9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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一ノ瀬璃玖の回想?独白?過去話?です。


てか!てかてかてかっ!!!9-nine-からスピンオフのムービー出ていましたね!見ましたかっ!?もしまだの人が居ましたら、私のこの話を見るより先に見て下さいっ!!
なんかサラッと出てきて、「……ん?なにこれ?」って感じでビックリしましたw

2025年の冬との事でしたが……アニメ化に続きどんなのが来るか今から待ち遠しいですねぇ……。まぁ、私は完結出来るように頑張らないといけませんがw




第33話:特色の少女

 

 

私には戦いの素質があった。

 

所謂、天賦の才と言う物。古く幼い頃の記憶を掘り返しても、周りの大人たちは手放しで褒めていたのをよく覚えている。

 

と言っても、私が何かをしたわけじゃない。ただそれを持って生まれただけだった。

 

それだけなら良かった。きっと、その才能を余すことなく生かして歴代に残るような実力者に成っていたんだろうと思う。

 

……でも、私にはよく分からなかった。

 

皆、強くなれと言う。期待していると口にする。父や母からも会うたびにそれを聞いていた気がする。

 

強くなってどうするんだろう?技を覚え、強靭な体を手に入れて何の意味があるのだろう?

 

いつも手合わせは私よりも大きく、年上の男の人。初めは何度かやられたりもしていたけど、直ぐに勝つことも出来た。

 

それを見て周囲の人らは喜んでいたり、驚いたり、睨むような目を向けてたりと色々だった。

 

多分、喜ばしい事なのだろう。

 

でも、やっぱり私には意味がある様には思えなかった。

 

ある日、どうして強くならないといけないのかと母に聞いた事があった。その時は確か、一族の為、我が家の繁栄の為……そんな内容を聞かされたはず。

 

その話をしている時の母の顔は、あまり好きではなかった。

 

私には生まれながらに他とは違う特徴があった。

 

目が黒い。ただそれだけ。

 

医者や親族の人からは先天的な物だと話された。調べた結果、ある種の才能が顕現した証だとか何とか。

 

でも、私はこの目が嫌いだった。

 

他の皆とは違う目、皆が私を見るたびに嫌な表情を浮かべて距離を置く。

 

それに対して、一部の大人たちは怖いくらいに喜んでいた。『天賦の才だ!』『生まれながらの奇跡だ!』と……。

 

けどそれは、私の才能に対しての事であって、私自身にはあまり興味が無いように見えた。

 

そう見えてしまった時には、周りが喜び、褒めてくれるからと惰性で頑張っていた修行や稽古をする意義が見出せなくなった。

 

まぁ、今思えば……逃げになるんだろうなぁとは思う。きっと、小さいながらに自分を見て欲しかったとか、構ってほしくての反抗的な理由もあったのかも。

 

そこから私は……端的に言えば、手を抜いた。

 

周りは、一時的なスランプだとか教える人や対戦相手が悪かったのだろうと口々にしていた。だけど、父は直ぐに私がわざとだと気付き、叱った。

 

子供の私は、次から叱られない様に加減を身に付けた。

 

父が見ている時は可能な限り好調な風を装って動き、その他は良い時もあれば悪い時もある様な感じで波を作った。

 

それでも決して全力は出さなかった。

 

これ以上周りからの期待に応えるのも少し億劫になってしまっていた。

 

適度な加減で頑張りつつ日々を過ごして行く内に、私の周りから人が離れていることに気が付いた。その人らは『気のせいだった』とか『持ち腐れ』だとか言って失望した眼差しを向けて去って行った……。

 

まだ小学生だった子供相手に何を言ってるんだが……。

 

けど、こうしていれば私へ向ける期待の表情を見なくて済むし、結果オーライだったと思う。

 

急激な右肩上がりだった私の成長速度は、次第に下がって行く。ま、それでも同年代と比べればかなり上だったけど……。

 

確か、その頃が小学生の高学年だから……11歳とかそんぐらい。

 

 

 

 

 

 

 

九重舞夜と出会ったのは、そんな時だったと思う。

 

