9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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ころころと視点が変わって行きます。




第32話:盤面

 

 

「宗一郎様、どうやら動き出したようです」

 

「ほぅ?と、なると………予想通りの展開になったか」

 

九重家の奥の間で壮六から報告を受けた九重宗一郎が不敵な笑みを浮かべる。

 

「まだ確定ではありませんが、恐らくは。一応それに合わせてこちらも指示を出しております」

 

「舞夜が言っておった時期よりもかなり早い動きを見せたとなると、やはり浮島家の動きに感づいた事になるじゃろうな」

 

「舞夜様が居られる街からの人員を待たずにこちらへ仕掛ける動きを見せているので、浮島家の向かう先に舞夜様が居る。と予想しているかと」

 

「ふむ、そうなるとこちらの舞夜が偽物という事にようやく気づいたか、くく……安心したわい」

 

「まぁ、一ノ瀬家にもアーティファクトの存在はある程度情報として流れている事でしょうし、直ぐに思い当たるでしょう」

 

楽しそうに目を細める宗一郎とは相対的に、壮六は嫌そうな顔をする。

 

「こちらの戦力はどうじゃ?」

 

「前に共有した通りです。街の方は九重茂の管轄の組織と、西五辻蒼士含める守備。敵の増援や物資の輸送経路などの中継地点には九重家から一部、四栁司と八倉燈の二人が」

 

「お前はここに残るのか?」

 

「ええ、一応私もここで指揮を執るつもりです。最初は現場へ向かおうかと思っていたのですが、そちらは舞夜様の幻体が向かわれるそうなので」

 

「なるほどの、そのかわりに久賀の孫らがこちらに来たわけか」

 

「これに関しては舞夜様本人の希望です」

 

「舞夜の?」

 

「はい、『歴史の修正力とかが万が一でもあったら嫌だから』だそうです」

 

「……そうか、ならばこちらでしっかりと様子を見ておけ」

 

「承知しております。現在は一ノ瀬璃玖と共に談話室にて待機していますので」

 

「なら取りあえずは大丈夫そうじゃな。……で、本命のあやつはどうしておる?」

 

「一ノ瀬龍誠の方にも動きはあると連絡を受けております。恐らくですが、もう少し戦況を見つつ動き始めるかと」

 

「わかった。舞夜には申し訳ないが、こればかりは代々続くしきたり……歴史の様なものじゃ。ワシがそれを受けぬわけにはいかん」

 

「舞夜様が現れた事で一族間での一切を禁止にしていましたが、今回は度が過ぎるかと……」

 

「向こうもそれを承知の上で起こしているはずじゃ。だが……確かに奴がこの街への被害とあの街を利用したと言う点については言い逃れは出来んの。それに、国からの縛りが強まりそうじゃ」

 

今後の展開を考え、目を閉じてため息を吐き捨てる。

 

「情報操作と証拠の隠蔽の方は徹底させております。内部の者に根回しをさせているので最悪の事態にはならないかと」

 

「街への悪意は強まるじゃろ?」

 

「それについては……可能な限り尽力しますが、同じというわけには……」

 

「……いや、ある意味良い機会かもしれん。長年放置しワシらに見張らせて来た場所じゃ、ここらで大きく動かす必要があるかもな」

 

「……なるほど、今回の一件で逆にこちらから動かす様に圧力を掛けてみると」

 

「上手く行けば面白い展開が見れるかもしれんの。ま、それもこれもこの一件が片付き次第じゃがな」

 

「今の話の件、準備だけは進めておきます」

 

「うむ。どれだけ早くても数年後の話じゃ、まずは外堀から埋めてゆけ。……その前に」

 

「先に隆造の弟との戦いを楽しませてもらうとしようかの……」

 

先程は打って変わって、楽しそうに口元を歪ませ、胡坐をかいてる膝を叩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいっ!急げ!さっさと詰め込めっ!」

 

白巳津川から離れたとある山奥で、せわしなく動き回る男たちに命令を飛ばす声が響いていた。

 

「終わった奴らから後ろに乗り込んで待ってろ!」

 

ハイエースの様な大人数が乗り込める車に、物や人が次々と入って行く。

 

「……ったく、急に連絡が来たかと思えば今すぐ街へ向かえとかふざけた事を言い出しやがって……クソが。おい!こっちを急がしてんだ、当然向こうも準備が出来てんだろうな!?」

