9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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二日目終了まで進めます。




第21話:これぞ夏の風物詩ってやつですね

 

 

倉庫に一旦戻った時、何かのタイミングが重なったのか中で同じ班の二人が話していた。

 

私達が来たのに気づいて「今日の夜は空けておけ、仕事が入っている」と一言伝えてそのまま片方は出て行った。残された少年の方はこちらに興味無さそうな表情を作りつつも観察するような目を向けて壁にもたれ掛かっていた。

 

切っ掛け作りの為に私から話しかけてみるが……無視された。なので無視出来ない話を持ち掛けた。

 

「昨日の夜はそっちから私達の後ろを追って来ていたのに……今日はつれないね」と。

 

そうすると案の定煩わしそうな顔で睨んで来た。凄く分かり易くて助かる。

 

更に踏み込む為に、今度はさっきコソコソと走っていた事を聞いてみたが、「お前には関係の無いことだ」と一蹴された。

 

けど、明らかに聞かれたくない内容なのは分かる。表情に出ているので……。

 

これ以上は反感を買いそうなので、話題を変えて「夜まで暇だけど何かすることは無い?」と会話を試みたが、「自分で考えろ」と冷たい反応しか返って来なかった。

 

うん、やっぱり想像通りの性格でした。

 

これ以上話しかけられるのが嫌なのか、その場を去って行った。

 

このままここに居ても収穫は無さそうなので、先輩と一緒に拠点へと帰ることにした。

 

夜までの時間を潰す為に、別組織の拠点と思われる場所を先輩にも共有したり明日以降の替えの服などを洗濯、または用意したりして午後はダラダラと過ごした。

 

仕事を持ってきたって事は、何かしら向こうにも動きがあったと見て良いのだろうか?計画の日時までまだ日にちはある。その前にある程度情報は得るつもりだけど、まずは新海先輩にここの環境にある程度耐性を持ってもらうのが先だし……今日の結果次第では明日から手軽なやつから進めても良いかもしれない……多分。

 

仮に何かあってもオーバーロードで何とでも出来ると分かっているので、気楽に進める位が丁度良い。そっちが先輩への負担も軽減されるはず。

 

今は夜に向けて軽く仮眠をして貰っている。今日の仕事が終わった後はこの拠点ではなく、向こうの部屋で一夜を明かすつもりだ。その方が自然だしね。

 

そんなこんなで私も二時間ほどの仮眠をとってから夜に起きて、二人で倉庫へと再び向かう。

 

「……あれ、居ませんね」

 

中に入るが、そこには私達以外誰も居なかった。

 

「まだ来てないのか?」

 

「前はこのくらいの時間に居ましたが……待ちましょうか」

 

外の電気も点いていない建物を中を待つ。20分程経つと、人の気配を感じたと思っている内にドアが開く。

 

「おー……って、ちゃんと居るな。よしよし」

 

外から差し込むちょっとした光しかないが、普通に私達を見つけて向かって来る。その手には何やら袋を持っている

 

「あれ、もう一人の方は一緒じゃないんですか?」

 

「んあ?ああ、あいつは単独で動くってさ。既に向かってるよ」

 

「若いのに仕事熱心な事で……その手に持ってるのは?」

 

「これか?今日の報酬だ。さっき思い出してな。取りに戻ってたら遅れた」

 

だから少し遅かったのかー……って、報酬?

 

「前払いとは気前が良いですね」

 

「なに、腹が減っては何とやらだしな。それに嬢ちゃんたちも育ち盛りだろ?食っとけ食っとけ」

 

そう言って袋を渡して来る。

 

「ありがとうございます……中身は、食べ物ですか?」

 

言葉から察するに食糧系なのだろう。袋を開けて中身を覗く……これは……なんだろ?肉……かな?他にも入ってるけど。

 

「初めての仕事だろ?奮発しといたからその分働いてくれよな?」

 

「なるほど……分かりました。これに見合うだけの成果を出せるように頑張ります」

 

「おう、俺を楽させてくれよな」

 

「それで、内容の方は……」

 

「んじゃ話すぞ?」

 

一応仕事なので、形だけでも真面目に耳を向ける。

 

「こことは別の組織の方で物と人が急激に増えてるって話は何となく聞いてるとは思うが、どうやら上はそれらがこっちに牙を向かないか心配で夜も眠れないそうだ」

 

「……意外と小心者なんですね」

 

「だな、今回の依頼者は随分と怖がりさんみてぇだ」

 

今回ってことは幾つか依頼元が居るのかな?

