襲撃回!
尚、残党者はゼロになります()
「それでは、行って来ますね?」
戦闘用に装備を整え、立ち上がってから先輩へ声をかける。
「ああ、気を付けて行けよ?」
「任せて下さいって。全部終わり次第すぐに帰還しますので、先輩はのんびりとしていて下さい。寝てしまっても構わないので」
「そんなにかかりそうなのか……?」
「んー……そうですねぇ……敵の規模と戦力次第ではありますが、明け方まではかかりそうです」
「となると……六時間以上戦い続ける事になるんだが……」
「あはは、流石にぶっ通しではないですよ?移動時間とか、工作時間もありますので」
「敵をおびき寄せる餌って言ってたやつか」
「はい、一族の人間が釣れれば良いなと考えてるあれですよ」
「騒音被害が凄そうだなぁ……」
私の言葉に和ませるようなセリフを使う。
「ご近所さんからクレーム確実ですねっ」
結構な重量の荷物を持ち上げ、出口を向く。
「……もし、何か大変そうだったら、何時でも戻って来てくれ。俺が何とかするからさ」
背中を向けた私に向かって、安心させる様な雰囲気を纏いながらも力強い声で告げる。
「……ふふ、それは凄く頼もしいですね!先輩のその言葉があれば気楽に事が進めるってものですよ」
「気楽に……って言うのはちょっとどうかと思うが、そうだな……テキトーな感じで良いかもな」
「ではでは、任務を遂行して参りますので!吉報を持ち帰りますとも」
くるりと振り返り、軍人の人がする様な敬礼を決める。
「……ははっ、うむ、待っている!」
私の悪ふざけに苦笑いをしながらも、それに応えて敬礼を返して来る。その姿にお互いに少し笑いながら手を振って拠点を出る。
「……さーてと」
手に持っている荷物を肩から背負う様に持ち、最初のポイントまで上空へ上ってから駆けていく。
さっきまでの会話はあまり重たい雰囲気を出さない様にと先輩側も気を遣ってくれていたんだろうね。どう言い繕うが、これから私がするのは間違いなく大量虐殺だし。
んまぁ、1つ言い訳がまかり通るなら、この街の人達は存在していない扱いの為国籍はおろか、人権すら適応外なので罪に問われない……とかそんな所だろうか?
だからと言って人という存在を容易く殺す事が許され……って今更だけど。
別に私の手が幾ら汚れようが元々変わらないし、どうでも良い。大事なのは先輩や皆の手を汚させないこと。これが重要。……ん?イーリス?あれは論外。
敵さんの組織内部の物資や人の配置はハットリさん調査のおかげである程度掴めている。
物資の破壊と人員を削りつつボスまで行ってこれを撃破。こんなところだろう。乱入者として一ノ瀬家の人間がどのタイミングで現れるか。
壮六さんの予想では任される程度には強者だとは言っていたけど……。
「ま、流石におじいちゃん達よりは強くは無いし、問題はないでしょうね」
そんな事を考えつつ数キロの空の旅をしていると、最初の建物が見えて来た。
「……良かった。ちゃんと警戒度高めてくれてる」
建物周囲には大量の人が配置されており、夜を照らすかのようにあちこちに照明が置かれていた。中には小型ではあるけどサーチライトも出ていた。
自分らの拠点の一つが爆破され、有力な人間の建物ごと燃やされればそうもなる。けど、こちらとしては好都合でもある。
「なるべく沢山湧いて来てくれると助かるんだけどなぁ……ふふ」
近くの崩れている建物に降り、必要な荷物だけ取り出してから気づかれない様に内部へ侵入する。
「……六人かな」
目的の部屋まで進むと、中にはそれらを守るように人が立っていた。
それらに能力を掛け、静かに死んでもらう。
「それじゃ、パパっと行きますか」
弾薬や武器が置いてあるエリアに起爆剤を置いて急いで建物から出る。
「盛大にお願いしますよー?」
起爆装置のスイッチを押す。すると爆音と眩しい光が広がり、続けてその爆風が周囲へ吹き荒れる。
腕で顔を隠しながらもその光景を見ていると、次第にそれを起こした惨状が目に入って来る。
「うひゃぁ……ちょっと張り切り過ぎたかも」
