9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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また新しいキャラが……くっ。




第20話:黒髪の人は髪色が違いましたが血は繋がっているのでしょうか……?

 

 

次の日の朝、昨日と同じ様に支度を整えてから先輩を連れて組織へ向かう。

 

午前中なので当然倉庫には誰も居なかったので、与えられている部屋へ一度顔を覗かせたが特に置手紙などは無かった。

 

「誰とも会いませんね」

 

「昨日の二人も見当たらないな」

 

私としては好都合だけど、昼間はあまり人が居ないものなのかもしれないね。

 

昨日の夜にした調査の続きで組織内を適当に歩き回ってみる。

 

外側から徐々に内側へ探る様に動いてみたけど、やっぱり私達が集合しているあの倉庫は物置程度の場所と思われる。中央へ向かって行ってみたが、一定の場所から警備や見張りをしている人らがチラホラと見えて来たので引き返した。

 

他にも所々の建物の入り口や中に人が配置されていたので、多分そっちも何かしら重要な物でも置かれている建物に思える。

 

少し外寄りで歩いていると、私と先輩の部屋と似たような作りの建物を幾つか見つけたので部屋前の廊下を歩いてみる。中から人の気配を感じれたのでこちらにも別の人達がいるらしい。……なんか、私達の場所より小綺麗だしランクが一つ上って感じがする。分かっていたけどあの建物の部屋は一番下なんだろうね。

 

外周の部分の構造が何となく把握出来たので、次に更に内側へ一歩近づく。

 

「……少し近づくだけで、やっぱり雰囲気変わるなぁ」

 

まず、外を歩いている人を見かける様になる。服装も他と比べると普通の物を使っているし、清潔感が出ている。中には軍用の服や作業服の様な畏まった服装の人も居る。

 

建物も木造やプレハブ小屋の様な張りぼて建築からそこそこまともな建物へ変貌を遂げている。が、相変わらず道端にはゴミが見受けられる。

 

……昨日の夜の時点で察してはいたけど、以前に私がここに来た時よりかなり暮らしが良くなっているみたい。生活水準が全体的に上がって来ているって感じ。

 

歩いていると、道路の中心を走っていく二台の車とすれ違う。

 

……なるほど、車も普通に走る時代なのか。道路の整備具合からしてまだまだ普及には程遠いんだろうけど、コンクリートの道じゃ無くても大丈夫な車みたいだし。……オフロード車って言うんだっけ?

 

車が通り過ぎた後の砂煙を避けながらそんな事を考える。

 

「……ん?」

 

街並みを確認しながら周囲を観察していると、路地の方で見覚えのある姿を見かけた。

 

「あれは……」

 

黒のフードを被った子供……倉庫で何度か顔を合わせている少年だった。

 

布で包まれた何かを両手で隠しながら持ち運んでいる。

 

「どうかしたのか?立ち止まってるが……」

 

走り去って行く少年の後姿を見ていると、横を歩いている先輩が声を掛けて来た。

 

「いえ、昨日見た少年を見かけまして……あれです」

 

「少年……?ああ、あの黒い服装のか」

 

「見た感じ、中央側から走ってきた様に見えましたが……」

 

何か用事があったのだろうか。にしても、あの手に持っている物からして多分食べ物に見えたけど……。

 

昨日の夜に私達を尾行しようとしていたけど……何か情報でも掴んだんだろうか?

 

昨晩に先輩と一緒に調査に出た直後、私達の後をコソコソと付ける様に追って来ていたので、天ちゃんの能力で適当に撒いておいたから見失ったと思うんだけどねー。

 

「……良いタイミングですし、今度はこちらがストーカーして見ましょうか」

 

「昨日の俺達の後ろをつけていたんだよな?」

 

「ですね。まぁ、私達を警戒してなのか、誰かから言われてなのか分かりませんが……」

 

多分前者で、何か分かれば儲けもんって感じだろうけど……。

 

「路地に入ったら能力で気配を消してから移動しましょう」

 

「……了解。ちょっと罪悪感があるけど、先に向こうがして来たしな」

 

「まぁ、相手は子供ですもんねー……」

 

想定の年齢よりも身長が低いしね。当然こんな環境だしまともな発育が出来ているとは到底思えない。

 

表通りから路地へ入り先輩に能力を掛けて貰って動き出す。

 

