9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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遂にあのフルーツたっぷりのパフェを……。




第12話:今回の取引はこちらに得しかないので私の勝ちですね

 

「それじゃあ、私、裏から入るね」

 

「ああ、バイト頑張ってな」

 

「うん」

 

「みゃーこ先輩、またあとでね~」

 

「お世話になりまーす」

 

バイトの為に裏口に向かう九條先輩を三人で見送る。

 

「にいやん、あたしパフェ食べたい」

 

「勝手に食べろ。奢らないぞ」

 

「けち~」

 

「先輩、私はパフェとは言いませんが、何か甘いものが食べたくなってきました……ちらちら?」

 

「くっ……!それが今回の報酬と言うわけかっ?」

 

「うーん。ではそうしましょうか。天ちゃん。一緒にパフェ半分こしよっか?」

 

「え、ほんと?やったー」

 

「友達にたかるなよ。しかも報酬を……」

 

「先輩。私が良いのでお気になさらず、それに美味しい物は一緒に食べた方が更に美味しくなるんですよ?」

 

「どうしてこんないい子が、天の友達をしてるのか未だに謎だわ……」

 

「え、なに?今、貶された?私の心が汚れてるってか?ぉお?」

 

「私はただ、美味しい物を食べて喜ぶ天ちゃんの笑顔が見たいだけなんです……それを報酬として頂けるのなら悔いはありません……!」

 

「だってさ。お前美味しそうに食えよ」

 

「それなら自信があるねっ!いや寧ろ自信しかない」

 

新海兄妹と雑談を交わしながら適当な席につき、取りあえず飲み物を注文。

 

店内を見渡すが、今回の目的の人物はまだ来店してなかった様ですね。

 

「お待たせしました。何かご注文はございますでしょうか?」

 

「えっと、コーラを二つ、それと紅茶を1つ、デザートでこの……フルーツパフェを……一つ、下さい……!」

 

「飲み物がコーラおふたつ、紅茶がおひとつ、デザートでフルーツパフェですね。ご注文は以上でよろしいでしょうか?」

 

「以上でお願いしまーす」

 

「畏まりました。少々お待ちください」

 

頭を下げて厨房へ注文を伝えに向かう。いつ見ても目の保養になりますねぇ……。ツインテ眼鏡先輩も最高です。

 

「……にいやん。ほんとに良かったの?一番高いパフェを頼んだけどさ」

 

「いや、良いんだ。それで報酬分の成果を出してくれるなら……尊い犠牲だろ?」

 

「いやーすみません。一度も食べたことなかったのでこの機会に食べてみようかと思いまして……先輩の奢りで食べるパフェはさぞかし美味しいんだろうなって」

 

「なんだか分けて食べるのが申し訳なく感じるわぁ……」

 

「でもちゃんと天ちゃんも食べないといけないからね?それ込みでの報酬なのです」

 

「私は得しかないから良いんだけどねー。そしてにぃにはご愁傷様」

 

「いいさ、都を守れる可能性を少しでも上げれるなら俺に出来る事は何でもするさ」

 

「ひゅーひゅー。流石は彼氏さんっ!頼りになりますな。……まぁでも、先輩の期待通りにはきちんと働きますのでご安心を……」

 

今回、先輩から持ち掛けられた話は、別の枝で九條先輩が石化されたのを知り、それを回避する為に犯人特定を急いだ結果、香坂先輩の記憶からオフ会を開催したのを読み取ったらしい。それらは夜な夜な九十九神社に集まっているとの情報を聞き、本日から張り込みをする事となった。その戦力として私は呼ばれたのである。言ってしまえば結城先輩のポジションであった。

 

が、不安材料を無くしたい。仲間を集めたい。とのことで結城先輩も誘う事になりましたー。この中で一番私が交友関係を持っているので提案を持ちかける役割を買って出ました。

 

「お待たせいたしました」

 

先輩と天ちゃんと話していると、飲み物が届き少ししてからパフェも届く。

 

「おぉ……!これがあの噂のフルーツパフェ……ですね!」

 

