9-nine- ―最高の結末を追い求めて―   作:コクーン√

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最終章の第六章
『よあそび よばなし よるのあけ』(夜遊び、夜咄、夜の明け)で行こうかと思います。
『重』はやっぱり難しかった……w重なるとかの意味で主人公の人格とか記憶とかと合わせられないかと考えてみたけどね……。

六章は翔が門を閉じた直後から始まります。日常的な話を少しマシマシで書きたいと思っています。






Episode.Ⅵ Maya ___
第1話:4/17


 

 

「……さてと」

 

相棒と別れの挨拶を済ませて無事門を閉じたのは良いが、こっからどう動こうかね。

 

蔵から出て天達が居る場所まで戻る少し前で沙月ちゃんと遭遇する。

 

「お、戻ってきた。おつかれー、消毒液の方は天ちゃんに渡しておいたから」

 

「ありがとうございます。これ、鍵です。ありがとうございました。それと、今日のフェスって……流石に中止ですかね?」

 

「さぁ?知らないけど、二人はもう帰っていいよ。また地震が来たら危ないしさ」

 

「わかりました。天にもそう言っておきます」

 

「おー、気を付けて帰れよー」

 

手を振ってから別れる。

 

「あ、にぃに、戻って来たっ」

 

元の場所へ戻ると、俺を見つけた天が駆け寄って来る。

 

「神器の方はもう良いの?」

 

「ああ、箱の中に戻しておいた」

 

ほんとは全部俺が取り込んでるけど……。

 

「ならもう大丈夫か。ほいこれ、消毒液と絆創膏」

 

「さんきゅ」

 

天から受け取った消毒液を傷口にぶっかけ、絆創膏を貼る。

 

「これで問題無いだろ。……って、これどこからのだ?」

 

手に持っている二つを元ある場所に戻したいが、場所が分からん。

 

「あ、それならあたしがちょちょいと戻して来るから、にぃにはちょっと待ってて」

 

「すまん、頼んだ」

 

天に消毒液と絆創膏の箱を渡す。

 

「あたし以外の知らない人に付いて行くなよ~」

 

「誰が行くか」

 

アホな事を抜かす妹にしっしっと手を振って見送る。

 

「……丁度良いタイミングか」

 

先程から視界には収めていた九重の方を見る。念のためか、未だにスマホを手に持ちながら意識を俺に向けている。

 

そこへ近づき、声を掛ける。

 

「九重、ちょっと良いか?」

 

「……はい、なんでしょうか?」

 

お互いこれが初対面だが、自己紹介も挟まずに会話を続ける。

 

「まずは一つ、街に配備している人達を戻して貰っても大丈夫だ。もう戦いは終わったから安心してくれ」

 

「っ……!?なるほどです。分かりました。そう伝えますね」

 

スマホの画面を操作し始め、メッセージか何かを送信した。

 

「伝えて頂きありがとうございます」

 

「いや、いつまでも待たせちゃ悪いからな。それから頼みがあるんだが―――」

 

次の話に移ろうとした時、九重が俺に対して『静かに』と人差し指を口元に持って来てジェスチャーを送り、視線を俺の後方へと向ける。

 

それに従って後ろを見ると、ちょうど天が戻って来ていた。

 

「にぃにー、戻してきやしたぜ~……って、ん?舞夜ちゃんっ!?なんでにぃにと一緒にいんの?」

 

「あれ?天ちゃん?奇遇だねぇ~こんな場所で!」

 

「それはこっちの台詞だよっ、え?なんで?にぃにと知り合いだったの!?」

 

「えっと、そんな感じかなぁ……?ほんと偶々だったんだけど……」

 

「何々?どういった経緯で?」

 

「その話はまた今度で良いだろ。今は余震の可能性もあるから帰るぞ」

 

「えぇ~……舞夜ちゃんとの話が気になるんだが……」

 

「確かに余震が起きないとは言えませんし……ごめんね天ちゃん、また学校で話すから」

 

「約束だからねーっ」

 

気になっている天を連れて九重から離れる。離れる際にアイコンタクトを送ると、向こうも頷いていた。……察して良くて助かるぜ。

 

「……っと、その前にまだやることがあったな」

 

耳へ届く避難誘導をしている九條の方を見る。未だ避難していない人達が九條のコスプレ姿を見ていた。

 

「天、先に行ってろ」

 

「ん?うん、なんで?」

 

「最後にひと仕事してく」

 

天を先に行かせ、九條の元へと足を進める。

 

「申し訳ありません、写真はご遠慮ください。今は避難を―――」

 

「すみませ~ん。非常時なので避難誘導に従ってくださーい」

 

「え、新海くん……?」

 

「ご協力ありがとうございま~す。あちらにおあつまりくださーい」

 

俺に撮影の邪魔をされたのがイラついたのか、九條に群がっていた連中が露骨に俺を睨みながらその場を去って行く。

 

……なんか、ただの一般人に睨まれても怖くもなんともないな。

 

それもこれも、イーリスとの戦いや、九重に付いて行ったあの街での経験があるからだろうか……?