目標の建物は崩壊し、爆発によって建物の一部が消し飛んでいた。その結果、周囲に居た人間にもそれ相応の被害が出ていた。
「……うーん、ここはこれ以上の追撃は要らなさそうだね」
予想よりも大きな成果が出たため、次のポイントへと向かう。
「確か次は……さっきのよりも大きな場所だったよね?」
次の予定地は大きな建物一つと、小さな建物が二つある。まぁ、お互いに距離はそこまで離れていないので誘爆してもらえるのを期待しておこうかな。
「最悪火種だけでも放り込めば大丈夫でしょう」
後ろの方で先ほどの建物から更に燃え上がる炎と黒煙が見えた。あれの鎮火は無理だろうなぁ……。
二つ目の場所へ向かう途中で、爆破音を聞いた人らが次々とその方角を見ていた。中には現場へ走って行く者もチラホラと見えた。
次のポイントに到着すると、エリア内にいる全員が銃や武器を手に持って周囲を警戒してた。あちこちで何があったのかと怒号が飛び交い、何人かが走り回っている。
「やっぱりどんどん武装が増えて来てるなぁ……」
ちょっとした軍事施設かと思えるような武力の量。ここが日本と言っても笑われそうだ。
「……うーむ」
これはさっきよりも難易度が上がったね……。
一度上空へ上がり、建物の屋根に降りる。ここに居てもその内バレるのでそのまま屋上の屋根を破壊して建物内部へ侵入する。
能力で音を消しつつ建物内を走り抜けてく。
道中で見かけた人らはもれなくいち早く旅立って貰った。
「見つけた」
目的の物を見つけ、さっきと同じ様にサクッと設置してからその場を急いで去る。
「ありゃま、流石にバレるか……」
近くから大きな声で侵入者を知らせる声が響き渡っている。けど、一歩遅い。
一旦建物から距離を置いて爆破装置を起動させる。
先程よりも大きな爆発から身を隠しつつ、一度様子を見る。
「結構残ってるね」
私を逃がさないためにだろうか、建物外部を囲う様に幾つかの部隊が配置されていた。けど、対象の建物を爆破されたことでまともに機能している様には見えない。
静かに忍び寄り、それら一人一人を確実に仕留めていく。恐怖で錯乱して手に持っている銃を周りへ乱射する人や、背後を取られないようにと壁を背にして銃を撃っている者も居たが、私の姿形を捉えることなく死んでいった。
「……統一性の無い武器だね」
殺した死体を燃えている火の中へ投げ込みながら装備を見てみる。どこからかの横流し品であるのは間違い無いだろうけど、思ったよりバラバラである。流通経路を絞らせない為だろうか?
中には手榴弾を持っている人も何人か居た。……大丈夫?こんなのを持っていて。
何かに使えそうなので幾つか死体から拝借しておく。
残党が居ないか高所に上がって見ていると、少し離れた場所に増援と思われる人らの姿が見えた。
「追加のお客さんだね」
10人程度の分隊が次々と集まって来た。
「ふふ、それじゃあ駆除を始めようかな」
爆発が起きた建物とは反対に位置する建物を焦るように走る男が居た。
「報告しますっ!!」
組織のボスと、その協力者として集まっている一ノ瀬家の二名が居る部屋の扉が勢い良く開かれる。
先日起きた襲撃の話と、それに伴って出た被害の規模と計画の修正をしている最中、夜の静寂を引き裂くような爆音を聞き、急ぎ状況の確認を行った。
「場所はどこだ!」
「襲撃に遭ったと思われる場所は西エリアにある武器庫の一つですっ。警備に当たっていた者らと連絡がつきません!」
「西エリアと言えば……ここですね」
一ノ瀬家の男の一人が、テーブルの上に広げられた地図の一カ所を指差す。
「比較的小規模な場所にはなりますが……先日の件と合わせ、こちらの戦力の低下が目的かもしれませんね」
「ちっ、クソが!」
「こちらの邪魔をしようともう片方から送り付けて来ているかもしれません」
「最近人を増やしていると聞きますし、ありえなくはない……ですね」
「……そうなると、更なる被害が出るかと―――」
更に被害が出ると予想した男の声に被さるように、更なる爆発音がこちらまで届く。
「既に出てしまいましたか」
「っ……!おい!場所を調べろっ!入り込んだネズミを殺せっ!」
