9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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少し短め




第31話:これでも数を厳選した方ってかなりアレだよね

 

 

「龍誠様、ご報告が」

 

水面下で計画を徐々に進めて行く中、またもや予定には無い報告が突如入る。

 

「……何があった?」

 

自分が動かす人員や配置を確認していた手が止まる。

 

「二つ程。まずは……例の街に配備している者らの定時連絡が明朝から途絶えました」

 

「……そのタイミングは誰が居た?」

 

「この二人です」

 

写真付きの人物詳細の紙が机の上へ置かれる。

 

「……このレベルが同時に二人もか?」

 

「協力関係にあった組織の裏切りの可能性を考えて別ルートで確認を試みましたが、どこを経由しても街の組織と連絡が取れませんでした」

 

「もう片方の組織はどうだ?」

 

「直前までの連絡では動きは無かったと報告を受けておりますが……、先日にあった襲撃を考えると……組織間で争いが起きた可能性もありえます」

 

「それか内部で派閥争いでも起きたか……?いや、それにしてはタイミングが良すぎるな」

 

「現在近くに待機させている人間を確認に送らせています」

 

「……分かった。もう一つはなんだ?」

 

「二つ目ですが、つい先ほど浮島家の一部に動きが見えたと監視の者から連絡がありました」

 

「浮島家がか?」

 

「はい。浮島家の浮島七瀬が20人程の同伴を連れて家を出たとの事です」

 

「あの女の娘が……」

 

「まだ詳しい理由は明らかになってはしませんが、少なくとも街を出て遠出するのは間違いないかと」

 

「……娘を何処へ送るつもりだ?しかも人を連れて……。待て、九重舞夜の動きはどうなっている?」

 

「そちらに関しては白巳津川の街に留まっています。夏期休暇の時期に入り、友人と遊んだり、九重家で九重澪と外へ出掛けているのを確認しております」

 

「……もしや、こちらを出し抜こうとしているのか?」

 

「その可能性がないとは言えませんが、正直の所……圧倒的に戦力不足かと」

 

「何か九重舞夜を落とせる手段があるのか……それとも別の目的が……?」

 

少し考え込む。

 

「浮島家の方は引き続き監視を続けろ」

 

「承知致しました」

 

「それと、一つ目の件だが……既に九重家……いや、九重舞夜にこちらの計画が露呈したと考えて動く」

 

「それは……」

 

「直ぐにでも動けるように準備をしろ。この際、現状の戦力だけでも構わん。あの街からの増援を無い物として計画を進める」

 

「……っ、分かりました」

 

「街の現状が分かり次第すぐに連絡を寄越せ。その結果次第では即座に動き出す」

 

「では、その様に準備を進めます」

 

「それと白巳津川と九重家の監視を強化しておけ。少しでも何か動きがあれば知らせるようにしろ」

 

「畏まりました。では、失礼します」

 

退出前に一度頭を下げ、急ぐように部屋を出ていく。

 

「………」

 

出て行った男の足音を聞きながら、手元にある計画の紙とは別の紙を机の引き出しから取り出す。

 

「恐らくは……いや、例の街での異常に合わせる様に動き出した浮島家……」

 

最悪、浮島家すら裏切っている可能性を考慮すべきと切り替える。

 

「それでも構わん。端からあれらは九重家へ辿り着くまでの時間稼ぎにさえなれば良い」

 

―――九重家当主が居る、あの場までな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………、暇ですねぇ」

 

「……暇だなぁ」

 

忙しく動き回った敵組織襲撃から二日が経ち、現在、私と新海先輩はとある場所から離れた位置でじっとしていた。

 

その場所とは、この街の入口……正規の関所的場所である。目的としては、先日戦った一ノ瀬家の人間が死んだことで恐らく定期で行っている連絡が途絶えた。その組織のトップも消え、更に更にもう片方の組織のトップも死んだ。

 

そのせいで今、この街の内側のエリアは蜂の巣をつついたようにてんやわんやになっている。情報が錯綜し、誰が殺した、誰が死んだとの騒ぎである。それもそうだ、自陣のトップが死んでいるのだから。

 

お互いにお互いが殺したという情報も飛び交っており、即日報復に……とはならなかった。

 

片方は既に多くの物資を積んでいた倉庫を私が襲撃した事でまともに争う戦力が整えず、もう片方は報復に動こうと指揮をしている人間を私がひっそりと始末した。

 

そのせいで少しの小競り合いだけで済んでいる。

 

っと、話がズレちゃったね……取り敢えずこの街は今、通信網系が麻痺状態になってしまっていた。

 

それで直接この街へ情報確認の人を送って来ると読んで、ここで待機している感じである。

 

既に一人目は始末済みである。意外と遅かったので来ないのかと少し不安になったのは内緒。手続きに手間取ったのかな?

