えー、話も後編に向けて進み始めたので、唐突に過去話を少しぶち込みます()
詳しくは街の一件が落ち着いてから差し込もうかと思います。
……曇らせって、良いよね。※あくまで晴れる前提での
「九重……どうしてお前が……」
私の目の前には、こちらの疑いが確信した様な目を向けて敵対する先輩と、それを不安と心配が入り混じった表情で私と先輩を交互に見る九條先輩と天ちゃんが居た。
ああ……、これは夢なんだ。と、直ぐに気づけた。
この夢は、私のこれまでの……過去の記憶なんだと理解する。
拒否しようともどうしようもなく自由が効かない夢の中をただ身を任せてそれらを見ていく。
「これが……正しい選択、なんですよね……?これで……」
少し離れた暗い夜の境内に、九條先輩だった砕けた石に向かってポツリと告げる。……そろそろ新海先輩が来る頃だろう。早くここを離れないと……。
「香坂先輩が……」
記憶の中にある枝が終わりなので、この世界も終わりだと思っていたが、それはゲームの中だけだった。
それも当然の事だ。ここは現実なのだから……。
「けど、これ以上私に出来る事なんて……」
確か、それから大体一カ月後に今度は結城先輩が行方不明になったんだっけ……?
「頼む……天だけでも、守ってほしい……。今更俺が言うのもおかしいってのは分かっている……」
次々とアーティファクトを所持している人が消えていく中、次は自分か妹の番かもしれないと恐怖で顔を歪めながらも私に向かって頭を下げる。
……それに対して、私はただただ了承する事しか出来なかった。
この枝は、いつまで続くんだろう。早く次の枝に行ってくれないだろうか……?
と、当時の私は考えていたっけ?
「こんな時に……一族の争いだなんて、いや、こんな時だから……かな」
一ノ瀬家からの襲撃に遭った。想定より遥かに多い数と武力に対応が遅れてしまった。白巳津川を巻き込むように何日も続いた戦いをなんとか鎮静化させる。
……けど、この騒動で沢山の人が死んでしまった。それに……。
事前に新海先輩と天ちゃんには安全な場所に避難して貰っていた。けど、何となく分かっていた。アーティファクトを持っている限り安全な場所なんて存在しないって事は……。
天ちゃんが消えた。
私が二人の元に駆けつけた時には、意識不明で倒れている新海先輩だけが居た。
病院で眠っている先輩が映る。生きてはいるけど、その目が開かれることは二度と無い。当時の私には分からないけど……今の私には分かっている。
……これでも、この世界は終わってくれないのだろうか。私はまだ知らない振りを続ける必要があるの……?
ソフィは見切りを付けたのか、神社の一件から滅多に姿を現さない。たまに現状の確認をする程度だ。
ただ茫然と……病室にいる先輩の横で早く起きないかと日々を過ごしていると、今回の一族の一件で火種になる私と、一ノ瀬家の生き残りである璃玖さんが居ると面倒事が起こる可能性があると言われ、距離を置くことになった。
……まぁ、実質的な破門と言っても良いだろう。ほぼほぼ絶縁状態である。
けど、もはやどうでも良かった。もうこれ以上戦う意味も、生きる理由も無い。
告げられた言葉に静かに返事をして、新海先輩の容態だけは常に連絡して欲しいとだけお願いして白巳津川を去った。
いや、去る前にまだ一悶着が残っていたね……。
そう考えると、それに応えるように場面が切り替わる。
「どうして……どうして最後の最後に私だったんだろ……あはは」
血に濡れた手と服……既に息絶えた状態の深沢与一の衣類と地面が血で染まった。
「……せめて、遺品だけは貰っておこう、かな……?」
皆のアーティファクトを再契約し、魔眼を回収してその場を立ち去る。
ここからは、ひたすらに虚無の時間を過ごしたんだっけ……?ううん、今がある以上価値はあったから違うわね。意味はちゃんとあった。それは間違いない。
この時の私は……いつか、新海先輩が目を覚ますはずだと……可能性の低い賭けを信じて。
「ねぇ、まやまや。いつまでこんなことを続ける気なの?」
ある日、璃玖さんに問われた。自分でも分かってる。無駄だって事くらい……だけど、何かをしていないと、何をして生きて行けば良いのか分からなくなってしまうから……。
璃玖さんと二人で隔離されてから、私は自分のアーティファクトを使って身体の維持の為に能力を使った。成長するのは良い、けど老化だけはダメだ。それはおじいちゃんを見ていればよく分かる。
日に日に、歳を取るごとに衰えを感じ始めているらしい。
私の歳も、白巳津川で過ごして居た澪姉ほどになった……と思う。
この頃から、おじいちゃんも現役を退いて九重家にも色々と動きがあったみたいだけど……もう私には関係が無い事だ。私はただ、新海先輩が目を覚ますまで強くなって……。
強くなって……?