「はっ!!」
ボスの指示を受けて連絡役の男が部屋を出ていく。
「クソがっ!」
イラつきの余り手に持っていたグラスを壁へ叩きつける。
「この短時間で二か所目、方角と距離的に一番近いのは……ここですね」
「時間的に単独ではなく複数に分かれての実行になるでしょう」
「警備の奴らは何をやってんだっ!!」
「あの人数に勝つにはそれなりの人を集める必要があるはずですし、そんな動きを見せればこちらも気づくはずです。ですが、ここに連絡を入れるよりも早く爆破するなど……」
「バレずに成功させたか、通信手段を妨害したか」
「先日の件も合わせると、前者の可能性が高そうですね」
「そうですね。となると少数精鋭での犯行でしょう」
「対象は武器庫なのは確実ですし、もっと守りを固めた方が良いかもしれません」
「問題はどこを狙うか……」
「……少なくとも、今日の二件で向こうがこちらの保管場所の位置を特定しているのは確実でしょう。ならば私達が居る一番規模の大きいこの場所を狙うはず」
「どこのどいつか知らねぇが……絶対に殺してやる……!」
「私達にとっても痛手になりかねませんし、早急に始末しなければいけませんね」
「どの様な戦力を送り込んで来たかは分かりませんが、流石にこのエリアの数を相手には無理でしょうし、万が一対抗出来ても私達が処理すれば問題は無いでしょう」
暫くして、その言葉に応えるように更なる爆発音がこちらまで届いた。
「何なんだよ一体これはっ!!」
東エリアの小規模な拠点の一つで、何が起きてるのかすら理解できずに男が叫ぶ。
西側の武器庫から激しい爆発音を聞き、襲撃に遭ったと即座に警戒態勢に入った。その間に西側では立て続けに襲撃に遭ったことを知らせるように、武器庫の爆発音が東エリアのこちらまで届いて来ていた。
それから暫く音が鳴り止み、他の場所で襲撃に遭ったとの情報が無かった為漸く収束したのかと思った矢先、反対側のこの場所が襲われた。
想定外ではあったが警戒はしていた。常にお互いを見張れる様に人員の配置も行っていた。その甲斐もあって最初の一人目が襲われた瞬間に全員がそのことを知れた。
"知れた"と、思っていた時には既に手遅れだった。
一人目がやられたと認識した瞬間に、連鎖するように次々と立っている奴らが倒れて行った。
敵の姿すら見えない。けど確実に仲間が殺されて行っているのだけは分かる。
それを見た他の奴らがパニックを起こして勝手に動き出す。そこからは地獄の様な瞬間だった。
拠点を照らす照明が次々と破壊され、見える箇所がどんどんと減っていく。まるで闇に引きづり込まれたかのように明かりの無くなった場所の人間から死んでいく。
「なんだよなんだよなんだよ……!!」
どこから攻撃をしているのか掴めず、隠れるように姿勢を下げて銃を構える。
「どこだ……!どこから来る……っ!」
恐怖で荒くなる息を落ち着かせるように目だけを動かす。その間にも錯乱するように叫ぶ仲間の声が一つ、また一つと無くなっていく。
「ふっ……ふっ……!」
集中する為に目を閉じる。既に周辺は闇に包まれているので耳を頼った。
「……っ!?」
すぐ横で赤く光る何かが通り過ぎたのを感じ、即座に後ろを振り返る。
「―――ぁ?」
だが、その直後に体が地面に崩れ落ちる。
「―――!?―――っ」
地面に倒れた顔に徐々に広がるように温かい液体が触れてく。
「―――」
それが自分の血だと理解していくと同時にその体は活動を止めた。
「ふぃー、次で六ヶ所目だね」
移動しつつ次々と拠点を襲っていく。次の目的地の道中に見かけた別の敵拠点と思われる場所には死体から漁った手榴弾を放り込んでおいた。
「未だ一族の人は見えないけど……寝てるのかな?それとも、実は街から離れてる……?」
そろそろ出会ってもおかしく無いけど……まぁ、次の場所はそこそこ広い場所だし期待は持てそうだけど……。
日付は既に変わり、深夜の時間帯になっていた。あと数時間もすれば日が昇り始めるだろう。
「―――っと」
次の目的地が見え、遠目でそれを確認する。
「……うん、かかってこいって姿勢だね」
