして、私は君達に希望を見た。たった三人、私を入れてもたった四人で、あの化け物とまともに戦ってみせた君達に」

 

 バロンは……俺達に向かって頭を下げた。

 優雅な紳士らしくない、熱意に満ちたサラリーマンのような直角のお辞儀をした。

 

「頼む。私を君達のパーティーに入れてほしい。君達と共に強くなり、此度の雪辱を果たす機会を、私にも与えてほしい。この通りだ……!」

「バロン殿……」

 

 紳士っぽくはないが、どこまでも真摯に頭を下げるバロン。

 正直、個人的には大歓迎だ。

 彼の強さはタコや玄無との戦いで充分に見た。

 S級冒険者の名に相応しい強者だ。

 不足なんてあるはずもない。

 内なるユリアからも『同意』って感じの思念が伝わってくる。

 

 俺はチラリと、ミーシャとラウンの二人を見た。

 二人とも否定的な顔はしていなかった。

 

「僕は賛成です。この人なら、強さも人格も信頼できる」

「私も反対はしないわ。先輩の好きにすればいいと思う」

「そうか」

 

 二人からの承諾も得て、俺は頭を下げるバロンに手を差し出した。

 

「バロン殿。私達はあなたを歓迎する。ようこそ、冒険者パーティー『リベリオール』へ」

「……ありがとう、レディ。いや、ユリア殿」

 

 バロンは俺の手を取った。

 その瞬間、例のピコンという音が俺の脳内で鳴り響く。

 

―――

 

 バロン・バロメッツ Lv35

 

 HP 800/800

 MP 720/720

 

 筋力 1000

 耐久 744

 知力 750

 敏捷 1201

 

 スキル

 

『剣術:Lv40』

『氷魔法:Lv35』

『回避:Lv40』

『迎撃:Lv21』

『筋力上昇:Lv30』 

『俊敏超上昇:Lv15』

『斬撃超強化:Lv10』

『氷属性強化:Lv31』

(スラッシュ):Lv44』

『受け流し:Lv45』

氷結(フリーズ):Lv37』

氷壁(アイスウォール):Lv27』

氷結斬(フリージング・スラッシュ):Lv36』

『状態異常耐性:Lv22』

 

―――

 

 おお、すごい。まともだ。

 レベルの高さよりも、まずそっちに感動してしまった。

 一緒に戦った感じでわかってはいたが、バロンは正統派の魔法剣士だな。

 やや攻撃寄りのステータスで、防御は少し低め。

 ただ、俺達のように極端に偏ってはいない。

 

 どいつもこいつも特化型の色物ばっかりだったリベリオールに、ついにまともな人材が入ってきてくれた……!

 いや、ステータスはともかくとして、言動の方はバロンも立派な色物なんだが。

 あれ? むしろ、言動が色物なのはバロンだけでは……?

 ユリアもミーシャもラウンも、パッと見た感じはまともだし。

 

 ……うん。これ以上は考えないようにしよう。

 これ以上は、脱色物パーティーの感動が台無しになる。

 

「ところで、メサイア神聖国からの依頼の方はどうされる?」

「何、そちらには話を通しているとも。それに、元々私は大陸南部の紛争地域で活動していたんだが、ここ最近は妙に南部が静かでね。それで手が空いたからこそ、今回の依頼にも駆り出されたわけだ」

「なるほど」

 

 この人、普段は嫌な思い出があるはずの故郷で活動してるのか。

 多分、故郷の惨状を見てられずに戻ったんだろうな。

 聖人か。

 

「では、新メンバーが加入し、新たな目的地も決まったことだし、早速……ん? いや、まだ決まってはいないか。ラウンの意見を聞いていなかったな」

 

 グリモワール魔導王国に行きたいと言い出したのはミーシャで、バロンはそれに賛成。

 俺も異論は無い。

 アリシアと接触できたから、当初の目的である聖地で勇者に取り入るぞ作戦をする必要性は薄れたし、多分まだ召喚されてないんだろう勇者を待って聖地に滞在し続けるのも時間の無駄だ。

 そんな時間があるなら、ミーシャの提案に従って自分達の強化に使った方が良い。

 表向きの目的である俺の勇者モドキの力の調査はできなくなるが、元々カモフラージュのための適当な理由づけなんだから、できなくてもそこまでの支障はない。

 なら、後はラウンの意見を聞くだけだ。

 

「僕もグリモワール魔導王国に行くのは賛成です。あそこは魔法だけじゃなく、色んな魔道具の研究もしてるらしいので、もしかしたら僕が戦力になれるアイテムを見つけられるかもしれませんし」

「そうか。では、決定だな」

 

 次の目的地は大陸北部、グリモワール魔導王国。

 そこで力を蓄え、今回の借りを返す!

 っしゃぁ! 気張っていくぞぉ!

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