9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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9-nine-発売されたのでテンションが上がって勢いで書きました。

1話目は軽くで4/17日までにしておこうかと思います。


Episode.Ⅰ Miyako Kujo
第1話:4/17


 

白巳津川(しろみつがわ)という街がある。

 

俗に言う学生の街であり、比較的飲食店などが駅前に多くみられ、学生たちの憩いの場となっている。街を代表する観光産業は特に無い。

 

しいて言うならばコーラなどで有名なコロナ飲料の本社がある位だ。それだけでも十分だと思うのだが、偉い人達はそれだけでは満足できず、観光地として有名になろうと、町興しをする。

 

輪廻転生のメビウスリングというアニメがあった。

 

さっき話した白巳津川に昔から残る伝承をモチーフにし構成されたアニメなのだが、設定や物語が難解過ぎる内容であるため作品としては失敗。しかし一部のアニメファンからは高く評価されるという謎のアニメである。

 

そして去年、この白巳津川で地域振興という目的でメビウスフェスが開かれた。が、地元住民から圧倒的不支持であったからか、春に合わせて無理矢理作られたからか定かでは無いが、結果は散々だった。地域振興としては完全に失敗として幕を閉じる。

 

アニメ放送から早二年、去年大敗したはずのメビウスフェスが再度開催となった。去年行っていないから比べられないが、そこまでの盛り上がりは見られないと思われる。一部のコアなファンだと思われる人はあちこちで確認できるがそれでも成功とは程遠かった。

 

それに追い打ちを掛けるかのように地震が起き、フェスが中止となる。余震の可能性があるため当然避難しなくてはいけない。つまり、今年は去年以上に失敗が決まったのである。

 

「ま。私には関係の無い事だけどね」

 

地震後、周りの人が会場地から去って行く中、携帯を耳に当てながら、とある人物を観察していた。対象の人物は、この街に1000年程歴史があると言われている白蛇九十九神社にある神器が破損した事で指を切ってしまったらしい。丁度妹である新海天、天ちゃんが絆創膏を持ってきたみたい。これなら無事にこの世界とむこう側のゲートは繋がり、アーティファクトがこちら側に流れたとみて良さそうだ。

 

「先輩も無事に世界の眼を取り込んだみたい」

 

少し離れた位置からその様子を観察し続ける。消毒液を塗り絆創膏を貼った後、この神社の巫女さんでもある成瀬沙月、成瀬先生と話し込んでいる。

 

「これは……少なくともラストスパートじゃ無さそうかなぁ……」

 

『どうじゃ?そろそろ判断が付きそうか?』

 

電話越しから年老いた男の声が話しかけてくる。

 

「あー、もう少し様子見するけど、多分何もないで終わると思う」

 

『分かった、他の者にはまだ警戒するようにと伝えておく』

 

「うん、ありがとね」

 

『なに、可愛い弟子のお願いじゃからな、儂にかかれば余裕よ』

 

電話越しから頼もしい声が返ってくる。その声を聞きながらも視線はずっと対象の人物に向けている。

 

暫く見ていたが、三人で会話をした後にお互いに背を向けて離れていく。解散したようだ。それを確認してから電話越しの相手に返事をする。

 

「ごめん、おじいちゃん、無しでお願い出来る?」

 

『了解じゃ、他のを解散させよう』

 

「うん、ごめんね?無駄足になっちゃって……」

 

『気にするな、必要な事だったのだろう?』

 

「うん…そう。あくまで今回は必要としなかっただけで、どこかで必ず必要になる」

 

『なら大丈夫。余計な気遣いは無用だ』

 

「ありがとう、お詫びに今夜ご飯食べにとかどうかな?私が奢るから」

 

『ほう、それは楽しみだな。場所はいつもの所か?』

 

「そのつもりだけど、他行きたいお店とかあったりする?」

 

『特に無いから大丈夫じゃな。ならまた後で連絡しておくれ』

 

「はーい。それじゃまた後でね」

 

通話を切り、先ほど新海翔、新海天が居た場所に向かう。

 

「ん-、どこかに捨てたごみ箱とか……」

 

血が出ていたので恐らくふき取ったりしたと思われる、目的はその血にある。周囲に見当たらない為神器が奉納されていた場所に侵入する。

 

「ワンチャン、落ちて無いかな……」

 

地面を注意深く観察していく。端から見たら完全にアウトな人に見えるだろう。関係者から見たら神器の破片が無いか探している様に見えるかもしれない。

 

「あ、落ちてるっ!」

 

どうやらそこそこ深く切ったのかもしれない。運よく目的の物が見つかった。

 

「乾燥しきって取れなくなる前に……!」

 

地面に付いている血を指で掬い口に運ぶ。一応鉄分要素があるので採取は出来たと考えて良いのだろうか……?