 

「そえば、そろそろ来るんだっけか?」

 

暇すぎてか、スマホをポチポチと弄る先輩が聞いてくる。因みにスマホも昨日あたりから解禁しました。今更どうこう出来る段階は過ぎてるし、仮に先輩の場所が特定されようが問題無いと判断した。

 

「ですねー。一応密に連絡を取り合っているので、その内来ますよ?」

 

専用の連絡端末を取り出す。画面には二分前に七瀬さんからメッセージが来ていた。

 

「現在は……森を走行中なので、後一時間もかからないと思います」

 

「こちらから迎えに行く……で良いんだよな?」

 

「はい、秘密の隠し通路がありますので、時間になったらそちらへ向かいます」

 

「……一応最後に聞いておくが、俺も付いて行って良かったのか?」

 

スマホの画面から顔を上げてこちらを見る。

 

「ええ、問題無いですよ?拠点で一人大人しく待ってるのも嫌だと思いまして」

 

「まぁな」

 

「……案内するまでは、ですよ?その先は外でお留守番ですからね?」

 

「大丈夫。ちゃんとそこら辺は弁えるよ」

 

「なら良かったのです。スプラッター系がお好みでしたら止めはしませんが……」

 

「わざわざ言わんくて良いからなっ!?」

 

「おっと、これは失礼。ふふ……」

 

私の冗談に呆れるようにため息を吐いて再び画面へと視線を落とす。

 

「ずっと操作していますが、何をされてるんですか?」

 

「ん?ああ……暇だし動画サイトを字幕付けて無音で見てるわ。その合間に皆からの返信をしたりだな」

 

「無音で……。音声として聞きたいのでしたら言って下されば防音しますよ?」

 

「いや、そこまでしてもらうって程でも無いから気にしないでくれ。暇潰しに見てるってだけだ」

 

「因みになんですか、何の動画を見てるんですか?」

 

監視への意識を割きつつ、先輩の横から画面を覗き込む。

 

「今は釣りの動画だな」

 

「釣りとは……。先輩って釣りに興味ありましたっけ?」

 

「いや、おススメに出て来たから見てるってだけだ」

 

「なるほど。海の魚ですか……。今度海鮮系のご飯でも行きましょうか」

 

「例えば?」

 

「海鮮丼でも良いですし、お刺身やお寿司とか?回転寿司って興味ありません?」

 

「そこは回らない寿司って言う所じゃないのか?」

 

「ん?……あっ、あれですよね?カウンター席で直接握って一品ずつ出して来るやつですよね?」

 

「行ったこと無いから分からんが、多分それ」

 

「一度連れて行って貰った事がありますが……美味しかったのですが、なんと言いますか……店内の空気とかがあまり合わなかったですねぇ……息苦しいと言いますか」

 

後、次の品が出て来るまでの少しの間、あれが手持ち無沙汰と言うかジッと待っていないといけないのかとよく分からなかった。全体的に厳かな雰囲気が漂ってた感じがした。

 

「庶民には行きづらそうな場所だな……。あれか?一見さんお断りとかやっぱりあったりすんのかね?」

 

「どうなんでしょう?私が行ったのは店選びしている時に見つけたのでそのまま入っただけでしたが……」

 

「どんな寿司が出て来たんだ?」

 

「えっと……コースみたいなタイプでしたが……確か、マグロは食べましたね。後は貝、ですね。種類までは分かりませんが白い貝でした。他には小さな茶碗に盛りつけられていたイクラとかウニとかの丼?みたいなのと……焼き魚的なのも食べた気がします。それと汁物とかデザートだったかと思います」

 

「興味本位で聞いてみるんだが……幾らぐらいだったんだ?」

 

「料金ですか?……確か、三万とかだったと思うので、一人当たり1万五千とかでしょうか?」

 

「うぉっふ……クソ高ぇ……俺が行くのは夢のまた夢だな」

 

「でしたら回転寿司とかどうでしょうかっ。チェーン店とかもあって一般的のはずですよ?」

 

「推すなぁ……まぁ、それならまだ行けるけどさ」

 

「情報としては聞いていますが、実際に行った事が無くて……。店内を回る寿司を自由に取って食べるんですよね?」

 

「行ったこと無いって……いや、九重ならありえるか。そうだな、これが終わったら機会を作って皆で行くか」

 

「それか夏ですし海とかも良いかもしれませんね。折角の夏休みですし」

 

「あー……そう言えばそうだなぁ」

 