 

「それで……私達にどうしろと?」

 

「向こうの動きが分かる情報でもありゃ良いが……最悪妨害でも大丈夫だろ。要は安心材料が欲しいって感じだったな」

 

「んー……なるほどぉ」

 

「そこでだ。嬢ちゃんらはコソコソと動き回るのと、陽動として派手に動き回るの……どっちが良い?」

 

試すような顔で笑ってこちらを見る。

 

「んまぁ……どっちでも良いですが……既に前者は一人居ますし……」

 

少年の方は確実にコソコソ派だろう。

 

「そちらは……ドンパチ派ですか?」

 

「だな、隠れ回るのは性に合わねぇ……と言いたいが、相手は拳銃と使って来るだろうし、可能な限り安全に動くつもりだ」

 

「……腰の得物で銃弾を切ったりすれば大丈夫ですよ?」

 

「ははッ!漫画みたいなことをしろってか?直ぐに囲まれて蜂の巣だろうなっ」

 

私の冗談に対して楽しそうに笑う。……うん、だよね。普通はそんな返事だよね。やっぱり一族が異常だよね。

 

「それでしたら、私達の方で陽動を受け持ちましょう」

 

「行けんのか?そっちも苦手じゃねぇのか?」

 

「敵さんを混乱させる程度でしたら出来ますよ。……そうですね、少し派手な花火でも撃ち上げましょう」

 

「花火?」

 

「盛大な音でも響かせようかと思いまして。季節的にも丁度良いかと」

 

「つまり……なんだ?期待しても良いのか?」

 

「頂いた食べ物分の仕事はするって約束しましょう」

 

「あー……それなら嬢ちゃんのを合図に俺も動くとするかぁ」

 

「精々夜の街を賑やかにさせてみますので、期待しててくださいな」

 

「場所の目星は付いてるのか?」

 

「今日の午前に散歩したので、ある程度の範囲には絞りこんでますよ?」

 

「ほぅ……?勤勉な事で助かる。一応、ここから二キロ程向こうへ行けば目的の組織の縄張りだからな?」

 

「ご丁寧にありがとうございます」

 

「今から……そうだな、二時間後までには始めてくれ。そんじゃ、死なない様に気を付けてくれよな?」

 

話す内容が済んだのか、去り際にヒラヒラとこちらに手を振って建物を出ていく。

 

「……これ、どうしましょうか」

 

貰った袋を新海先輩に見せる。

 

「何が入ってるんだ?」

 

「多分……ご飯だと思いますが……」

 

「食べる……で良いのか?」

 

「んー……取りあえず中身を見てから決めましょうか」

 

袋を漁って中身を取り出す。

 

「……何に見えます?」

 

夜の明かりに照らしつつ先輩へ見せる。

 

「……肉、か?」

 

「ですよね……お肉ですよね。これ」

 

加工済みの焼かれた食肉……だろう。

 

「なぁ……九重。これってさ……」

 

「口に出さない方が良いですよ?これはパンドラの箱です」

 

取り出した肉を袋に仕舞う。

 

「これはきっと野生のお肉……そう、イノシシのお肉ですよきっと」

 

他にもよくわかんないペットボトルの飲み物と、イモ類の食べ物がブロック状に切り分けられており、透明なパックに入っていた。

 

「……食べるのか?」

 

「まさか。先輩は食べたいのですか?」

 

「いや……流石にそれは……」

 

「カニバリズム的な興味心があるのでしたら止めはしませんが……オススメはしませんので」

 

袋を縛って封をする。

 

「これは私の方で処分しておきます……そうですね、誰かに差し入れとして渡しちゃいましょうか」

 

「……ああ、そうしてくれ」

 

かなりショッキングな実物を見て、気分が悪い顔をしている。

 

「大丈夫ですか?胃液とか逆流してきてませんか?」

 

「ぶっちゃけ滅茶苦茶気分悪い物を見た……けど、思ったよりは大丈夫だ」

 

「それなら良かったです」

 

他の枝で既に人の死を見て来ている先輩だとしても、人を食するという禁忌と感じる物を見ればかなり精神的なダメージを受けると予想は付くけど……想像よりも平気に見える。

 

「それよりも、さっきの話で敵の注意を引く役目をするって言ってたけど、作戦はどうするんだ?」

 

「えっとですね、適当な敵の拠点……出来れば武器庫とかを襲撃して爆破しようかなと」

 

「武器庫を襲撃?」

 

「きっと沢山の火薬があると思いますので、派手な感じになると思いますよ?」

 

「ああ……だから花火って言ってたのか。なるほどなぁ……」

 

「これから起こす祭り……というよりかは運動会ですかね?その開幕の余興としましょ」

 