 

「そんじゃあ、俺は先にあがるから。お疲れさん」

 

「……うん、お疲れ様。ありがとう」

 

そんな事を考えながら九條に挨拶を済ませ、神社を出て天と合流する。

 

「レイヤーさんと知り合いだったの?」

 

「知り合いっていうか、クラスメイトだ」

 

「めっちゃ可愛いから芸能人か声優さんとかかなって思ってた。にぃにと同じアルバイトさんだったんだ」

 

「あっちはバイトっていうか、家業の手伝いみたいなもんだろ」

 

「家業?イベント会社?」

 

「コロナグループのご令嬢ってやつだ」

 

「コロナ……」

 

「コーラのコロナ」

 

「あー!えっ!?コロナの令嬢とクラスメイト!?」

 

「だな」

 

「へー……すごいなぁ……。社長令嬢かー」

 

ほへーっと関心した表情を浮かべる。

 

「にぃに、ちゃんと仲良くなっときなよ。そんで定期的に焼肉奢ってもらおう」

 

「クズかよお前は」

 

「世の中金でっせ、アニキィ」

 

「はいはい、帰るぞ」

 

言われなくとも仲良くなるつもりではあるが、焼き肉を奢って貰いたいならお前と同じクラスメイトの方が喜んで奢るからな?『天ちゃんの為なら喜んでっ!!』って言う姿が簡単に想像出来るわ……。

 

「ちょいちょいちょい」

 

まだ神社に居るであろう九重の事を考えつつも歩いていると、天が俺を止める。

 

「なんだ?」

 

「どこ行くの、道違うでしょー」

 

「駅に行く。俺んちには入れんぞ」

 

「んだよもー!いいじゃん!あたしもあそこ住みたい!」

 

「はいはい、そういうのはいいから。さっさと帰るぞ」

 

駄々こねる天を流しながら駅に着く。

 

「はいお疲れ、さようなら、気を付けて帰れよ」

 

「雑ぅ……流れ作業的に見送りやがって……」

 

「早くしないとそろそろ電車来るぞ」

 

「わかったよ、もぉ……。じゃあね、バイバイ」

 

「はい、バイバイ」

 

改札をくぐり姿が見えなくなるまで、天を見送ってから駅を出る。

 

「さて、と……」

 

立ち止まって周囲を見渡す。九重の事だからきっと……。

 

俺が周辺を探していると、少し離れた場所でこちらを見ている九重を捉えた。向こうも俺が気づいたと分かると手招きする。

 

……こっちに来いってことか?

 

取りあえず後ろを向いて歩き出した九重の後を付いて行く。

 

人が多い場所から外れ、建物の裏地までやって来る。

 

「天ちゃんの見送りは終わったのですか?」

 

「ああ、無事な」

 

「それでですが、先ほどの続きで私に何か頼みごとがあったみたいですが……?」

 

「そうだった。この後って時間あるか?」

 

「ええ、幾らでも用意しましょう。どういったご用件で……?」

 

「この後、結城がナインボールに来る。仲良くなるか……少なくとも縁は作っておきたい。それを手伝って欲しい」

 

「……結城先輩と。色々と気になりますが、取りあえずは分かりました。喜んで協力させて貰います」

 

「助かる。こっちの経緯や事情は向かいながら話す」

 

「了解です。それでお願いします」

 

目の前にいる九重は表情自体は笑顔を浮かべたりと明るい感じを見せているが、俺に対する態度はまだ硬い……まぁ、当然と言えば当然か。

 

ナインボールに向かってる道中で、他の枝の事を話す。とは言ってもイーリスとの戦いまでの経緯だけを話し、倒した後の枝についてはかなり暈かして説明する。

 

「そこで、アーティファクトが流れて来るよりも先に俺が門を閉じさえすれば流出は防げると考えてこの枝を作った」

 

「なるほどです。結果として……成功したのですか?」

 

「多分な。一応今日から明日までは目を光らせておくよ。もしアーティファクトが手元に来ていたら直ぐに教えてくれ」

 

「分かりました……私からもお聞きしても良いですか?」

 

「ああ、何でも聞いてくれ」

 