 

「……最初だし何か感じる訳でもないか」

 

こう……先輩の力が体を駆け巡る的な事も特に無く、只々口に血の味が微かにする程度だった。

 

「これがいつか活きる日が来ると良いのだけどね……」

 

現時点での私にはわからない事なので今は放置しておく。

 

外に出ると、少し離れた場所で避難誘導を頑張っている人が目に入る。

 

「あ、あのっ、まだ地震があるのかもしれないので避難を……!」

 

地震があったのに避難せずにコスプレの恰好をした女性にカメラを向けている人が何人かいる。私が今年から通っている白泉(はくせん)学園の1つ上の先輩で、行きつけのお店、『喫茶ナインボール』で働いている知り合いである。

 

「ですので……今は写真はご遠慮いただけると……」

 

避難誘導を聞いてくれない人達の扱いに困っている様に見える。見過ごすわけにも行かないので手伝いをするために近づく。

 

「はーい、すみませんが、非常事態なので係員の指示に従っていただけますかー?今日はもう終わりなので避難のご協力をお願いします」

 

「え、舞夜ちゃん……?」

 

私の存在に気づいた九條先輩がこっちを見て驚く。しかし、来たのが女性だからかまだ帰らない人が居る。こっちを見て余裕そうな顔で変わらずカメラを向けようとする。

 

「あの、すみませんが指示に従っていただけないでしょうか?余震が無いとは限りませんので」

 

帰らない人に近づき、圧を込めて声を掛ける。今までは周囲に向けて言っていた言葉が自分単体に向けて掛けられたからか、驚いたのちそそくさに去って行った。腹いせに取ったカメラ奪ってやろうか……。

 

「先輩、大丈夫ですか?」

 

「あ、うん……。ありがとね?」

 

「いえいえ、このくらい全然ですよ。困りますよね、ああいう輩は」

 

「あはは……、中々従ってくれないね」

 

「こっちが女の子と分かって調子に乗っているとしか思えないんですよねー。まぁいいや、それじゃ先輩お先にですっ」

 

「うん、お疲れ様」

 

九條先輩の手伝いを終え、一旦家に戻ろうと神社から出る。さっきの状況で新海先輩が帰ったとすると、先輩は避難誘導のヘルプをしなかった事になる。

 

「ってなると、この世界は一番最初ってことかぁ……」

 

この世界で一番最初の枝……つまりこのままだと九條先輩が石化で死ぬエンドが確定したというわけになる。

 

「あー、どうしよ」

 

ゲームでは4つある選択肢を正しく選ぶことにより、新海先輩とソフィーとの会話で魂を焼く炎のユーザーを間接的に殺した事実を知らずに済む。その一つでも選択肢を間違うと……。

 

「一応、頑張ってみようかな……?」

 

ここはゲームの世界では無くて、現実だ。それに二人だけでは難しくても、私が介入することで何か変化が起きてくれるかもしれない。まだ確定はしていないと思いたいだけかもしれないけど……。

 

頭を悩ませながら家に帰る。部屋に入り持っていた荷物を片付けてベッドに腰を下ろす。

 

「最悪、次の糧になってくれることを祈ろ」

 

横になりスマホで時間を確認する。昼飯にはもう遅すぎで、かと言って夜には少し早い。

 

「先輩は何時頃に出るんだっけ」

 

背景は夜だったし、夕食辺りで良いのだろうか?まぁ扉の音で判断すればいいか。

 

私が住むマンションはこの世界の主人公でもある新海先輩が住んでいる建物と同じ、しかも部屋が3つ隣という距離的にも優れている位置だ。目的は勿論近くに居た方が動きやすいという単純な理由である。元々住んでいた方にはお金の力で退いて貰った。貯金は減ったが、必要な出費だったので気にしないでおく。

 

夜まで時間を潰そうとしていると部屋の前を人が通り過ぎる気配がした。

 