その日は、父と九重家の当主様との話し合いがあり、何かしらかの都合が良かったのか、私も一緒に連れて行かれた。

 

会議の間は暇な時間をどう潰そうかと息を潜めながら実家と似たような大きな屋敷内を散歩していた。すると、少し離れた場所から何か物音が聞こえて来た。

 

音的に何か鍛錬しているであろうと分かった。特にすることも無かったので何となく音の発生源を覗いた。

 

「………」

 

そこには私よりも歳が下で、肩上位で揃えられている黒い髪の女の子が居た。

 

自分の身体の動かし方を確かめる様に少し動き、今度は筋トレを始める。何セットか終えたらまた休憩を挟むかのように自分の身体を動かす。

 

見覚えのあるやり方。私も物心が付いた辺りの本当に小さな頃、それも内容的には基本的な事だった。最近始めたのだろうか……?

 

暫く少女の鍛錬を見ていると、碌に休んでいないことで徐々に動きが崩れ始めていた。

 

……あまり、効率的じゃないと思うんだけど。

 

否定的な感情を持ちつつも、一心に繰り返している様子を見て何となく声をかけた。

 

……今に思えば、きっとその姿に動かされたんだと思う。真剣な雰囲気だったし。

 

「……そこ、崩れてるよ」

 

「っ!?」

 

静かに近寄り、後ろからゆっくりと声をかけた。すると、私の存在に気づいたその子は一瞬で私から距離を取った。

 

……何、今の反応速度。

 

「………、……誰」

 

無表情だが、しっかりと警戒する目をこちらに向ける。

 

「あ、ごめん。変な人じゃない……」

 

両手を前に出して謝る。けど、私から一定の距離を保ちつつじっとしている。

 

「誰」

 

「えっと、一ノ瀬家の一ノ瀬璃玖って言うんだけど……」

 

口調強めで再度聞かれたので、正直に答える。

 

「……敵?」

 

「えっと……多分、敵じゃないと思うんだけど……」

 

敵?いや、一族間でのいざこざがあるのなら敵になるのかな……?ここって九重家だもん……。

 

「……そ」

 

私の言葉に納得してくれたのか、体勢を元に戻す。

 

「私に用?」

 

ピクリとも動かない表情でこちらを見る。私が言えた事じゃないけど……すっごく無表情だね。

 

「あなたの鍛錬を見てて……その、疲れて来ているせいだと思うんだけど、少しずつ動きが崩れて来てたから……注意しようかなって」

 

「………」

 

無言で自分の身体を見下ろし、腕や足を動かす。

 

「……まだ大丈夫だから、それよりどこがおかしかった?」

 

「えっ、あ、……さっきのやつで」

 

顔を上げたかと思うと、私が指摘した箇所を聞いてくる。咄嗟の事で慌ててしまう。

 

「見せて」

 

「え……あ、うん……ここなんだけど」

 

お願いされたので実際に動いて見せる。

 

「疲れてるから腕が下がって来てると思う。あと足の動きも遅れてたから……」

 

なんで私が教えてるんだろ。早く帰りたい……。

 

「分かった……。ありがと」

 

そうしてお手本を見せている間も、必ず一定の距離を取り続けている。多分、私が腕を伸ばしても一歩程の間が出来るように。

 

凄く警戒心が強いと言うか……なんて言うんだろう、人に心を許さない様な感じ。そんな目をしていると思う。

 

今まで色んな人と戦ってきたり会ったりしたけど、初めて会うタイプの子だった。

 

その後、私の事に興味を無くしたかのように再び訓練に戻った。それを見てそそくさとその場から離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に会ったのが……確か、私が中学になって少し経った頃、だったと思う。

 

この頃になった時には、日が経つにつれて父から言われる事が無くなって行ったが、それに対抗するかのように父の弟の叔父さんから口うるさい位に……と言っても直接的には少なかったけど異様に目立っていた。

 

多分、同時期にまやまやが頭角を現して来たことが原因だったんだろうね、確実に。

 

私に対する噂が減っていくに合わせて、とある噂が増えて行った。

 

それが、九重家から急に現れた少女の話。

 