 

動き回る者らから離れ、少し遠くでその様子を見ている男の方へ向かい、声をかける。

 

「……安心しろ。ターゲットの動きが思ったよりも早かったから万が一を考えて早めに仕掛ける、それだけだ。お前らは何も心配しなくて良い」

 

イラつく様に問いただす男に、連絡役の一ノ瀬家の人間が冷たくあしらう。

 

「ハッ、そうだと良いけどな」

 

本来なら更に人数を集めてから行動に移す計画だったが、当初の半分に届かない程度の数しか集まっていない。その為、先に届いた物資を運ぶ人が足りていない状況だった。

 

「他の場所はどうなっている?」

 

「向こうも同じく動き始めている。恐らくここが一番最後に街へ着くことになるだろうな」

 

ここよりも街へ近い拠点へ必要な物をこの場所に集め、運び出す中継地点としての役割もしていたが、突然の予定の変更に大急ぎで置いてある物資を運ばないといけない為、どうしても他より動きが遅れてしまっていた。

 

「ちっ……その分報酬は上乗せしろよ?」

 

「勿論、この後私の方からも上へ掛け合っておく。……それよりも時間が無い、準備が出来た者達から即座に向かってくれ」

 

「はいはい、わかってるよ……。おい!終わった車から出せ!場所までの道のりは―――」

 

「ッ!??」

 

指示役の男が車を出させよう大声で指示を飛ばした時、連絡役の男が突如振り返り、懐から武器を取り出す。

 

「はぁ?!……おい、何の真似だ?」

 

いきなりの行動に驚きながらも男も懐から銃を取り出す。

 

「……不味いなこれは」

 

「ぁあ?まさかここで裏切るって言うのか?」

 

「違う、囲まれてる」

 

「……は?囲まれた……?」

 

「―――おうおう、こんな山奥で怪しい奴らが大勢居るなぁ!」

 

「っ!?」

 

この場には似つかわしくない若い男の声が響く。

 

「……お前は」

 

「おっ?目標発見。どうやら俺らの場所が当たりみてぇだな!」

 

木々の隙間からまだ未成年の二人が姿を現す。

 

「燈さん……一応再度言っておきますが、私達の方はあくまで包囲が完了するまでこの場に留めておく事、ですよ?」

 

「わぁってるよ、つまりは時間制限付きのミッションってことだろ?」

 

「違います。それに相手は銃などの武器を多数持っており、一人ではありますが一ノ瀬家の大人も居るのですから慎重に動いた方が安全です」

 

「……制圧すりゃ動く事もねぇだろ?」

 

「舞夜さんに報告しておきますよ?」

 

「なっ、お前が黙ってれば大丈夫だろ!?」

 

「いえ、もう既に何人かはここに来ているので手遅れですね」

 

「もうかよ……ちっ、しゃーねーな」

 

「ガキが二人……?ここに何の用だ」

 

「はっ、これ見よがしに怪しい物を運び出そうとしている奴らが居たら声をかけるのは当然だろ?あんたのその右手に持ってる物が最たる証拠だろが」

 

男を挑発するように八倉燈が面白おかしく笑いながら話す。

 

「はぁ……燈さん、そんな分かりやすく相手を挑発するのは控えた方が―――」

 

四栁司が呆れるようにため息を吐きながら咎めるが、その言葉を言い切るよりも前に発砲音が森の中に響き渡る。

 

「ははっ、分かり易い奴で助かるぜ」

 

銃を持つ男がその武器を相手に向かって撃ったが、八倉燈はそれを嬉しそうに笑いつつも避けていた。

 

「……おい、こいつらは」

 

「その考えで当たっている。二人共まだ子供だが……同じ一族の人間だ。あの世代の中でも上の方だろう」

 

一ノ瀬家の男の返事を聞いて、確かめるように二度、三度発砲するが、その全てを軽々と避けられた。

 

「ちっ、こんな単発のお守りじゃ相手にならねぇか……」

 

「おいおい司、相手がこんなにやる気ならよぉ、迎撃するしかねぇよな?これは正当防衛ってやつだよなっ!?」

 

「はぁぁ……全く、幾ら戦いたいからって……まぁ、いつもの事ですし付き合いますよ。私は左の男で良いですよね?」

 

「あったりめーよ、雑魚はお前にくれてやる。俺はメインディッシュを相手するに決まってるだろ」

 