玄関に近づき耳を向けると、扉の閉まる音がする。距離的に先輩で間違い無い、断言できる。ベランダ側から外を見ると夕日でオレンジ色になっていた。どうやら天ちゃんを見送って今帰って来たところらしい。兄弟仲が大変よろしい様で何よりです。

 

先輩の部屋の動向を気にしながら、時間が過ぎるのを待った。

 

 

カランと鳴る音を聞きながら、お店に入る。

 

夜になり、おじいちゃんと合流してからナインボールへと来た。店内には数組が居るくらいで忙しくは無さそうだった。

 

奥の席に新海先輩がいる事を確認してから、一番離れた席に座った。

 

「なに食べる?」

 

「舞夜の方は今日どれ食べるか決まっておるのか?」

 

「ん-、そうだな……ハンバーグ辺りにしておこうかな」

 

「ならわしは麺類辺りにでもしようかの」

 

各々決まり店員を呼ぶ。

 

「待たせしました、お伺いします」

 

「えっと、ハンバーグセットをライスで、とナポリタン一つをお願いします」

 

注文を済ませたが、九條先輩は厨房へと戻らずに申し訳なさそうな顔でこっちに話しかける。

 

「ごめんね、舞夜ちゃん。少しだけ良い?」

 

「ん?どうかしましたか?」

 

「えっと、このアクセサリーなんだけど、見覚え無いかな……?」

 

先輩がテーブルに置いたのは、銀色の髪飾りだった。

 

「これですか?」

 

「うん、たぶん髪飾り……だと思う。神社に落ちていたから落とし主を探していたのだけど……中々見つからなくて」

 

手に取って眺める。

 

綺麗な装飾が施された桜の花弁と思われる形をした髪飾り。

 

これがアーティファクトだとは知らないと誰も思わないだろうなぁ……。実物を見たが、綺麗なアクセサリーくらいの感想しかない。

 

「うーん、ごめんなさい、見覚え無いです」

 

持っていたのをテーブルの置き、先輩へ差し出す。

 

「ううん、ありがとう。わざわざごめんね?もし誰かが落としたとかの話があったら私までお願い。それまでは一旦預かっておこうかなって」

 

「分かりました」

 

要件が済み、此方に一礼してから厨房へ戻っていく。

 

「舞夜、もしかしてあれが……?」

 

おじいちゃんが、小声でこちらに話しかけてくる。

 

「うん、あれが前に話した神器と同じ物……アーティファクトだよ」

 

「つまり持ち主は九條の孫で間違い無いのだな?」

 

「私の記憶にある知識と同じだからまず間違いないね」

 

「つまり、これでお前の言っていた事が本当という事だな……」

 

「信憑性でてきた?」

 

「疑っていた訳では無いが、現実味を肌に感じて来たというべきか……これで九重の念願が叶う可能性が出て来たというわけか……」

 

感心するように頷いている年寄りの名前は九重宗一郎(ここのえ そういちろう)。この街に昔からある武の名家九重家の第114代目当主であり、私を拾ってくれた恩人でもある。その歴史はなんと、この街一番の歴史があると言われている白蛇九十九神社と同じ位古い歴史を持つと言われている。

 

1000年近く続いているがその目的は、ーーー神を討つ事。表面的には護身術と語ってるので一般的には知られていないが、認められた者のみその話を聞かされる。

 

私もその一人であるが……その神って、絶対イーリスの事だよなぁと確信持てるくらいには証拠が多かった。つまり昔から打倒イーリスを掲げて鍛えていたらしい。しかし1000年たっても現れない、そりゃ門を閉じているから現れる訳がない。それでも神を倒すために鍛え続けた。おじいちゃんの一つ前で武を極め、限界を知ったと言われていたが、今代である九重宗一郎がそれを塗り替えた。つまりおじいちゃんは歴代最高と言われている、なんか鼻が高い。

 

それだけでは飽き足らず、様々な方法で強さを求め、たまたま立ち寄った場所で私を見つけ拾ったみたい。何故私を拾ったか今でもよくわからないが、おじいちゃん曰く、何かビビッと来るのがあったということだ。

 

しかし、結果的にそれが大正解となった。なんせこの世界の原作持ちの人間を拾ったからだ。拾われた私は厳しい……というには生易しい修行を耐え、ある日この世界の事を話した。

 

