9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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今回でこの枝も終わりを迎えることになりました。ちょっと文字がいつもより長くなりましたが、詰め込みました。




第13話:ふたりの幸せを見れたので、この枝の私は大満足でした

 

 

全員が集まった所で結城先輩がこの後の内容を聞き始める。

 

「それで、作戦は?」

 

「天の能力を使って境内に潜伏。三人が現れたら、都の能力で記憶を読む」

 

「犯人が確定出来たら……私の力でアーティファクトを奪って無力化する、だね」

 

「ああ。もし気づかれた場面はーー」

 

「私の出番ね」

 

「正確には結城先輩と、私ですねっ!」

 

「ああ、その時は頼む」

 

「任せてくださいな、先輩達に指一本触れさせません!」

 

「んじゃ、さっさと天の能力使ってもらって、境内で待機するか」

 

「あの~、出来れば予防線を張っておきたいのですが……」

 

「ん?どうした」

 

「今朝気づいたんだけど、人数が増えるほど効果が薄れる気がするんだよねぇ」

 

「四人もいるから……厳しそうかな?」

 

「まったく効果なしにはならないと思うけど……、一人か二人に掛けた時よりかなり弱くなると思う」

 

「……補助のエンチャント。範囲化すると……効果がその分弱まる」

 

「そうそう、そんな感じです。だから、能力があるから~って油断していると、あっさり見つかったりするかも……」

 

「なるほどなぁ……んーー……」

 

「それなら、もしもの時は対象を絞りませんか?」

 

「そうだな。万が一の時は天自身と都優先で頼む」

 

「にいやん達は?」

 

「男だし、俺自身は解除しちまえ。どうにでもなる。九重も身を守れるだけの力あるし……結城も強い。だろ?」

 

「……そうね。問題ない」

 

「私も問題なしでっ。その時は結城先輩と新海先輩は私に任せて下さいね?」

 

「それじゃあ行こう。都も、よろしくな」

 

「うん、がんばるね」

 

恋人を励ますために最後に声を掛ける先輩を見ながら、境内に向かう。天ちゃんと九條先輩が歩き出したが、結城先輩が動かないことに気づいて先輩が後ろを見る。

 

「結城……?どうした?」

 

「ひとつだけ」

 

「ああ」

 

「……九條さんの盾になってあげるつもりはない」

 

「……」

 

「あなたが私の能力を確認しないまま私を信頼しているふりをしているのは……単純にデコイが欲しかったから。私の力なんて、最初からあてにしていない。……そうでしょう?」

 

「ノーコメントで良いか?」

 

「……。フルーツパフェの分は、働くわ」

 

「頼りにしてる」

 

特に何も起こらずに会話を終える二人。どうやらオーバーロードによる干渉は無かったみたい。

 

「せんぱいせんぱい、私は?私も働きますよ?」

 

「ちゃんと九重の事も頼りにしている」

 

「ありがとうございますっ。それじゃあ行きましょ。天ちゃん達待ってますよ」

 

「ああ」

 

何やら真剣な表情で考え事をしている先輩を見ながらみんなと合流する。境内は明かりが無いためほとんど何も見えない。

 

「どこに隠れる?」

 

「そうだなぁ……天、能力は?」

 

「もう使ってる。大きい声で話すとあっさりバレるかも……」

 

「了解。ひとまずここから移動して端の方に……」

 

「……待って」

 

「どうかしましたか?」

 

制止した結城先輩が無言で奥を指差す。

 

「?」

 

皆がその方角を見て疑問に思っているが、奥に膝を付いた人影が見える。

 

「え、もういる……?」

 

「え、ど、どうしよう」

 

「……落ち着いて。まだこちらに気づいた様子はない」

 

「あっち側から、ゆっくり近づこう……」

 

先輩の指示で人影から距離を取りつつ、大回りしながら慎重に距離を詰めていく。

 

「にいやん、これ以上近づきたくないかも」

 

