ホビアニTCG世界にカードとして転生したから目立とうとしたけど、何かがオカシイ。   作:夢泉

6 / 15
※当小説にはTCG及びホビアニへの偏見が随所に見受けられます。
※これらは全て作者及び各キャラの主観に基づくものであり、事実とは異なる場合がございます


TURN 2:ホビアニ本編開始篇
Draw 1:ホビアニ1話的な?


 

 ――TCG『CHAOS ONE』!

 ――略して『COバトル』!

 其れは、あらゆる世界が集う世界「カオス」を舞台に繰り広げられる熱き戦い!

 

 戦士達の共通点は一つ。

 混沌とした世界で、己こそが唯一無二だと!

 絶対にして(ただ)一つの頂点なのだと!

 其れを示すべく、カードを手に8の「ライフ」を削り戦う!

 

 人は彼らを「COファイター」と呼んだ――!

 

 

◆◆◆

 

 

「やぁ、唯一(ゆいいち)くん。奇遇だね」

 

 俺の名前は火緒主(かおす) 唯一(ゆいいち)。真っ赤な髪がトレードマークの、混沌中学1年生。

 家から出て学校へと向かう途中、声を掛けられて振り返る。

 もっとも、声の主が誰かなんて明らかだ。

 

水貝(すがい)か……」

 

 俺的「朝から見たくない顔」ランキング堂々の1位。殿堂入りさえ目前のコイツは、「水貝(すがい) 天一郎(てんいちろう)」。小学校1年生からずっと同じクラスになり続けている、青い髪の男子。

 ありとあらゆる事でぶつかり合ってきた奴で、いけ好かない野郎だ。

 理由?

 直ぐにわかるさ。コイツの次の言葉なんて決まってる。一言一句同じ言葉を、何度も何度も繰り返し続けてるからな。もう飽きるほど聞いている。

 その予想は的中。

 水貝は、太陽を反射する黒縁メガネの中央に右の人差し指を当て、僅かに持ち上げながら言った。

 

「ちっちっち。僕の事は「ナイ()()()」と呼びたまえと何度も言っているだろうに。全く、これだから鳥頭は困る。この程度の事も覚えられないとは」

「覚えられねぇんじゃねぇよ! 知ったうえで拒否してんだよ! テメェのドコがナイスガイだ!」

 

 そして、俺も。いつもと変わらぬ返しをする。

 何度言われてもムカつくのだから仕方があるまい。

 

「美に対する審美眼を持たないとは哀れだね。よく見たまえ。僕ほどのナイス――」

 

 その瞬間、ドンッという大きな音と共に。

 老婆の、絹を裂くような悲鳴が響き渡った。

 

「きゃー! 引ったくり! 誰か捕まえて!」

 

 1人の白髪の婆さんが、走り去っていく全身黒ずくめの服と帽子&サングラス&マスクという明らかな不審者を指さして叫んでいる。

 走り去っていく黒男の手には大きなカバン。

 ざっと見た限り、婆さんは転んだりしていない。

 ならば!

 

「任せろ、婆さん! 待てや、コラァァァ!!」

 

 

◆◆◆

 

 

 ……クソっ!このままだと逃げ切られる!

 コイツ、手慣れてやがる! 逃走経路を熟知しているし、何より足が速い!

 俺は運動神経には滅茶苦茶自信を持っているが、それでもギリギリ。そして、逃げるのに慣れている分、向こうの方が有利。

 徐々に徐々に距離を離されていく。

 不味い不味い不味い……! あの角を曲がられたら、見失っちまうかもしれない……!

 黒ずくめの男が直角に曲がり、路地裏へと姿が消え……

 

「く、くそ……!放しやがれ……!」

 

 直後。

 その路地裏から黒ずくめの男が戻ってくる。

 両手を拘束された状態で。

 

「――引ったくり犯が逃走経路を確保してないわけないだろ? 全く。少しは頭を使いなよ。僕たちは“intelligent life”、知的生命体なんだよ?」

 

 男を拘束していたのは、先程まで会話していた水貝だった。

 

 

◆◆◆

 

 

「ありがとうねぇ。ありがとうねぇ。銀行から出て直ぐだったから、本当に助かったよ。ありがとうねぇ」

 

 その後。引ったくり犯は無事に警察に引き渡され、カバンは婆さんの手に戻った。

 俺と水貝は、婆さん本人やら警察の人やらに散々感謝されることに。

 嬉しい気持ちはあったが、その何倍も恥ずかしかった。なので、「学校に遅刻するから」と言って逃げるように立ち去る。

 日頃から「ナイスガイと呼べ」などと言っている水貝も、人並みの羞恥心は有しているらしい。俺が声を掛ければ、抵抗なく退散に従った。

 しかし。彼が大人しかったのはソコまで。賞賛する人々の輪を抜け出して暫くすると……

 

「あの場所から逃げるなら、あの路地裏を通ることは簡単に推測できるだろうに。なら、先回りして待ち構える事は十分に可能だろう? 少しは頭を使いなよ」

 

 いつも通りの腹立たしい野郎に戻りやがる。

 

「あぁん!? それは俺が追い続けたから成立した作戦だろうが!」

「ははっ。だとしても、君一人では間違いなく逃がしていた。そして、実際に捕まえたのは僕だ。なら、あれは僕の功績だろう?」

「百歩譲っても半々だろうが!」

「浅ましいね。僕の功績を50%も恵んで貰おうなんて」

 

 あー。分かった。そうか、そんなに対決が望みか。

 

「いいぜ! ならCOバトルで決着だ!」

「望むところだよ!」

 

 今日も遅刻だろうけど知った事か!