強くなって……どうするんだろう……?
分からないけど、それしか出来ないから……。
救いの無い日々を過ごす私を見ている。けど、報われる日が来るんだと……それを私は知っている。
あれから沢山の時間が過ぎた。繰り返される毎日のルーチンワークをこなしている。変わらない日々……。
いや、私の周囲はどんどん変わっていく。歳を取った事を実感するように皺が増え、体が鈍り、声がかすれていく。
けど、私はアーティファクトによってそれを遅らせている。衰えない為に……。
新海先輩の安否については今も変わらない。
既に家族や医者からは見放されている。最初の三か月の判断を無理矢理伸ばして貰い、なんとか二年を保って貰ったがこれ以上は無意味と判断されたので私の方で引き取った。
家族には九條先輩のアーティファクトで記憶から消えて貰った。大切な家族の記憶を消すと言う最低の行為だけど、新海先輩が死ぬよりはマシだと判断した。
その後、私の身体に使っていた能力の一部を先輩の体の劣化を防ぐ為に使い、九重家関係の医療施設で安全に確保している。24時間体制でバイタルの確認も行っている。起きれば直ぐに連絡が来るだろう……。
最近、ソフィが顔を出した。
門を閉じた状態でもこちらと干渉が出来るようにしたからアーティファクトを回収しに来たと言っていた。けど、必要な能力は渡せないのでそれ以外を渡して追い返した。
私を憐れむような侮蔑の声で何かを言っていたけど、聞かずに幻体を消した。
今日もまた、強くなるために……。璃玖さんも歳を取り、私との鍛錬に合わなくなったので、私一人で……。
「……そう、ですか、とうとう先輩の番が……来たのね……。はい、分かりました……」
連絡用の機器を置く。
とうとう、本当に私一人になってしまったらしい……。
これで……ようやく―――。
「………、……っ!?」
目を覚ます。
「……夢。そりゃ、そうだよね……あはは」
涼しい部屋の空調とは逆にじっとりとした気持ち悪い汗、鼓動の早い心臓と冷えた様に感じる体を起こす。
「……ん……」
落ち着くように呼吸をしていると、寝返りを打つように隣で寝ている先輩の体が動く。
「………」
その様子を見て静かに寝ている先輩の手を握る。
「良かった、温かい……」
当然のことを実感して安堵する。寝起きで混乱していた頭がゆっくりと冴えてくる。
「嫌な……夢」
変なタイミングで見てしまった。……いや、こんなタイミング、だからだろうか……?