残り十メートルほどになった時に天ちゃんが言う。多分この先遮蔽物が無いからだと思う。

 

「……分かった」

 

「この辺りで、しばらく様子を見ようか?」

 

「そうだな。一人はもう来てるんだ。他の二人が来る可能性は高い。三人が揃うまでーー」

 

相談し合っている先輩達を無視し、結城先輩が立ち上がる。

 

「ーーぁ、おいっ。何してる!?」

 

「……警戒するだけ無駄」

 

「はぁ?」

 

「……夜目が利くの。あの男が私達に意識を向ける事は、決してない」

 

先輩の制止を振り切って遮蔽から身を出して人影へと近づいていく。

 

「ゆ、結城さんっ!」

 

「私が着いて行きます。先輩達はここで待っていてください」

 

「あ~あ……。あたしのそばにいないと、能力切れるよ」

 

「俺も行く。天、都を頼む」

 

「ほいほい」

 

呆れた様子の先輩と一緒に身を出し結城先輩の後を追う。

 

「あいつを呼んだのは失敗だったか……」

 

「どうでしょうか。今の発言からすると恐らく……」

 

人影との距離が減るにつれて、隣に居る先輩の表情が苛立ちから驚きに変わっていく。

 

「……くそっ」

 

その人影が何か認識した先輩が声を出す。

 

「……石化した……人ですね」

 

「……白泉の制服」

 

「……。知り合い?」

 

「いや、……見たことない」

 

「……そう」

 

静かに呟いた結城先輩が石像の観察を始めた。

 

「……メモ?」

 

石像の傍に置いている紙切れを拾う。

 

「これは……ダイイングメッセージ……」

 

「……犯人が見逃したのか?」

 

「……。いえ、遺書ね」

 

「は?」

 

「……」

 

無言でこちらに差し出したメモを先輩が受け取る。暗くて読めないのでスマホのライトで照らして読み始めた。

 

『罪の意識に押し潰されそうだ。気が狂ってしまう前に僕は僕自身を石にして全てを終わらせよう』

 

うんうん。言った通りの内容を書いてくれて安心した。

 

「僕は、僕自身を……?」

 

「素直に読み取るならば……自分で自分を石にした、という事になるわね」

 

「自分を……?じゃあ、待て、こいつが……」

 

「石化の能力者」

 

「嘘だろ……?」

 

「だとすると、自殺したってことに……なりますね……」

 

「三人目の犠牲者は……犯人自身……」

 

驚き呆けている先輩の後ろに残りの二人も近づく。

 

「そんな……」

 

「あ、これ……どういう、こと?」

 

石化したひとを見て驚きの声を上げる。

 

「都、この男に見覚えは?」

 

「……、香坂先輩の……記憶に。神社で会っていた……」

 

「推測自体は……当たっていた、と言うわけね」

 

「……あっけない幕引き。罪の意識に押し潰されるのならば、はじめから犯罪など犯さなければいいもの。この男は、しっかりと裁かれるべきだった……。自分だけ、楽に逝くなんて」

 

吐き捨てるように石像に文句を言った結城先輩がこちらに振り返る。

 

「……私の仕事は、これで終わりね」

 

「……ああ」

 

「契約通り、報酬は支払ってもらう。一週間分」

 

「はい、内容は一週間なのできちんと支払います。ありがとうございました」

 

「……。それじゃあ」

 

淡々を装った結城先輩に頭を下げて見送る。残された側はただ茫然と石となった人を見下ろしている。

 

「……幕引き。本当に……これで、終わり?」

 

「石像の記憶を読むのは……流石に、無理?」

 

「……。うん、ダメみたい」

 

「そっかぁ……」

 

「この遺書しか……今は判断材料がないな」

 

「これでもう……誰も死なない?」

 

「……そうだね。でも……。たとえ犯人自身でも……また死人が出てしまった。素直に喜べない」

 