軽くその内容を聞いてみると、どうやら凄い勢いで戦績を伸ばしている女の子との事。名前は九重舞夜、10才に満たない程の子らしい。

 

ふと数年前に偶々遭ったあの子を思い出していると、ある日父から九重家での試合があると言われ、連れて行かれた。

 

九重家のご当主様との挨拶を交わすと、その横に例の子が立っていた。以前見た時よりも少し背が伸びており、変わらず無機質な表情をしているけど、目には少しだけ光があった。

 

「……久しぶり」

 

大人同士の会話の間に、数年振りに会った九重舞夜という名前の子に挨拶をする。

 

「……すみません、誰……でしょうか?」

 

……どうやら、向こうは私の事を覚えていなかったみたい。

 

自分で言うのもなんだけど、割と記憶に残りやすいと思う。特にこの目とか……。

 

だけど、目の前の少女はそれをまるで気にしておらず、首を傾げて自身の記憶を漁っていた。

 

「あ、いや……忘れてるなら何でもない」

 

「一ノ瀬家の璃玖さん……ですよね?んー……どこかで?」

 

「まぁ、うん、一応……前にここで」

 

「ごめんなさい、ここ最近記憶力的に色々とあって忘れてしまってるだけかもしれないです」

 

どうしても思い出せずにこちらへ頭を下げてくる。

 

「いや、別に大した事じゃない、気にしてないから」

 

そもそも記憶に問題って……頭でも怪我をしたのかな?

 

話してみると、以前とは別人の様な口調と声音で驚く。まるで記憶喪失したみたい。

 

それから少し話して、実際に何回か手合わせとなった。九重のご当主様からは『お手柔らかに頼むぞ』と面白そうに笑っていた。

 

何戦か戦ったけど、結果としては余裕で私の勝ちだった。というか、まず積んで来た年齢の差が歴然。

 

確かに九重舞夜の同年代との比較で考えるならかなり強いと思う。動きのキレが凄いし動作から動作への隙が少ない、それと……危険個所への攻撃の回避がずば抜けてた。危機察知としての能力が高いんだと思う。

 

けど、私や普段戦ってる大人の人と比べるとやっぱり見劣る。

 

「くく、やはり貴様の子は素晴らしいのぅ」

 

「……そちらも、まだ本気を出されていないでしょう」

 

私の父の言葉に、ご当主様はニヤリと笑った。

 

「では次に移らせてもらうとしよう。……ほれ舞夜、力を使っても良いぞ?ただし二分間だけじゃ」

 

「……?」

 

ご当主様が九重舞夜に呼びかける。すると、静かに頷いた目の前の少女の黒い瞳が赤く染まる。

 

「……ぇ」

 

その光景に驚いて声を上げた。

 

「……ふぅ、行きますよ」

 

準備が終わったとばかりに構えを取る姿を見て、私も構える。

 

「―――、ッ!?」

 

その歳で一族の力を普通に使えるようになっている事に素直に凄いと思いつつも、どの程度変化するのかと予測していた時には既に背後へ回られていた。

 

先程まで居た場所には少し沈んだ地面と巻き上がる砂煙だけが残っていた。

 

背後からの気配に合わせて振り返り、殆ど反射と勘で迎撃した。

 

「ぐっ―――!」

 

こちらからの反撃を想定していなかったのか、もろに攻撃を受けて吹き飛ぶ。

 

「ほほぅ、今の速度に反応し切るとは……やはり」

 

「今の力……まさか、あの歳で使いこなせてるのですか……?」

 

「解放だけならの。じゃが十全に操れていない、……身体もまだ追いついてはおらぬしな」

 

「………」

 

大人の会話を聞きながら、すくりと立ち上がった九重舞夜を見る。

 

その目は変わらず赤いままだ。それに今の変化の違い……多分大人たちと同じ位に力を解放してる……。

 

小さい頃に、一族の力について説明受けた事がある。

 

脳や心臓とか血の流れを操作して爆発的な力を手に入れる方法。その症状として目に変化が現れる一族の力。けど、その力を自分で扱えるようにと、力の解放は徐々に行っていく。