「先輩は香坂先輩以外と行ってたりするんですか?」

 

「ん?誰とも行って……ああ、他の枝での話か」

 

「ですね、香坂先輩と一緒に行ってるのは知ってるのですが、もしかしたら他の人とも行ってたりするのかなと気になりまして」

 

「さらっと恐ろしい事言ってんなぁ……まぁ、行ったのは先輩とだけだな」

 

「なるほど。では今度は海らしいことをとことん追求して楽しみましょうっ。スイカ割りとか花火とか」

 

「だからさらっとこちらの事情を把握した内容を話すんじゃないっ。……ったく、でもそうだな、皆の方にも聞いてみとく」

 

「お願いします」

 

ま、先輩が言えば全員喜んで参加を希望すると思いますけどね!

 

「もしオッケーでしたら私の方でプライベートビーチ……いえ、いっそのこと別荘地の島にでも行きましょうか?」

 

「また普段聞く事のない単語が出て来たなぁ……なんだ島って、初めて言われたわそんなん」

 

「九重家の方で所有している南の小島があるでピッタリかと思いまして。小さな島ですが、ちゃんと泊まれる場所もビーチもありますので快適に過ごせるかと」

 

「金持ちの台詞だなぁ……なんでそんなのを持ってるんだよ」

 

「元々別の人が所有していた無人島だったのですが、何かの賭けをした際の担保的なので手に入れたとか何とか……」

 

「……島を担保に取るって、どんな金額だったんだよ」

 

「そこまで興味無かったので聞いてはいませんが、少なくとも億は飛ぶんじゃないですか?」

 

「億……」

 

億と言う言葉を聞いて、先輩がごくりと息を呑む。

 

まぁ、島の規模とインフラ的に10億は越えてる気がしますが、わざわざ言う必要も無いでしょう。

 

「他の人の目を気にする必要の無い完全なプライベートビーチですし、海も泳げちゃいます」

 

けど、南の海って毒性の生き物が多いって聞くし、もし泳ぐとしたら念のため調査とネットを張っておいた方が良いのかなぁ?

 

「それもあれか?九重がお願いしたら使えるって言うわけか?」

 

「多分大丈夫でしょう。段取りと手続きは要りますが、最悪おじいちゃんとかにお願いすれば可能ですよ?」

 

「可愛がられてるなぁ……」

 

「ぶっちゃけ、今の私の発言力って結構な物なので。ほら、一応一族の悲願を達成した一人ですから!しかもその中に先輩らも居るとすれば、功労者に対しての褒美としても言い訳が出来ますし?」

 

「いやー流石にそこまでしてもらうのは迷惑だろ」

 

「いえいえ、九重家としても先輩らに何も褒美をしないってのも色々とあるんですよ。ほら、周囲から労わない奴らって見られますし」

 

「あー……なんかあれか?格式がどうとか言ってたやつ?」

 

「そんな感じです。お家の格が~ってやつです」

 

「なるほどねぇ……ま、前提として皆に聞いてみないと分からないけどな」

 

「なので頭の片隅に入れて置いて貰えれば大丈夫です」

 

「了解」

 

皆へメッセージを送っている先輩と引き続き雑談を続けていると、私の方の端末にもメッセージが届く。こっちは七瀬さんだけどね。

 

「先輩、皆さんとの憩いの最中で申し訳ありませんが、そろそろ良い時間かもしれません」

 

「向かうのか?」

 

「はい、あちらももうすぐ到着するらしいので」

 

「分かった」

 

多分皆に一言送ったのだろう、スマホを少し触ってから電源を切ってポケットへ入れる。

 

「悪い、待たせた」

 

「いえいえ、大事なお時間なのでお気になさらず。それでは向かいましょうか」

 

先輩を連れてこの場から動き始める。結局一ノ瀬家から来た人は一人だけだった。後二~三人程度は来るだろうと予想していたけど向こうは向こうで動き出したのかな?

 

そろそろ白巳津川の方で一ノ瀬家が怪しみ始めてもおかしく無いし、おじいちゃん達も動き出すはず。

 

私の方は後はここへ来る予定の七瀬さんの件を片付ければ一旦は終わり。残りはこの街の残党を抑えつつ一通り掃除してから帰還かなぁ?