正義感の強い九條先輩が悔しそうに左手を握りしめる。

 

「天ちゃん、あんまり見ない方が良いよ?」

 

石像を見ている天ちゃんの目を後ろから手で覆う。

 

「うえ!?あ、う、うん?ビックリした~……」

 

「先輩」

 

「そうだな。天、三人で、先生のところに行ってくれ」

 

「沙月ちゃん?」

 

「ああ、放置はできないだろ?」

 

「翔くんは……?」

 

「警察を……は先生の許可取ってからが良いか。まだこいつに何か無いか調べてみるよ」

 

「じゃあ、わたしも……」

 

「はい、ダメでーす。九條先輩も私達と一緒に成瀬先生の元に行きます」

 

「え、えっと……」

 

その場に残ろうとする九條先輩の手を取り引き寄せる。

 

「九重の言う通りだ。こんなのの近くに居ない方が良い。先生ん家で休んでてくれ」

 

「……」

 

「みゃーこ先輩。行こ?」

 

「う、うん……」

 

納得いかない様子の先輩を天ちゃんと一緒に手を引いて連れて行く。

 

「なんか……びっくりですね。衝撃の展開と言うか……」

 

「うん、そうだね……」

 

「まさか、犯人自身が石化しているだなんて……ね」

 

「でも、ちょっと腑に落ちないですね。ぁ、いや、終わりなら終わりが一番いいんですけど……あ、あー……すみません。人が死んでいるのに良いって言い方良くないな……。すみません、動揺して失言連発……」

 

「……ううん、私も同じ。腑に落ちないの……よくわかる。……本当に終わったと思う?」

 

「どーっすかね……。遺書あったし……ぁでも偽物だったりするのかな?」

 

「そうかも……でも、そんな証拠残すかなって気もするし……」

 

「筆跡鑑定とかで犯人わかりますかね?無理やり書かせていたらわかんないか」

 

「そっか。それだと……証拠にはならないのかな」

 

「舞夜ちゃんはどう思う?」

 

「私ですか?……うーん、そうですねぇ……。物凄くあっさりと片付き過ぎているので違和感があるのは確かです。でも、仮に犯人が別にいたとしても今後犯行をすることは無いかと思います」

 

「そう、かな……?」

 

「はい、私が犯人ならわざわざ別の犯人を用意してまで身を隠したのに、また露見してしまう様な事は控えると思います。少なくとも石化の犠牲者はこれ以上は出ないかと……考えています」

 

「確かに。またバレるような事をするのはおかしい」

 

「そうだね……てことは、これで幕引き……なのかな?」

 

「一先ずは、幕引きと考えて良いかと思います」

 

「まぁまぁ、そこら辺は警察に任せましょ?取りあえず沙月ちゃんにーーあっれ?電気消えてんな」

 

「出かけてるのかな?」

 

「かも。ごめんくださーい」

 

天ちゃんがピンポンを押すが、反応は無い。

 

「いないみたいだね」

 

「ぁ……離れの方かぁ?ちょっと待っててください、見てきます。先輩達はインターホンを連打しててください」

 

「ぇ?ぁ、うん」

 

「いってきまーす」

 

「いってらっしゃい」

 

「夜道には気を付けてねー」

 

天ちゃんと離れ、再びピンポンを押しながら待つ。

 

「……まだ、終わっていない気がする……。まだ、何も……」

 

一人小さく呟く先輩を見ながら今度は私がピンポンを押す……が、やはり人がくる気配は無かった。

 

隣の九條先輩を見るが、様子や気配は特に変わったところは見られなかった。

 

その後、成瀬先生を連れて来た天ちゃんと合流し、新海先輩の元へ向かった。

 

 

 

 

 

「それで、あれから先輩の家に行くの遠慮してるのー?」

 

「そりゃ私だって気を遣いますし?イチャコラしてる恋人たちの空間に割り込むのは流石に気が引けるってもんですよ……」

 

