旅って良いですよねぇ……。
タイトルは適当にくっつけただけなのでお気になさらずw"旅にハプニングはつきもの"をそれっぽい感じで繋げただけです。
「お、動き出したな」
「いよいよ出発ですねー」
駅構内での買い物を済ませて、早い内に乗った新幹線がアナウンスの後ようやく動き出す。
正直、いままであまり乗る機会が無かった新幹線に対して少し戸惑ったが、横に座って居る九重は特に気にすることなくスイスイと進んでいた。
案内されるままに指定席の車両に乗り込み、席に座る。窓際に俺が座り、通路側に九重が座った。持ってきたキャリーケースは専用の場所に置いて来た。
……つか、あのキャリーケース、何も入って無かったのにやたら重さがあったな。
そんな事を考えている内に新幹線は速度を上げていく。
「因みにだが、どれくらいで着くんだ?」
買い物の袋を楽しそうに漁り始めた九重に聞く。
「え?あー……大体三時間程度でしょうか?ちょっと待って下さいねー」
財布を取り出し、購入した切符を確認する。
「えー、今からですとー……二時間と四十分ですかね?」
「それなりに掛かるんだな」
「ですねぇ……。ま、取りあえずご飯食べましょうっ、ご飯」
「そうするかー」
まだまだ先がながそうなので、九重の提案に賛成する。
「はい、先輩の分です。あとこれお茶ですよ」
「サンキュー、もらうわ」
前方に取り付けられているテーブルを開き、受け取った弁当や飲み物を置いてく。
「では、いただきます」
「いただきまーす」
封を切って蓋を開け、駅弁を食べ始める。
「いやー、雰囲気味わえますねー……」
「こういうのって滅多に食べないからな。新幹線とかも修学旅行の時以来かもしれん」
「おぉ、修学旅行ですか?どこ行ったんですか?」
「清水の舞台から飛び降りる場所だ」
「なるほど、和の都ですか……定番ですねっ。どこ回ったんですか?」
「どこって言われてもなぁ……寺とか神社しか記憶に無いが……いや、滅茶苦茶長い市場にも行ったな」
「あぁー……あの細い道の?」
「そうそれ。両側で色んなお店がやってて賑わってたのを覚えてるわ」
あの活気には少し驚いたな……。
「そっちはどこ行ったんだ?」
「え?私ですか……?」
「いや、九重以外居ないだろ」
「あ、あー……えっと……そうですねぇ……」
特に気にせず流れで聞いてみたが、言葉を濁す様に喋る。
「えっと、私……修学旅行に行って無いんですよね……」
「マジで?」
「マジです。ちょっと色々と事情がありまして……あはは」
「……聞かない方が良かったか?」
「ああ、いえいえっ、そんなことは全くありません。単純な理由なので……はいっ」
「単純な理由?」
「まぁ、ざっくり言いますと……中学を通って無かったのでぇ……はい」
「……は?まじで?」
恥ずかしそうに話す九重の言葉に驚き、食べる箸を止める。
「いやぁ……マジです。家庭の事情的な物でして」
「……義務教育だろ?大丈夫なのかそれ」
「そこは大丈夫です。勉学も実家の方でしっかりと行っていましたから。ま、元々それなりに知能はあったので問題はありませんでしたが」
「白泉入る時問題にならなかったのか?」
「ん?……まぁ、経歴を偽装しているので無問題ですよ?」
俺の疑問に、けろっと答えて食事を再開する。いや偽装って……犯罪じゃないかそれ?