「やば、想像以上にフルーツたっぷりじゃん……」

 

「俺も初めて見たが、値段が高いだけはあるな」

 

「それでは!新海先輩、いただきますね!」

 

「ああ、存分に味わってくれ……」

 

スプーンを取り、パフェの頂上にある果物を掬い食べようとする。

 

カランカラン。

 

ドアが開く音とベルの音に誰かが来店したことを知る。そちらに目を向けると、目的の結城先輩が入って来た。

 

「……天ちゃん、あーん」

 

「ん?ぇえ?あ、あーん……」

 

食べかけていたパフェを天ちゃんの口に押し込む。

 

「先輩、先にお仕事を終わらせてきますね?」

 

「良いのか?まだ食べてないだろ?」

 

「きちんとこなして見せてから食べようかと思います。あ、天ちゃんは引き続き食べてて良いからね?出来れば美味しそうに食べてくれると助かるなー」

 

「えっと、食べないの?先に食べるの申し訳ないんだけど……」

 

「ううん、結城先輩を取引に応じさせるために必要な事だからお願いね?」

 

「お、おぅ……よくわかんないけど、わかった……」

 

結城先輩が席に着いたことを確認してから席を立つ。先輩らと一番離れた席に座って居る結城先輩の席に向かう。

 

「結城先輩、今大丈夫ですか?」

 

「……何かしら?」

 

「率直に言いますね。魔眼のユーザーの情報をこちらで掴みました。その話がしたいんです」

 

少しうざったそうな表情が興味を持つ。

 

「席、座っても良いですか?」

 

「……ええ、許可するわ」

 

「ありがとうございます」

 

許しが下りたので正面に座る。横に座るのは流石にダメだよね。

 

「それで、聞かせてくれる?」

 

「はい。内容としては魔眼のユーザーが仲間と思われる人たちと集まっている場所を特定しました」

 

「場所は?」

 

「成瀬家の九十九神社です。夜に密会を開いていると思われます」

 

「……夜の神社ね」

 

「確定では無いので今日から私達は夜に神社に張り込みをしようかと考えています。結城先輩にはそれに参加して欲しいんです」

 

「……貴方達と関わるつもりはない」

 

「先輩一人で行くつもりですか?相手は聖遺物を持った集団ですよ?」

 

「関係ない。負けるつもりはない」

 

「いえ、残念ながら負けますね。結城先輩一人ではどうあがいても敵わないかと……」

 

私の即答した挑発にあからさまに苛立った目を向ける。

 

「はぁ、何を根拠にあなたはそう言ってるの?」

 

「そうですねぇ、確かに結城先輩の自信を見る感じ聖遺物のジ・オーダーはかなりの汎用性と強力な物だと容易に想像つきます」

 

「そうね、能力の詳細を言うつもりはないけれど……石化の能力に負けるとは思えない」

 

「結城先輩の能力の発動条件はどうでしょうか?発動する為に踏む必要があるプロセスは?そしてその範囲と効果は?能力によって条件は様々です。九條先輩などは発動条件が厳しいですが、発動出来ればかなりの強さです。逆に天ちゃんの能力は発動は任意で条件も無し。ですが、効果やその範囲がいまいち心もとない能力です」

 

「恐らくですが魔眼のユーザーは前者に近いかと思われます。発動条件は予想ですが相手と目を合わせたりする必要があるかと……そして石化までにはそこそこの時間が掛かるはずです。その分決まれば確実に相手を殺し得る力と言えるかと思います」

 

「今のを聞いて結城先輩の能力はどうでしょうか?あ、言う必要はありません。勝てそうなのかどうかだけ言って頂ければ十分です」

 

私の言葉を聞いて、少し考えるように目を閉じる。

 

「……結果は変わらない。私のジ・オーダーは、無敵」

 

「ふふ、分かりました。それなら取引をしませんか?勝てると宣言した先輩を見越しての正当な取引を……です」

 

片肘を付き、指に顎を乗せ、それっぽ~い声と雰囲気を醸し出して目を向ける。

 

「……正当な、取引……」

 