「はいはい、一応安全第一でお願いしますね?万が一何かあれば舞夜さんが悲しみますので」

 

「はっ!ある程度格上を相手にするからこそ強くなれるだろうが!当然危険は承知だっ。舞夜の奴もそうやって強くなってんだからよ」

 

「……タイムリミットは長くても一分半ですので、それまでに頑張って下さい」

 

「いいじゃねぇか、燃えて来たぜ!」

 

対峙した一ノ瀬家の男が周囲の気配を探りつつも、目の前の敵と向かい合う。

 

「さっさとここを片付けて抜け出さないとな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っと、これで三カ所目だな」

 

白巳津川と隣の町の境界辺りにある建物の中、自分の周囲に倒れている人を見渡しながら一息つく。

 

「舞夜様、西区の制圧の方ももうすぐ完了するとのご報告が」

 

舞夜の振りをしている幻体の戦闘が終わったのを見て、スーツ姿の男が近寄る。

 

「そう?そんじゃあ、ここの後始末はお任せしますね?」

 

「この後はどちらへ?」

 

「そうだなぁ……帰る道中に未完了が二軒ほどあるし、そっちに寄りながら一旦家の方へ戻るつもり」

 

「畏まりました。では、こちらの区はお任せください」

 

「うん、もし何かあったらすぐに連絡をして下さいね?可能な限り駆け付けますので」

 

「ありがとうございます。もしもの時はよろしくお願いします」

 

「それじゃあ、頑張って下さいね」

 

「はい、そちらもお気を付けて」

 

一礼する人に手を振りながらその場を後にする。

 

「……はぁー、全く……人使いの荒い心配性な契約者様だぜ」

 

自分一人になり、繕っている人格を止めて首を鳴らす。

 

「ま、相手はユーザーでもねぇし、簡単だったけどな」

 

敵地に乗り込み、出会い頭に能力で全員の動きを止め、そのまま武力で沈めるだけ。実に簡単な作業だった。

 

「ここが予定より大分早く片付いちまったし、寄り道しがてら帰るとすっか」

 

ポケットにあるスマホの時間を確認して、今後の予定を組み立てる。

 

「……一応、皆の様子も見ておくか」

 

家へ戻る前に一度、ヴァルハラ・ソサイエティの方にも顔を出しておいた方が良いだろう。

 

「んじゃ、もう一働きと行きますか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あの、一ノ瀬先輩、私と二葉は本当にここで待ってれば良いんですか?」

 

昨夜、突然秘密裏に私と二葉に九重家に来るようにと舞夜からの連絡があり、無理やり夏休み中の玖方女学院に用事を作り、二葉を連れて学校の帰りに寄って来た。

 

「うん、二人は連絡が来るまでここで待機って指示が出てるから、安心して平気。あと、出来れば璃玖って名前で呼んでほしい」

 

「えっと……璃玖先輩?私達は舞夜から何も聞かされずに来いって言われてるのでそろそろ内容を……」

 

合流したのに特に用も伝えず、談話室にあるお菓子や飲み物を食べているだけだったので、流石に耐えきれず聞いてみる。

 

「このお菓子、美味しい……。さっぱりしてて夏に、合うかも?」

 

隣に座って居る二葉は特に気にした様子も無いように見える。もっと目の前の璃玖先輩に警戒するかと思ったけどそうでも無いみたい。まぁ、確かにのんびりとしてそうな人だし……意外と相性が良いのかもしれない。

 

「……二人は、今回の件をまやまやからどこまで聞いてる?」

 

食べているお菓子の手を止め、チラリと黒い瞳をこちらに向ける。

 

「全然ですね。騒動が起こるから自分の言う通りに動いて欲しいとだけ」

 

「私の方は……その、危険だから守ってあげるって……」

 

二葉と私で若干言葉が違うけど、どういうことなのかしら?まぁ、確かに守ってあげるなんて言われたらムカつくけど。

 

「そう……。多分、今日がその山場になると思う。だから二人をここに呼んだ」

 

「山場……?既に事態が始まってるって事ですか?」

 

「うん、面倒だから詳細は省くけど、既にこの街に襲撃を仕掛けようとしている人達を対処する為に動き出している。これに関しては恐らく問題無いと思う」

 

止まっていた手を動かしお菓子を口へ運ぶ。

 