 

「何かで揉めたら『CHAOS ONE』で勝負!」

「常識だね!」

 

 

◆◆◆

 

 

「混沌の世界に燃え盛れ、俺の焔! 召喚、『種火(たねび)侍/翔火矢(かけびや) ヒダネ』!」

『応よ! 小さな火種が大きな破壊に繋がるのさ!』

 

 俺がカードを掲げれば、赤い髪の弓兵が現れる。

 グレード1の速攻モンスターであり、愛用している『ヒダネ』だ。

 

「相変わらずの侍デッキかい? 芸が無いね!」

「そういうお前だって、いつもと変わらない水涯(すいがい)デッキじゃねえか!」

「これが一番ナイスだからね!」

 

 ターンが移り変われば、水貝が眼鏡の中央に指を添える。

 そして。声高らかに告げた。 

 

「荒れ狂う水流さえ計算可能! ならば、如何なる混沌でも計算し尽くそう! 召喚、『最速計算/GUYGUY(ガイガイ)NICE GUY(ナイスガイ)』 」

 

 眼鏡をかけ白衣を身に纏った男が現れる。水貝が愛用する『NICE GUY』の一体だ。

 勝負は過熱していく――!

 

 

◆◆◆

 

 

「――『焼夷大将軍/徳炎(とくえん) イエヤス』でダイレクトアタック! トドメだ!」

「うあああああ!!」

 

 グレード3の強力なカード『イエヤス』による刀の一閃。

 巨大な火柱に襲われた水貝は衝撃で吹き飛ばされた。これで彼のライフはゼロ。俺の勝利だ。

 

「どうだ! これで俺の方が強いって分かっただろ!」

「残念だったね。これで僕も君も999勝999敗。同点だよ。ほら、これが記録」

 

 水貝がスマホの画面を見せてくる。ソコには彼が俺との戦いを記録し続けたデータが表示されている。

 確かに言う通りだった。奇跡的な引き分け状態だ。

 

「なら、もう1度勝負だ! 記念すべき1000勝目でどっちが最強か決めようぜ!」

「……いや、今日は止めておこう」

「何でだよ。怖気づいたのか!?」

「違うよ。僕たちの決着には最適な場があるというだけさ」

「はぁ?」

 

 すると、彼がスマホの画面を切り替える。

 そこには。

 

「第1回、『西東京CHAOSトーナメント』。『CPX社 西東京支社』主催の超巨大大会だよ」

 

 

 

――我こそが最強だと思う者。

――覚悟と共に来たれ。

 

『西東京CHAOSトーナメント』

 

――栄光の初代王者の座は誰の手に。

 

 

【大会詳細】

 

・特別な参加資格は不要。

 

・参加希望者は…………

 

 

 

「ここで。この最高の舞台で、僕たちの長い闘いに決着をつけようじゃないか」

「へへっ。水貝にしては最高の提案するじゃねぇか。面白れぇ! 今日だけはナイスガイって呼んでやる!」

「あ、ちなみに。参加するには参加希望者と戦って、星を10個集める必要があるよ。勝ったら相手の星を全てゲット。一度でも負けた者は「最強」を名乗ることは出来ないナイスなルールさ。僕は既に8個集めた」

「……おい、ちょっと待て。その締め切りって?」

「明日だよ。当然、参加できなかったら不戦勝で僕の勝利だ。西東京最強の名は僕が頂く」

「やっぱお前はクソ野郎だ!!」

 

 

◆◆◆

 

 

「ちょっと2人とも! またCOバトルしてて遅刻したんでしょ! 何度言ったら分かるのよ!」

「うるせぇなぁ、幾美(いくみ)……お前は俺たちの母ちゃんかよ」

 

 教室に入れば既に朝のHRは終わっていた。

 そして、栗色髪のショートボブ少女が怒鳴ってくる。

 彼女は、俺と水貝の共通の幼馴染「花ヶ前(はながさき) 幾美(いくみ)」だ。

 

「この馬鹿はともかく、僕は人助けというナイスな事をしていたんだよ花ヶ前くん」

「あぁ!? 俺もそれに関わってただろうが!」

「その件はCOバトルで決着しただろう? 見苦しい事はよしたまえ。君はただのサボり遅刻さ」

「それはオカシイだろ!」

「あぁ、もう! つべこべ煩い! 問答無用よ! 2人ともソコに正座しなさい! 今日という今日は許さないんだから!」

 

 大体、コレが俺たちの日常。

 俺と水貝がしょうも無い事で競って、COバトルして遅刻。幾美に怒られる。

 いつもと変わらないけれど、大切な日々だった。

 ……大切な日々だったんだ。

 

 

◆◆◆

 

 

 掃除当番やら日直やらで遅くなってしまった。

 さっさと街に繰り出そう。大会参加資格の星を集めなければならない。

 そう思い、椅子から立ち上がり、カバンを手にしようとして――

 

「大変よ! 唯一!」

「どうしたんだ、幾美。血相を変えて」

「水貝くんが大変なの! 闇デッキの使い手と戦って、それで……!」

 

 ――持ちかけたカバンを床に落としてしまう。

 バサバサと教科書の散らばる音が嫌に耳へ響いた。

 

「嘘だろ……。アイツが、負けた……?」

 

 俺は忘れていた。

 大切なモノは失ってから気付くという、よく知っていた筈の事を。

 

 






当作品は、基本の流れは「TCGホビアニあるある(=王道)」を踏襲。
主人公(ティティム)は予測不能な動きをしていこうかと考えております。

今後とも当作品をお楽しみいただければ幸いです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。