最初は疑いながら聞いていたが、イーリスやアーティファクトの話をした辺りから難しい顔をして真剣に聞いてくれるようになった。後で聞くと、歴代の当主と側近の人しか知らない話があったみたい。

 

そんなこんなで今日、話していた地震が起き、フェスは中止となった。自然災害を昔から言い当てるとなれば多少は信じざるをえないからね。

 

「あ、でも、手出し駄目だからね?あくまでこれはアーティファクトユーザーである人達の戦いなんだから」

 

「分かっておる。手伝いをしても直接的には手出しはせん」

 

「安心して?ちゃんと私がおじいちゃんの念願を達成して見せるから」

 

「舞夜も持ち主ではないだろうに……」

 

「私はほら、現代の人だし?関わってもそこまで違和感ないかなっと……」

 

「まぁ、その為にわしの技を引き継がせたからの」

 

「使う機会あるか分からないけどね……無い方がいいけど」

 

おじいちゃんと雑談をしていると、此方に向かってくる気配がしてそちらを見る。

 

「お待たせしました。ハンバーグセットとナポリタンになります」

 

ウェイトレス姿の九條先輩がテーブルに料理を並べていく。

 

「いつ見ても美味しそうですねー、肉汁凄いですよ」

 

「ふふ、ありがとね。それじゃあゆっくりしていってね」

 

九條先輩が立ち去り、目の前の料理に向かい合う。

 

「それじゃいただきます」

 

あつあつのハンバーグを口に運び、ご飯を食べる。

 

「あ、やばい美味しすぎる。特にソースが合い過ぎるよこれ」

 

「食べるたびに毎回良い反応をするのぅ……作る側からしたら嬉しい客じゃな」

 

「ほんとに美味しいからねっ、これでワンコインだなんて神だよ。毎日でも通いたいくらい」

 

わいわいと話しながらも奥の席にいる先輩から意識は外さずに食べていく。少しすると食べ終わった先輩が会計を済ませ店を出ていく。ビーフカツレツかぁ……今度たべてみよっと。

 

その後は何事もなく夕食を終え会計をする。

 

「九條先輩、ごちそうさまでしたー!今日も美味しかったです」

 

「わしからもあやつに旨かったと伝えておいてくれ」

 

「了解です、いつもお店に来てくれてありがとね」

 

「安くておいしいのですから当然ですよ」

 

九條先輩のありがとうございました~の声を背に店を出る。冬も終わり少しずつ暖かくなってきている。

 

「それにしても、いつもハンバーグを食べている気がするのだが、よく飽きずにいるのだな」

 

「んー、そうかな。一番肉が食べ慣れているからってのがあるのかも……?」

 

「食後にそんな話を出すのではない」

 

「えーっ、聞いたのはおじいちゃんじゃない!」

 

 

 

 

おじいちゃんに迎えが来たので途中で別れ、部屋に帰宅する。

 

「洗い物に……っと」

 

外食したので、匂いが気になり全部洗濯物に出す。シャワーを浴びてから部屋に戻る。

 

「明日から学校だなぁ……」

 

嫌いではないが、長時間意味のない時間を過ごすのは忍耐が持たない。唯一の救いは休み時間と昼食である。

 

「さてと、明日着る制服はおっけい、荷物も問題無し……」

 

明日の準備を終え、ベットに座る。

 

「ん……?なにこれ?」

 

視線を向けた先、テーブルの上には見覚えのない物があった。さっきまではなかったはず。

 

「イヤリング……?」

 

何だろうと何気なく手に取ろうとして止まる。

 

「え、これって……、もしかして……?」

 

見た目は銀色をしているが所々に綺麗な意匠が施されている。似た雰囲気のアクセサリーを最近見たような……。

 

「アーティファクト……?」

 

手を引っ込めて考える。もしこれがアーティファクトなら、私も向こう側の世界から流れて来たアーティファクトに選ばれたという事になるが……。

 

「………えいっ」

 

埒が明かないので思い切って手に取る。その瞬間頭の中に変な情報が流れ込んでくる。

 

「………」

 

終わった後も暫く呆然としていた。

 

「……あはは、なるほどね……本物ってことかぁ……」

 

手に取ったイヤリングはをまじまじと見る。これは、どうやら……間違いは無さそうだ。

 





主人公が女の子視点の物語で進めていきます。年齢は新海天と同じ歳で、白巳津川住みで原作主人公である新海翔と同じマンションに意図的に住み着きました。割と変態です。

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