9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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ヒロインたちとのやり取りからどうぞ。




第7話:枝の記憶

 

 

「今日は集まってくれてありがとう」

 

部屋の中でそれぞれ座っている皆を見て話を切り出す。

 

学校が終わり、外がオレンジ色に染まり始めていた頃、今後の事で一度皆で話がしたいと言って部屋まで来て貰った。

 

「みんなって言ってたけどさ、舞夜ちゃんが居ないから全員じゃなくね?」

 

俺のベッドを陣取っている天が不思議そうに聞いてくる。

 

「いや、これで全員だ」

 

「彼女をここに呼んでいないのは、四人だけの問題?」

 

持参の漫画を読んでいる希亜が視線だけを向けて確認する。その隣で先輩が漫画を覗いていた。

 

「あー……それも関係はしているのはしている。今から詳しく話すよ」

 

「また、何かあったのかな」

 

希亜が持って来ている漫画の一巻を試し読みしていた都が、読んでいた漫画を閉じて姿勢を正しこちらを向く。それにつられ二人も漫画を閉じて俺へ体を向ける。

 

「まずは……そうだな。以前にも軽く言ってたけど、もう一度最初から話しておくよ」

 

自分の情報整理も含めて最初から話し始める。

 

「今の俺は、他の枝の記憶……それもイーリスを倒した後の枝の記憶を持っているのは話してると思う」

 

「ええ」

 

「あたしたちが持っている記憶より後のやつだよね?」

 

「そうなるな。ソフィからお願いで俺たちのその後を見届ける為に引き続き枝の観測をしていたらしい」

 

「その全部が、終わった後に……こちらの枝に来ているってことですよね?」

 

「はい、俺が作りだした枝の観測は全て完了したそうです」

 

「だけど、まだやり残したことがある……そういうこと?」

 

「ああ」

 

俺の返事に、それぞれが九重がここに居ない理由を察する。

 

「え、何?最後は舞夜ちゃん関連なの?」

 

「気になると言われれば……確かに気になりますよね。九重さん、凄く強いですし……」

 

「それ分かりますっ、あの体のどこにあんな動きが出来てるのは不思議ですよね~」

 

「それもあるっちゃある……が、それだけじゃない」

 

「……わざわざこの世界線に飛んできた理由があるようね」

 

「こっからは念のためメッセージでやり取りしよう。ちょっと待ってくれ……」

 

スマホを開き、グループを作って四人を誘う。

 

「グループで?普通に話せばいいじゃん」

 

「あまり、聞かれたくないからな。念には念を入れたい」

 

流石に無いとは思うが、九重がこの部屋の会話を聞いている可能性も考慮しておきたい。

 

「なんだか……イーリスと戦う前日、みたいですね」

 

「そんなこともありましたねぇ……あの時のみゃーこ先輩の手料理美味かったなぁ」

 

「ふふ、ありがと。また機会があったら作ろっか?」

 

「おなしゃすっ!」

 

天と都のやり取りを聞きながら画面に視線を落とす。

 

『皆入ったな?』

 

『はいりやした~』

 

『入ったよー』

 

『入りました』

 

三人は返事をし、希亜がスタンプで返信をする。

 

『多分、色々と驚くかもしれんが、取りあえず最後まで聞いて欲しい』

 

顔を上げて確認すると、皆が頷き返す。

 

それを見て、この枝の俺に記憶が引き継がれた理由を話した。

 

 

 

 

 

『それじゃあ何さ、舞夜ちゃんはフェスの日からアーティファクトや私たちの事を知っていたって言いたいの?』

 

『本当かはまだ分からん。けど、俺もその可能性は充分にあるって……感じている』

 

『詳しく聞かせて』

 

『その前に、都と天に聞いておきたいんだが、どんな経緯で九重と知り合ったんだ?』

 

『確か、何かのパーティーで初めて顔合わせをしたはずだよ。近い歳の知り合いを作るためにって聞いてたけど……。それから、そういった機会にはよくお喋りしてたくらいかな?』

 

『ナインボールには?』

 

『私がバイトを始めて少し経ってから見かけるようになった……かも?』

 

『天はどうだ?』

 

『あたしはー……教室で向こうから話しかけられたのが最初だね。席が一個後ろだったからさ』

 

『私と春風はフェスの後ね』

 

『そうですね。ナインボールや神社が主でしょうか……?』

 

『ナインボール?』

 

『もう一人の私が翔さんを誘惑した時です』

 

『……ああ、あの時。確かに九重が後ろから声を掛けて来ましたね』

 

……言われてみれば、あの時は九重に両肩を叩かれたおかげで気を持ち直したな……。

 

『思い返してみれば、九重が俺の肩を叩いて声を掛けてくれたおかげで持ち直せた気がしますね……』

 

『偶然かしら?』

 

偶然……にしてはタイミングが良すぎる。その後もすんなりと引き下がっていたし……。

 

「……あっ」

 

考えていると、天が何かを思い出したかのように声を上げる。

 

『何か分かったのか?』

 

