9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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アーティファクトの回収と、お昼ご飯を……ええ。




第8話:昔の方が美味しく感じたのは……これが思い出補正というやつなのでしょうか……?

 

 

「んじゃ、そろそろ行くか」

 

「了解です。サクッと終わらせてしまいましょう!」

 

昼も近づいて来た頃、先輩と二人でマンションから出る。

 

休日の今日、私は新海先輩と出掛けていた。

 

 

 

 

「アーティファクトの回収を……私と、ですか?」

 

明後日の休日に、アーティファクトの回収をしたいと新海先輩からお願いが来た。

 

「そうなるが……時間、空いてそうか?」

 

「その時間帯でしたら問題はありませんが……他の皆さんは?」

 

「なんか、タイミング悪く四人とも合わないらしい」

 

「それはまた何とも……」

 

「別の日にしようとも考えたけど、九重が来てくれるなら安全と思ってな」

 

四人とも予定が合わないとは……これまた珍しいですね。他の枝ではこのようなことは無かったけど、やっぱり特殊な枝ということなんでしょうか?

 

「先輩としても、さっさと終わらせておきたい事ですしね」

 

「ああ。急ぐ必要は無いが、放って置くのも違うしな。俺の事情も少し落ち着いたからここらで進めておきたい」

 

「アーティファクトの場所は分かっているのですか?」

 

「それについては大丈夫だ。探知のアーティファクトを他の枝の俺が手に入れているから大体の場所は把握しているし、既に実績もある」

 

ふむふむ、既に探知のアーティファクトによる正しい認識はしているはずですし、他の枝で回収した記憶があるのでしたら問題は無さそうですね。一応、保険として私を同行させたい……くらいなのでしょう。

 

「それでしたら大丈夫ですね。万が一、他の枝と違って何か起きても私と先輩が居れば大抵の事は解決出来ると思いますし……」

 

「頼めるか?」

 

「それはもう、喜んでお供させてもらいますともっ」

 

「ありがとな」

 

「同じ仲間ですから当然のことです。あ、因みになのですが……帰るのは何時頃になりそうですか?可能なら、夜……21時までには家に戻っておきたくて……」

 

その日の夜は街はずれで色々とお掃除あるのであまり遅くまでとはならないと良いけど……。

 

「流石にそこまでには戻って来てるから安心してくれ。遅くとも夕方には帰ってるはずだ。……けど、一応早めに出掛けておくか?」

 

「んー……ですね。昼前に出発とかどうでしょう?」

 

「俺は全然平気。そっちに合わせる」

 

「では、昼前……11時過ぎにはメッセージを送りますので、準備をしててくださいね?」

 

 

 

とまぁ、こんな感じでアーティファクトの回収に来ている。

 

「まずはどちらに向かいますか?」

 

隣を歩いている先輩を見上げながら聞いてみる。

 

「取り敢えずは、電車で三駅隣の場所に向かうつもりだ」

 

「なるなる。今回のお相手は?」

 

「他の枝と同じなら……俺と同じ歳の女子だな」

 

「ほう、女性ですか」

 

「危険な物って説明したら嫌そうな顔をしつつもしぶしぶ手放してくれたし、割かし簡単な方だった」

 

「一応、破棄したのですね」

 

私が知っているのは九條先輩の枝の後日談に出て来た女性と、香坂先輩の枝のパーティーの女性程度ですが、話に出なかっただけで他にもあったという事なのでしょう。

 

「因みに、アンブロシアはお持ちで?」

 

「ちゃんと持って来ているから安心してくれ」

 

「交渉の方は……新海先輩がしますか?」

 

「まぁ……そうなるな。他では大体都に任せていたけど……何とかなるだろ」

 

「……私がしましょうか?初対面の男性とのお話はどうしても身構えてしまいますし、同性の私が交渉した方が警戒心は下がると思いますし」

 

「確かにそれはあるが……」

 

「楽に事を進めることが出来るのでしたら、そっちにした方が良いですし私は全然構いませんよ?」

 

「……任せても良いか?」

 

「はい、お任せください。となると、先輩が知っている範囲で良いので、他の枝の時の状況やその人の印象や性格とか教えてもらっても良いですか?先輩と同じ年齢の人ですよね?」

 

「ああ……と言っても大した情報はないぞ?」

 

「それで大丈夫です。傾向を知れるだけで充分ですので」

 

「交渉時に役に立つと……?」

 

「どうでしょう?話を進める際に使えれば良いなーって感じです」

 

口の端を持ち上げ、ニヤリと笑う。

 