「……どうして行かなかったんだ?」
「勉学に励むよりやるべきことがあったからって感じですよ。そうっ!力を求めていたんです!」
箸を持った手とは逆の手の拳を握って俺を見る。力て……。
「という事は、ずっと実家で修行?をしていたのか?」
「そんな感じの認識で大丈夫ですよ。ま、容易に想像は出来ると思いますが。……それより、箸が止まってますよ?食べないんですか?」
「……いや、食べるよ」
指摘され俺も食べるのを再開する。
「……その、なんだ?学校には行きたいとは思わなかったのか……?」
「んー……どうでしょう?優先順位としては低かったので、そうは思わなかったですね。あっ、なので学友と言う意味では天ちゃんが一番最初の友達ですねっ!」
大して気にした様子もなく首を傾げたかと思うと、今度は嬉しそうな明るい笑顔でこちらを向く。
「学友以外だと……?」
「残念ながら……!二番目になりますっ……くっ!私の初めてが三花だったとは……!!」
今度は悔やまれるように目を閉じて拳を握る。
「寂しいとかは思わなかったのか?」
「いえ、特に?それに、先輩も言うほど友達いないのと聞いておりますが……?寂しかったのですか?」
「ぐっ……いや確かに少なかったさっ!ああっ。けど俺と九重だと条件が違うだろ?」
別に学校で誰とも話さなかったわけじゃない。遊ぶことが無かっただけだ!それに、その分天が絡んで来たしな。
「んー……先輩は何やら悲観的に捉えてますが、私は別にそうは思っていませんよ?」
「いやでも……違うな、確かに俺の勝手な考えだったな、すまん」
「いえいえ、個人でどう思うかは勝手ですので大丈夫ですよ。それに先輩が私の事を心配して言っているのは理解していますので。ありがとうございます」
謝る俺に、優しく微笑みながらも感謝を口にする。
「……一つ、聞いてもいいか?」
「なんなりと。答えられる範囲であれば」
「他の枝で、結城にどうして戦うか聞かれた時の事を覚えてるか?」
「ええ、あの夕暮れの時ですよね?勿論覚えてますよ」
「結城が帰った後に俺が九重に「どうして力を身に付けたのか?」って聞いた時、実家の悲願と俺達を助ける為って言ってたよな?」
確か、俺たちが平和な日常を送ってほしいって言ってたはずだ。アーティファクトなど無い平和な日常を。
「ふふ、よくそんな事まで覚えていますね。女心が分かって無いって言われたの実は気にしてました?」
「違うからな?印象に残ってただけだからな?」
そうやってまたすぐ俺をおちょくろうとしてさぁ……。
「まぁ?今の先輩は?恋人が四人もおられるので?女心の一つや二つ……はたまた四つは理解出来てると思いますが?」
「こっちが真面目に聞いているのに……はぁぁー……」
なんか、こう……気が抜けてドッと疲れが来る。
「折角の旅での食事なのに暗い空気じゃ楽しめないと思いましてっ。先輩は重く考え過ぎです。もっと楽に考えていきましょう。ね?」
……はぁ、やっぱりわざとそうしてたのか。
「……分かった分かった。それじゃあそうするよ」
本人がそう言ってるんだ。俺が変に構えても気を遣わせるだけだな。
「んじゃ、九重はどうして俺達を助けようって思ったんだ?」
「助けたいと思ったから……?」
「その理由だ。動機はなんだったんだ?やっぱり知ってたからなのか?」
「まぁ、それが一番大きいのは確かですねぇ。それと後は、先輩が犠牲になる枝の終わりを変えたかったからでしょうか?」
「……ん?俺が……?」
何それ、聞いて無いんだが。
「だって、深沢与一を倒す為に一人になっても行こうとしていたじゃないですか?あの枝で」
「まぁ、そうだな……」
確かに全部終わらせるつもりだったが……。
「あの枝の先輩は、イーリスを倒す為にアーティファクトを滅茶苦茶使って最後に限界を迎えていたんですよ?」
「お、おう……そうだったのか。……因みにその、どんな流れだったんだ?」
「んー……まぁ、もう話しても大丈夫ですし良いでしょう。宿敵と対面した先輩は世界の眼を通して皆さんの幻体を呼びました。そしてイーリスを引っ張り出す為に何度も殺した。ここまでは計画通りですよね?」
「まぁ、一応、だな」
「んで、深沢与一がイーリスとの同調を深めたことで強化されてしまいました。ですがソフィが超強力なアーティファクトを沢山持ち出して先輩に与え、先輩はそれ以上にパワーアップしちゃいましたね」
ソフィがアーティファクトを……?セフィロトの規制が厳しいって言ってたと思うが……。
「よくソフィがそんなもん持ち出せたな」
「最終決戦ですしね。たぶん結構無茶をしたと思いますよ?第一世代の危険なアーティファクトって言ってましたし」
……ソフィなりに俺の力になろうとしてくれていたんだな。