『いや、春風先輩が神社って言ってたので思い出したのですが、あたしってあの日、ユーザーを探す為にアーティファクトを使って探りを入れてたと思いますが……』

 

ゴーストにバレた時のやつか。合流した時に既に九重も居たのは居たな。

 

『あたし、神社に行くって話したのにぃにとみゃーこ先輩しかいないはずだったのに、舞夜ちゃんも神社に来てたんだよね。しかも能力使っていたのにあっさり見つかったしさー』

 

『その後、ゴーストに見つかったんだよな?』

 

『だね。さっきの話を聞いて考えると、なんであの場所に来たんだろって思ってさ』

 

言われてみれば、あの場に九重が居た理由を聞きそびれていたな。希亜も含めて同時に複数のユーザーを見つけた事でそっちに考えが回っていた。

 

『天ちゃんの場所を知ってたってことかな?』

 

『ええー……何故に?』

 

それについては、九重が天に監視を付けていたとか何とでも言えるな。実際、九重ならそれが可能だ。

 

ま、そうなるとどうして天に監視を付けていたのかが不明になるけど。

 

『因みに、翔は舞夜と最初に会ったのはいつ頃?』

 

『確か、フェスの次の日に都をナインボールまで送る道中だったな。反対側から九重が歩いて来たのにバッタリって感じだ』

 

『反対側から?なんで?』

 

『分からん。普通に考えるなら学校に忘れ物したとかだと思うけど』

 

『けど、どの枝でも私たちと一緒にナインボール行ってるね』

 

都の枝ではアーティファクトを九重に見せたから参考人としてついでに連れて行った。希亜の枝では半ば強引だったけど……。

 

『ぶっちゃけた話、直接舞夜ちゃんに聞くのはNGなん?』

 

それが一番手っ取り早いのは分かる。

 

『彼女がそれらを話さないって事は、私達に秘密にしたいということ』

 

「ですよねー。なんか……こうやってコソコソしてるのって罪悪感が湧いてくる……」

 

『それは全員同じ。けど、それでもこうしてるのは翔なりに考えがあるのだと思うから』

 

『んで、そのにぃにの根拠はなんなのさ?』

 

『さっきの説明でも言ったが、地震があったフェスの日。あの時点で既にアーティファクトとの契約を解除する方法を知っていたってのがある』

 

『ソフィが知らない別の方法があって、たまたまできたんじゃない?』

 

『いや、この枝でイーリスがそのことを九重に言及してた場面をソフィが聞いている。アーティファクトとの契約が一度解除されたのは確実らしい』

 

『それに、九重がアンブロシアで仮死状態にして契約を解除することを知っている様な会話があったみたいだ』

 

『ソフィが気になっているのは、どうしてそれらを知っていたか……。そう言うこと?』

 

『みたいだな。……正直、そのことについてどう動こうか迷ってる。調べるべきか、このままでいるか……』

 

『皆は、どう思う?』

 

 

 

 

 

 

 

「ハットリさんが手に入れた情報では、あの建物だね」

 

白巳津川と隣の市の境、それも街中ではなく田舎寄りの人目に付きにくい場所にその建物はあった。

 

潜入しているハットリさんから送られてきた情報によると、今この瞬間、取引が行われているらしい。

 

「……ここからじゃしっかりとは見えないなぁ」

 

車が複数止まり、建物の電気も点いている。見張りと思われる人が入口で立っているのは確認出来た。

 

「只の倉庫ってなっているみたいだけど……ま、嘘だよね」

 

建物に近づいてざっと周囲から中を観察してみたけど、中に居ても10人程度だと思われる。

 

「退路は二ヶ所……そこを塞いでおかないと」

 

今回持って来ている銃を手に持ち、動き始めることにした。

 

まずは正面に立っている二人に気づかれない位置まで近づき、一気に距離を詰め、二人に能力をかける。

 

「―――ッ!?」

 

こちらに一切気づかないまま能力にかかったので、発砲音が聞こえない様に建物への音を遮断してから銃で顔面を数発撃ち抜く。

 

能力を解除し、その場に崩れ落ちる。弾を入れ替えてから建物を見る。

 

「次は中だね」

 

向こうに気付かれない様に中の様子を窺う。

 

「……いるねいるね」

 

倉庫内では、沢山の物資と思われる物が積まれており、何も置かれていない空けた場所で何やら話しているのが見える。

 

「今回はアタリっぽいね。良きかな良きかな」

 

入口に戻り、そのままドアを開けて中へ入る。

 

ドアが開いた音を聞いて、数人がこちらを向く。

 

「誰だっ!!」

 

仲間では無いと知り、即座に数人が銃を構える。

 

「どうも、一族の者です」

 

私の姿を見て、奥側に居た一人が目を見開く。うわ、関係者が居る感じかぁ……。多分一ノ瀬家の人かもね。

 

「どこの人間か知らんが、ここを知られたからには死んでもらうしかないな」

 

関係者と取引相手をしていたリーダー格っぽい男がこちらに銃を向ける。が、奥側の人はその場から撤退を始め、裏口のドアから逃げようとする。

 

「っ!?開かない……っ!?」

 