一連の石化事件から時間が過ぎ、もう少しで五月を終えようとしていた。

 

「私はたま~にお邪魔したりしてるよ?用件が済んだらすぐ立ち去るけどね」

 

「うわぁ……勇気あるなぁ」

 

「ま、その代わりに私の部屋に来たりしてるじゃん?」

 

「まぁねぇ……あの部屋が私の部屋ではなくなったのは残念だけど……」

 

「大好きなお兄ちゃんを取られてしまった感じ?」

 

「え?いやいや、そんなことは全くござらんよ」

 

「でも確かに今までは石化の件で集まる機会があったからで……今となっちゃ特に用事は無いもんね」

 

「別に私は家族だし?用が無くてもいけるけどさ……」

 

「彼女さんに申し訳ないと?」

 

「そうそう、毎日ご飯一緒に食べてイチャイチャしちゃってるからさー」

 

「年頃の男女だもん。そりゃ盛り上がってしまうのは仕方ないんじゃない?事件もようやく落ち着いて来たって実感出来たからね」

 

「まぁ、そうだよね。その内落ち着くか……」

 

「それまでは私とイチャイチャするので我慢してね」

 

「なんならあの二人に見せつけてやろう」

 

「あはは、いいねっ。楽しそう」

 

世間では石化は謎の奇病として報道された。原因不明の人体が石になるという病。現在はここでしか発生していないが、専門家たちが良く分からない口論をしているのをテレビでたまに見る。新種の病とか、ツリーマン病の派生型など……オカルト面では地球外生物からの侵略などと……。意外にオカルト面が正解に近いのが何だか笑える。

 

「それじゃ、またあしたねー」

 

「うん。バイバイ」

 

手を振りながら天ちゃんと別れる。その後は特に用事もなかったので家へと帰宅した。

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

都との食事を終え、一息つくためにベランダで風に当たる。最近暑くなってきたからか、夜風が心地いい。

 

「翔くん」

 

後ろから都の声がし、振り返らずに『ああ』とだけ返事をする。

 

「……怒ってる?」

 

隣に来た都は少し不安そうにそう聞く。

 

「え?ああ、いや、そうじゃない」

 

「じゃあ……私のこと、心配してくれてる?」

 

「……そうだな」

 

素直に思ってるのを伝えると、嬉しそうにクスリと笑う。

 

「私ね、ずっと考えていたの。なんで翔くんと……仲違いしたのかなって」

 

「別の枝の話か?」

 

「そうそう、多分、だけどね?」

 

「ああ」

 

「翔くんに、良い所を見せようとしたのかなって……思ったの」

 

「ん?」

 

「仲違いじゃなかったってこと」

 

また笑って、少しぶつかるように俺に触れる。

 

「たぶんね、翔くんの気持ちを知って……私じゃ釣り合わないって思ったんだと思う」

 

「どうしてそう思うんだ?」

 

「火事の時……かなり衝撃的だったの。天ちゃんの為に必死になって、ただのクラスメイトの私まで守ってくれて……この人凄いって、心から思った。自覚は無かったけど……あのときに、翔くんのこと、好きになってたんだと思う」

 

「そ、そうかぁ?衝撃で言えば九重の方が上だと思うけどなぁ……」

 

「ふふ、確かにそうかも。でも、私の態度が変わったのってあの頃からじゃない?」

 

「あ~……確かにそうかも」

 

「翔君の気持ちを知って、自分の気持ちに気づいて……このままじゃ駄目だ……って思ったのかな?私、翔くんのこと、神格化しちゃってるから……」

 

「んな大げさな……」

 

「ふふ、でもそうなの。だからね、私が頑張らなきゃって、それで……暴走して……一人で頑張って、結局何もできずに私は魔眼のユーザーに負けて、死んだ」

 

「……」

 

「分かる?」

 

「何が?」

 

「私は、翔くんと一緒じゃなきゃ、駄目ってこと」

 

