ホビアニTCG世界にカードとして転生したから目立とうとしたけど、何かがオカシイ。 作:夢泉
再開します。
▽司会の英語が分かりにくいとの指摘→ルビで日本語を用いる事で対応。
◆◆◆
私にとって、世界の全ては「どうでもいいモノ」だった。
あっても無くても変わらないモノ。さして興味を持てない、無価値なモノ。
それは自分自身も同じ。かつて居た「誰か」の紛い物、会ったことも無い「姉」の模造品。しかも、造物主たる親直々に「不必要」と断じている。
最初の目的すら否定された人形に、意味なんてある訳がなくて。
私には、「私が居る世界」と「私が居ない世界」の違いが理解できなくて。
それでも、「有」と「無」が違う事だけは明白で。
その差異を私は理解出来ないけれど。「有」が「無」になれば何かが変わっている。壊すことで意味が生まれる。そう思った。
だから、私を「偽物」にした死世神の家も、血筋も。全てを壊してしまおうと思った。
そうすれば。私は少なくとも、あいつら「本物」よりも価値があったことになるから。
けれど、その手段を私は持たなくて。
ただ無為な日々を送っていた時、私は出逢った。
両手に大鎌を持った、白い髪とオッドアイの少女、ティティム・クルデーレに。
The ONEカード。
それは、強い想念によって世界に顕現するカード。
どこより現れるのか、何故現れるのか。詳しい事は何1つ分かっていない。……死世神の歴代当主やCPXの中枢は何かを知っているだろうけれど。少なくとも、私を含めて殆どの者はその正体を知らない。
ただ、1つだけ確かなことは。尋常ならざる力を秘めている事だけ。
最初は、ただの道具としてしか見ていなかった。
このカードがあれば、全てを壊して私の価値を証明できると。それしか考えていなくて。
だから、最初の叔父とのバトルで賭けの対象にした。
それが最も効率的だからという理由で、何の抵抗も無くチップに出来た。
けれど。
あの最初のバトルでティティムが発した言葉を思い出す。
『――私は貴女の唯一! 偽物でも! いいえ、偽物だからこそ! 本物の笑顔を貴女にあげられるの!』
私はずっと、偽物では無い存在になりたいと願っていた。
偽物なんて意味の無い存在だと思っていた。
でも、彼女は。そうではないと言った。
彼女は“イミタシオン”。彼女も偽物。
だというのに、彼女には一切の疑問も迷いも無かった。ただ真っ直ぐ純粋だった。
自らが偽物だと断じ、それを良しとした。
偽物だからこそ出来ることがあるのだと。
――私を笑わせてくれると、そう言った。
私は特定の何かに執着を持ったことが無かった。
全てはあっても無くても同じモノ。そう考えていた。
だけど、ティティムをもう1度「チップ」にすることは出来なくて。
その理由が分からなくて。
否。分かりたくなかった、というのが正確なのかもしれない。
だって、それを理解してしまえば私の根幹が揺らいでしまうから。道を見失ってしまうようで怖かったから。
――それでも、認めるしかなかった。
私はティティムが大切だ。ティティムが居ない世界なんて考えたくもない。
ティティムだけは壊したくない。そう強く強く思ってしまう事を止められない。
――けれど、私は壊す以外の接し方を知らなくて。
彼女が自分の意思で私から離れるのだとしても認めない。
彼女の自由を壊そう。意思を壊そう。
――そうすれば、ずっと一緒にいられるはずだから。
◇◇◇
「まさか、こんな事になるとは思わなかったなー」
スタジアムの屋上から、モンスター特有の超視力にて偽華ちゃんの様子を見ていたのだけれども。
「ティティムがどこに行ったか知らないかしら?」
「偽華CEO! 丁度良かったです! ティティムさんなら先程見かけましたが……申し訳ありません、少し手を貸して頂けませんか? 見ての通り、今は手が離せないのです」
「知らないわ。それが貴方の仕事でしょう? 給料分は働きなさい。それで? ティティムはどっちに行ったの?」
「あ、ですから手が塞がっていてですね……」
「その口は何のためについているの?」
「西口の方へ向かわれました……」
「至急応援を呼ばなければ大変な事になってしまうのです!」
「何のために無線機を持ってるの? それを使って呼びなさい。それで? ティティムはどこ?」
「ですから……!」
「くどいわ。さっさとティティムの居場所を教えなさい」
「はい……」
「減給」
「南側に向かったであります!」
駄目だ、こりゃ。
まさか、全部ガン無視で突き進むなんてなー。
彼女のゴーイングマイウェイ度を見誤っていた。
ゲームの「クエスト」みたいな感じだったのだけれども、まさか脅してでも聞き出す方向に行くとは。主人公がやって良いプレイではない。……まぁ、偽華ちゃんは敵側なのは間違いない感じなのだけれども。
やはり、私のアドリブがあってよかった。
クリオッチの中身の子。彼女の前にチラチラと姿を見せては離脱を繰り返し、上手く誘導している。このまま行けば間もなく偽華ちゃんと合流するはず。
そして二人は力を合わせて仲良くなる。私の計画は完璧である。ふふん。
お、ついに二人が合流するようだ。
ティティムの仲良し作戦、開始……
「敵ね。潰すわ」
「なんでぇ――!?」
あれれ? なんか雲行きが怪しい……?