「……って、もう姿見えないぞ」

 

さっき少年が曲がった道へ入るが、既にその姿は見えない。

 

「大丈夫です。地面に走り跡が残ってますのでこのまま追います」

 

砂の地面に付いてある足跡を見ながら先へ進む。

 

「……どうやら、外へ向かっている様に見えますね」

 

足跡を暫く追って行くと、内側の建物などを避けて外側へ向かっていた。

 

「昨日の夜みたいな感じで何か運んでいたのか?」

 

「どうでしょう……、食料を持っている様に見えましたが……」

 

地面に残る跡から見てそこまで重い物では無いし、走っていた速度からしても問題無い程度の物だとは予想は付く。

 

「食べ物を……か。自分の場所に帰る途中だったのかもな」

 

「……だと簡単なのですが」

 

手に持っていた物が食べ物以外なら放置で良かったけど、食べ物だとすれば少し気になる。

 

さっきの姿から見るに……何処かへそれを届けようとしていた感じだった。自分では食べずに運んでいるとなれば、渡す相手が居るという事。そして考えられるのは……。

 

「……なんか、大体予想出来た気がします」

 

「分かったのか……?」

 

「んまぁ……よくある話かなっと思いまして……」

 

情報屋の人がそれなりの頻度で持ち歩く姿を見かけているって言ってたし、向かっている先は間違いなく中層だと思う。目的地はそこの何処かにいると思われる人……しかも少年より弱者の人間だと思う。

 

「多分ですが……家族か誰かが居るんだと思います」

 

「家族……?あ、だから食べ物を……」

 

「自分が稼ぎに出て、養っている……は変な言い方ですが、食料を分けているかと」

 

「……なるほど」

 

「それか、身の安全の為に献上しているかのどちらかですね」

 

「安全の為に?」

 

「まだ子供ですし、危険な大人から身を守る為に食料の代わりに何かしらの対価を貰っているとか?」

 

まぁ、自分で言っといてなんだけど、こっちは無いと思う。既にデッカイ組織の駒だし。

 

「ですが、可能性としては前者でしょうね」

 

「家族が居るって話だな」

 

「はい。中層に身内が居て、その人物に届けている……こちらの方が自然ですね」

 

「自然……ね」

 

自分より年下の子が、誰かを養う為に懸命に生きているって面に何かしら感じたのか、少し神妙な声を出している。

 

「……っと、話ながらだと追いつけなさそうなので、ここからは少し急ぎましょうか」

 

「……ああ、了解」

 

「方法は……昨晩と一緒でよろしいですか?」

 

「……好きにしてくれ」

 

既に観念した様子の先輩を持って建物を飛び越えていく。

 

「……お、居ましたよ」

 

建物が途切れたので立ち止まると、丁度内側のエリアから出ようとしている姿を視界に捉える。

 

「やっぱり外へ用があったみたいですね」

 

境界線付近に見張りが見えるので、一応視界に映らない様に空から外へ出ていく。

 

「……どこまで行くんでしょう」

 

中層の内側よりから離れ、少し外れの場所へ向かっている様に見える。

 

人たちが住んでいると思われる密集した住宅を通り過ぎ、少しまばらになった家の一軒へ姿が吸い込まれて行った。

 

「建物に入って行きましたね。住処に見えますが……」

 

「やっぱり、家族が居るってことだったんじゃないのか?」

 

私に担がれている状態の先輩から返事が聞こえる。

 

「そうなるとかなり有益な情報になりますね」

 

わざわざ分け与える程の存在だし、それなりに大切な存在だろう。

 

「情報って……もしかして売る気か?」

 

「まさか、情報は握ってこその物ですよ。売るなんて勿体ない」

 

「あくどいなぁ……」

 

「人より優位に立つには相手の弱味を握る。基本的な戦術です」

 

「言いたい事は分かるんだが……」

 

そんなことを話していると、件の少年が建物から出てくる。

 

「お、出てきましたね」

 

「もうか?結構早いな」

 

「手には何も持っていませんし……持ってたのを渡すだけだったのかもしれませんね」

 

「……どうする?目的は分かったわけだが……戻るか?」

 

「いえ、一応中も見ておきましょう。家族構成を知っておきたいです」

 

「そこまで必要なのか?」

 

「何かと有利に働くかもしれませんよ……?ふふ」

 