やっぱり乗ってくれた。こういうのお好きですもんね。

 

「はい。内容は先ほどの張り込みへの参加です」

 

「……報酬は?」

 

「そうですねぇ……以前先輩に奢り損ねたフルーツパフェなんてどうでしょうか?この前のお詫びを込めて、今日から一週間。どうでしょうか?サンプルとして、今向こうで私の友達が美味しそうに食べているのが報酬のブツですね」

 

「引き受けた」

 

うーん。この速さ。

 

「ありがとうございます。それでは、とりあえず今日の分を食べますか?」

 

「ええ、そうね。先に今日の報酬を頂こうかしら」

 

待ちに待った結城先輩へのフルーツパフェが決まり、待っていた九條先輩に手を振る。

 

「ご注文お決まりですか?」

 

「九條先輩、彼女に天ちゃんと同じフルーツパフェを1つ、お願いします!」

 

「フルーツパフェが一つですね。かしこまりました」

 

「確認だけど、明日からも決行前にこの店に来るから」

 

「はい、食べたくなったらいつでも言って下さいねっ!」

 

ふはは、完全勝利だ!天ちゃんと結城先輩が美味しそうにパフェを食べる姿を見れる。

 

「それでは、私は元の席に戻りますね?結城先輩の憩いの時間をジャマしたくないので……」

 

「ええ、支払いよろしく」

 

「はい、喜んでー」

 

にこにこした表情で席へ戻る。

 

「随分と嬉しそうな顔してるって事は成功したってことなのか?」

 

「はいっ、無事に結城先輩にフルーツパフェを食べてもらえることが出来ました!」

 

「え?フルーツパフェ……?」

 

「あ、すみません間違えました。無事に張り込みに参加する事を了承していただきました」

 

「うまくいったみたいだね」

 

「私の巧みな話術によって結城先輩もコロリと落ちましたよ。新海先輩、褒めてください」

 

「うむ、よくやった」

 

「ははぁー、勿体なきお言葉っ」

 

「でさ、さっきのフルーツパフェは何なの?ほら、パフェクイーンに食べてもらうとか何とか……」

 

「えっとね、以前に結城先輩にパフェを奢る約束を取り交わしたのを、ここに来てようやく果たせたのでつい舞い上がっちゃった」

 

「そんな約束してたの?」

 

「そうだよー。以前に新海先輩と九條先輩と出くわした時です」

 

「ああ……あの時か。俺たちが邪魔したせいで帰った日か」

 

「そそ、その日です。……では先ほど中止したフルーツパフェの続きを頂くことにします!」

 

「ほい、少しだけ食べたけどすんごく美味しかったよ」

 

天ちゃんからスプーンとパフェを受け取り、一口食べる。念願のフルーツパフェである。

 

「……果実の暴力ですねこれは。クリームとかが邪魔していませんし、ちゃんと主役として目立つ美味しさです。お互いのフルーツが喧嘩しない様に配慮されています……」

 

「天とは大違いの食レポだな。こいつ美味い美味いとしか言わなかったぞ」

 

「つまり美味しかったってことですね。分かりやすくて良い感想だと思いますよ」

 

「何だかフォローされた気分……」

 

「新海先輩も食べてみます?フルーツとかが嫌いでなければ、ですが」

 

「いや、別に食べれるぞ?」

 

「それなら安心しました。ではこの部分を食べてみてください」

 

クリーム付きのフルーツをスプーンに乗せ、口元まで持っていく。

 

「え?」

 

「ん?食べないんですか?」

 

「いや、なんで九重が俺に食べさせようとしてるのか不思議なんだが……」

 

「そうですねぇ……天ちゃんにしたので、先輩にも"あーん"をしておかないと、こう……コンプリート感が無いなと思いまして……」

 

「いやいや、舞夜ちゃん?何そのコレクター魂」

 

「あはは、冗談ですよ。流石に九條先輩を差し置いてするわけにはいきませんよね。はい、スプーンです」

 

「お、おう、ありがと」

 

「にぃに、みゃーこ先輩がいるのに動揺してませんかい?……いやらしっ!」

 