「……新海先輩は、私の事をどこまで知っているのですか?」

 

……やっぱり聞いてくるか。

 

「どこまで、と言われてもなぁ……。九重から聞いている範囲でしか知らないが、九重の力とか実家の事とかだろ?それについてはそれなりに聞かせてもらってるはずだ」

 

「……ふむ、ま、それについては後ほどまた聞かせて下さい」

 

「おっけー、後で連絡するよ」

 

「よろしくお願いします。ところで……結城先輩をどんな感じで勧誘されるおつもりですか?」

 

ナインボールまでもう少しに差し掛かった辺りで俺を見上げて問う。

 

「あー……流れとして大体決まってるから安心してくれ。九重は俺と一緒に付いて来て貰えると助かる」

 

「……私が一緒で良いのですか?」

 

「ああ、出来ればそっちの方がありがたい」

 

「先輩がそう言うのでしたら、お供させてもらいます」

 

「頼んだ」

 

きっと、自分の中にある記憶だと俺一人で結城と話しているから気になったのだろう。

 

道中で結城を見かける事無くナインボールへ着く。中に入るが、結城はまだ来ていない様だ。やっぱり少し早かったか……?

 

「居ませんね」

 

「だな、中で待つか」

 

九重に事情を話す為に結城がいるであろう場所へ向かわなかったが……その内来るだろ。

 

店員の人に案内され、奥側のテーブル席に座る。

 

「何か頼むか?飲み物以外も大丈夫だ」

 

「良いのですか?」

 

「もうしばらく待つことになりそうだしな」

 

「でしたら……いえ、このアイスココアだけにしておきます」

 

「気を遣わんくても良いんだぞ?」

 

「流れ的に結城先輩と話した後は店を出た方が良いかと思いまして……」

 

「……それもそうか。なら俺はコーラでも頼むか」

 

互いに注文を決め、店員に頼む。適当な雑談をしていると店の入り口が開き結城が入って来た。

 

「来ました」

 

「だな」

 

お互いに口と目を動かすだけで声は出さずに、そのまま経緯を見守る。

 

結城は店員に注文をして優雅に小説を読み始める。それを九重がバレない様に観察していると注文の品が届く。

 

「……取りあえず、飲むか」

 

「ええ、そうですね。乾杯です」

 

「おう、乾杯……って、何にだ?」

 

乾杯と言われ、お互いにコップを持って少し上に上げる。

 

「勝利への、ですよ。それとお疲れ様でしたと言う労いの意味も込めて」

 

この枝では初の心からの笑みを浮かべて俺を見る。

 

「……ああ、そっちもお疲れ。色々と助かったよ」

 

「あははっ、私の記憶にはありませんが……そう言って貰えるのでしたら他の枝で頑張った甲斐がありましたね」

 

笑いながら手に持ったココアを口に付けるのを見て俺もコーラを飲む。

 

いつもよりも少し美味しく感じるコーラを何度か飲みながら結城を観察する。

 

……そろそろ、行っても大丈夫だろう。

 

あちらも注文が届き、小説を読みながら楽しんでいる。

 

大丈夫だ。既に一度成功している。今度も行けるはずだ。

 

自分に言い聞かせつつ九重に目配せをする。俺の視線の意図を理解して頷き、後少しだけ残っていた飲み物を飲み切る。

 

「お待たせしました。行きましょう」

 

「ああ」

 

グラスと伝票を手に持って席を立ち、結城のそばまで近寄る。数秒間こちらの存在をアピールしてから正面の席へ腰を下ろす。付いて来た九重は座らずにすぐ横で立ち、後ろで手を組みながら立っていた。

 

「………」

 

不審気な視線を俺達へ向けたが直ぐに手元の小説に戻してから淡々とした声で俺達に告げる。

 

「……相席なら、遠慮して欲しい」

 

「結城希亜だな?」

 

「……?」

 

またちらりとこちらを見る。自分の名前を呼ばれた事でその瞳には警戒心がありありと浮かんでいるのが分かる。

 

「……どこかで会った?」

 

「いいや、まだだ」

 

「……まだ?」

 

「ああ……、この世界線では、な。だが……別の世界線では、もう会っている」

 

「………」

 

分かっていたが反応は薄いし乗って来ない。しかもすぐ横の九重は何が嬉しいのか目を輝かせて笑っているのが分かる。

 

……俺だけクッソ恥ずかしい。わかってはいたが……。

 

だが……っ!!

 

「俺らは、ヴァルハラ・ソサイエティの一員だ」

 

「……っ!?」

 

結城が絶対に無視できない言葉を放つ。案の定それを聞いた結城の目が驚きで見開く。

 

「あなた達は……いったい……」

 

「聖遺物は手に入れたか?」

 

このまま畳みかけるっ!