 

それが終わればおじいちゃん達への説得と引継ぎと……。

 

新海先輩にはどの辺りで話をしておこうかな。どうせなら街を出る前には話しておきたいから、帰る前辺りに時間を作っておかないとね。

 

話した後は先輩の選択次第になっちゃうけど……まぁ、その時はその時だね。何となく結末は予想出来るけど……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わざわざこちらまでお迎えくださり、まことにありがとうございます」

 

街から少し離れた森の中、私と合流した一団の先頭に代表として立つ七瀬さんが深々と挨拶をする。

 

「ううん、全然大丈夫ですので気にしないで下さい。今回は私の為に協力を申し出てくれてありがとうございます。立ち話もあれだし、中で歩きながら話そっか」

 

一見普通の木に見える場所に巧妙に紛れている入口を開き、全員を中へ招く。全員が入ったのを確認してから入口を閉じ、先頭を歩く。

 

ぞろぞろと付いてくる集団は、いつもの和を基調とした服装では無く、一般的な服装に見せて動きやすい服選びで来ていた。

 

「結構な団体さんで来たけど、かなり無理したんじゃ……?」

 

すぐ後ろを歩く七瀬さんに振り返って話しかける。

 

「舞夜様が今回の件をとても重く受け止めていましたので、こちらとしては当然の事をしたまでです」

 

私の言葉ににっこりと笑顔を浮かべて返事をする。……けど、私以外に誰も見えていないのが分かっているからか、一瞬面倒くさそうな目を向けて来た。

 

「あー……、そうだね。今回の一ノ瀬家の騒動は流石に看過出来ないし、駒にしている宛てがここって言うのが……ね」

 

「私も軽く聞いているだけですが、それほど危険な場所……街という事でしょうか?」

 

「まぁね、上が隠蔽するくらいには嫌な場所だよ」

 

「……そんな場所ですのに、よくこのような通路を用意出来ましたね」

 

「あはは、実は街のインフラを整備していくって時にひっそりと作って貰っていたんだよね。一応ここの出身だし、里帰りにわざわざめんどくさい手続き踏みたくないし。あ、だからここの事は秘密でお願いしますね?バレたら無くさないといけなくなるので」

 

「分かっております。このたび利用させていただきましたので、決して口外することのないよう誓います」

 

「うん、ありがとうございます」

 

口を割らないと言うか……その心配がないと言うか、情報を持ち帰ることが決して無いって事だしね……。

 

チラリと後ろの方へ視線を向けると、そこには悪い意味で見覚えのある顔ぶれが幾つもあった。

 

……うん、選りすぐりの人達って感じだね。

 

連れてくるのは派閥の中でも確実に消しておいた方が良いって人を選ぶとは聞いていたけど、予想通り過ぎて何の面白みも無い面々だった。

 

「………」

 

例の女の人もしっかりと居り、私が視線を向けたと分かると否や笑みを浮かべる。

 

またうるさく声をかけて来るのかと思ったが、それ以上はせずに口を閉じていた。

 

……今回の私を手に入れる任務がそれほど重要と聞かされてるからだろうか、余計な口を挟まず七瀬さんの後ろを黙って付いていた。

 

「舞夜様、この道は後どの程度続くのでしょうか?」

 

「ん?そうだね、五分程度進めば出口に付くと思うよ。そこから少し歩いたら目的の場所に到着する感じかな」

 

「教えて下さりありがとうございます」

 

早くも歩くのが面倒になって来たのか、残りを確認してくる。まぁ、夏でこんな狭くて暗いし、若干臭いも漂ってて暑さもそれなりにある場所をダラダラと歩き続けるのは嫌だろうね。

 

暫く歩き、一度地下通路から出る。

 

「ここから少し地上を歩きます。一旦私が居る拠点の場所まで案内しますね」

 

崩壊した建物や入り組んだ道を進み、再び地下へと入る。

 

「この先に私が拠点としている場所があります。もし任務中に何かあればここを集合場所にして下さいね?」

 

軽く説明だけして通路の先を指差す。

 

「ここまで長旅でしたが……少し休憩を挟みます?」

 

一応社交辞令として聞いてみる。

 

「お気遣いいただきありがとうございます。ですが、私達は大丈夫ですのでそのまま任務へと向かいましょう」

 

「そう?了解。それじゃあ行きましょうか。こんだけの大人数だし、それなりの広さがある建物の方が良いよね」

 

「そうですね。可能でしたら外部から目立たない建物であれば、助かるところでございます」

 

「大丈夫。ちゃんと事前に幾つかピックアップしておいたから。期待してても良いよ」

 

「感謝申し上げます」

 

私の台詞に嬉しそうに微笑みながらも少し頭を下げて感謝を示す。それに釣られて後ろの連中の空気も少し明るくなる。

 

……その場所がでっかい棺桶になっちゃうんだけどね。

 

「……じゃあ、案内するから付いて来て下さいね。数分で着くから」

 

 





回転寿司……現実では感染症の対策で大体運んでくれるレールになっているのであまり見る事は無くなったと言う。

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