「してねーよ、くたばれ」

 

「それは言い過ぎでは?」

 

「後で九條先輩に報告しておきますね?」

 

「……勘弁してくれ」

 

 

その後、新海兄妹は早めに夕食を取りに帰宅し、結城先輩も一旦店を後にした。

 

私も帰ろうかと考えたが、折角ナインボールに居る事だしお店で晩御飯を食べることにした。

 

「舞夜ちゃんはここで食べていく?」

 

「そうしまーす。九條先輩は今日は早めに上がれそうですか?」

 

「うん。おじいさまに相談して許可をいただけました」

 

「おお、良かったです。では私と一緒に行きましょう?待ち合わせ場所までエスコートさせて下さい!」

 

「ふふ、それじゃあお願いしようかな」

 

「お任せをっ。羽虫一匹たりとも近づけさせません!」

 

ちょくちょく暇なタイミングを見ては九條先輩と話しながら時間を潰し、バイトを切り上げて出て来た九條先輩と一緒に私が呼んでおいた車に乗り、神社に向かう。

 

「天ちゃんと先輩は今着いたみたいです。結城先輩はまだみたいですね」

 

「ごめんね?わざわざ一緒に乗せてもらっちゃって……」

 

「九條先輩なら全然大丈夫ですよ。最近物騒な事が多いので女の子だけで夜道を歩くのは危ないってことなので」

 

「ぅ……今から危ないかもしれない事を……」

 

「それは確かに……でも平気ですよ、いざって時は私が守りますから。九重家の護身術が火を噴きますよ」

 

「舞夜ちゃんが危険な目に合うのは賛成出来ません」

 

「いえいえ、その為の護身術ですよ。もしもの時に役に立てるように鍛えたのですからっ!きっと九條先輩を守るために今まで頑張ったと言っても過言ではありません!」

 

「ええー……。あ、そういえば気になったんだけどね、舞夜ちゃんは何時頃から教わっていたの?小さい時からっておじいさまからは聞いたけど……」

 

「うーん、何歳だったかあやふやですが少なくとも小学生辺りですかね?その頃に色んな人から話を聞いたり学んだりした記憶があるので多分その頃かと思います」

 

「凄いね、何年もちゃんと続けられて。何か目標があったりとか?それとも……家がしているからとか?」

 

「それはもう、きちんとした目標と将来図があるのでそれに向かって頑張っているって所です!」

 

「将来まで……!?舞夜ちゃんのおじいさまの家業を継ぎたいとかかな?」

 

「いえ、後継ぎは決まっているので、どう頑張っても私は継げませんねー。別です、別」

 

「あ、もう決まっていたんだ。……別の目的?」

 

「はい。その……倒すべき標的が、居るんです。そして、救いたい人達が居て……私は、そのために今まで頑張って来たんです……」

 

「え?倒したい……?」

 

「舞夜様、九條様、神社に到着しました」

 

「着いたみたいだね!九條先輩、降りましょう」

 

九條先輩からの疑問を運転手が遮った事で話が途切れる。

 

「あ、うん。送って頂きありがとうございました」

 

運転手にお礼を告げ、下車する。正面には新海先輩と天ちゃんがこちらに向かって手を振っていた。

 

「残りは結城先輩だけみたいですねー」

 

「そうみたいだね、時間までもうちょっとあるからそろそろ来るかもしれないね」

 

「では私達も待ちましょっ」

 

九條先輩が二人に手を振りながら合流しに向かうのを後ろから付いていく。

 

私の目標かぁ……。最初に決めた時から今でも変わらずにずっと思い続けていますよ?しっかりと……。それを成すことが九重家に返せる恩返しでもあり、求めている願いでもある。そして私がこの世界に来た意味と、存在価値を証明出来る。

 

だから、必ず先輩達を、選択した枝の先まで必ず辿り着ける様にします。今日の事はその為の大事な始まりの物語……なので。

 

改めて誓いを確認し、嬉しそうに手を振る先輩の後を追った。

 

 

 





次かその次で、この枝は終わりになりそうです。

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