「ま、気休め程度に考えていてくださいな、ふふ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、結構すんなりと行けましたね!」

 

無事何事もなくアンブロシアを飲んだのを確認し、俺たちは家から出た。

 

目的の家から出て、九重は座っていた体をほぐす様に腕を伸ばす。

 

「少し相手が可哀想な気がしなくも無いけどなぁ……」

 

「向こうから望んで破棄すると言ってくれたので何も問題はありませんって」

 

後ろを振り返り、さっきまでの出来事を思い返す。

 

話し合いは想像以上にスムーズに進んだ。まず九重は相手の母親の警戒心を解いた。

 

始めに道中で買った手土産の袋を渡し、今まで見た事無いような対応……近いのは、都みたいな上品な動きと言えば良いのかもしれない。

 

振る舞いや話し方一つ一つが風格……良い所のお嬢様って感じだった。

 

その後、母親を除いて目的の相手との交渉に移ったが、こちらも問題無く終えた。説明時に若干誇張した話で脅し気味ではあったが……。

 

「それにしても、九重ってあんな感じにも話せるんだな」

 

「あんな感じにと言いますと……?」

 

「さっきの母親との対応」

 

「それですか。一応、これでも実家は良いとこですし多少は修めてますよ?」

 

「そう言われると確かにそうなんだが、少し意外だったと思ってさ」

 

「ま、今の私にでしたらこのくらい朝飯前ですよ。どうですか?私の印象変わりましたか?尊敬の念が湧きましたか?」

 

ふふん、とドヤ顔で俺を見てくる。

 

「今の顔で湧かなくなったわ」

 

「ひどいっ!?こんな可愛らしい乙女の顔を見て……!」

 

驚いた表情と共に、よよよ……と泣いた振りをしている。

 

「はいはい、わかったわかった」

 

「うわー……そんな適当な対応をしていると、彼女さん達に嫌われますよ?」

 

「他にはしてないから安心し……いや、天にはしてるな」

 

「まぁ、天ちゃんとはそれがデフォルト運転ですし」

 

「それもそうだな」

 

「ですが、毎回同じ様にあしらってると、愛想を尽かされるかもしれませんよぉ~?」

 

口に手を当て、ニヤニヤと揶揄うように笑う。

 

「あいつが変なことを言わなければ俺としても普通に接する。つまり俺は悪くない」

 

「ありゃま。ま、天ちゃんなりのコミュニケーションですし、嫌がらず付き合って下さいね」

 

「向こう次第としか言えないな」

 

「と、言いつつも、なんやかんやで相手をする新海先輩なのであった……完」

 

しんみりとした表情を浮かべながら話す。

 

「勝手にナレーションを付け足すな」

 

「いやー!愛されてますなぁ!良きお兄ちゃんですねっ」

 

「んなことねーよ」

 

「では、愛しておられないと……?」

 

「………」

 

厄介な問いかけに口を閉じる。

 

「ふふふ、冗談です。今のは意地悪な質問でしたね。ツンデレな先輩には」

 

「誰がツンデレだ」

 

「さぁ?誰でしょうね……ふふ」

 

俺を揶揄いながらも楽しそうに笑う。

 

「それよりっ、この後どうする?」

 

九重の余裕のある態度に、少し調子が狂う感じがしたので話題を変える。

 

「んー……そうですねぇ。このまま解散は寂しいですし……、先輩が良ければ昼食とかどうですか?昼は少し過ぎてますけど」

 

「乗った」

 

九重の提案に快く乗る。丁度腹も減って来たしな。

 

「おっ、勢い良いですね。何か食べたい物とかありますか?和食とか洋食とか中華とか」

 

「これを食いたいってのは特には無いが……そっちは?」

 

「私ですか?んー特には無いですが……あ、いえ、あるっちゃありますね」

 

「何が食べたいんだ?」

 

「一応、中華になりますねっ。昔一度連れて行って貰った事があって……」

 

「中華か……普段あまりお店とか行かないしありだな。どこら辺?」

 

「帰る途中の駅で降りて……大体徒歩10分内のお店です」

 

「場所も近いし、それで決まりだな」

 

「了解です、では、案内しますね?」

 

「頼んだ。事前に予約とかしておいた方が良いのか?」

 

「あー……どうでしょう?多分大丈夫だとは思いますが、一応私の方で確認はしてみます」

 

そう言って駅へ向かいつつ、スマホを触る。

 

中華か……定番と言えば麻婆豆腐とチャーハンとかか?後は春巻きとか餃子、杏仁豆腐。

 

パッと思いついた食べ物を並べていく。

 