横の先輩を起こさないよう静かに寝室を出る。
「……ふぅ」
身体を鎮めるように冷たい水を飲みながら一息付く。
「変な夢を見たせいで、ちょっとおかしくなってるかもね……」
この枝の私を演じる為に、可能な限り記憶の隅へ閉まっていたけど……さっきの夢で少し表に出てきてしまったのかもしれない。
大丈夫。ここは私が居た枝ではない。全部……全てが上手く行った世界、皆が居て、イーリスも倒した平和な……。
だから、再び皆に危険が降りかからないように動く……それだけ。それだけでいい。
「それだけで良かったんだけどねぇ……」
「なぁ、本当に連絡して良いのか?」
街の外壁に近い場所でスマホの電源を点けながら、隣で同じように連絡用の通信機と思われる機器を持っている九重に確認する。
「はい、大丈夫ですよ。そろそろ一週間も経ちそうですし向こうも心配になって来る頃でしょう?」
「連絡できなくなるとは言ってはいるが……そうかもな」
「なので皆さんを安心させて下さいな。通話も一応大丈夫ですが、あまり長電話は……」
「いや、少しでも話せるだけありがたいさ」
「私も実家の方に連絡をしますので、終わったら電源切って待っててくださいねー?」
「おう、了解」
とは言っても、誰に連絡をしようか……。取りあえずはグループの方に連絡をしておくか。
崩れたコンクリートの段差に座ってからLINGを開き、使用していない間の大量の通知を受けながら皆に送るメッセージを考える。
「こっちは元気にしている……っと。てか、俺が居ないのに俺の話題が上がってるな」
時折こっちを心配する様な話題が上がっている。最終的には希亜の方から大丈夫と言って締められていた。
「……うぉっ、もう返ってきた」
皆の会話履歴を流していると、天の方から速攻でメッセージが来た。
「"そっちは大丈夫なん?舞夜ちゃんも大丈夫そう?"って、まぁ、気にもなるか」
あまり詳しくは話せていないのだから当然かと思いながらも、返信をしようと文字を打ち始める。
「特に問題無いから大丈夫だ……って、待て待てこっちが返す前に次を送ってくんなよ……」
俺が返信をするより先に次々とメッセージが送られてくる。その連投に他も気づいたのか、天以外からもメッセージが送られてきた。
概ね内容自体は変わらない。俺への心配と九重の心配、それとこちらの様子や無事に帰って来てとのこと。
「電話の一本くらいはしてやりたいが……」
ここで電話をすると絶対ビデオ通話になるだろう。しかもグループでの。
そうなると、背景を映してしまうことになりかねない。と言うか天あたりが絶対に言って来るはずだ。『顔見せろ~』的な感じで。流石にそれは出来ない。
メッセージのやり取りをしながら九重の方にも気を向けて見ると、会話の内容までは聞こえないが何やら真面目そうに話をしていた。
恐らく、これからの事で連携を取るために調整をしているんだろう。
「………」
昨日の一件で、俺達……正確には九重がどう動くかを決めたと言っていた。勿論それについて俺がどうこう言う気もないし、資格もないだろう。
「……うーむ」
けど。それでも、あまり俺達を助ける為に背負ってほしくは無いと思うのは傲慢な考えだろうか。
「今更な問題な気もするけどな……」
既にこれまでも何度も助けて貰っているし、それを九重に言ったところでやんわりと断られるだけだろう。
なら、俺に今出来るのは可能な限り負担を減らせるように手助けをして、終わった後にちゃんと労うこと……か?
「んー……っと、まずは返信をしないとな」
考えてる内に、皆から追えない速度でメッセージが送られてきていた。
「一つ一つに返すの大変だろ……これ」
一度全部見てから返そうとメッセージを読み進めて行く。
「こちらは終わりましたが、そっちはどうですかー?」
画面をスクロールしていると、話が終わったのか九重が戻って来た。
「おー……、こっちは今頑張ってる途中だ」
「あはは、予想通りですねー」
読みながら軽く手を上げて返事をしていると、俺のスマホの画面を後ろから覗き込む。
「なんて来てます?って、めっちゃ来てますねっ」
「大体はこっちの心配とかを聞いたり、無事帰って来いとかそんな感じだな」
「ふふ、愛されてますねぇ……」