その人が多ければ多いほど楽ですからね。

 

少年が去って行くのを確認してから家のすぐ横に降りる。

 

「この街では普通の家ですね」

 

チグハグでボロボロな建物……。家としての最低限の機能は果たせてはいる程度の家屋。

 

「では、入りましょうか」

 

入口には玄関など無く、当然ドアも見当たらない。

 

「これって不法侵入だよな……」

 

「バレなければセーフですよ」

 

中にはここで人が生活していると分かるくらいの衣類や物が置かれている。

 

「……っと、左右に人が居ますね」

 

ざっと見渡すと、入って目の前に六畳程度の空間と左右に別の部屋があると思われる。その中で右手に人の気配と……反対側の左にも人の気配がするね。

 

左の方は特に動いている気配は感じず、気配も小さい。逆に右手の方は何か金属製の物を使っている様子。

 

後ろの先輩に『右から先に』と指で合図を送ってから一緒に隣の部屋を覗く。

 

「………」

 

そこには、20代過ぎた辺りだろうか?女性がこれから料理でもしようと準備をしていた。

 

……なるほど、さっきの食材を受け取ったのはこの人か。

 

短い黒髪をポニーテールの様に纏めている。正確には分からないが、雰囲気と表情から活発的な人の印象を受ける。女性が布を解いて行くと、そこには肉と芋が入っていた。

 

物は予想通りとして……量的に反対側の人と二人分かな?

 

肉と芋を調理する為に鍋や刃物を揃えている姿を確認してこれからご飯を作るのだと分かったので後ろに下がる。

 

先輩に今度は反対側の部屋を指差してから進む。

 

さっきと同じ様に部屋の中を覗くと、寝床だと思われるそこに……少女が一人座って居た。

 

……妹?

 

こちらに背中を向けている姿からは、背中まで伸びた銀色の髪としか情報は無いけど、何となくそう思った。

 

……そうなると、家族構成はこの二人ってことかな。

 

思っていた以上に想像通りだった。

 

「……どなたか、居るのですか?」

 

「―――っ!??」

 

取りあえず知りたい事は知れたので、一旦外に出ようかと先輩の方へ視線を向けようとすると、部屋に居る少女がこちらを向いた。

 

「………」

 

落ち着け、さっきの女性はまだ食事の準備で動いていない……。それに、明らかにこちらに向かって言葉を発していたと思う。

 

隣の先輩も驚くような顔で私を見ていた。

 

「……知らない人、ですね?」

 

「っ、………」

 

こちらを向いた少女は、目を閉じたままで顔だけを私達に向けていた。多分、目を開けていたらお互いに目が合っていたであろう高さでだ。

 

一先ず、部屋の中へ先輩を連れて入る。そこでこの部屋を包むようにアーティファクトの能力で音を遮断する。

 

「……どうやら、バレているみたいですね。これは驚きです」

 

「マジか?能力使ってるんだぞ……?」

 

「女の人と、男の人……?お客さんですか……?」

 

私達の声を聞いて立ち上がる。変わらず目は閉じたまま……ということは見えないのだろう。

 

「えっと、それならわたしじゃなくてあっちに……」

 

「いえ、お気になさらず。用があったのは貴女ですから」

 

立ち上がろうとした少女を止め、こちらから話しかける。

 

「……わたし?ですか?」

 

「はい、貴女と同じ髪の色をした男の子と知り合いでして……」

 

「ああ……、にいさんと知り合いだったの……」

 

やっぱり妹でしたか……。

 

「初めまして。昨日からお兄さんと同じお仕事をすることになった者です」

 

「仕事……?お友達なのですか?」

 

「えっと……そんな感じです」

 

うーん、これは少年が何をしているのか知っていないのか、教養としてまだ至って無いのか判断が難しいね……。

 

見た目は……小学生かなぁ?いや、中学生に届いていないはずだし……でもこの街だとなぁ。

 

「それで……何かわたしに?」

 

「彼が何か急いだ様子でここを立ち去っていくのを見かけたので、何かあったのかと気になって中を覗かせてもらいました」

 

「それは家にご飯を届けに来てくれたのだと思います」

 

「なるほど……家族はお兄さん合わせて三人家族ですか?」

 

「そうですが……?」

 

「なるほどなるほど……ありがとうございます。話してくれたお礼に、これをあげます」

 