 

心身を鍛え、それに耐えれるようになったら解放率を増やし、力を得る。そんな要領でして行かなければまず身体が持たない。制御出来ないからだ。

 

……しかし、目の前の少女は明らかにその解放の上がり幅が異常だった。小さな身体には似つかない程に。

 

『ただし二分間だけじゃ』

 

時間制限付きとなるのなら、当然体の限界を超えた使い方ってことになるけど……。

 

それか……私の様に特異体質?いや、それはあり得ない。

 

自分の体の異常性は、よく分かってる。だから目の前の子が同じでは無いと直ぐに否定する。

 

分からない事が沢山頭に思い浮かんでいたけど、状況がそれを許さずにすぐに戦いを再開する。

 

……結果だけを言えば、私が勝った。

 

最初は驚いたけど、対処は可能だった。だけど、久々に本気で戦ってしまった。私も力を使って応戦した。そうでもしないと目の前の相手に気圧されそうだった。

 

二分間耐えればそれまでにストップが出るから試合は終わると高を括っていた。しかし時間が経つにつれて相手の動きが加速的に早くなり、それに合わせてまるで私を殺しかねない圧がそこにはあった。

 

最後の方は反撃せずに回避に専念していた。そして、ご当主様の終了の合図と同時に私の対戦相手は地面に倒れ込んだ。

 

「……はぁ、はぁ……」

 

……何、この子。

 

背中に嫌な汗を沢山掻いた。大して動いていなかったのに心拍数が上がっていた。

 

小さい頃に自分より背の高く、強い相手と戦わされた時とは違った怖さを感じ、ゾクリと体を震わせた。

 

試合が終わった後は、ご当主様が呼びだした人に運び出されて行き、今回の手合わせはそこまでとなった。

 

……その日からだろう、私がまやまやに興味を持ったのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから私は、ひっそりと九重舞夜の事を調べ始めた。

 

私が初めて会った日から数年後……多分今から一年以内に突如として姿を現したとの事。歳は……私より五歳ほど下になるね。九重家って事は、九重澪さんの妹?んー……でもあの人の両親って一族から距離を取って政府側の職に就いてるって聞いた事があるし……。子供だけ実家に預けた?

 

あの歳でこれ程の才能が有るんだから、一族の血はかなり受け継いでるはずだし……生まれたとしたら多少なりとも話題として出て来てもおかしく無いのに全くと言っていいほど聞いた事がない。

 

隠してた……とか?

 

でも初めて会った時の九重舞夜は……こう言ったらなんだけど、初心者みたいな感じだったし。一族の人間でしかも九重家なら私みたいに幼少期から始めるはずなんだけど……もしかして体が弱かったのかな?

 

それが改善していったから訓練を始めた……そんな感じなのかもしれない。

 

……そう考えると、成長速度が凄まじい事になる。仮に初めて会った時辺りから始めてたのなら、異常だと思う。やっぱり素質が高いんだ。

 

調べた内容からそう結論に至った。

 

……んー、でも……変な噂もあるけど……なんだろ、あれ。

 

一部の大人たちから変な呼び名で呼ばれているのをちらほらと聞いた。

 

『穢れた血』『穢れた子』

 

それがどういった意味を指しているのか詳しく調べて無いからまだ分からない。何も考えずに思いつくのは九重家に嫉妬した人達が嫌味としてそう呼んでるだけ。

 

私も多少なりと経験があるから何となく分かる。同時に多少なりの同情も湧いてくる。

 

だけど、何となく違う様な気もしてくる。

 

そう言っていた人は、侮蔑的な……心の底から忌み嫌ってると思える程、声に感情があった。

 

もし、出生に何か関係があるとしたら……急に現れた理由も理解は出来る。まぁ、私の予想が当たっていたからと言ってだから何って話なんだけど。

 

私が興味を持っているのは、九重舞夜という一人の人間だしね。

 

一応、なんで呼ばれているのかをついでに調べつつも、周囲にはなるべくバレないようにひっそりと交流を始めた。

 