「……そしてその後の展開は、実行犯……私の実家、一ノ瀬家の一ノ瀬龍誠が動くと予想している」

 

「……ここへ来るって予想を?」

 

わざわざ舞夜がここへ人を呼び、待機させている。そして、目の前には同じ一ノ瀬家の人を呼びだした。となるとその人はこの九重家に来るのが確定しているはず。

 

「うん、必ず来るだろうね。叔父さんは九重家から当主の座を奪い取るために今回の件を起こしてるから」

 

「私達は何をすれば?」

 

「………、まやまやからのお願いでは、あなた達には何もさせなくて良いと言われている。私が受けたのは、有事の際に守ってあげて欲しいと」

 

「何も……?それに、守るって……」

 

何を言ってるのかしらあいつは……、何の為にここに呼びだしたかと思えば私と二葉の安全の為に?

 

「えっと、璃玖さんが、その護衛?をしてくれてるって認識で大丈夫、ですか?」

 

隣で大人しく会話を聞いていた二葉が尋ねる。

 

「概ねそんな感じ。私の事とか良く知らないだろうし不安かもしれないけど、安心して。大抵の事なら多分平気だと思うから」

 

「あ、いえ……璃玖さんの事は、たまに舞夜姉から出て来てるので、何となく知ってます」

 

なんだ、既に舞夜から聞いていたのね。

 

「私も、発足された時に舞夜から情報としては聞いているので……」

 

「そうなんだ、……因みに、まやまやは私のことをなんて言ってたの?」

 

「えっと、その……、『良い人だから、私みたいに仲良く出来るよ』って……」

 

「……そうなんだ」

 

二葉の台詞に少し嬉しそうに頬を動かし、私を見る。

 

「関わるなら、しがらみ抜きで付き合う事。後は……私とは相性が良くないかもとか言われたり……?」

 

「……確かに、お姉ちゃんとは悪そう」

 

思い返していると、隣から毒が飛んでくる。

 

「ちょっと、二葉?それは一体どういう意味かしら?」

 

「だって、璃玖さんって結構マイペースに見えるから、一緒に行動したら……怒りそう」

 

「勝手に決めつけないでくれるっ?それに、先輩がマイペースって決まったわけじゃないでしょ?」

 

「……ん、私もまやまやから同じ事を言われてるから。多分そうなんだと思う」

 

「やっぱり……確定だね、お姉ちゃん?」

 

「くっ……後で舞夜の奴をとっちめてやらないといけないわね……!」

 

「あの、璃玖さん……。璃玖さんの方はどう聞いているんですか?私達の事を……」

 

「私?……んー……そうだね、二葉ちゃん?ってまやまやから呼んでたからそう呼ばさせてもらう。可愛い後輩?妹が出来たみたいで嬉しいって言ってた、かな?後は……自分の話を目を輝かせて聞くのが小動物みたいで可愛いって良く聞く」

 

「ふっ、二葉が可愛いのは当然よ」

 

舞夜もよく分かってるじゃない。

 

「どうしてお姉ちゃんが自慢げにしてるの……」

 

「お姉ちゃんだからよっ」

 

自信満々でそう返す。が、二葉の呆れるような眼差しには気づいていない。

 

「姉の……三花?で大丈夫?」

 

「好きに呼んで貰って大丈夫です」

 

「うん、ありがと。そっちは……シスコンって良く話してた」

 

「シスっ!?……シスコン!!?」

 

「聞いてた時は、そこまで……?って少し大げさだと思ってたけど、間違ってなかった」

 

「やっぱり、あいつは後で殺してやる……」

 

なんてことを話してるのよ……!もっと、こう……いい話とか言うべきでしょ!

 

「あ、でも」

 

顎に指を当て、何かを思い出す様に私を見る。

 

「真っ直ぐな子って凄く褒めてた。色々と口うるさい時もあるけど、世話焼きで面倒見も良いし自分の考えをちゃんと口に出すから変な疑いを持たずに関われる数少ない友達、って」

 

「!? っ……、………」

 

「お姉ちゃん、顔真っ赤」

 

「う、うるさいわねっ、別に照れてないわよ!普通の事だしっ?当然よ!」

 

くぅ……絶対後で懲らしめておかないと私の気が済まない……!