全員が戦闘前提と思われる装備と警戒態勢を執っている。
「奥のデカい建物に指揮官とかがいるパターンかなぁ?」
人の配置的にもあそこの建物が特に固めている様に見えるので大きく外れては無いはず。
「それじゃあ、行きますか」
逃げられたら面倒なので、奥の建物内部から先に処理することにする。
「構造的に……ここ、でしょ……!!」
一度上空に上がり、そこから建物も一角に向かって突っ込む。コンクリートの壁を蹴りで吹き飛ばしながら中へ大胆に侵入する。
「ごぉはっ!!」
内部に着地すると、部屋の中へ飛んでいったコンクリートの塊が一人に直撃したのが目に入った。
「えっと……ここは……?」
部屋を見渡すと、侵入してきた私を見る男二人と、先ほど被弾して地面に倒れ込んでいる男の三名が居た。
「……まさか、こんな直接的にここを襲撃してくるとは……」
「この人、直撃していますが……一応生きてはいる様ですね。それよりも……」
スーツ姿の男二人がこちらを見る。
「侵入者は……どうやらお一人の様ですが……」
「何人いても関係ありません。寧ろ一人で来たのは好都合です」
……ふむ。どうやらビンゴを引けたみたいだね。一ノ瀬家の人間が二人も居る。片方は一度見た事がある人だ。
突如壁を破壊して入って来た私に一瞬驚きつつも直ぐに落ち着きを取り戻している。
「取り敢えず確認しておきますが……あなたはどちらの手の者ですか?」
「……ふふ、この街にここ以外に考えれるのは一つしか無いと思うけど?」
「……なるほど。まぁ、当然でしたね」
私の返答に静かに頷いて武器を取り出す。
「女性1人でこのような場所に来るのには不用心でしたね」
「よほど自分の実力に自信があるのでしょう。油断せずに仕留めますよ」
片方はトンファーの様な武器を取り出し、もう片方は片手サイズの小さな青龍刀の様な物を取り出す。柄頭の部分には紐のような物が伸びるように付いている。
……なるほどね。その武器ですか。
トンファーを構えた男が前衛をする様に前に出る。
「ここは私が前に出ます」
「ええ、任せますよ」
青龍刀を手に持った男が前の男に隠れるように一歩下がる。
前準備が整ったのか、距離を詰めて右手のトンファーで攻撃を仕掛けてくる。
わざわざ相手のやり方に付き合う気もないので、向かって来る右手のトンファーを正面から殴り返す。
「―――っぐ!?」
武器のトンファーが砕け、そのまま腕ごとへし折るつもりだったが、ギリギリの所で男が下がる。
やっぱり反応速度が一般人とは桁違いだね。自分の武器がやられたと分かった瞬時に反応出来るし……。
「……これは改め直す必要がありますね。彼女、想像以上に厄介そうです」
駄目になった右手の武器を地面へ放り捨てて予備のを手に持つ。
「……手に金属製の武器を仕込んでいるかもしれませんね。外套の下にも充分注意しておくべきです」
私の今日の動きや見た目からして暗殺系のスタイルと予想しているのだろう。あながち間違いでは無いけど。
正面の男らから視線を外し、部屋の端で倒れている男を見る。
……こいつだ。
今回のターゲット。こいつだけは必ず殺さないとね。早く見つかって良かった。
先に目標の人間から始末しておくために動こうとすると、その行動を遮るように風切り音と共に高速で何かが迫って来る。
それを半身を返して避ける。
「これを初見で避けますか……」
青龍刀を持っていた男が少し驚く声を上げる。
今の攻撃はこの人のだね。
私と男の空いている距離では明らかに手持ちの武器じゃ届く範囲ではない。けど、実際には私を切り裂くように武器が伸びて飛んできた。
「ですが、次からはそうはいきませんよ」
男の手が何かを回す様に動いている。その動きに合わせて自身を中心に武器が弧を描いている。
「私に当てないでくださいね」
「安心してください。生涯一度もまだありませんから」
小さな片手武器程の大きさでここまでの射程距離を生み出せる理由はなぜか?それは柄の部分に付いている紐を使って伸ばしている。分かり易く言えば、鎖鎌みたいな感じだろうか?分銅部分は無いけどね!