最初は事あるごとに私に手合わせや強くなるコツ的なのをせがんで来ていたのに少し困ったけど、減る物じゃないし普通に教えた。中には一族の力の使い方も聞かれたけど、私の場合自然に使いこなせていたからあまり参考にはならなかった。

 

暫く舞夜との交流を続けていたけど、九重家の人や一ノ瀬家、特に父から何か言われるかと思ったけど言われることは無かった。縁を作るのには都合が良かったのかもしれない。

 

一年ほど過ごし、私も高校生になった頃には、まやまやの知名度もかなり知られていた。その辺りから一緒に居るとすり寄って来る人に巻き込まれるので更に隠れる様になった。

 

凄いと褒めたたえる人も沢山居た。けど、それ以上にまやまやを嫌う人の方が圧倒的に多かった。

 

自分より年下に負けた人、ご当主様の弟子という理由、九重澪さんとの比較……そして、一族の血を持っていない子供。

 

どうして穢れた血などと呼ばれていたのか、その答えに辿り着いた時は少し驚いた。けど、驚いただけ。寧ろ更に興味が湧いたくらい。

 

敵対する人達を、まやまやは実力で黙らせていった。『文句を言うなら自分に勝ってみろ』と言わんばかりに。……後は澪さんが黙らせていた。

 

確か、この辺りで七瀬とも仲良くなった。昔から顔を合わせれば挨拶をする程度の仲ではあったけど、まさかまやまやから引き合わされるとは思わなかった。

 

契約?取引を交わして、お互いに利があると手を組んだみたい。そこに私も入れてもらった感じ。と、同時に秘密も教えてもらった。どうしてまやまやがこんなにも上を目指しているのか、どうして『予言の子』と呼ばれていたのかを……。

 

正直フィクションみたいな話だったけど、本人は真剣そのものだった。そのためには力が必要で、同時に文句を言われないだけの地位と実績を作る必要がある。ご当主様からもそう言われてるみたい。

 

それまでに信頼できる人を自陣に引き入れ、その時が来た時に協力させたいとの事。期限はまやまやが高校に入学するまでだから……あと大体五年程。

 

あと、信頼出来る一人に選んで貰った事に少し……ううん、凄く嬉しかった。その期待に応えれるように可能な限り私も強くなっておかないと……なるべくバレないように。

 

お互いに会う頻度を増やし、その合間に必要なら三人で会った。

 

それからも、まやまやの方は次々と実績を作り上げ、周りもそれを認めて行った。

 

リミットまで後一年ちょっとに迫った時、遂にまやまやは一族の中でも最上位になっていた。それも六番目……。

 

昔から一切変わらずに、只々目的の為に真っ直ぐ突き進んで行った結果の表れだった。

 

周囲の声なんてまるで関係ない、堂々と自分の道を選んだまやまやが眩しく見えた。

 

それと同時に、ご当主様から報せが大々的に行われた。『これより約一年後に、一族の悲願を果たせる時がやってきた』と……。

 

以前より密やかに囁かれていた噂だけど、暗黙の了解として誰もが口には出さなかった。それが正式に発表され、数年前から進められていた組織、新しく制定された一族内の決まりなど色々と情報が飛び交った。

 

そこからの一年はあっという間だった。新しく作られた組織、そのトップはまやまやでかなり厳しい禁則事項やルール、約束事が出て来た。それでも信用できると選んだ私を含めて八人……いや、多分九人かも。

 

直接的に顔を合わせていない人も居たけど、まやまやの方で上手く回すから無理に会わなくて良いと言われた。正直ありがたかった。

 

そして、とうとうその時がやってきた。

 

事前に教えられていた白巳津川での地震。メビウスフェスの日に起こる災害の影響で破損する白蛇九十九神社にある神器。

 

遂にまやまやの役目を果たすときがやって来たんだと気合を入れた。

 

入れたと思っていたら、直ぐに決着が付いた。いや、直ぐでも無いけど……護衛とか色々としたから多少なりとあったけど、想像していたよりも短期間で終わってしまった。

 

まやまやはと言うと、これまで備えて来た頑張りをこの一瞬の為に解放しているかのように忙しなく動き回っていた。色々と想定外もあったみたいだけど、軌道修正も上手く行き、見事それを達成した。