「そこからは一方的な殺戮ショーでしたよ。何度も負けた深沢与一は更にイーリスから力を求めて……ま、体を乗っ取られました」
……なんか、既視感がある流れだな。
「そして無事イーリスを表舞台に引っ張り出して……なんやかんやでぶちのめしましたと。お終い」
「おい、最後投げやりじゃねーか」
「まぁまぁ、いいじゃないですか。悲しい結末は無かったのですから。明るいハッピーエンドを迎えれてますし?」
そう言って九重は弁当の最後のおかずを食べ切る。
「今の話は、この枝で九重が代わりにしたって事だよな?」
「はい、そうですね」
「最初からそうするつもりだったのか?」
「いえいえ、前に話したと思いますが、アーティファクトを手に入れなければもう少し違う方法で進めてました」
「そういえば言ってたな。自分もユーザーになったのは予想外だったって」
「そうですよー、いやまぁ?そのおかげで大分楽出来たので感謝してますけど」
「当初はどんな予定だったんだ?」
「え、それを聞きます?聞いちゃいます?」
「もしかして、なんかまずいのか?」
「んー……先輩がまだ食事中なのでグロいお話は止めといた方が良いのかなっと思いまして」
「どんなエグイ方法をする気だったんだよ……」
「あ、失敬な。先輩程ではありませんよ。先輩こそ中々でしたよ?それこそ深沢与一に『やることがいちいちエグいんだよなぁ……』って悪態を吐かれてましたよ?」
「まじか……」
「ええ、マジです」
どんな方法で与一と戦ってたんだ俺は……。
無くなった可能性に苦笑いをしつつも、俺も弁当を食べ切る。
「ごちそーさん」
「お粗末様です。容器もらいますよー」
「サンキュー」
俺が食べ終わったのを見計らって空の容器を袋の中へ入れていく。
「さて、次はデザートと行きましょうかっ」
「デザートまで買ってたのかよ」
「当然ですっ、こんな暑い日に食べるアイスは最高ですよ?」
「溶けてないかそれ?幾ら冷房があるからって……」
「ふふーん、私の能力があればそんなの関係ありませんよっ」
誇らしげな表情を浮かべ、別の袋からカップのアイスを取り出して俺のテーブルに置く。
「一応まだ冷たい……なるほどなぁ」
確かに九重のアーティファクトなら溶ける心配は無いな。
「はい、スプーンです」
「あんがと」
「それじゃあ頂きましょう!」
楽しそうな顔でカップの蓋を開け、食べ始める。それを見て俺も食べようとする。
「……ん?……あれ?」
蓋を開けようとするが、固く中々取れない。
「なんだこれ、引っ付いてんのか……?」
「大丈夫ですか?」
「いや、なんか全然取れなくて、だな……」
くっ……全然ビクともしないぞこれ……!
「それはそれはぁ……大変ですねぇ……もっと鍛えた方が良いかもしれませんよぉ?」
俺が蓋を取れないのを見てニヤニヤと笑っている。
「……おいまて。まさかだとは思うが、能力使ってんのか?」
アイスを取り出した後にスティグマが浮かんでいるのを見て、まさかと思い聞いてみる。
「あ、流石に気づきました?」
俺が答えに辿り着いたのを知って、嬉しそうに笑みを深める。
「やっぱりかっ!どーりで取れないわけだよ!俺に恨みでもあるのかっ」
「ちょっとした悪戯ですよ。困惑する姿が見たかったという可愛い物です」
「クッソくだらないことに使いやがって……全く。はやく解いてくれ」
「りょうかいです」
スティグマが消え、今度は簡単に取ることに成功する。こんなことにアーティファクト使うとか……。
食後の口直しのデザートを食べ終え、一息つく。
「ふぅ……思ったより腹一杯だな」
「満足しましたか?」
「かなりな」
「それは良かったですっ」
両手を合わせ、自分の事の様に嬉しそうに笑う。そこにさっきまでの様な挑発的な笑みは見えない。
「あー……、新幹線降りたらその後はどうするんだ?」
その姿から視線を逸らしつつ、気になっていたことを確認する。
「降りた駅のコインロッカーに預けている荷物を回収して、今晩泊まる場所に向かいますね。今日はそこに行けば終わりです」
「明日は?」
「明日からの予定は、ホテルに着いたら教えますので少々お待ちを」
……時間が余ってる今じゃないってことは、人がいる場所で話したくない内容なんだろうな。
「了解、一先ずは駅に着くまで暇で良いんだな」
「ですね。もし何か食べたいのでしたらチョコとかお菓子もあるので好きに食べて下さいね?」
そう言いつつ袋から色々と出して来る。
「結構買ったな……」
「折角の旅ですし、醍醐味かなと思いまして。食べます?」
「いや、今はいいよ。欲しくなったらまた言う」
「はーい」
俺が断ったのを聞くと、手前にあったチョコの箱を開けて摘まみ始める。……まだ食えるのか。
「まだいけるのか……」
「チッチッチ。これは別腹ですよ、別腹」
そういう問題かぁ?いや、中華の時とかも結構食ってたしそんなもんか?