……考えていると、中華を食べる口になって来たな。

 

「先輩、お店の方は大丈夫でした」

 

何を食べようかと考えていると、九重が大丈夫だったと伝えて来た。

 

「サンキュー、これで安心だな。因みにそのお店ってどんなのがあるんだ?」

 

「えっと……大抵の料理でしたらあると思いますよ?前回私が食べたのは麻婆豆腐と肉と野菜の炒め物でしたが、ちょっと待って下さいね」

 

再びスマホを取り出す。

 

「他にもピータン?とか、ふかひれもありますね。あ、焼きそばとかもあるみたいです」

 

「料理名を聞いてると、腹減って来るな……」

 

「激しく同意です」

 

スマホをポケットに入れながらうんうんと頷く。

 

「私もお腹空いて来たので、急ぎましょう!」

 

楽しみにした顔で俺の前を歩く。

 

今日は俺に付き合ってもらったし、昼飯くらいなら奢っておこうかな……。

 

そんな事を考えつつ、九重の後を歩いた。

 

 

 

 

「先輩は何食べます?」

 

店員に案内され奥のソファー席に座ると、先に飲み物を注文し、テーブルに置かれていたメニュー表を俺に向けて広げてくる。

 

「あ、ああ……何にするか……」

 

九重の質問に、詰まるように返事をする。

 

今の俺は、来る前に奢ろうとか軽く考えていた自分を殴りたい気分だった……。

 

昼飯だしとあまり深く考えていなかったが、よくよく考えれば九重が勧めて来た店だった。

 

店内の装飾や雰囲気からして、決して安っぽいお店では無いと容易に想像が出来る。

 

今までの事を考えればもっと簡単に思いついたのに……俺は馬鹿か。

 

「新海先輩?」

 

一人で後悔していると、不思議そうに首を傾げて俺を見ていた。

 

「あ、いや……思ってたより高そうな店だと思ってさ、心配になった。財布的に……さ」

 

「心配ご無用です。食べ放題ですし、支払いの方は既に私が済ませております」

 

「食べ放題……なのか?」

 

「すみません、言ってなかったですね。なので料理の値段を気にする必要はありませんよ?」

 

「幾らだったんだ?出すよ」

 

「いえいえ、それには及びません。誘ったのは私ですし」

 

「そう言うわけには行かないだろ」

 

「いえっ!私の個人的な都合で出させて欲しいんです!」

 

「個人的な都合……?」

 

俺に奢る事が……か?

 

「まぁ……なんと言いますか、自分の成長的な物の確認と言いますか、自己肯定と言いますか……」

 

言葉が見つからないのか、恥ずかしそうに目を逸らしながら自分の髪の毛をくるくると弄る。

 

「自分の成長……?」

 

「さ、先に頼んでからで良いですか?食べながら話しましょうっ」

 

聞かれるのが恥ずかしいのか、若干あたふたした動きでメニュー表を見せてくる。

 

「ささっ、新海先輩は何を食べますかっ!」

 

若干誤魔化されているけど……聞くのは後でも大丈夫か。お金の方も……足りなかったら最悪何回かに分けて何とかしよう。少しダサいけど。

 

「そうだなぁ……折角だし色々と食べたい気持ちはあるけど、定番は外せないな」

 

ここまで来たら楽しまないと損だし、値段の事は一旦忘れよう。

 

「麻婆豆腐とか行きます?他にも小籠包とか春巻きもありますし……あ、この炒め物すっごく美味しかったですよ?」

 

「そっちは何頼むんだ?」

 

「私は……今回はこのXO醬?ってのにします。なんて読むんでしょう……?」

 

九重が指したのは前回食べたオイスターの方では無くその隣だった。

 

「じゃあ折角だし俺は九重の一押しを食べるか。あと餃子も」

 

「了解ですです、餃子は……水餃子と羽根つきとかですね」

 

「取り敢えず普通ので」

 

「はーい、私は小籠包でも食べてみましょうか。あ、あと麻婆豆腐ですね」

 

「そんなに頼んで平気か?」

 

「まぁ、大丈夫でしょう。先輩もいる事ですし!」

 

「自分の食べれる範囲でな?」

 

飲み物が届き、そのついでに注文を済ませる。

 

「では、無事回収も済んだことに、乾杯しましょう。お疲れ様ですっ」

 

「おう、そっちもお疲れ」

 

軽くグラスを鳴らし、一口飲む。

 

「働いた後の一杯は格別ですねぇ~。このために生きているって感じがします!」

 

「おっさんか」

 

「少なくとも体はうら若き乙女です」

 