 

「ぇ……?」

 

「その様子じゃ、手に入れてないみたいだな」

 

今の段階で手にしていないのは分かっている。それと前と異なるのは俺が門を閉じてる点だ。

 

「紙とペンは持ってるか?」

 

「ええ……、持っているけど……」

 

「貸してくれ」

 

「………、……はい」

 

少し目を泳がせながらも鞄を開けて紙とペンを俺に渡して来る。

 

「ありがとう」

 

紙に俺の電話番号とLINGのIDを書いて九重を見る。

 

「九重も書いとくか?」

 

「いえ、先輩だけで充分ですよ」

 

「分かった」

 

書いた紙を結城に返して続きを話す。

 

「無いとは思いたいが……聖遺物を手に入れたら、直ぐに俺へ連絡をして欲しい。念のためにな」

 

「え?ええ、と……?」

 

「怪しいよな。その気持ち分かる。でも、ちゃんと後で説明はする」

 

「………」

 

「もしも、今日中に聖遺物を手にしなければ、明日の放課後にまたここで落ち合おう。その時に全てを話す」

 

「えっと……は、はい……」

 

「連絡が無い事を祈ってるよ。それじゃあ、行くか」

 

「はい」

 

最後まで一歩離れて俺らを見ていた九重に声を掛けて席を立つ。

 

「じゃあ、また明日な」

 

「それではまた明日ですっ。結城先輩」

 

最後まで困惑している結城に挨拶をしてレジへと向かう。

 

「あ、先輩、自分の分ぐらい出しますよ?」

 

「最後までやり切らせてくれ……!」

 

ここまでカッコつけたんだ。後輩に奢るところまで決めておきたい。

 

「あー……では、ご馳走になりますね」

 

俺の意図を汲み取って大人しく下がる。

 

二人分の会計を済ませ店を出る。

 

「ココア、ごちそうさまです」

 

「いや、付き合って貰ってすまんな」

 

「いえいえ、結城先輩へのアプローチを含めての演出なのですよね?」

 

「ああ、多分あれで大丈夫だ」

 

「凄く驚いていましたねっ、結城先輩!」

 

「まぁ、当たり前っちゃ当たり前だよな」

 

俺と結城のやり取りが面白かったのか、今日一番テンションが高いな。

 

「"俺らはヴァルハラ・ソサイエティの一員だ"」

 

「やめろっ!蒸し返すなっ!恥ずかしかったんだからな!!」

 

「いえっ!すっごく良かったと思いますよ?……もう戦いは終わったのですよね?」

 

「ん?そうだが……?」

 

「結城先輩に最初に声をお掛けになったのは、タイミング的に近かったからですか?」

 

「そうなるな。明日には九條とも顔合わせをするつもりだ。それと同時に天も一緒に連れて行くか」

 

「天ちゃんもですね、分かりました」

 

「香坂先輩の方は……もう少し後に機会を作るかぁ」

 

「具体的には?」

 

「メビウスリングあるだろ?あれのファンサイトに居るからそれ経由で何とかしてみるわ」

 

「了解です。何か手伝えることがあればいつでも言って下さいね?」

 

「ああ、すまんが頼む」

 

「それと、これからのご予定は?」

 

「あー……そうだな、夜にもう一回ナインボールに行って、今度は九條と少し話す」

 

「私は必要ですか?」

 

「いや、一人で大丈夫。普通に晩飯を食べに行くついでだしな」

 

「分かりました。それでは、この後実家の方に色々と報告する必要がありますので、すみませんが私は一旦帰りますね?」

 

「おう、分かった。また何かあったら連絡す……って連絡先交換してなかったな」

 

「あはは、そうですよ?先輩だけのあるあるなミスですね!」

 

「そこら辺気を付けておかないとな」

 

九重と連絡先を交換して今日の所は解散する。

 

「はぁ~~~……」

 

何事も無く一段落したことに深ーいため息を吐き出す。

 

無事に終わって本気で良かったわぁ……。大丈夫だろうとは分かってはいたが、オーバーロードも無い今はやり直しも利かない。

 

「ま、それでも頑張ってみるしかないよな?」

 

最初のやり方としてはそこまで悪くは無いとは思いたい。

 

「次は夜まで待機だな」

 

九條の件までまだ時間が空いているので、一度部屋に戻って休むことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ~」

 

日も暮れて夜になった時間帯に再びナインボールにやって来た。

 