また最初と同じ様にトンファーの男が前に出る。
端っこで倒れている男がいつ起き上がるか分からないので、さっさと勝負を決めてしまおう。もうすぐ音を聞いて敷地内の増援が来ることだし。
トンファーの男が前に出てそれに構っていると、後ろから飛来する刀に切られる。常に後ろの男を視界に入りにくいように正面に立って気を引く役目をしているが、逆に疎かにしていると普通に決めに掛かって来る感じだろうね。
相手も既に臨戦態勢で一族の力を解放している。本気で私を殺しにかかってくるのだろう。
相手が動き出すよりも先にこちらから距離を詰める。トンファー男の目の前まで迫り攻撃を仕掛ける。しかし、今度はしっかりと武器でそれを防ぎ通す。
立て続けに二度、三度と攻防を続けていると背後に居るほうの男が武器を振るう。
目の前の男を巻き込まない様に私の死角、背後から蛇の様な動きで迫って来る。
それが私の背中に届くよりも先に正面の男に向かって踏み込む構えを見せる。すると、私を迎え撃つように両手で防御の構えを取る。
男が不動の姿勢を構えたのを確認してからその場で左足を軸に思いっ切り体を回転させ、それと同時に背後から迫って来ている青龍刀の柄を左手で掴み取る。
―――想像通り。
そのままの勢いで刀を振り切って防御の構えをしている男の両腕を切り飛ばす。
「なっ!??」
力任せで強引に切り飛ばしたが、武器の切れ味も相当な物であっさりと両腕とトンファーが血飛沫を上げながら宙を舞う。
勢いを殺さずに今度は左手に持っている青龍刀を強引にこちら側へ引っ張ると同時に、それによって生まれた力場を利用して右足で目の前の男の腹を全力で蹴り飛ばす。
「がっ!!」
両腕が失った事で一瞬バランスを狂わされたのも相まって、蹴りの衝撃をもろに受けて後ろへ吹っ飛ぶ。
「くっ……!」
私に武器を掴まれた事で咄嗟に手に持っていた武器を離し、自分へ飛んでくる男を横へ避ける。それに合わせて手に持っている青龍刀を振るい、男の片足の膝から下を切り飛ばす。
「は―――!?」
咄嗟に膝を地面に置くことで何とか態勢を保つが、自分の愛用品の武器があっさりと使われたことに驚きが隠せず、こちらを見る。
「……さてと、これでほぼほぼ決着はついたかな」
少し前に男が披露していた感じに武器を振り回す。
「馬鹿な……こうもあっさりと……一体……っ」
「ぁああぐっつっ……!腕が……っ!」
先に呻き声を出している男の首を斬り飛ばす。失った腕のせいで最早戦意も半減していたので楽に殺す事が出来た。
「後はちょっとめんどくさそうな人だけだね」
足が一本無いとは言え、まだまだ目は死んでいないからね。
安全を取って振り回している武器を使い、男へトドメを仕掛ける。
「っ……!」
やはり専門の人間だからか、私の動きでどこを攻撃してくるのか予測して避け続ける。
「うーん、やっぱり駄目だね。このやり方じゃ」
決まった型の動きと言えば良いんだろうか。読まれているし避けるだけなら苦じゃないんだろう。
今度は想定外の挙動を混ぜて見たが、肉体が切られても致命傷には至らない。
そもそも反応速度がおかしいって……全く。やってられないよ。
出血死……はあまり期待できそうにないなぁ。筋肉を締めて出血を抑えてるだろうし。
仕方ないので攻撃すると見せかけて、元々のターゲットである男の脳天に串刺しにして武器を放り捨てる。
「こっちの方が手っ取り早いし……ね!」
接近戦へ持ち込むと、案の定受けの構えで迎え撃つ。片足がまともに機能しない為、取れる選択肢が少ないので当然と言えば当然。