既に建物は能力を使っているので、ちっとやそっとじゃ開きませんよ。

 

「殺せ」

 

取引相手の逃げる様に異変を感じたのか、命令を下す。

 

何人かが銃を撃つが、発射された銃弾は届かず、目の前で静止する。

 

「……は?」

 

何が起きているのか理解出来ず、声を出す。

 

「このくらい撃たせれば、大丈夫かな?」

 

銃弾の正面から横に逸れてから能力を解き、今度は私の方から正面の人達に向けて全弾打ち尽くす。

 

「―――くっ!」

 

数人が咄嗟に横に避けたが、それ以外はその場に倒れ、血の海を作り始める。

 

「くそっ!!殺せっ!」

 

遮蔽物に隠れた数人がこちらに向けて撃ってくるが、それらを避けたり能力で止めたりして生きている残りを処理する。

 

「……ふぅ、さてと」

 

一番奥で恐れるような目で私を睨む男を見る。

 

「な、なんで……この場所が……っ」

 

「抵抗せず知っている情報を差し出してくれるのなら、楽に殺してあげますが……どうしますか?」

 

無駄だと分かっているけど、一応聞いてみる。

 

「くそっ……!!くそがぁっ!!」

 

自棄になったのか、力を使って私に攻撃を仕掛けてくる。その一撃を避け、その場で固定する。

 

「―――ッ!?―――!!」

 

「……この際、貴方には防御創が無い状態で死んでもらった方が信憑性が増しそうですね」

 

男の頭に一発だけ撃ちこみ、入口近くまで運んでから落とす。

 

「んー……こんなもんかな?」

 

倉庫内を見渡してから一息吐く。

 

「明日も学校があるし、さっさと帰らないとね」

 

新海先輩の方は皆とちゃんと話せたのだろうか?上手く纏まっていると良いけどねぇ。

 

能力を解き、周囲に人の気配が無いことを確認してからその場を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたもんかね……」

 

皆と話した結果、やっぱりと言うか、予想はしていたけど全員が無理に暴くのに対して反対という結論になった。特に天からは強い意志を感じた。

 

「まぁ……当然か」

 

九重が天にしたことを考えれば、知っているからなんだって話だもんな。

 

そこでその話は終わりになり、続けて次の話へと移った。

 

そっちの方は皆も賛成という事で、少し頻度を落とすことになった。

 

「………」

 

反対されると思って、皆には伏せていたが……ソフィが言っていた可能性。

 

『未来が視える……とかかしら?』

 

俗に言う超能力。未来視とかいうやつだろう。

 

人が聞けば馬鹿馬鹿しいと鼻で笑って聞き流すだろう。アーティファクトを知っている俺でも普通はそう思う。

 

「けどなぁ……」

 

少し、引っかかる言葉を思い出す。

 

「巫女……ねぇ」

 

希亜と一緒に九重の実家に行った時に女性の人が呟いた台詞。聞いた時は沙月ちゃんみたいな神社の巫女を想像していたけど、もしかすると……。

 

試しにネットで調べてみる。

 

「……まんまだな」

 

想像通りの情報を見つけ、そのまま読み進めていく。

 

「へぇ……昔は今より凄かったのか」

 

・巫女とは、古来は神に仕える女性を指し、神子(みこ)と呼ばれていた。

 

・日本舞踊の起源とも言われている神に奉納する歌舞、神楽舞を踊る人。

 

「神ねぇ」

 

俺達で言うソフィなのだろうか?

 

・神意をうかがい、神託を告げる者。神凪ともいわれる。

 

「……神託」

 

お告げってことだろう。

 

「巫女……神託……未来視……」

 

流石に考え過ぎか……。

 

「……けど」

 

俺が与一に負け、皆を失ったあの枝で、どうして九重は生きていた?

 

全部を終わらせる為に俺が動き出したあのタイミングであの場に居た?

 

その時に聞いた言葉も気になる。

 

『おや、遂にこの日が来てしまいましたか』

 

この日……これが何を指しているのか。

 

それだけじゃない。

 

『この、クソみたいな運命を変えるために、ですよ』

 

クソみたいな運命。それはこの先俺が何をしようとしていたのか知っている口ぶりだった。

 

他の枝での行動や言動も、察しが良いと思っていたが……。

 

「……はぁ、ドツボに嵌まりそうだなぁ」

 

考えれば考える程、そうとしか思えなくなる。この枝の行動も最初から疑問ではあった。

 

神社での異様な行動の速さ、その後の対応。九重の実家の協力もそうだ。

 

「やっぱり、そういうことなのか……?」

 

……一度、ソフィに相談してみるか?

 

「いや、止めとくか」

 

今回の件は別のソフィからの依頼とは言え、アーティファクト関係無いしな。

 

「……てか、そっちの方もそろそろ始めておかないと」

 

アーティファクトの回収も進めて行きたいし、今度予定でも立てとくか。

 

 





取引相手側の仲間割れで襲撃……に見えるといいなぁ。

-豆知識-
主人公はエイム力はそこまで高くは無い。しかも左手なので乱射。

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