「ちゃんと九重の事も心配してるぞ」
「それはそれは……ありがた過ぎて涙が出そうです」
『うぅ……』と、背後で感激するように泣く真似をしている。
「いつ頃戻るのか聞かれたんだが……決まってたりするのか?」
スマホの画面から顔を上げて聞いてみる。
「んー……そうですねぇ。遅くても来週中には帰る予定ですよ。勿論可能な限り早く終わらせるつもりですが……」
「いや、無理に急ごうとしなくても大丈夫だぞ?あくまで気になっただけだ」
「多分、早ければ平日の中日には……」
「だから気にしなくも良いって。九重のやりたいようにじっくり進めてくれ。俺はそれに従うさ」
「……ありがとうございます。頑張ってみますね」
「俺にも出来ることがあれば言ってくれ。可能な限り頑張るぞ?」
「いやー……先輩が頑張ったら駄目ですよぉ。色々と楽になり過ぎますから」
「頑張ったら駄目って……」
「先輩は頑張らなくて良いんです。沢山頑張って来ましたらね……って、言っても他の枝の事を任せてしまいますが!」
一瞬優しい表情でこちらを見たかと思うと、直ぐにいつもの調子に戻る。
「そう言えばそうだよなぁ……起こるのは他の枝でもだもんな」
「その時は私に……いえ、九重家に相談してもらえれば全部解決してくれますよ」
「九重の実家にか?」
「はい。先輩がオーバーロードで未来を知っているのは既に共有しているので、すんなりと話は通せると思いますよ」
「まぁ、正直俺だけじゃ無理だし、そうなりそうだよな……現実的に考えて」
「餅は餅屋ってやつですね!」
「その時になったら頼らせてもらうよ」
「了解です。ところで、LINGの方は大丈夫なのですか?」
「そうだった」
九重に催促され再びやり取りをする。
「メッセージだけで良いんですか?電話で声を聞きたいとか……?」
「いや、今は良いかな。したらしたでビデオ通話とかになって収拾付かなそうだし」
「……すみません、気を遣ってもらって」
俺の言葉を聞いて簡単に先を想像出来てしまったのか、謝って来る。
「謝らなくて良いって。そもそも連絡すら出来ないって思ってたからな。逆に俺の為に時間を作ってくれたことに感謝してるくらいだ」
九重が連絡取るだけなら俺も一緒にする必要は無い。来る前にも言ってた様に万が一のリスクになりかねない。それでもこうやって機会を用意してくれただけで充分だ。
「それは……そもそも私が先輩をこんな場所に連れて来たのが問題でして……」
「九重が誘って来たのはそうだが、それを選んだのは俺だぞ?ならその責任は俺にあるだろ」
「そういうことではなく……いえ、これ以上は止めておきます。幾ら言葉を並べても全部違うと言われそうですし……」
「それよりも、今後の予定を聞かせてもらえるか?」
「分かりました。先輩LINGが終わり次第戻りましょうか。そこで話しましょう」
「頼んだ」
皆とのメッセージでのやり取りに一段落を付けてから電源を切り、ポケットへ入れてから拠点へと戻った。
「それでは、先ほどの舞夜様から受けた報告内容をもう一度纏めましょう」
白巳津川にある九重家の一室で、九重舞夜を除いたいつもの面子が集まっていた。
「まずはこちらの実行は当初の予定より四日程前倒しになりそうですね」
「思いのほか向こうでの情報収集が上手く行ったみたいね」
「舞夜様と一緒に彼が居ますから。潜入から隠密、情報収集もお手の物でしょう」
「ふん……このくらい役に立って貰わんとな」
「ま、舞夜はあまり働かせない様にしているみたいだけど」
「宝の持ち腐れになってしまうだろうが……」
「あの子の気持ちは分からなくもないけれど……全くね」
「……話、続けますね?」
これ以上放置していると、どんどん脱線して行きそうな気がしたので、話を戻す。
「一ノ瀬家と協力関係にある組織については、特に重要な追加の情報は無さそうですね。一ノ瀬家の者と思われる人物を見かけたというのと、組織の人間の住処を一つ処分した……ことくらいでしょうか」
「……ま、当然よね」
「じゃな」
「対立しているもう一つの組織に潜入し、幾つか情報を得ると共に組織内のトップと思われる男との接触をしたとの事です」
「舞夜が言っていた見た目と同じじゃ。まず間違いないだろう」