都が俺の手を取り、強く握る。

 

「翔くんと一緒だから、私は生きている。翔くんと一緒なら、これからも生きていける……」

 

「翔くんが居るから、私は大丈夫。約束も、してくれたから……ね?」

 

「……ああ、絶対に……守る」

 

「うん」

 

 握った手に自然と力がこもる。ただ握っただけの手だけど、お互いの気持ちを伝える様に握り返す。

 

 

 

 

 

 

 

その二人の様子を怪しい影が近くで見ていた。

 

「……ふふ、あはっ。えへへ……。幸せそうだねぇ……。うふふ」

 

ベランダで、三つ隣の先輩達の会話を盗み聞きする……。いや、これはたまたまベランダに出ると、たまたま二人の声が聞こえて来ただけで……それが夜風に乗って私に耳に入ってしまっただけのことで……別に盗み聞きをしている訳では……!

 

「もう一度……ちゃんと約束する。何があっても、都の事は俺が守る」

 

「うん、守られちゃいます。これからも……末永く、よろしくお願いします」

 

エンダァァアア!と……尊い。な、なななにあのやり取り!?自然と口角が上がって変な声が出てしまいますよぉ……。ぐはっ。

 

その後も二人のやり取りに悶えていると、時間も遅くなったという事で九條先輩を送ることになったようです。

 

マンションから手を繋ぎながら出て行った二人をベランダから見送っていると、その背後に人影が見える。

 

「……あれは……」

 

その人物が何か把握した瞬間、ベランダから飛び出る。下の階の手すりに足を着け、勢いを殺してから、更に下の階に下がる。それを繰り返しながら一階まで降り、地面に着地する。

 

「深沢先輩……もしかして、約束破りましたね……?」

 

少し離れた場所で白いパーカーを着ている人物が先輩らの後を付けている。

 

「うーん。でも接触はしてないからまだセーフなのかな?」

 

その更に後ろを私が尾行する。裸足で出てきている為足音を消すのは慎重に行う。

 

暫く観察していると、二人の周囲から人の気配が不自然に消える。……これは、アウトですね。

 

その直後、二人に近づこうと歩みを速めるゴーストさんに対して能力を使う。突然に身体が動かないのを感じ、慌てている。

 

「……やっぱりゴーストさんでしたか……」

 

ゆっくりと背後に近づき声を掛ける。既に新海先輩達の姿は見えないのでこちらに気づく事は無かったみたい。

 

「深沢先輩、約束……破りましたね?」

 

背後から横に立ち、耳元で囁く。横から見てもゴーストさんが驚きと苛立っているのが良く分かる。

 

「まぁ……取り交わしたのはあくまで、深沢先輩本人が先輩らとの接触の禁止……ですので、ゴーストさんは対象外。って言い訳を述べるのなら仕方ありませんね……。しかし、誰であれ先輩達に危害を加えようとしたことに変わりありませんので……」

 

髪留めを外し、先端を引き抜く。

 

「残念ながら、今はこれしか持ち合わせがありませんが……、取りあえず危険なその目から無くしましょうか?」

 

既にこの周辺には、九重家の人達で囲っているので一般の人が近づく心配は無くなった。

 

「……っ!っ!?」

 

「幻体を消そうとするのでしたら無駄ですよ?ゴーストさんの存在も固定していますので……」

 

先端を抜いた髪留めが街灯の光で反射する。

 

「切れ味は保証します。小さいですが、そこそこ気に入っている得物ですので……きっと先輩もお気に召すかと」

 

指先で持った髪留めの先端を見ているその目に、ゆっくりと刺していった。

 

 

 

「さってと、やることやったし……帰ろうかな」

 

一通りお仕置きしたゴーストさんにトドメを差してひと段落着く。

 

「舞夜様、こちらをお使いください」

 

帰ろうと歩き出すと、黒服を着た人が私の為にと履物を用意してくれた。

 