自分よりも小さい九重のどこにそんな容量があるのか謎に思いつつも、外の景色を眺める。
……そえば、九重の話が中途半端だったが……まぁ、いいか。後でまた聞けば……急ぐ必要も無いしな。
どのみちこの後知れるだろうと思い、景色を眺めている俺の後ろから覗き込むように一緒に外の景色を眺めては話しかけてくる九重との雑談に戻った。
その後、意外とあっという間に到着した新幹線を降りて、駅内にあったコインロッカーまで迷うことなく進み、その一カ所からさぞ当然の様に荷物を取り出した九重を見ていた。
……なんでこんなところに荷物があるんだ?
そこそこ大きめのキャリーケースとアタッシュケースを取り出して扉を閉める。
「すみませんが、このアタッシュケースを持って貰っても良いですか?代わりにキャリーケースは私が持ちますので」
黒いアタッシュケースを受け取り、九重はキャリーケース二つを両手で牽いて行く。
……中身とか、聞かない方が無難だよな?
これまでの経験則から、なんかよろしく無さそうな物が入ってそうな気がする。
明らかにこれだけ異質に見えるのは、俺も理解度が増したと喜んで良いのだろうか……?
微妙な気持ちになりつつも、徒歩数分場所にあるホテルに入る。
「……まじかよ」
中に入ると、煌びやかな装飾だけど、どこか落ち着きのある和をモチーフにした明らかに高級感を醸し出しているエントランスが目に入る。
いや……まぁ、外から見た時も何階建てだよと突っ込みたくなったが……。やっぱりそういう場所だよな。
「エレベーターで上へ行くのでこっちです」
受付から鍵を受け取った九重が振り返ってエレベーターの方へ進む。その足取りにはいつも通りだ。
遅れない様後に続き、エレベーターに乗り込む。内部の側面には、幾つもの階層のボタンが並べられており、上から数えた方が早い階を押していた。
「………」
こういった場所って、階が高ければ高いほど高級ってイメージだが……本当なんだろうか?
現実逃避するように内装を眺めていると、目的の階へ着き扉が開く。
「これはまた……」
視界に飛び込んで来た情報に足を止める。
「先輩?ゴールは目の前ですよ?」
「お、おう……」
場違い感に包まれた俺を不思議そうな表情で手招きして呼ぶ姿を見て、もはや諦めたように苦笑いをして付いて行く。
静かな廊下を歩き、目的の部屋だろう場所に着き中へ入る。
「とうちゃーくっ。いやー……長旅お疲れでしたぁ」
「あ、ああ。そっちもな……」
部屋の内装も当然和をイメージとしていた。まず畳の床が目に入り、入口で靴を脱いで進んだ部屋の左側にはベッドが二つ並べられている。その逆側には憩いの場の様に円状のテーブルと木製の椅子が置かれている。
奥を見ると、障子で閉じてはいるが恐らく外の景色が一望出来そうな空間が広がっていた。
「荷物はそこら辺とか好きに置いて貰って大丈夫ですので」
「おう、ありがと……」
室内の照明は少し薄暗く、全体的に落ち着きのある雰囲気を作り出していた。
「ベッドは二つあるので片方は先輩のです。あとは……冷蔵庫とか必要な設備はある程度揃っているので多分不便は無いと思います」
「なんて言うか……至れり尽くせりだな。……ん?」
圧倒的高級感のせいで止まっていた思考に、ある言葉が引っかかった。
「……同じ部屋で、泊まる……のか?」
「え?はい、そうですが……?」
ギギギ……と首を動かす俺に、キョトンとした顔で九重が返事をした。
高級ホテルの部屋って、デフォルトで雰囲気がエロ……もとい大人の感じがしますよねー。
想定より進まなかったのでもう一話に分けて書きます。次こそ目的地直前までは……!