一族の受けの技にも幾つもの種類と派生が存在している。目の前の男が今回選んだのはどうやらカウンター型の技だ。凌ぎ続けても勝ちの目が無いのでこれも当然の選択。
私が右手で拳を振るう、それを絡め取るように左手で迎撃する。すかさず左手で顔面へ攻撃を仕掛けるが、右手で私の腕を弾き勢いを殺す。
左の腕がバンザイするみたいに弾かれた事で隙が生じる。その隙を見逃さまいと弾いた右手で反撃へ移る。
……うん、読み通り。
反撃は貫手による心臓への一撃。今持てる全力の一撃だろう、洗礼された速さと精度で私の左胸へ迫って来る。
その反撃の一手を、弾かれた左の肘と左の膝で手首を挟み、骨を砕く。
「―――!?」
反撃の手が完全に読まれた事で一瞬、思考の空白が発生する。
挟んだ左手を下ろして相手の腕を掴み、上げた左足を振り上げ顎へ蹴りをお見舞いする。
そのまま流れるように右手を使って男の心臓へ掌底打ちを撃ち込む。
「がはッ、―――ぐっ!?あ?ぁぁああぁ―――っ!!!」
攻撃後に一度距離を取ると、心臓への一撃を受けた男が自身の胸を両手で握り、苦しみ始める。
「な―――これは……い―――ったい………」
一族の力が徐々に解かれて行き、床へ倒れ込む。
ビクリと体を震わせ、次第にその動きを止める。
「死亡を確認と……、ある程度実戦でも使えそうで安心した。決め手には良いけど、やっぱり撃ち込むまでがネックかなぁ……?」
九重一族を確実に殺す為だけに編み出した技術の一つだけど……必殺技として昇華出来る程度にはなったかな?後で澪姉に報告しておかないとね。
効果はしっかりと出ていたし、おじいちゃんにも通用するだろう。ま、使う気は無いけど。
「それにしても、今の私相手じゃなければそれなりに奮闘出来てただろうに……」
自慢にもならないけど、一族の技を誰よりも見て、誰よりも実戦で受けて来た自信がある。当然武器やその技も……。
「相手が悪かったってことで」
亡骸に一瞥してからターゲットの男の所へ振り返る。
「……うん、顔も一致しているね。しっかりと死んでる」
髪を掴んで顔を持ち上げる。頭部に私が刺した刀のオブジェクトが付いてるけど、ここはご愛嬌ってことで。
手を放して部屋を見渡す。
「ここは……作戦室、みたいな感じかな?」
荒れた部屋に地図やそれっぽい紙が散乱しているので多分そうだろう。
「さてさて、第一優先は始末済みと……ここからは殲滅戦と、一ノ瀬家の人間が死んだことで連絡が途絶えるから向こうも状況が動き出すだろうね」
部屋を出て外の相手へ移ろうかと考えていると、外の廊下からドタドタとこちらへ走って来る足音が聞こえて来た。
「お、良いタイミング」
「失礼します!爆発音がきこえ―――」
ドアを勢いよく開けて入って来た男を横から忍び寄って首をへし折る。
「―――っで!」
骨の折れる音と共にだらんと崩れ落ちる。首から手を放し、パンパンと埃を落とすみたいに手を叩いてから現在時刻を確認する。
「んー……この調子なら思ったより早く帰れる……かも?」
当初の想定よりも早い帰還が出来そうなので、一度気合いを入れ直してから部屋から出て行った。
一ノ瀬家のお二人……普通にかなりの強者のはずなのですが……、まぁ……仕方ないよね?
活動報告の方にも記載していますが、九重一族の人らを主人公含めてイメージイラストを作っていこうとしています。成果物は『登場人物まとめ』の方に随時追加していきますのでお楽しみに……?
使いこなせていないので理想には届いていませんが、画像として出力されるのを見ると、少しだけ達成感がありますねw