「あっ、わざわざありがとうございます。裸足のままだと、通行人に変な目で見られちゃうもんね」

 

気を遣ってなのか、履きやすいクロックスのサンダルだった。

 

「えへへ、ありがとねー?あ、周囲の哨戒もしてくれてありがとうー!」

 

手を振りながら帰る私に一礼した後にその場を去って行く。んじゃ、私も戻ろうかな。

 

部屋に戻ろうと歩いていると、曲がり道で人の気配を感じ取る。

 

「……ん?九重?」

 

曲がって来たのはなんと新海先輩であった。

 

「あれぇ?先輩、こんな時間に一人で散歩ですか?」

 

「いいや、さっきまで都を送ってた」

 

「ああー、九條先輩をですね。今日もご飯一緒に食べたんですか?」

 

「だな、今日はハンバーグとシーザーサラダだった」

 

聞いても無いのにわざわざ内容まで……よほどうれしいんだろうなぁ。

 

「先輩の大好きなハンバーグとは、もはや九條先輩に胃袋も捕まっていますねぇ……」

 

「良い事しかないだろ?」

 

「それもそうですね!まぁ、先輩らが幸せそうなのは伝わりました。ただ天ちゃんが最近遊べてないので寂しがってますよ?」

 

「あいつが?そういえば都も寂しがっていたな……ぶっちゃけ俺としては二人で居れるからありがたいんだが……」

 

「あはは、先輩としてはそうですね。でもたまにで良いのでまた四人で遊びましょ?ラウンドツーでも良いですし、カラオケでも何でも。先輩のお家でお泊まりとかでも楽しそうですねっ」

 

「俺ん家でかぁ?」

 

「私の部屋でも良いですけど。……こんな話をしていると、いつも通りの日常になったって実感出来ますね」

 

「……そうだな」

 

「フェスの地震があって、アーティファクトという変な能力を手に入れて、石化事件が起きて、犯人捜しを始めて……。ここ最近はそれで忙しかったので、ようやく落ち着いたって感じます」

 

「魔眼のユーザーは多分、野放しにされていると思うけど……」

 

「それでも、です。少なくとも先輩は日常に戻ったって思っているのではないですか?」

 

「ああ、思っている」

 

「安心してください!九條先輩と新海先輩の仲は私が守りますよ?なんせ、二人のキューピットですからっ!」

 

「そういえばそうだったな。ラウンドツーの奴って九重が与一にお願いしたのか?」

 

「はい、一番得意そうな知り合いにお願いしましたよ」

 

「俺は九重に足を向けて寝ることが出来なくなっちまったな……」

 

「ふふふ、崇めたまえー。でも、勇気を出して一歩踏み出したのは誰でもない先輩ですので、そこははき違えない様にお願いします」

 

「大丈夫。ちゃんと分かってるって」

 

「なら安心しました」

 

話に区切りが付き、お互いに無言になる。

 

もうこの枝での私の役割は無いのだろう、後は先輩らが存分にいちゃつくだけだしね。後は次の枝の私に任せよう。

 

隣で歩いている先輩をチラ見する。

 

きっと、この枝でも私が知らないだけで沢山失敗した枝が存在していて、それを乗り越えて今回の枝に辿り着けたんだと思う。実際に別の枝では九條先輩が石化された枝が存在していた。どういった経緯でなのか知りようがないが、学校での放火の一件を止められなかったのかもしれない……。

 

それでも、目指している枝まできっと辿り着ける。辿り着いて見せる……。

 

季節も春から夏に移り変わろうとしている夜の中、どこかの枝の私に誓った。

 

 

 





はい、これでEpisode.Ⅰ九條 都編が完結?となりました。

まぁ、一応BAD ENDルートや新章の物語がありますが……。BAD ENDについては次の枝も話を書きながらどこかのタイミングで投稿できればなぁっと考えております。

次は天ちゃんも物語ですね。個人的に好きなお方なので楽しみです。

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