「運動会ねぇ……随分と物騒なイベントだな」

 

「実際のがどんなのかは知りませんが。……因みに、先輩は運動会ではどんな競技に出ていたんですか?」

 

「何に出たって……余りで100走に一回出たことは覚えてるが……そんなに記憶に残ってないな」

 

「騎馬戦とか……そうだ、組体操って実際にやりましたか?ほら、ピラミッドとか」

 

「あ~……小学校の時にしたわ。下の方だったからクッソきつかった思い出だわ」

 

「先輩身長高いですし……小学校の時からそれなりにありm……そうですもんね。今は180ですか?」

 

危ない危ない……。

 

「多分そんくらいあったはずだ」

 

私が150ちょっとしか無いので……30近く差がある。正直に言えば、近距離で先輩の表情を見る時に首が痛くなりそうである。見上げるので……。結城先輩なんて特にヤバそうだ。

 

「っと、すみません。話が逸れてました」

 

学校行事のイベントに少し興味があったが、話を戻す。

 

「流れとしては簡単です。武器庫と思われる場所へ侵入、これを爆破してとんずらします」

 

「まんまだな」

 

「可能なら周囲でボヤ騒ぎも起こしてしまいましょう。放火ですよ、放火」

 

「その言葉を聞くと、学校での一件を思い出すな……」

 

「ああ、あの一件ですか。この枝では完全に防げましたけどね」

 

「それを使うのか?」

 

「見栄えを良くするためにちょっとばかり使ってみますか?足止めとか脅しとして」

 

火が回るまでの繋ぎとして使うのはありですね。

 

「実際に火を点けるんだろ?」

 

「一応計画的に放火するつもりですよ?」

 

「計画的放火って……おっそろしい響きだな」

 

「爆破よりはマシでしょう、多分」

 

「どっちも犯罪なんだよなぁ……」

 

「まぁまぁ、死人が出ない程度に気を付けて頑張りましょう」

 

「それはほんとにな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たーまやー。かーぎやー」

 

「うおぉ……めっちゃ燃えてるな……」

 

現在、私と先輩は燃え上がる敵組織の倉庫を離れた場所から見下ろしていた。

 

「人が沢山行き交っていますね。早く逃げた方が賢明だと思うのですが……」

 

爆発し燃え上がる倉庫の一角。それを消化しようとしているのか、数名の人間が走り回っている。

 

「まぁ……直ぐに水を用意出来るとは思えませんが」

 

現代社会の様にそこら辺に容易に水が手に入る訳では無い。供給場所まで行かないとまず水は手に入らないだろう。消火器などがあれば話は別だけど。

 

「それでもアーティファクトの炎は消せませんけどねー」

 

今見えている倉庫は私が侵入して爆破させた炎とは別で、建物のあちこちに燃え上がる炎が見える。こちらは先輩が能力で偽装した炎なので実際には燃えてはいない。入口など出入りを止めるための妨害だ。

 

「おっ、誘爆しましたね」

 

暫く見ていると、別の火薬に火が点いたのか更なる爆発音と炎が燃え上がる。それを見て流石に無理だと察した人らが炎から離れていく。

 

「周囲の人らは無事逃げてくれたのかね……」

 

「見える範囲で死人や怪我人は見えませんね」

 

「それなら良いけどさ……」

 

元々建物内部で見張りをしていた人達は、先輩からの頼みという事で気絶して貰って別の場所で放置している。

 

敵側としては、どうして中に居た人が気を失って外で寝転んでいるのか疑問が残るから、私としてはそのまま巻き込まれてもらった方が都合が良かったけど……そこまで問題では無いと考えて受け入れた。それに……先輩からのお願いなので。

 

「さてと、このまま戻っても良いと思いますが……どうしましょうか。もう少しだけ妨害工作していた方が良いんですかね?」

 

この爆発音なら周囲の人らは一斉にそれに対して注目するから、警戒がある程度疎かになるだろうし……。

 

「結構騒がしくなってるとは思うんだけど、まだ足りないのか?」

 

「さぁ?他の二人がどの程度出来る人らか分かりませんので、何とも言えないんですよね」

 

これが澪姉とかなら……って、それなら陽動も要らないか。

 

「帰りつつ、何ヶ所かで軽くボヤ騒ぎでも起こしておきましょうか」

 

「俺のでか?」

 

「いえ、私の方で小規模に放火しますよ。ちゃんと他に燃え移らない範囲で調整しますのでご安心を」

 

「分かった。それなら移動しないとな」

 

まだまだ元気に燃え上がっている倉庫を一瞥して、その場を離れていく。

 