「そこは心もって言うとこだろ……」

 

「女の精神年齢は高いので!」

 

正解なのかよく分からん返事を聞きながら、本題へ話を戻す。

 

「んで、さっきの続きだけど……聞いても良いか?」

 

「あー……やっぱり気になりますぅ?」

 

「そりゃな」

 

「そんな大した話じゃないですよ?それでも聞きますか……?」

 

「九重が良ければな」

 

「あくまで選択権を私に渡すとか……中々卑怯なやり方ですね。まぁいいですが」

 

少し困った様な表情を浮かべてこちらを見る。

 

「先輩は私の姉の事は覚えていますか?」

 

「九重のお姉さん……?」

 

「はい、澪姉って呼んでいますが」

 

「確か……他の枝で神社まで送ってくれた人か?黒髪の」

 

「イエス、その人です。以前……子供の頃にその澪姉とこのお店に一緒に来たことがあるんです」

 

「そうだったのか」

 

車を暴走族みたいに飛ばしてたあの人だよな……?

 

「その時は、澪姉がここを奢ってくれたんです。当時の私は人から奢られるとかご馳走になるとか考えていなかったので……その、結構衝撃的だったと言いますか……まぁ、ちょっとした尊敬と言いますか憧れと言いますか……」

 

「あーなるほど、同じことをしたかったというわけか」

 

「はい……そんな感じです。自分も誰かに奢れるくらいの人間になれたってのを実感したかっただけです。ただの自己満足ですが……」

 

何となく理解出来る。子供の時ってそういうカッコイイ姿に憧れたりする。

 

「……もしかして、他の枝でもよく奢ろうとするのって……?」

 

「あーいえ、確かにそう言ったのが無いとは言いませんが、皆さんに喜んで貰いたいのが第一です」

 

「なるほどねぇ……」

 

「後は思い出の食べ物を久しぶりに食べたいって感じですね。それを誰かと共有したかったってのもあります」

 

「その相手が俺が良かったのか?お姉さんと一緒に来た方が良かったんじゃ……?」

 

「いえいえ、他の人にも教えたかったので。澪姉とはまた別の日に来ますから大丈夫です。という事で!先輩は大人しく私に奢られて下さいな?」

 

「……はぁ、今の話を聞いて嫌とは言いにくいな」

 

「なら話した甲斐がありました。なので、ここは私が持ちますのでどうかお気になさらず楽しんでもらえると嬉しいです」

 

「分かった、お言葉に甘えて楽しませてもらうよ」

 

ここまで話されて流石に払うとか空気の読めない事は出来ないだろ……。

 

「男の俺としては若干微妙な気持ちだけどな……」

 

「と、言いますと?」

 

「ほら、一応年上だし世間一般的に言えば後輩には奢ってあげたいと言うか……」

 

「気持ちは分かりますが……それは男の方が稼いでいる、年上の方が経済的に優位と言う古い考えを世間が押し付けて来ているだけですよ。今は女性の方が稼いでいても変じゃありませんし……」

 

頭では分かってるんだけどなぁ……個人的な意地と言うか。

 

「それに先輩は学生ですし、まだ親御さんの庇護下に居ますからしょうがないですよ」

 

「それを言うなら九重も条件は一緒だろ?」

 

「……言われればそれもそうですね」

 

俺の言葉に納得するような顔をする。

 

「まぁ、私は別に気にしませんし、その分をお付き合いしている皆さんに使えば良いのでは?それに、年上と言うのであれば、精神限定で言えば私の方が先輩より上ですので!」

 

慰めてるのかよく分からない持論を持ち出されたが、妙に自信満々だった……。

 

 

 

 

 

 

「……流石に昼に食い過ぎたな」

 

昼に食べた中華だが、想像以上に美味しく、食べ放題ということもあってかつい調子に乗って頼み過ぎてしまった。

 

そのせいで既に夜だが、まだ腹の中に残っている感覚がするし、食欲も特に湧かない。

 

「九重に釣られて行けると思ったのが駄目だったか」

 

一緒に食べていた九重がまだいけると追加で幾つか頼んだのを見て、どうせなら俺も……と。

 

「今日の夕飯は無しでいっか……」

 

既に時刻は22時。今からだと腹が減ったとして夜中になるだろう。

 

「……あるとすれば、甘いものが食べたい気分だな」

 

食後のデザート。お店では限界だったから残念ながら食べれなかったが、今なら多少は入る。

 

「近くのコンビニに歩きがてら動けば消化もされるしな」

 

それに、食べれなかったデザートへの後悔が残っている。

 