少し困惑するように首を傾げる少女に内ポケットからお菓子を取り出して手の平に渡す。

 

「……これは?」

 

「甘いお菓子です。今度お兄さんが来た時に一緒に食べて下さい。"あなたの部下の強いおねえさんがくれた"って言えば伝わりますから」

 

「部下……?」

 

「お友達って事ですよ」

 

「……分かりました。にいさんのお友達さんがくれたと伝えておきます。ありがとうございます」

 

「いえいえ、それじゃあ私達は帰りますね。機会があればまた会いましょう」

 

「えと……はい。さよならです」

 

こちらへ頭を下げた少女を見てから家を出る。

 

「………、……はぁぁーーー」

 

少し離れた場所で盛大にため息を吐く。

 

「何なのですかっ?あの女の子!アーティファクトの能力を突破してきましたよっ!?」

 

「いや、俺もめっちゃ驚いたんだが……?しかもさっきの子……目、見えてなかったよな?」

 

「ですね。目が見えていないのに……いえ、見えていなかったからこその知覚力だったかもしれません」

 

失った五感の一つを補う為に、他の器官が鋭くなるって話はよく聞くし……もしかしたらそういった類なのかもしれない。

 

「まぁ、それにしてもまさかアーティファクトの気配操作すら超えるとは予想していませんでしたが……」

 

「……ユーザーって線は無いのか?」

 

「探知のアーティファクトに引っかかります?」

 

「待ってくれ……いや、無いな」

 

「ということは、そう言う事です」

 

「ただただ素の力ってことか……」

 

「もしかすると、人の気配では無くて部屋の入口を通る空気の揺らぎなどの違和感を感じ取っていたのかもしれないですね」

 

「……可能なのか?」

 

「可能です。実際私もそれなりに出来ますから。だとすればアーティファクトを使っていたのにも関わらずバレたのも……納得は出来ます」

 

「まぁ、確かにあくまで存在感の操作だもんな……」

 

けど、こちらを見て知らない人って言ってたし……いや、匂いとかで?うーん、それもありえるかぁ?

 

「バレてしまいましたが、結果としては悪くは無いでしょう。どのみち話しかけるつもりでしたし」

 

「そうだったのか?」

 

「もうちょっと順序は踏む予定でしたが……これはこれで予定が早めれたと考えればプラスです」

 

「なんか、頑張って軌道修正しようとしてるなぁ……」

 

「ハプニングが起きても大丈夫なプランの形成が、より良い人生を作るってテレビでやってましたから!」

 

それに、少年より幼い……庇護すべき存在が居るのは予想していたので問題無い。妹という大事な存在だったので更にやりやすくなっただけだろう。

 

「因みに?当初の予定では……?」

 

「最初ですか?そうですね……もう少し家庭の内情を探ってから接触するつもりでした。そしてタイミングを見計らって少年に声を掛けておどs……交渉の材料にしようかなと」

 

「ん?今、脅すとか物騒なこと言いかけていなかったか?」

 

「いやいやいや、そんなまさかですよ。私の様な真人間が無垢な少年少女にそんな事をするわけ無いじゃないですか~」

 

「んで?あの少年を脅して何を聞き出す気だったんだ?」

 

おっと、脅すのが確定ですか。

 

「どうやら組織内部の遣いの様ですし、何か有益な話が聞ければなぁ……っと。それか虚偽の情報を流させるのも悪くないですね。もう一つの組織の足を引っ張る様な事を」

 

「必要と言うなら仕方ないと思うが……やり過ぎない様にな?」

 

「ふふ、しっかりと大丈夫なラインは見極めていますよ」

 

相手を……と言うよりかは私の心配を、かな?

 

「ではでは、用事も済んだ事ですし元の場所へ戻りましょうか」

 

「もう良いのか?」

 

「はいっ、必要な情報は大体揃いましたから」

 

後は少年の反応に期待しておくだけだね。

 

その後は元の場所へ戻って探索を続け、太陽が真上に昇って昼の時間帯になってきたので、一度倉庫の方へと戻った。

 

 





銀髪で全盲の少女……!儚げさMaxかよ……っ!

次回は……二日目の夜まで終わらせようかと思います。ちょっと話の進行度が遅い気が……?

それが終われば別視点を入れていきます。

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