適当にそこら辺を歩きながら、人気が無いけど何かあれば気づけそうな場所を数ヶ所見つけては火を放った。もし想定以上に燃えても建物丸ごとを燃やすような火種が無いので大丈夫だと思う。

 

途中、遠くから『ここも燃えてるぞっ!クソッ!』と焦るような声が聞こえたので、無事効果は出た。

 

仕事も終えた事なのでそのまま拠点に……は帰らず、自陣の倉庫へと帰還する。

 

「流石に誰も居ませんか」

 

まだ向こうで頑張っているのだろう。

 

「どうする?ここで待つか?」

 

「帰りが何時か分かりませんし、部屋に戻りましょうか」

 

「了解」

 

誰もいない倉庫を後にして、分け与えられたボロい部屋へと入る。

 

「今日はここで寝泊まりですね。残念ですが」

 

「あの場所と比べるとかなり……あれだよな。荒れてるっていうかさ……」

 

「ゴミ部屋ですね。一応、少しでも綺麗にしておきましょうか」

 

寝床のベッドを整え、足場のゴミを纏めて一ヶ所に退ける。

 

「ベッドの方はこれを敷いて寝て下さい。そのまま寝るよりはかなりマシでしょう」

 

懐からシーツを取り出して先輩へ渡す。夜はこれを持っていたので外套の中がかなり嵩張った。

 

「ありがてぇ……あるとないとでは全然違うからな」

 

「枕は流石に無いので我慢してくださいな」

 

新品のシーツを綺麗に敷き、外套を脱いでそこへ座る。念のために部屋全体と扉にはアーティファクトの能力でロックしておく。

 

「お腹とか空いてませんか?一応水と軽食は持参していますが……」

 

水のペットボトルと食べ物を取り出す。

 

「水を貰っても良いか?そっちは来る前に食べたしまだ大丈夫だ。ありがとな」

 

「了解です」

 

先輩の分の水を渡し、自分の分の水を飲みつつご飯……ブロック状の栄養食品を食べる。

 

「後はもう寝るだけか?」

 

「ですね。拠点に戻りたいのですが……多分部屋を訪ねて来そうなので今日はここでお泊まりです」

 

「あっちはいつ帰ってくるんだろうな」

 

「あと一、二時間で戻って来るとは思いたいのですが……別に待たずに寝ても大丈夫ですよ、私が起きていますので」

 

「……部屋の中見られたら不味くないか?」

 

「部屋の中は見られない様にしますので大丈夫ですよ」

 

「俺もまだ眠たくないし、起きてるよ」

 

「んー……了解です。眠気が来たら遠慮せずに言って下さいね」

 

先輩と雑談しつつ時間を潰していると、二時間経たない辺りで部屋をノックされたので私が外へ出た。

 

部屋の外には自分の仕事を終わらせたであろう流浪人が立っていた。

 

「おっ、ちゃんと生きて帰って来てたか」

 

「五体満足でしっかりと。そちらも特に問題無さそうですね」

 

「まぁな、そちらさんが派手に動いてくれたおかげでやり易かったぜ。あんがとな」

 

「それなら良かったです。そちらの目的は達せましたか?」

 

「ボチボチって感じだ。ま、大丈夫だろ」

 

「ならこちらとしても安心出来ます。……それで、何かご用でしたか?」

 

「いいや、一応そっちが無事か見に来ただけだ。邪魔したな」

 

「そうでしたか。ありがとうございます」

 

「んじゃ、ゆっくりと休んでくれ」

 

「明日の夜は必要ですか?」

 

「多分ねぇと思うが……一度顔を出してくれ」

 

「分かりました。それでは、おやすみなさい」

 

背を向けて去って行くのを見ながら部屋のドアを閉める。

 

「やることも済みましたし、寝ましょうか」

 

「だなー……明日はどんな感じになりそうだ?」

 

「一旦拠点へ帰って……特に何も無ければ再び街の調査ですね」

 

発信機の方での場所の特定もある程度済んでいる事だし、そろそろ動いても問題無いだろう。

 

その日は先輩が寝たのを確認してから私の方で朝まで安全を確保しつつ起き、日が昇り始めた時間帯にここを出た。

 

拠点へ戻り、服や体を綺麗にしてから朝食を済ませてベッドへダイブして一度睡眠をとった。昼頃に一度起き、ご飯を食べてから先輩とダラダラしつつ夜まで過ごした。

 

 





謎の肉……イラン豚かな()

実物は主人公が他所へあげました。

2024/4/1に活動報告の方に今後の予定?を書き込みました。興味があればぜひ覗いて見て下さい。

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