「そうですね。過去にある容姿とも一致していますし、大丈夫かと思います。問題は次ですが……」
「……相手の考えを好き放題覗けるって、ほんとインチキよねぇ……」
「そのおかげもあって楽に進めます。そう突っかからないで下さい」
「分かってるわよ」
「舞夜様は、こちらも同じように一度組織を潰すと仰ってましたが……」
「間違いなく、街への事を考えてだろうな」
「私個人としましては、穏便に収められると思いますが……」
「無駄ね。諦めた方がまだマシ。舞夜にとってのこの街に居る大好きなあの子らに手を出す可能性が少しでもあるって分かった時点でどの道滅ぼすわよ」
「やっぱり、そうなりますか」
「私に説得を期待しても無駄ね。前に似たような事が二度あって話してみたけど、聞く耳を持たなかったわ」
「それに関しても話しても意味は無いだろうが。舞夜にとって譲れない部分じゃ。そうなる前提で進めよ」
「……ですね、そうします」
「もしどうしても止めたいのなら、今あの子と一緒にいる人にでもお願いしてみたら?まだ可能性はあるかもしれないわよ?」
「……やめておきましょう」
「それが賢明ね」
「これについては、そうなることを前提に進めておきます。後は……」
「一緒に居た男ね?」
「はい。護衛として雇っていると思われますが、今の舞夜様から見てもかなりの実力者みたいです」
「お前の名を出していたらしいが、何か心当たりでも無いのか?」
「二年前なんて言われてもねぇ……、舞夜が警戒する程の人間なんて1人しか思い浮かばないわよ?」
「となると……奴か?」
「過去の履歴を漁ってみましたが、時期的にも同じですしそうだと思います」
「確か、そうね……死神とか呼ばれてたわよ?」
「こちらが持っている情報と容姿に違いがありますが……恐らく変装でしょう」
「この国に来たとかの記録はあるか?」
「……いえ、最後の目撃場所は確か欧州で止まっていますのでそこからは分かりません」
「かなり面倒な相手だったわよ?長引きそうだったからターゲットだけ始末して直ぐに帰ったわ」
「ふむ……ま、今の舞夜なら問題ないじゃろ」
「まぁ、そうなりますね」
「むしろ相手の方が何秒持つか心配になるわね」
「何かあっても彼がやり直して修正してくれることでしょうし、こちらとしては特に手出しはしない方向で行きます」
「では、次はワシらの方じゃな」
「既に一ノ瀬家と組織の動きは把握しておりますので、機先を制せるはずです」
「動かせる者たちにも連絡は怠るなよ?」
「抜かりなく。それと一つ……」
「何じゃ」
「舞夜様の幻体の方はどう使うべきか少し悩んでいまして」
「好きに使って良いと言われておるが、出来る範囲が広すぎなのも困りものじゃな」
「ええ、その気になればお一人で複数のエリアの制圧も容易ですから……」
「不死の体じゃからなぁ……ま、好きにさせておけ。最初から戦力として加えておらん」
「ではその様に。一応、万が一を考えてご友人の護衛に回っても良いとだけ伝えておきます」
「そっちについては伝手があるって本人が言ってたわよ?」
「伝手、ですか?」
「ええ、詳しく聞いて無いから分からないけどね」
「……後ほどの連絡時に軽く聞いておきます」
「後は浮島家……七瀬ちゃんの件ね」
「はい、既に浮島家には浮島七瀬の方から陣営に話しておりますので、こちらも問題は無いかと……」
「前から裏でコソコソと会っておると思っていたが……一ノ瀬家の娘と合わせて手を組んでいたとはな」
「最初舞夜様から聞かされた時はこちらを油断させるための偽装だと思いましたが……」
「私は前から知っていたわ。七瀬ちゃん、すごく良い性格をしてるわよ?」
「……どっちの意味でかは聞かないでおきます」
「無事に次の世代の子らもすくすくと育ってきておる。良い事じゃな」
「……そうですね、良いことなのは確かです」
「その為にも一族としての根幹を揺らがす者は排除せねばな」
「ふふ、その計画の出鼻が挫かれた時の顔を見物ね」
「聊かこちらが有利過ぎますがね」
「じゃな。ワシ個人としては少しは楽しませてほしいと願うばかりだ」
毎度会議の場で「え?その話、私聞いておりませんが……?」をちょくちょく味わう壮六さん。
ひとえに九重澪が任務以外の話を言わないのが原因……。