「行くか」

 

出掛ける用に着替え、上から羽織り財布を持って外に出る。

 

「何買おうかね……」

 

そう言えば、デザートが食べれなかったことを店を出て嘆いている俺に、コンビニのスウィーツを勧めていたな。

 

『この前気になって買ってみたんですが、見た目よりくどく無く結構おいしかったのでお勧めですっ。確か期間限定だったのでその内無くなりますが、機会があれば買ってみてください』

 

「確か……フルーツ系だったか?」

 

今の状態にも悪くないし、買ってみるのも良いかもな。

 

買う物を決めつつ、一番近くのコンビニの入口を通った。

 

 

 

 

「……あほみたいに時間を使ってしまった」

 

手に持っているコンビニ袋を軽く持ち上げ、苦笑いをした。

 

九重が言っていたやつを買おうとコンビニに入ったが、お目当ての商品は品切れだった。

 

折角だしと次に近いコンビニを目指して歩きだした。良い運動にはなるだろう位の気持ちで……。

 

だが、人気の食べ物だったのか二店舗目にもその商品は無かった。

 

どうしようかと考えたが、運動ついでだしと次のコンビニへ向かった……が、またしても売り切れ。ここまで来ると、どんだけ美味しいのかと気になってしまう。ここらで諦めて後日にすればよかったのだが、ここで引き返したら負けた気がするので意地でも買おうと決めた。

 

なんやかんやで、なんとか五店舗目でお目当ての商品を手に入れることに成功したが、謎の達成感と疲労感が残った……。

 

「帰るか……」

 

コンビニ探している内に、いつもの生活圏から少し離れた場所まで来てしまっていた。一応帰り道は覚えているから問題は無いが……。

 

「にしても、暗いな……。街の中心から離れるとやっぱり街灯とか人気も減るもんだな」

 

少ししんみりした気分を味わいながら夜道を歩いて行く。

 

「―――ッ」

 

「……ん?」

 

静かな夜道の中に、わずかに人の声の様なものが聞こえた気がした。

 

立ち止まり、周囲を一度見渡したが人影すら見当たらない。

 

「気のせいか……」

 

そう思い歩き出す。

 

「――ッ!―――」

 

今度は少し離れた場所から走っている足音が微かに聞こえてくる。

 

「……?」

 

夜のランニングかと考えたが、徐々に近づいてくる足音を聞くと……慌てるようにドタドタと音が大きくなってきている。

 

「………」

 

少し嫌な予感がして身構える。

 

「――ソがッ!なんな―――!」

 

少しずつ男の焦る声が耳まで届いてくる。

 

聞こえてくる路地裏を警戒しつつ、街灯下まで下がるように距離を取る。

 

次第に走る音は俺が見ている正面の道に来る。

 

「くッはぁ……はぁ……っ!」

 

転がるように道端の資材らしき置物にぶつかりながらも暗闇から出て来た。

 

ぶつかった事で大きな音が鳴り響く。

 

目の前に出て来た男は、何かに恐れるように息を切らしながら顔を上げる。

 

「かっ、はぁ……っ、はぁ―――くそ、人に見られちまったか……いや、今はそれよりも……」

 

一度俺を見て直ぐに視線を外す。

 

「まだ俺を探しているはずだ、さっさと撒かねぇと―――」

 

誰かに追われている様な口振りで歩き出そうとした次の瞬間、男の動きが止まり、背後の暗闇から何かが光るように反射した。

 

暗闇から出て来た糸のように細いそれは、一瞬で男の体に巻き付く。

 

「―――ッ!?――ッ!!ッ!!」

 

自分の体に巻き付いた糸を解こうと掴むが、叶わず後ろから引っ張られるようにその場に倒れ込む。

 

「―――ッ!――――――」

 

地面に引きずられながらも、それから逃れるようにこちらに手を伸ばすが、そのまま裏路地へと引きずり込まれて行った。

 

「ッ……」

 

マズイことになったかもしれない。間違いなく事件の匂いがする。それも滅茶苦茶ヤバいパターンだ。

 

どうする……?逃げ出すか?それとも……。

 

逃げるにしても周囲には人気が無い。走って逃げれるか……?

 

どうするべきか考えていると、暗闇から人影が出て来た。               

 

「―――こんな所で夜のお散歩ですか?新海先輩?」

 





闇に飲まれて行く男に出くわす新海翔……恐怖しかない。

次は主人公視点からで行きます。


中華の料理名とか読み方とか確認しつつ書いてたらお腹空いて来た……。

真夜中ってのもたちが悪い……っ!

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