九條と仲良くなる切っ掛けと、アーティファクトを拾って無いかの確認だな。

 

「ビーフカツレツのセットを、ライスで」

 

「はい、ビーフカツレツのセットを、ライスで。以上でよろしいですか?」

 

「はい」

 

さくっと注文を済ませる。

 

「かしこまりました」

 

こちらに一礼をした九條を見る。頭を上げ、俺に声をかける素振りを見せずに振り返る。

 

―――安心した。

 

「九條、ちょっと良いか?」

 

俺に声をかけて来ないという事はアーティファクトを拾っていない事になる。これで安心材料が一つ増えたな。

 

「うん?どうかしたの?」

 

俺が苗字で呼んだ事で店員としてではなく、クラスメイトとして返事をする。

 

「いや、ちょっと聞きたい事があってさ」

 

「聞きたいこと……?」

 

「今日、アクセサリーとかって拾ってないか?」

 

「アクセサリー?」

 

「そ、銀色の桜の花弁っぽい髪飾り的なやつ」

 

「んー……ごめんなさい、見てないかな……」

 

「そっか、それなら大丈夫だ」

 

「もしかして、一緒に居た彼女さんの……?」

 

「ん?彼女……?ああ、違う違う。あれは妹」

 

「ぁ……ごめんなさい。早とちりしちゃって」

 

「気にしないでくれ。にしてもフェスの後にバイトなんて、九條も大変だな。お疲れ様」

 

「家業のお手伝いみたいなものだから。新海くんもお疲れ様。それと、いつもありがとう」

 

「ん?」

 

「お店に来てくれて」

 

にこっと笑って厨房へ歩いて行った。

 

……そう言えばこんな感じだったな。

 

他の枝でも同じやり取りしていたと思い返す。

 

それにしても、やっぱり美少女の笑顔にはチョロいな、俺……。

 

……それより、これで九條とも多少の接点は出来たと考えて良いだろう。それなら明日誘う時にちょっとは楽になるはずだ。

 

スマホを開きながら時間を潰しつつもそんな事を考えていると、テーブルに料理が届く。

 

「お待たせしました。ビーフカツレツのセットです」

 

「コーラにプリン……?」

 

分かっているが、流れとして九條に聞く。

 

「今日のお礼。嫌いだったら残してもいいから。ごゆっくりどうぞ」

 

トレイを抱えてぺこっと頭を下げて立ち去る。

 

……相変わらず律儀だなぁ。

 

その厚意に甘えておまけもいただいておく。

 

「いただきます」

 

手を合わせて、箸をとる。

 

ひとまずは九條はアーティファクトを拾ってはいない事が確認出来た。次は結城の電話と……後は神社の方も確認しておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました~」

 

食事を終えて店を出る。

 

スマホを見るが、今の所結城からの連絡は来ていない。

 

「そろそろ来てもおかしく無いけどな……」

 

もう少し時間を潰すついでに神社の方へ足を進める。

 

「……流石に、誰も居ないか」

 

鳥居をくぐって境内へ入り辺りを見渡す。昼頃の騒がしさは無く静かな夜が広がっていた。

 

「ソフィはー……っと」

 

薄暗い神社を歩き回る。記憶の中あるあのぬいぐるみがあったであろう場所には何も無く、他の場所にもそれらしい物は見当たらなかった。

 

「流石に大丈夫そうだな」

 

見回りを終え、結城からの連絡も来ていないことを確認してから帰路につく。流石にここまで来ればアーティファクトが流れて来ていないと判断しても良いだろう。

 

不安要素が消えたことで胸が軽くなる。

 

「一応、九重の方にも連絡入れておくか」

 

恐らく……俺の事を誰かに監視……見ている様にしてるとは思うが、探ってもどうせ分からないので気にしないでおく。

 

「これでよしっと……」

 

帰りながらもメッセージを送り、部屋へ戻る。帰宅途中で九重から返信があったが、『わざわざご連絡ありがとうございます!』と猫のスタンプと一緒に送られてきた。これ、結城も同じ種類のを使ってたな、流行ってるのか……?

 

「うむ、ここにも居ないなっ」

 

最後の最後に俺の部屋に……!なんてことも無く、いつも通りの部屋だった。

 

「今日の内に、情報の整理くらいはしておくか……」

 

皆に対してのミスもそうだが、特に九重に対して口を滑らせない様に気を付けないといけないからな。

 

 





第六章の始まり始まりです。

主人公とさくっと縁を作るために最初から行動を一緒にする作戦で動き始めた翔視点でした。
次回は二日目で翔視点と……余裕があれば、舞夜視点をちょこっと入れようかと考えています。

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