 

「あの、良ければ……舞夜姉の話とか、璃玖さんの話を聞かせて貰って良いですか……?」

 

「私、の?」

 

「はい、二人が一緒の時って、何をしてるか、とか」

 

「まぁ、特に面白くも無いけど、それでも平気?」

 

「大丈夫です、お願いします」

 

あらま、二葉から踏み込んだって事は……安心しても大丈夫みたいね。

 

小さい頃から対人関係にちょっと機敏だから少し心配してたけど、想定よりずっと早くて驚いた。まぁ、舞夜からの推薦があったからってのも大きいでしょうが。

 

楽しそうに話しかける二葉の横で二人の会話を聞きながら、今回の一件について少し考える。

 

……まず、あまり私達に話さずに水面下で事を収めようとしているのは間違いない。それに、かなり大規模な動きがあるはず。

 

そもそも、舞夜が直接指示を出して動いてるのだから確実に厄介なのだろう。

 

けど、私と二葉が動くのは舞夜的に嫌だったと……。どうしてかしら?普通に考えるなら私と二葉を誰かしらが狙っているからだと思うけど……それに、舞夜にはアーティファクトとかいうインチキがあるし……。

 

仮に敵勢力が私達を殺す可能性があるとして、それを防ぐ為に璃玖先輩を……?

 

……一ノ瀬璃玖。舞夜から聞いてる話では、『もし本気を出す事があるとすれば、私よりも全然強い人だからあまり怒らせない様にねー』とか気軽に言ってた。いざ面と向かって話してみたのはいいけど、あまりそういう雰囲気は感じないわね。

 

噂や、過去の情報でも嫌という程周りが騒いでいたのを覚えている。

 

『一ノ瀬家の神童』

 

璃玖先輩を噂を聞くとき、必ずと言っていいほどこの名称が付いて来ていた。

 

曰く、九重宗一郎をも越える子が誕生した。

 

曰く、幼少期からその才能は他の追随を許さない。

 

曰く、生まれながらの黒い目を持つ特異体質と。

 

初対面でまず目につくのが、その黒い目。詳しく聞いてはいないけど、どうやら先天的な才能がどうとか言っていたわね。

 

同年代はおろか、上の年代すらも凌駕する程の身体能力を持っており、その成長速度は九重澪……澪さんもを越えると言われていた。

 

けど、ある時を境に徐々にその噂は鳴りを潜め、ぱったりと聞かなくなっていったし、それに合わせて璃玖先輩の姿を見る事も無くなっていったらしい。

 

それと相対的に徐々に舞夜の話が上がり出していたのを小さいながら覚えていた。

 

小柄で、黒髪黒目の死んだ様な目をしている同年代の無表情な奴……そんな第一印象。

 

いきなり現れ、有り得ない早さで駆け上がって行ったのをよく覚えている。一度会ってから次会った時には、上の……私達とは全然違う格上の相手と戦っている頭のおかしい奴。

 

そう思っていた時には璃玖先輩の噂は消え、舞夜の噂だけが飛び交っていた。

 

九重家当主の弟子で、秘蔵っ子とか、奇跡の子とか、予言の子とか……当時は意味が分からなかったけど。

 

片や歴代最高峰の才能、片や一族の人間ですら無い穢れた子、そう比較していた大人も居たっけ?

 

普通なら仲良く出来なさそうだけど、裏でコソコソと協力する程の信頼関係を築いてるとか……ちょっとムカつく。

 

別に嫉妬とか羨ましいとかそんなんじゃない。ただ単純に、今回の件も含めて私に何も話していなかったのが腹立つ。

 

……やっぱり、今回の件が終わり次第一発殴っておかないと。

 

そう決心し、手元の飲み物を飲んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そうか、分かった」

 

連絡機器の通話を切り、ため息を吐く。

 

「龍誠様……なんと?」

 

「こちらの動きに合わせるように向こうも動き出した。街へ潜めさせていた陽動の奴らが全滅するのも時間の問題……との連絡だ」

 

「っ……やはり、こちらの動きは向こうには筒抜けだったと……」

 

「だろうな。ある意味想定通りという事だ」

 

「では、この後は……?」

 

「ああ、本命で行く。車を出せ」

 

「畏まりました。準備致します」

 

「さて、俺の行動をどこまで視ているのか……勝負と行こうじゃないか、九重舞夜」

 

 





終盤に差し掛かりつつある……?

次回は璃玖さんの話を差し込ませてから一ノ瀬家サイドの視点を入れたり?ですかね。

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