 

後処理の方も片付き、盛大に祝われた。

 

これで物語はお終い……ってなればまやまやも報われたんだろうけど、現実はそう綺麗な形では終わりを迎えない。ある意味、一族の戦いが終わったからこそ始まったみたいな物だし……ね。

 

その日は久々にまやまやの方から三人だけで話したい事があると言われた。別々で二人と会う事は度々あったけど、まやまやの方から言われるのは久しぶりだった。

 

先に部屋で待たせて貰っていると、不思議な気配をした人が向かって来ていた。

 

気配や足音的には確実にまやまやだけど……なんだか違和感を感じる。

 

警戒しながら開かれる部屋の扉を見ていると、入って来たのはまやまやだった。……いや、まやまや?なのかな?

 

同じ見た目だけど、明らかに纏う気配が違う。まるで別人みたい……。先日会った時と全然違う。

 

七瀬が来るまでに聞いてみると、『他の枝の記憶を引き継いだだけだから気にしないでー』と軽く返された。

 

……だけ?

 

そうとは思えない位には、まやまやが纏う気配は違う。上手く表現できないけど……ご当主様みたいな雰囲気がある。

 

不思議に思いながらも合流した七瀬と三人で今日集まった理由について話された。そのおかげでどうしてそうなったのかを理解した。

 

今の時代よりもずっと先の未来から記憶を引っ張って来たってことなら納得。急激な変化はそのせいだったんだ……。

 

次の集合時に、一族間の問題を事前に解決する為の計画を聞かされた。既に九重家の方で準備を始めているので私達はそれに沿う様に動くことにした。

 

その中で、計画やその経緯を話しているまやまやは、一見普通に話している様にしていたけど、時折悲しそうというか後悔をする様な目をしていた。

 

当然だと思う。他の世界のどんな記憶を引っ張って来たのかは聞かされていないけど、節々から感じ取れる内容からは一族間でも犠牲者が大勢出たのは容易に想像できる。

 

……そして、多分だけど……その世界のまやまやは、自分の目的を達成することが出来なかったんだと思う。そう思ってしまう程に言葉に重みがあった。

 

話し合いが終わった後に、まやまやに聞いてみた。

 

『その世界の私はどうしていたのか?』と。

 

聞いた私を見て少し考えて、僅かに笑ってこう答えた。

 

『私と一緒に強くなるために頑張っていた』と。

 

その言葉が気になり、詳しく聞いてみようとしたけど、秘密と言われてしまった。どうやら……その世界の私は、今の私よりも精神的に成長……と言って良いのか分からないけど、前に進んでいるらしい。

 

何か切っ掛けがあったんだろうか?自分で強くなろうと努力するほどの出来事が。

 

 

 

 

更に後日、最終確認としてまやまやと二人で集まった。

 

本人は元凶の街へ赴き、私の方は街で防衛をする。あちらの策をことごとく潰しても、叔父さんはきっとご当主様が目的だろうから九重家に来ることが確定している。

 

「………」

 

まやまやが内容を確認している中、私は、ある一つの事を提案することに決めた。

 

この世界のまやまやは、自分か何かを変えようとしている。例の彼を街へ連れて行くのがその証拠だろう。

 

それなら……私も、と思ってしまう。

 

他の世界の私が変わろうと努力したように……そして、七瀬が教えてくれた、まやまやが父に正面から私が駄目では無かったと言い切った事に対して報いたい。

 

きっと、ここが分岐地点だと思う。……いや、一歩進むための分岐地点にしないと駄目だと思う。

 

「……ねぇ、まやまや。お願いがあるんだけど、良いかな?」

 

私の言葉に不思議そうにこちらを見る彼女に、私の想いを伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やはり、ここに来ていたのか」

 

そして今、私の目の前には……九重家にやって来た一ノ瀬龍誠が立っている。

 

 





次回は敵サイドの視点を入れてー……、他視点……計二話ぐらいで白巳津川戦は終わりかな?そしたら主人公側へ戻ろうかと思います。

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